ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

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第045話 暴獣、再び!

“アニマル・チェンバー・デスマッチ”第4の檻が開放され、ついに参戦を果たしたネプチューンマン。

 しかしパートナーのセイウチンはすでにKO寸前になるまで痛めつけられ、状況は最悪といえる。

 

「ヒトってやつは年齢を重ねると、まるで悟りを開いたかのように穏やかになったり、逆に冷静沈着だった人物が怒りっぽくなったりする……どうやらオレは後者のようだ」

 

 ネプチューンマンは傷ついたパートナーを前に、毛が逆立つほどの怒気を見せた。

 

『あ――っとネプチューンマン、パートナーが痛めつけられ怒り心頭の様子だ――っ』

 

 セイウチンを守るように立ち、向かい合うはクマのヌイグルミ超人マイケル。

 完璧(パーフェクト)超人時代から代名詞としている技でお返しをするべく、左腕を掲げた。

 

「死ね――っ! 喧嘩(クォーラル)ボンバー!」

 

 殺意を込めたラリアット、必殺“喧嘩ボンバー”でマイケルに攻撃する。

 正面から襲い来る脅威に対し、マイケルは大きく身を仰け反らせた。

 

『マイケル、喧嘩ボンバーをブリッジで避けた――っ』

 

 避けられた――が、想定内。

 ネプチューンマンは突進をやめず、マイケルが立つ先にあるロープまで到達。

 ぐい~んとロープが伸び切るまで体を預け、突進ルートへの逆走を始める。

 

『お~っとロープの反動を利用したネプチューンマンが戻ってくるぞ――っ!』

 

 ブリッジ体勢から元に戻ったマイケルは油断している。

 

「喧嘩ボンバー・リターンズ!」

 

 避けたと思ったところに、後ろからの喧嘩ボンバー。

 ズガン!!と骨を強打する音が響き渡り――

 

『喧嘩ボンバーがマイケルの後頭部にヒットし……あ、ああ~~っ!? マイケルの首が吹っ飛んだ――っ!?』

 

 喧嘩ボンバーは相手超人の仮面を狩る技。

 しかし強力無比なその一撃は、ときに相手の仮面を頭部ごともぎ取ってしまうのだ。

 愛らしいクマの頭は表情を一切変えることなく宙を舞い……今、リングの上に落ちた。

 

「や……やりすぎだ――っ!」

「まさか正義超人同士でこんな凄惨な事故が……!」

「酷いわネプチューンマン! あなたは残虐非道な鬼畜生よ――っ!」

 

 上野動物園に悲鳴が飛ぶ。

 マイケルを応援していた女性ファンたちは顔を真っ青にし、正々堂々としたファイトを期待していた超人レスリングファンからは罵詈雑言。

 そんな周囲の声など気に留めず、ネプチューンマンは首を失ったマイケルの胴を捕らえる。

 脇に抱える形でマイケルの体を振り、片膝を立てて背中から突き刺した。

 

『あ――っ!? ネプチューンマン、首なしとなったマイケルの体にペンデュラム・バックブリーカーだ――っ!』

 

 マイケルの体が衝撃で跳ねる。

 頭部を失った亡骸は悲鳴を上げることもなく、ただビクビクと痙攣するのみである。

 

「な……なんてことを!」

「首を刈り取ったうえに死体蹴りなんて……」

「悪魔でもそこまでやらねえぞ――っ!」

 

 観客の怒号に、ネプチューンマンはチッと舌打ちをする。

 

「バカどもが――っ。こいつはこの程度でくたばるような海千山千の超人じゃねえ」

 

 そう――首を吹き飛ばしはすれど、ネプチューンマンはマイケルが死んだなどとは思ってはいない。

 その証拠に、マイケルはネプチューンマンの腕を掴み一本背負いの要領で投げた――首を失った体が、だ。

 

『な、なんだ――っ!? マイケルの体が突如動き出し、ネプチューンマンを投げた――っ!?』

 

 受け身を取りダウンを拒否するネプチューンマン。

 対面には、首を失ったマイケルが投擲のポーズで立っている。

 

「キャ――ッ!」

「く……首がないのに動いてる!」

「どうなってやがるんだ――っ!?」

 

 観客たちの悲鳴と困惑で、上野動物園特設会場は大混乱に陥った。

 首なしのマイケルはなおも動き、両腕を掲げてネプチューンマンに襲いかかる。

 

「ヌオッ」

 

 ネプチューンマンも両腕を出し、正面からマイケルと組み合う。

 

『ネプチューンマン、首なしマイケルに“審判のロックアップ”だ――っ!』

 

 まさか首を失った超人とロックアップすることになるとは――とは思わない。

 この状態になることは半ば予想していた。

 首を失ってなお動きを止めない超人、そこからの本領発揮を、ネプチューンマンは“前回”の経験から知っている。

 

「グ……グオオ~~ッ! このパワーは~~っ!?」

 

 組み合ったマイケルの体がモコモコと膨れ上がり、どんどん巨大になっていく。

 

『こ、これはマイケル……いや、マイケルのヌイグルミの中にいたナニかが膨張し姿を現していく~~っ!』

 

 ヌイグルミのコスチュームがバリバリと破れ、中から出てきたのは――氷塊。

 その氷もまた、マイケルの本体を覆うためのオーバーボディに過ぎない。

 氷はすぐに割れ、破片が四方八方に飛び散った。

 

 そしていよいよ姿を現したのは――

 

『ヌイグルミをぶち破り出てきたのは……大地を揺るがさんばかりの……この世のものとは思えぬ巨大な生物だ――っ!』

 

 ネプチューンマンをゆうに超える巨大な肉体。

 セイウチンのそれを凌ぐほど大きく反り上がった2本の牙に、同等のサイズの長い鼻。

 体に巻き付けた鉄の鎖は、まるでその獣性を封印するための拘束器具のようでもあった。

 

 ギャラリーが連想する姿は、恐竜と並ぶ古代生物として知られるマンモス。

 恐竜ブームがアツい1980年代、その認知度は広く、だからこそ脅威度も窺い知れる。

 

 観客席にいるアレキサンドリア・ミートくんは、超人の歴史をすべて網羅している本“宇宙超人大全”を手に叫ぶ。

 

「あ……ああ~~っ! あれは――っ! “超人破壊師(デストロイヤー)”マンモスマンだ――っ! この時代の超人レスリング界にはまだ登場しないはずの、まだ見ぬ強豪超人ですよ――っ!」

 

 ――マンモスマン。

 それは、本来なら“宇宙超人タッグ・トーナメント”後に行われる“キン肉星王位争奪サバイバルマッチ”にて、キン肉マン・スーパーフェニックスチームの重鎮として登場するはずだった超人。

 キン肉マン・ビッグボディチームのペンチマン、レオパルドン、ゴーレムマンをひとりで破った“マンモスの三重殺”に始まり、キン肉マンチームとの対戦前にウォーズマンを襲撃、準決勝ではバッファローマン、決勝ではロビンマスクに深手を負わせた超強豪。

 シングルマッチにおいては敗戦は一度たりともなし――それがマンモスマンという超人だ。

 

「ヌゥ~~ッ、やはりおまえか~~っ」

 

 ネプチューンマンはロックアップで組んだまま、マンモスマンの巨体を睨みつける。

 もしかしたら、自分の知らないところで歴史が変わりウォーズマンが別のパートナーにマイケルの皮を被せているのではないか――という考えがよぎらないでもなかった。

 だが現実は“前回”と変わらず、ヘルズ・ベアーズ1号マイケルの正体はあの恐ろしきマンモスマンのままであったようだ。

 

「その反応を見るに、予想は的中していたようだな」

「ウォーズマン」

 

 ウォーズマンは安全圏からネプチューンマンを問い詰めようとする。

 

「ネプチューンマンよ、おまえはいったいなにを隠している? オレがアラスカの永久凍土からマンモスマンを目覚めさせタッグパートナーにスカウトしたなど、一回戦前のあの時点で思い至るはずがない。長年の山ごもりで神通力にでも目覚めたのか?」

 

 その口ぶりから察するに、やはりウォーズマンの行動は“前回”とまったく同じ。

“究極の超人タッグ戦”参戦にあたり、若く意気軒昂で獣性と知性を併せ持つ未知の強豪を求めた。

 そこでマンモスマンを思い浮かべ、フェニックスと出会う前の――まだ悪行超人に染まる前のマンモスマンに会いにいったのだ。

 

「非科学的なこと言ってんじゃねえ、この機械ヤロウ。すべてはこのネプチューンマン様の洞察力が成せるワザだ」

 

“前回”を知るネプチューンマンは、ウォーズマンから答えを聞く必要もなくそんな口ぶりで誤魔化す。

 ウォーズマンもこのままネプチューンマンと腹の探り合いを続けるつもりはないようだ。

 

「しらばっくれるならそれでいい。オレとマンモスマンが真っ向から打ち倒するのみ」

 

 ウォーズマンが顎を微かに動かし、それが合図となった。

 

「パオオ~~ッ!」

 

 マンモスマンが巨大な肩を震わせ、グッとネプチューンマンの体を押す。

 

「グゥ……」

 

 ネプチューンマンはその圧倒的パワーに押され、キャンバスに左膝がついてしまうほど姿勢を低くする。

 

『どうやらマンモスマンという名前らしいウォーズマンのパートナー、2800万パワーと超人界トップクラスのフィジカルを持つネプチューンマンに片膝をつかせた――っ』

 

 よもや“審判のロックアップ”という得意の組技を持つネプチューンマンが、この体勢から押し負けるとは。

 ライバル超人たちが驚く中、マンモスマンはロックアップを切りネプチューンマンの体勢を崩す。

 その隙を狙い、腕よりも長い鼻をネプチューンマンの胴に巻きつけた。

 

「パワフル・ノーズ!」

 

『今度はその長い鼻をネプチューンマンの体に巻き付け持ち上げる――っ』

 

 鼻を使ってのリフトアップ。

 ネプチューンマンの体を横向きにし、自身が立てた右膝に背中から落とす。

 

「パワフル・ノーズ・ブリーカー!」

「ガハァッ」

 

 ガキッという音が鳴り響き、ネプチューンマンが吐血した。

 

「まだだ――っ! ウォーズマン!」

「コーホー」

 

 今度はマンモスマンが合図を出し、ウォーズマンが応える。

 

『あ――っとウォーズマンも飛び出した――っ!』

 

 頭上高くジャンプするウォーズマンに合わせ、マンモスマンも捕獲したままのネプチューンマンを再度鼻で持ち上げる。

 ウォーズマンは捕らわれたネプチューンマンの首と右股を掴み、自身の体重を乗せまたもやマンモスマンの右膝に落とそうとしていた。

 

「フリージット・バックブリーカー!」

 

『マンモスマン、自らのヒザの上にウォーズマンの体重のかかったネプチューンマンを叩きつける――っ!』

 

 背中から落ちたネプチューンマンが、先ほどよりも大量に吐血。

 ウォーズマンの体重とパワーが加わったツープラトン・バックブリーカーに、あえなくダウンしてしまう。

 

『こ、これが正体を表した完全体“ヘルズ・ベアーズ”のツープラトンなのか――っ!?』

 

 仰向けに倒れるネプチューンマンを挟み、ヘルズ・ベアーズの追撃は終わらない。

 

「ウォーズ!」

「マンモス!」

 

 声を掛け合い、ネプチューンマンの真上で左腕を組み合わせる。

 

『ウォーズマン、マンモスマン、互いに腕同士を絡め合い旋回――っ!』

 

 回転で勢いをつけ、そのまま直下のネプチューンマンに肘から落下していく。

 

『ヘルズ・ベアーズ間髪入れず、息の合ったダブルのエルボーをネプチューンマンに落とす――っ!』

 

 強烈な一撃に、ネプチューンマンの頑強な胸板がめり込んだ。

 連続でツープラトンを成功させたウォーズマンとマンモスマンは静かに立ち上がり、本格的超人レスリングを期待していた観客から歓声を浴びる。

 

『す……凄まじい強さだヘルズ・ベアーズ! そのタッグ・コンビネーションは目の前のネオ・イクスパンションズはもちろん、ウォーズマンが以前ロビンマスクと結成していた“超人師弟コンビ”をも凌駕する勢いだ――っ!』

 

 大会最初期こそクマのヌイグルミコンビとして色物扱いされていた“ヘルズ・ベアーズ”。

 しかし蓋を開けてみればとんでもない、片や技巧派、片やパワーファイター、互いの長所を活かしてチームワークも抜群。

 タッグ珠玉の逸品といわれた“ザ・マシンガンズ”が退場した今、一気に優勝候補に躍り出たと言っても過言ではない。

 

 強力なライバルの登場に、顔を青くして嘆いたのが“ジ・アドレナリンズ”のテリー・ザ・キッドだ。

 多くの試合を観てきた彼は、“ネオ・イクスパンションズ”の過ちを語る。

 

「ネ……ネオ・イクスパンションズは作戦ミスを犯したんだ。先発のセイウチンはタッグチームが出揃うまで防御と回避に徹し、時間を稼ごうとした。しかし不運にもタッグパートナーであるネプチューンマンのチェンバー開放は遅れ、相手チームのウォーズマンが先に出てきてしまった。防御に専念していたためマイケル……もといマンモスマンは一切手傷を負っておらず、結果ひとりでふたりの強豪超人を相手にすることとなってしまった」

 

 静かに頷き、キッドの意見に同調したのはロビンマスクである。

 

「であれば、セイウチンの苦戦は必至。ネプチューンマンが出てくる頃にはKO寸前まで追い込まれ、もはやネオ・イクスパンションズは万全の状態でコンビプレーを仕掛けることができなくなってしまった……」

 

 これがタッグマッチである以上、どちらか片方が先に戦力外になってしまうのは致命的だ。

 リング上で倒れ伏すネプチューンマンとセイウチンを見て、ジ・アドレナリンズだけでなく他のタッグチームもまた“ネオ・イクスパンションズ”の逆転を絶望的と考えていた。

 

『さあ――っ! アニマル・チェンバー・デスマッチのもたらした優位性、そして未知の強豪マンモスマンの出現により、試合は早くもヘルズ・ベアーズの圧勝ムードだ――っ! ネオ・イクスパンションズはこのままトーナメントという山から転げ落ちてしまうのか――っ!?』

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