ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

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第046話 老齢ならではの攻略法!

“究極の超人タッグ戦”二回戦Bブロック第1試合、“ネオ・イクスパンションズ”vs“ヘルズ・ベアーズ”。

“アニマル・チェンバー・デスマッチ”と銘打たれたこの試合は10分が経過し、ついに4人の超人が揃い踏みとなった。

 しかし最後に檻から開放されたネプチューンマン、それまで10分間相手の攻撃を受け続けたセイウチンは揃ってキャンバスに倒れ伏している。

 両者を見下ろすのはウォーズマン、そしてマイケルという皮を捨て正体を表したマンモスマンのふたり。

 

 戦況は“ヘルズ・ベアーズ”の圧倒的優勢。

 このまま10カウントにより決着がついてもおかしくはなかったが――

 

「フ……フフ……」

 

 ネプチューンマンは弱々しい笑い声と共に立ち上がった。

 

「ヘルズ・ベアーズはオレとセイウチンの運命を変えた因縁の相手……このまま実力負けするわけにはいかねえな~~っ」

 

 試合続行の意思を示すため、ファイティングポーズを取る。

 

「ネ……ネプチューンマン……」

 

 後ろのセイウチンはまだダメージが残っているらしく、立ち上がる様子はない。

 それでいい。

 これはタッグマッチ。片方が闘っているとき、もう片方は体力を温存しておくべきだ。

 

「セイウチン、おまえはもう少し休んでおけ。さっきおまえが見せたあの力は、マンモスマンにとって劇毒……この試合では使わんほうがいい」

 

 セイウチンが逆転を狙い一瞬だけ発揮した獣性。

 その危険性をあらためて感じ取り、ネプチューンマンはそう釘を刺す。

 こうなってしまっては仕方ない。方針を変更し、懸念事項から潰すべきだろう。

 

「来いよ、マンモス野郎。おまえには返したい借りがある」

 

 暴走の危険性があるマンモスマン――こいつから落としてしまえば、憂いなくウォーズマンと対戦できる。

 ネプチューンマンは指をくいくいっと曲げ挑発した。

 

『あ――っとネプチューンマン、マンモスマンを誘っているぞ――っ』

 

 マンモスマンの隣にいるウォーズマンは、ネプチューンマンの発言に違和感を覚える。

 

「借り……王位争奪戦のときのことを言っているのか? このマンモスマンにとっては未来……おまえにとっては大昔の、あの一戦を」

 

 ウォーズマン自身が参戦できなかったキン肉マン・スーパーフェニックスチーム戦。

 ネプチューンマンはそこで、キン肉マンやロビンマスクと組んで3対3の“イリミネーション・ルーレット・マッチ”に臨んでいる。

 そのときの対戦した3人のひとりがマンモスマンだったはずだ……ネプチューンマンの言う借りとは、それを指しているのだろうか。

 それとも――

 

「グフフ……さてな」

 

 ネプチューンマンは徹底してはぐらかす。

 ウォーズマンは問答は無駄だと捉え、マンモスマンの背中を叩いた。

 

「いいだろう。いけ、マンモスマン」

「パゴオ――ッ!」

 

 チームリーダー・ウォーズマンに背中を押される形で、勢いよく駆け出すマンモスマン。

 

『これはタックル……いや、極めて原始的な体当たりだ――っ』

 

 構えもなにもなくただ突っ込んでいくその姿は、まさにマンモス。

 巨体と牙があればどんな生物にぶつかろうともものともしない。

 

「グアッ」

 

 事実、ネプチューンマンは正面からぶつかってきたマンモスマンになんの反応もできなかった。

 

『ネプチューンマン、成すすべもなく吹っ飛ばされた――っ』

 

 スピードの乗った巨大な質量に押し出されれば、矮小な体はただ吹き飛ばされるのみ。

 ネプチューンマンはコーナーにある鉄檻に背中から激突し、その場に尻もちをついた。

 

『おーっとチェンバーに衝突したダメージが大きいか、ネプチューンマン立ち上がれない!』

 

 先ほど食らったパワフル・ノーズ・ブリーカー、そしてフリージット・バックブリーカーが効いている。

 ネプチューンマンの背骨は蓄積されたダメージに悲鳴を上げ、足腰を痺れさせた。

 元完璧(パーフェクト)超人の自分がフィジカル負けするなど――と、ネプチューンマンは歯を食いしばろうとして、

 

「なにをやっている――っ! ネプチューンマン!」

 

 突如、リング外から馴染みのある声が耳朶を打った。

 観戦していた鉄面の貴公子が、試合中のネプチューンマンに呼びかけている。

 

「ロ……ロビンマスク」

 

 その様子は、贔屓の超人が劣勢に追いやられ黙って見ていられなくなったファンそのもの。

 握り拳を振りかざし、ロビンは荒々しく言う。

 

「おまえはそんなパワー一辺倒の超人に振り回されるような男ではなかったはずだ! ネプチューンマンとなってからはフィジカルばかりが注目を集めがちだが、喧嘩男(ケンカマン)だった頃のおまえはむしろ熟達したレスリングテクニックで勝利を量産していた! 野生の如きパワーなど、手玉に取ってみせろ――っ」

 

 ロビンのストレートな助言に、横にいたキッドが問う。

 

「ロ、ロビン。ネプチューンマンが闘っているのはおまえの弟子であるウォーズマンのチームだぞ。なのにネプチューンマンを応援するのか?」

 

 そのとおりだ。

 ネプチューンマンの対戦相手であるウォーズマンはロビンマスクの身内とも呼べる超人。

 しかも先に行われた“宇宙超人タッグ・トーナメント”では、ウォーズマンと“超人師弟コンビ”としてネプチューンマンに挑みKO負けを喫している。

 執念深いロビンマスクであるならば、リベンジを果たす意味でも肩入れすべきはウォーズマンの側であるはず……なのに、なぜ。

 

「確かに……21世紀から来たと思しきウォーズマンの、歴戦の勇士とでも呼ぶべき姿を見たときは心躍った。かつて私が超人未開の地であるソ連でやつを発掘したように、己も未知の強豪超人のスカウトをしてこのトーナメントに参戦したというならもはや感無量だ」

 

 未来からやってきたウォーズマンへの想いを語るロビンマスク。

 それでも、彼が熱烈な視線を送る先はネプチューンマンだった。

 

「しかしウォーズマンは我が愛弟子ではあるが、ネプチューンマンとて我が終生のライバル。そんな男が不甲斐ない姿を晒しているのを黙って見ていられるほど、私の血は冷めてはいない!」

 

 この場は成長した愛弟子よりも、不甲斐なき終生のライバル。

 さすがいずれヘラクレス・ファクトリーの校長となる男。同じ正義超人として、軟弱者は許さないという気迫をありありと感じた。

 

「立ち上がれ、ネプチューンマン!」

 

 かつて完全勝利を収めた相手にそうまで言われてしまっては、ネプチューンマンも腰を上げずにはいられない。

 

「フフ……自分はキン肉マンに勝ったからって偉そうに……」

 

『あ――っとネプチューンマン、ゆっくりとだが立ち上がる――っ』

 

 負けん気を見せるためにも立ち上がってみせたが、根性論で状況を打開できるほどマンモスマンという存在は小さくない。

 ネプチューンマンはロビンマスクを憎たらしく思いながら見つめる。

 

「この時代のおまえはまだ知らないだろうが、このマンモスマンという超人のパワーはそう容易くいなせるものではない。獣性だけではなく、知性も併せ持った……」

 

 セリフの途中で、ハッとした。

 今自分が口にした言葉と、目の前のロビンマスク。

 パズルのピースがかっちりハマるような感覚を覚えた。

 

(いなす……あ、ああ~~っ! そうか――っ)

 

 光明を見出したネプチューンマン。

 そうこうしている間にも、マンモスマンはネプチューンマンを追い詰めにかかる。

 

「パオ――ン!」

 

『再びマンモスマンが突っ込んでいく――っ』

 

 雄叫びを上げながらの体当たり。

 ネプチューンマンはタイミングを見極め、マンモスマンの足もとに向かって滑り込んだ。

 

「ロビン戦法No.6! いなす時は柳の如く!」

 

『ネプチューンマン、マンモスマンの突進を華麗な股抜きスライディングで回避――っ』

 

 ロビン戦法――その心得を口にしながら。

 マンモスマン視点、ネプチューンマンは視界から一瞬にして消えた。

 巨体ゆえ自分の股をくぐり抜けたとは気づかず、そして突進の勢いもすぐには止められない。

 

「パゴッ!?」

 

 ぶつかった先はネプチューンマンではなく、コーナーの鉄檻だ。

 

『あ――っと、そしてマンモスマン、チェンバーに頭から突っ込んでしまった――っ! これはハマったか――っ!?』

 

 鉄檻に頭が挟まれ、マンモスマンは身動きが取れなくなってしまう。

 称賛すべきは絶妙なタイミングでマンモスマンの死角を突いたネプチューンマンだ。

 

「あやつ、私のロビン戦法を!」

 

 特に直前で声援を送っていたロビンマスクは、まさか自分の得意とする戦法が使われるとは思わず驚きの声を上げた。

 

「ロビン戦法とはもともと、加齢による体力の衰えを意識し始めたロビンマスクが消耗を最小限に抑えるべく編み出した戦法。50過ぎのオレとの相性は抜群だ~~っ」

 

 振り向くことすらできないマンモスマンの後ろで、ニヤリと笑うネプチューンマン。

 観衆に見せつけるようなゆったりとした動きで、無防備なマンモスマンの左腕を取る。

 

「ロビン戦法No.7! ピンチの直後は最大のチャンス!」

 

 両腕で左腕を掴み、右腕に左脚をかけてロック。

 その状態でさらに左腕を強く絞め上げれば、ネプチューンマンお得意の立ち関節が完成する。

 

喧嘩(クォーラル)スペシャル!」

 

『なんとネプチューンマン、チェンバーに頭が挟まり抜けなくなったマンモスマンに喧嘩スペシャルを決めた――っ!』

 

 通常の喧嘩スペシャルでも充分に脱出困難なところ、チェンバーが首の自由すら奪っているためその攻略難易度は何倍にも跳ね上がっている。

 一気に形勢逆転――と思われたところで、マンモスマンの特徴的パーツが蠢き出す。

 

「パゴゴオ――ッ!」

 

 頭部と共にチェンバーの中に捕らわれた、マンモスの牙である。

 それが左右に大きく広がり、鉄製の檻を捻じ曲げ隙間を作った。

 

『マンモスマン、その巨大な牙を押し広げ強引にチェンバーを破壊――っ!』

 

 チェンバーから頭を抜き、フィジカルを存分に活かして両腕を振るう。

 虚を突かれたネプチューンマンは右腕と左腕のフックを外してしまい、体勢を崩す。

 

『喧嘩スペシャルも外した~~っ』

 

 自由になると同時に振り返ったマンモスマンが、今度は鼻を振るう。

 

「ノーズチョップ――ッ!」

 

『さらに長い鼻を鞭のようにしならせ、ネプチューンマンの頬を張った――っ!』

 

 強烈な打撃音が鳴り響き、ネプチューンマンが後ずさる。

 ノーズチョップにより出血した口元を拭いながら、復活したマンモスマンに向き直る。

 

「グウウ~~ッ、やはりやつを黙らせるには強力無比な一撃を叩き込むしかないか――っ」

 

 マンモスマンのタフさを痛感しながら、ネプチューンマンは次の戦略を練る。

 そのとき――

 

「ネプチューンマーン!」

 

 背後から自身を呼ぶ声が聞こえ、ネプチューンマンはマンモスマンに背を向けた。

 左腕を高らかに上げ、最も得意とする技の名を叫ぶ。

 

喧嘩(クォーラル)ボンバー!」

 

 マイケルの首をふっ飛ばしたネプチューンマンの必殺技(フェイバリット)だが、そこに攻撃対象はいない。

 左腕による豪腕ラリアットは空を切る。

 

『あ――っとどうしたネプチューンマン!? マンモスマンが立つ位置とは別方向に喧嘩ボンバーを放つ――っ!』

 

 困惑する観戦者たち。

 ネプチューンマンはなにも乱心したわけではない。

 この一撃にも意図はある――ツープラトンのセットアップという大事な意図が。

 

「トア――ッ!」

 

 リングの外から飛び込んできたのは、体力回復に努めていたセイウチンである。

 ネプチューンマンが高く掲げた左腕を両手で掴み、飛びついた勢いのままぐるりと回転していく。

 ネプチューンマンもまた、セイウチンの回転を手助けするように腕を回した。

 

『ネプチューンマンの左腕にセイウチンが飛びかかり、それを鉄棒に見立てて大車輪~~っ!』

 

 ダイヤモンド・アームと呼ばれたネプチューンマンの左腕を軸に回転するセイウチン。

 生じた遠心力は凄まじく、この状態でネプチューンマンが大きく腕を振ればどうなるか。

 

「くらえ! セイウチン・ロケット――ッ!」

 

 まさしくロケットの名に相応しい勢いで、セイウチンがネプチューンマンの左腕から射出される。

 狙いはもちろん、背を向けたことで油断しているマンモスマンだ。

 

『こ……これは! ジ・アドレナリンズのタッグフォーメーションAを彷彿とさせるパートナー投擲技だ――っ!』

 

 セイウチンは空中で鮮やかに身を翻し、両足が前に来るように姿勢を制御。

 

「オラは幼い頃から故郷・アイルランドの海で……蹴りだけででけぇクジラを捕まえてきたんだ!」

 

 ネプチューンマンによって投げ放たれたセイウチンは、まるで熟練の漁師によって投げ放たれた銛。

 クジラに比肩するほど強大な超人を仕留める技として、セイウチンは最も自信のある蹴りを選んだ。

 

「喧嘩ボンバーの勢いも乗っけたこの一撃なら~~っ!」

 

 セイウチンの脳裏に、超人オリンピック・ザ・レザレクション第2競技“だるま落としでドン!”のときの悪夢が蘇る。

 もうあのときのような失態は犯さない。

“ネオ・イクスパンションズ”のひとりとして、このネプチューンマンとの合体技は必ず成功させてみせる!

 

「メガトンドロップキック――ッ!!」

 

 銛の如き一撃はマンモスマンの胸元を穿つ。

 

『セイウチン復活――っ! マンモスマンの巨体をふっ飛ばした――っ!!』

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