ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

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第047話 大暴走!血を求める牙!

 メガトンドロップキック。

 セイウチンの超人レスラーデビュー戦――“d・M・p(デーモンプラント)”の対MAXマン戦で放った初撃が、この技だった。

 自らのルーツとも呼べる自慢の蹴りを、大先輩とのコラボレーションでさらに強化したのだ。いかに相手がマンモスマンといえどダメージを与えられぬはずがない。

 

『ネオ・イクスパンションズ、喧嘩(クォーラル)ボンバーを加速装置にしてセイウチンを射出するという仰天ツープラトンを披露! マンモスマンの巨体をふっ飛ばした――っ』

 

 超加速メガトンドロップキックでマンモスマンへの反撃を成功させたセイウチン。

 攻撃後軽やかに着地し、ネプチューンマンを背後に置いて言う。

 

「おかげさんでだいぶ休めただ。こっからはオラがいく」

 

 序盤で猛攻を食らってしまったセイウチンに任せていいものか、と一瞬ためらうネプチューンマン。

 しかし復活したその背中に頼もしさを感じ、若き戦士に懸けてみたくなった。

 

「獣性は抑えろよ、セイウチン」

「わかってるだ」

 

 セイウチンは勇ましく頷いた。

 

「パゴ――ッ!」

 

 一方のマンモスマンは怒り心頭、ゴリラのようなドラミングを見せ、セイウチンを迎え撃とうとする。

 だが、そのときマンモスマンの頭上を黒い影が通り過ぎた。

 

『あ――っとマンモスマンの頭を跳び箱のように跨ぎ、ウォーズマンが前に躍り出た――っ』

 

 ウォーズマンがリング外から中に飛び入り、マンモスマンの眼前に立つ。

 

「ここは正義超人の先達として、オレが相手をする。マンモスマンよ、おまえは下がっていろ」

 

 ウォーズマンは諭すように言い、マンモスマンを下がらせる。

 

「パオ……」

 

 指示どおり引き下がりはしたものの、マンモスマンの顔には不満がにじみ出ていた。

 

『さあ――っ、リング上はセイウチンvsウォーズマンの様相だ――っ』

 

 先ほどは陰湿なチョークスリーパーを受け、さんざんパートナーを侮辱されたセイウチンである。

 今度は自身が得意とする蹴り技で勝負するべく、スタンディングで距離を詰めていく。

 

「セイッ!」

 

 直線軌道で正面に蹴りを出す。

 狙いは相手の前面。

 だがウォーズマンは最小限の動きで体を後ろに反らし、セイウチンの蹴りを回避した。

 

『セイウチン、隙のない前蹴りの連打! ウォーズマンはそれをスウェーで巧みに躱していく――っ』

 

 セイウチンのフットワーク、蹴りそのもののリーチ、仕掛ける際の癖、長い超人レスラー人生で培ってきた試合勘……そしてなにより、ファイティング・コンピューターの異名を取るほどの高度な分析・計算能力。

 ありとあらゆる情報をまとめ導き出した結論のもと、ウォーズマンはセイウチンの攻撃を捌いていく。

 

「蹴り技に自信があるようだなセイウチン。しかしストロングポイントとウィークポイントは表裏一体……いかに自信があれど、連発は避けるべきだ」

 

 ウォーズマンは指導者のように言い、セイウチンが躍起になって繰り出した前蹴りを両手で捕獲した。

 

「でないと、こうなる」

 

 セイウチンの額から冷や汗が垂れる。

 

『ウォーズマン、セイウチンの蹴り足をキャッチした!』

 

 実況が告げる頃にはもう、ウォーズマンは次のアクションに移っていた。

 セイウチンの足を背負うように引き、体ごと後方へ。

 

『一本背負いで投げる――っ!』

 

 一撃必殺の投げ技でキャンバスに叩きつけられるセイウチン。

 と、思いきや。

 

「まだまだ――っ!」

 

 セイウチンは両手で受け身を取り、それをバネのようにして跳ね上がった。

 一本背負いを仕掛けたばかりのウォーズマンの顎に、揃えた両足を叩き込む。

 

『セイウチン、倒立しながらのキックでウォーズマンを突き飛ばす――っ』

 

 思わぬ反撃をくらい後退するウォーズマン。

 その隙にセイウチンは体勢を整える。

 

「オラは蹴り技だけじゃねえ――っ!」

 

 繰り出すのは、ここ数日間で鍛えに鍛え上げてきた左腕。

 偉大なるパートナーとのツープラトンに見合う業物を目指し磨いてきた逸品だ。

 

『あ――っとセイウチン、ネプチューンマン印の喧嘩ボンバーだ――っ!』

 

 駆け込みながらの左ラリアットが、隙だらけのウォーズマンを襲う。

 あるいは、ネプチューンマンほどの爆速ボンバーならどうしようもなかったかもしれない。

 残念ながらこのセイウチンの喧嘩ボンバーには、速度が足りなかった。

 

「コーホー」

 

 ウォーズマンは命中する寸前で高く跳躍。

 

『ウォーズマン、これを冷静に避け……』

 

 たった今ウォーズマンがいた地点をセイウチンが通過。

 その頭上から、ジャンプで回避したウォーズマンが飛来。

 

『セイウチンの肩に飛び乗った――っ』

 

 傍目には肩車のようにも見える両者の体勢。

 しかしウォーズマンは両脚をセイウチンの両脇に引っ掛けてバランスを取り、振り落とされないようにしていた。

 

「あ……ああ~~っ! あれはまずい――っ!」

 

 既視感のある光景に、客席のミートくんが叫ぶ。

 彼にとっては忌まわしき記憶として残る技――そのセットアップが、この肩車だったからだ。

 

「コ――ホ――ッ」

 

 ウォーズマンは一際高い呼吸音を発し、セイウチンの頭部に肘打ちを入れる。

 肩車状態になることで絶妙な位置に頭が置かれ、なおかつ相手は両脚のフックによって両腕を封じられているため、肘打ちが入れ放題となるのだ。

 

『ウォーズマン、セイウチンの肩に乗ったまま右と左でリズム良くエルボーを落としていく――っ! 我々はこのシーンを過去に見たことがあるぞ――っ!』

 

 一部の格闘技では禁じ手にもされるほど強力な技であるエルボーを、頭部に連続して叩き込むという凶悪な技。

 超人レスリングファンなら知らぬ者はいないウォーズマンの必殺技(フェイバリット)に、超人レスリングオタクのカオスは息を呑んだ。

 

「あれは……第21回超人オリンピック・ザ・ビッグファイト決勝でキン肉マンに仕掛けたウォーズ・ピストンエルボー!」

 

 ウォーズ・ピストンエルボー。

 未来では暴風雨(ストーム)エルボー、異なる歴史を辿った世界ではエンパイヤーエルボースタンプとも呼ばれる。

 かつてキン肉マンを苦しめた狂気の技は、出血不可避の残虐殺法だった。

 

「グアッ」

 

 セイウチンに取れるのは“耐える”というただひとつの行動のみ。

 だがその一点こそが至難の業。

 ウォーズマンの重量を支える脚はへなへなと折れ、キャンバスに膝がついた。

 そして頭部からは――鮮烈なる赤が。

 

『セイウチンの頭部から鮮血が吹き出す――っ』

 

 ガツーン! ガツーン! という肘を落とすリズムに合わせ、セイウチンの血が飛び散る。

 それは足もとのキャンバスに、リングの外に、エプロンサイドで試合を見守っている超人にまで届いた。

 

「パ……パゴッ……」

 

 マンモスマンは自分の頬に飛び散った血を舐め取り、意味深に目を細める。

 その決定的瞬間を目撃したネプチューンマンは叫ぶ。

 

「やめろ――っ! ウォーズマン! これ以上セイウチンに血を流させるのは――っ!」

 

 危険な兆候を感じ取ったからこその警告。

 しかしネプチューンマンの意図がウォーズマンに正しく伝わることはない。

 

「年老いて刺激に弱くなったか? ネプチューンマン。正義超人同士とはいえ、真剣勝負に流血はつきもの……敵に手加減を懇願するくらいならおとなしく隠居でもしておくんだな」

 

 言葉の裏を読もうともせず額面どおり、あまりにも額面どおりに受け取るウォーズマンに、ネプチューンマンは苛立ちを覚えた。

 

「そうじゃねえ! セイウチンの血は今大会最凶の魔獣を呼び覚ます引き金となる……おまえは自分で自分の首を絞めているんだ――っ!」

 

 ネプチューンマンは必死の形相で危険性を訴えるが、ウォーズマンはエルボー落としをやめない。

 冷徹な表情でかつてのライバルを一瞥するのみだ。

 

「つまらんハッタリだ。同じ現役伝説超人(レジェンド)としておまえには一目置いていたが……失望したぞ、ネプチューンマン」

 

 態度こそ違うが、その視線はネプチューンマンのことをロートル老害ジジイなどと貶したスカーフェイスのものに似ていた。

 要は必死の訴えも老いぼれの戯言としか思っていないのだ。

 

「なにも知らねえで偉そうに~~っ」

 

 言っても無駄だと察したネプチューンマンは、ロープを飛び越えリング内に入る。

 

『あ――っとネプチューンマン、ノータッチで乱入か――っ!?』

 

 ルールを無視してでもウォーズマンの攻撃をやめさせる。

 そう決意した上で走り出すが――

 

 ドスッ!

 

 ネプチューンマンが到達するよりも先に、異変が起こった。

 突き刺すような刺突音が、セイウチンの背中から響いてきたのである。

 

『な……なんだ~~っ!? セイウチンの体がなにか鋭利な2本の突起によって刺し貫かれている~~っ!?』

 

 鋭い西洋剣のようなそれは、リングの外側に立つ超人の顔面から伸びている。

 

『こ……これは、マンモスマンの牙だ――っ!』

 

 普段は反り返っているマンモスの牙を、直線上に伸ばす必殺技“ビッグ・タスク”。

 マンモスマンはセイウチンがウォーズ・ピストン・エルボーで身動きが取れないのをいいことに、無防備な背中にそれを突き刺したのだ。

 先ほど頬に飛んできた新鮮な生き血……それを直に啜るために。

 

「パゴア、パゴア」

 

 セイウチンの血がビッグ・タスクを伝ってマンモスマンの口まで運ばれていく。

 赤い液体が舌の上まで到達し、マンモスマンは美食を堪能するように笑んだ。

 そう――まるで「ウメーウメー」と言い出しそうなほどに。

 

「なにをやっている、マンモスマン!?」

 

 ウォーズマンが叱り飛ばすと、マンモスマンはハッと我に返った。

 

「ち……違う。これはビッグ・タスクが勝手に……」

 

 嘘ではない。

 マンモスマンのビッグ・タスクは相手超人の血や汗に反応し自動的に動く性質がある。

 だが今回の場合、マンモスマンは言い訳ができないほどに口内の鮮血を味わってしまった。

 

「血の味……セイウチンの……」

 

 これをもっと味わいたい。

 マンモスマンは本能に従い、吠えた。

 

「パゴ――ッ!」

 

 ビッグ・タスクをセイウチンの背中から引き抜き、ロープを跨いで本体のもとへ向かう。

 今度はより大胆苛烈に、セイウチンの体を真っ二つにして鮮血をシャワーのように浴びたいと思った。

 

『あ――っとマンモスマン、リングに飛び入りセイウチンに襲いかかる――っ!』

 

 そんな暴挙を、ウォーズマンが許すはずがない。

 セイウチンの肩から降り、ローリング・ソバットでマンモスマンの襲撃を防ぐ。

 

『ウォーズマン、暴走するパートナーを蹴飛ばしそれを制した――っ!』

 

 蹴り飛ばされたマンモスマンは再びロープ際まで追いやられる。

 ウォーズマンは血気盛んな弟子を諭す師のような、厳格な雰囲気をまとい言う。

 

「マンモスマンよ、今リングで闘っているのはオレとセイウチンだ。そこにノータッチで乱入することはルールに反する」

 

 それでなくとも、リング外から牙を伸ばし攻撃するなど卑怯極まりない。あんなものはツープラトンとも呼べないだろう。

 あとで厳しく言っておかなければな……という怒気を込めて、ウォーズマンはマンモスマンを()めつける。

 

「おまえはそこでおとなしくしていろ」

「パゴォ……」

 

 チームリーダーの放つ迫力に気圧され、マンモスマンはしゅんとする。

 ウォーズマンはセイウチンに向き直り、右手を構えた。

 拳を作り、装着する手甲から4本の鋭い爪が飛び出す。

 

『お――っとウォーズマン、伝家の宝刀ベア・クローを抜いた! セイウチンに追い打ちをかけるつもりか――っ!?』

 

 ウォーズマンという超人を象徴する凶器“ベア・クロー”。

 先に行われた一回戦“チーム・コースマス”戦ではメテオマンに痛手を負わせ、さらにスプートニックマンをベア・クローを要とした必殺技スクリュー・ドライバーでKOしてみせた。

 

 これをセイウチンに対してどう使うつもりか――と観衆が息を呑む。

 しかし、刃はセイウチンには向けられない。

 ウォーズマンは突き出したベア・クローで、己の胸部を裂いたのだ。

 

『な……なんとぉ――っ! ウォーズマン、ベア・クローで自らの胸を傷つけた――っ!』

 

 突然の自傷行為に観客がどよめきの声を上げる。

 ウォーズマンの表情が苦痛に歪む。しっかりとダメージを受けている証だ。

 ロボ超人とはいえど肉も骨もある体。ベア・クローで傷つけた箇所から鮮血が飛び散った。

 

「パートナーの不始末はチームリーダーであるオレがつける。許せセイウチン」

 

 マンモスマンのルールを無視した凶行に対し、ウォーズマンは詫びを入れる。

 まだ赤ん坊のような彼に正義超人としてのフェアプレー精神を教えるため、我が身を犠牲にしたのだ。

 

「ウォーズマン、あんた……不器用だ」

 

 セイウチンは苦笑し、立ち上がる。

 これが伝説超人、ウォーズマン。

 実際にリングで立ち会ってみれば厳しさばかり目立つが……どうしてどうして、優しさが隠しきれない超人だ。

 尊敬できる――だからこそ、こちらも誠心誠意挑むのが礼儀だと思った。

 

『血まみれのセイウチン、しかしその闘志は今だ衰えていない――っ』

 

 ファイティングポーズで向き合うセイウチンとウォーズマン。

 そんなふうに盛り上がるふたりに対し、ネプチューンマンは怒声を浴びせる。

 

「格好つけてるんじゃね――っ!」

 

 主にウォーズマンに――いいや。

 自分勝手な美学で血まみれになったバカウォーズマンに対してだ。

 

「ウォーズマン! おまえのやることはすべて裏目になっているんだ! この試合に流血及び残虐ファイトは厳禁……取り返しのつかないことになるぞ――っ!」

 

 もはやなりふり構ってはいられないとばかりに声を張り上げるネプチューンマン。

 

「なにを言っている」

 

 ウォーズマンはいよいよわけがわからなくなり、首を傾げる。

 そんなウォーズマンの背後から、巨大な影が忍び寄った。

 

「ああ~~っ! ウォーズマン、後ろ――っ!」

 

 正面に立っていたセイウチンがそれを目視し叫ぶ。

 ウォーズマンは咄嗟に振り返ったが、遅い。

 彼の眼前には、マンモスマンの巨大な足裏が迫っていた。

 

「タッチだ! ウォーズマン!」

 

 マンモスマンのキックがウォーズマンの顔面を体ごとふっ飛ばす。

 

『マンモスマン、なんとパートナーのウォーズマンに背後から襲いかかり、ビッグブーツでタッチ交代を宣言した――っ!』

 

 パートナーからのまさかの不意打ちに対応できず、ウォーズマンはダウンしてしまう。

 マンモスマンは相方のダウンなどお構いなしといった感じに敵へと向かっていく。

 その敵とは、もちろんセイウチンだ。

 

「ビッグ・タスク!」

 

 口の両端にある牙が真っ直ぐに伸びる。

 

『そしてまっすぐ伸ばした牙でセイウチンに襲いかかる――っ!』

 

 ウォーズマンを蹴り飛ばしての強制交代――これがネプチューンマンの言っていた裏切りか!

 セイウチンは緊急事態を察し、マンモスマンを止めるべく飛び上がった。

 目には目を、歯には歯を――

 

「牙には……牙!」

 

 ただジャンプして回避するだけでは、マンモスマンのビッグ・タスクからは逃げられない。

 ならば食い止める。

 

「セイウチ・トゥース!」

 

 セイウチンは自慢の牙を使い、マンモスマンのビッグ・タスクをガチッと咥え込んだ。

 

『セイウチン、自身の牙でマンモスマンの牙を挟み止めた――っ!』

 

 ビッグ・タスクを止められ、ぎょっとするマンモスマン。

 このままアイルランドの海獣たちと渡り合ってきた咬合力でもって、へし折ってやるだ!

 そんな意気を込めて力を振り絞るセイウチンだったが――

 

「い……いかーん!」

 

 その攻防を見ていたウォーズマンが尋常でないほど汗を流し叫ぶ。

 マンモスマンのビッグ・タスクを口で挟んで止める。

 一見有効そうな対策は、しかしとんでもない罠が仕掛けられているのだ。

 

 あの忌まわしきキン肉星王位争奪サバイバルマッチ決勝直前。

 竹藪特訓中に襲撃してきたマンモスマンとの闘い――否、トラウマが、ウォーズマンの身を縛った。

 

「ビッグ・タスク・ドリル――ッ!」

 

 マンモスマンが叫び、2本のビッグ・タスクがまさしくドリルのように回転する。

 そんなものに噛みついていた獣がいたとしたら、どうなるか。

 どれだけ強靭な牙を持っていようが、丸ごとズタズタになるのは自明の理。

 

「ウギャア――ッ! ネプチューンマーン!!」

 

 セイウチンの断末魔が上野動物園に響き渡った。

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