ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

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第005話 イクスパンションズ、再デビュー!

『さあ、いよいよ始まりました“究極の超人タッグ・トーナメント”! リングの上には宇宙中より集った強豪チームばかり~~っ! しかしこの中で黄金に輝く超人タッグトロフィーを引き抜き歓喜の歌を唄えるのはたった1チームだけなのです! なのに多い! あまりにもタッグチームが多すぎる! 事態を憂いだ宇宙超人委員会委員長ハラボテ・マッスル氏は全16チームでの間引きバトルロイヤルを提案! ルールはKO(ノックアウト)かギブアップを取られたチームは1チームずつ抜けていき、最終的に4チームが抜けたところで終了となります! メインリングとサブリング、隣り合うふたつのリングを戦場に行われる“究極の超人タッグ出場チーム選定間引きマッチ”のゴングが今……鳴らされた――――っ!』

 

 間引きバトルロイヤル。

 大会運営の最高責任者にして宇宙超人委員会委員長、ハラボテ・マッスルが急遽発表したスペシャルマッチ。

“究極の超人タッグ戦”エントリーした全16チームを12チームまで減らすという趣旨の大乱闘が、両隣に配置されたふたつのリングで展開される。

 

 その渦中に置かれた未来からの使者、キン肉万太郎ら新世代超人(ニュージェネレーション)の面々は、時間超人コンビ“世界五大厄(ファイブ・ディザスターズ)”――ライトニング&サンダーのふたりを取り囲んでいた。

 

「新世代超人軍の皆さん! ケビンマスクの命を救うためには四の五の言ってられません! この際、他のチームは無視してみんなで力を合わせ悪衆・時間超人を倒すんです! こんな千載一遇のチャンス! 二度と訪れませんよ――――っ!!」

 

 バトルロイヤルというルールを活かし、新世代超人が結託して標的であるライトニングとサンダーを袋叩きにしてしまおうという作戦である。

 作戦を提案したミートはリング外から万太郎たちに檄を飛ばすが、試合は彼の目論見通りにはいかなかった。

 トロフィー球根(バルブ)を狙い集まった知られざる強豪タッグチーム、新世代超人たちの事情などなにも知らない輩が好き放題に暴れ、思うように共闘できないのだ。

 

「ああ~~っ、時間超人を倒す最大のチャンスだったのに~~っ」

 

 作戦失敗を悟ったミートが頭を抱える。

 最初から共闘に参加しなかった男がひとり、若き知将を冷静に諭した。

 

「作戦はご立派だがな、ミートよ……伝説超人(レジェンド)と新世代超人がいがみ合い、トロフィー球根を狙う他の強豪タッグが犇めくこのバトルロイヤルでは、ちと無謀な挑戦だったな」

「ネ……ネプチューンマン」

 

 ミートの計画は理想に寄りすぎており、実現性が薄い。

 もちろん前回の経験からこの作戦が上手くいかないことを知っていたネプチューンマンは、物知り顔でアドバイスを放る。

 

「それよりも、オレはトロフィー球根狙いの有象無象共を間引き、正義超人による時間超人包囲網を完成させることに注力すべきだと思うぜ~~っ」

「た、たしかにそうかも……」

 

 そう、このバトルロイヤルの目的はあくまでも間引き。

 ここは後々の闘いを有利に進めるためにも、趣旨通り邪魔者となるタッグチームを排除すべきだ。

 

 そうこうしている間にも、バトルロイヤルは進んでいく。

 

「マッスル・ドッキング――――ッ!!」

 

 キン肉マン&テリーマンの“ザ・マシンガンズ”が、ローズマン&ネオ・ショパンの“セレブリティーズ”を撃破。

 

「テディ――クラッシャ――――ッ!!」

 

 続いて謎のクマのぬいぐるみ超人コンビ“ヘルズベアーズ”が、ゴリマックス&サバンナの“ジャングル・ブックス”を撃破。

 

 あっという間に2チームが間引かれた。

 セレブリティーズもジャングル・ブックスも、ネプチューンマンが経験した“前回”で早々に間引かれた2チーム。KOした側もザ・マシンガンズとヘルズベアーズで変わらない。

 つまりミートの作戦が失敗したことも合わせ、まったく同様の試合展開なのである。

 

(オレの辿った歴史では、このあとライトニング&サンダーの“世界五大厄”がマスターシャッフル&字・アルファベットの“イリュージョンズ”を抹殺……さらにその後、オレとセイウチンがイリューヒン&バリアフリーマンの“火の玉飛爺隊”を間引くことになるのだが……今回はそうはいかねぇ。時間超人包囲網完成のためにも、イリューヒンとバリアフリーマンには生き残ってもらわねばな)

 

 よく歴史は繰り返すというが、少なくともこの間引きバトルロイヤルにおいてはネプチューンマンの行動しだいで結果が変わる。イリューヒンとバリアフリーマンへの敵意がない以上、あのふたりを間引く展開にはならないのだ。

 では代わりにどのチームを間引くべきか。

 ここはやはり、時間超人を目の敵にしている新世代超人や伝説超人以外のタッグから選ぶべきだろう。

 

(デーク・棟梁&プラモマンの“地獄のカーペンターズ”はダメだ。やつらは万太郎とカオスの成長に一役買っていたからな。ここは早期退場しても影響の少なそうな“鬼哭愚連隊”か“チーム・コースマス”あたりにご退場いただくか……)

 

 前回の“究極の超人タッグ戦”はネプチューンマンとしては悔しい結果に終わったが、途中経過がすべて悲惨だったかといえばそうではない。特に万太郎とカオスの成長については対戦相手に恵まれた部分も大きい。地獄のカーペンターズは間引くべきではないだろう。

 鬼哭愚連隊はロビンマスクとテリー・ザ・キッドを苦しめたがそれだけ、チーム・コースマスにいたってはヘルズベアーズの噛ませ犬だ。歴史を変え、新たな間引きチームを選定するならこのあたりだろう。

 

(だが双方ともに実力のあるタッグチームであることに変わりはない。後々のことを考えるなら、セイウチンにはもっと手頃な相手で経験を積ませたいところだ。だとすれば……適任はあいつらだな~~っ)

 

 ネプチューンマンの目が光る。

 その視線はあるふたりの超人に向いていた。

 

 無数のトランプを組み合わせたボディを持つ巨漢超人、マスターシャッフル。

 全身にAからZまでのアルファベットを貼り付けた超人、字・アルファベット。

 

 タッグ名はイリュージョンズ。

 前回の間引きバトルロイヤルでも退場したチームだが、その際は時間超人の餌食となった。

 今回も同じく退場してもらうことに異存はないが、どうせならセイウチンの成長の糧となってもらおうではないか。

 

「仕掛けるぞ、セイウチン。標的はイリュージョンズだ」

「オオ!」

 

 ネプチューンマンはセイウチンに声をかけ、息を合わせてイリュージョンズに飛びかかる。

 両足を突き出す形で体重を乗せ、思い切り蹴り飛ばす。

 

『あ――っと、ネプチューンマン&セイウチンのダブルドロップキックがイリュージョンズのふたりを強襲~~~~っ! マスターシャッフルと字・アルファベット、ふたりまとめてふっとばされたぁ――――っ!!』

 

 先制のドロップキックは見事に決まったものの、さすがに一撃KOには至らない。

 マスターシャッフルも字・アルファベットもすぐに起き上がり、ネプチューンマンたちに向き直った。

 

「ジジジ……光栄だぜ。ネプチューンマン……いやさ喧嘩男(ケンカマン)。同じイギリスの強豪超人であるあんたにライバル視されるとはなぁ~~っ」

 

 字・アルファベットが顔面の“A”を向け、ネプチューンマンに敵愾心を飛ばす。

 まだ完璧(パーフェクト)超人にすらなっていない頃の懐かしい名を呼ばれ、しかし彼の心は揺らがなかった。

 

「なんだ同郷だったのか? あいにくオレはおまえなんぞ知らんが」

「な、なにを~~っ」

 

 ネプチューンマンのあからさまな挑発に憤る字・アルファベット。

 一方、セイウチンはマスターシャッフルと両手を握り合い手四つの体勢になっていた。

 

『同じイギリス超人のネプチューンマンと字・アルファベットが睨み合う中、互いのパートナーであるセイウチンとマスターシャッフルは手四つとなり激しい力比べを行っております! 巨漢超人であるマスターシャッフルに対し、セイウチンこれはさすがに不利かぁ――――っ!?』

 

 体格差ではマスターシャッフルが有利。

 しかしセイウチンに怯む様子はない。

 

「いけるか、セイウチン!?」

 

 パートナーに声をかけるネプチューンマン。

 対し、セイウチンはその声に圧倒的なパワーを見せつけることで応えた。

 

『な、なんとぉ――っ!? セイウチン、262センチもあるマスターシャッフルの巨体を持ち上げた――っ!!」

 

 手四つの体勢からマスターシャッフルの巨躯を腕の力だけで浮かせるセイウチン。

 マスターシャッフルの身長は262センチ。しかしながら体重は72キロと巨体に見合わぬ軽さなのだ。

 

「こ、このマスターシャッフルという超人、図体はデカいけど体重はそんなでもねぇ~~っ。こんなもんなら……ちょちょいのちょいだぁ――っ!」

 

 セイウチンはかけ声とともにマスターシャッフルを投げ飛ばす。

 キャンバスに叩きつけられたマスターシャッフルはその衝撃に喘ぎ、身動きが取れない。

 

「グッ……こいつ」

 

 苦しそうなマスターシャッフルの様子を見て、ネプチューンマンは思わず手を叩いた。

 

「ホッホ~~ッ! 見た目通りペラペラの紙! やはりオレの読みは正しかった!」

 

 仰向け状態でキャンバスに倒れる敵超人など、まさに格好の的。

 ネプチューンマンは即座に飛び、右足を水平に伸ばした状態でキャンバスへ落下する。

 

『セイウチンが投げたマスターシャッフルの首に、ネプチューンマンが追い打ちのギロチン・ドロップ――ッ!!』

 

 断頭台の刃の如き右足がマスターシャッフルの首を刈り取った。

 

「ペラペラ~~ッ!」

 

『マスターシャッフル、これはたまらない――っ!』

 

 首、そして喉を強打され、のたうち回るマスターシャッフル。

 パートナーが受けた攻勢を前に、字・アルファベットはさらに憤った。

 

「調子に乗るなよセイウチ野郎――ッ!!」

 

 標的をネプチューンマンからセイウチンへ変更し、殴りにかかる。

 字・アルファベットの得意技“殺人PUNCH”をセイウチンに見舞おうとしていた。

 

 だがセイウチンは動揺もなく、接近してくる字・アルファベットに合わせて跳躍。

 

『なんとセイウチン、ジャンプして……字・アルファベットのアタックをかわした――っ!』

 

 そのまま字・アルファベットの肩に着地し、肩車のような体勢になる。

 セイウチンはさらに字・アルファベットの首を両足でクラッチし、体重を後ろに傾けた。

 

『セイウチン、自らの体を字・アルファベットの背中側に倒し、その勢いのまま両手で相手の両足を刈り体勢を反転させた――っ!!』

 

 上下逆、背中合わせに輪のような形を取るセイウチンと字・アルファベット。

 ここから繰り出されるのはセイウチンの得意とする必殺技(フェイバリット)だ。

 

「ダブリンのつむじ風――っ!」

 

 ぐるりと一回転したことで字・アルファベットの頭はキャンバスに叩きつけられる。

 

『字・アルファベットの脳天がキャンバスに突き刺さった――っ!』

 

 セイウチンの見事なカウンターに口笛を吹くネプチューンマン。

 たった数秒の攻防で、イリュージョンズのふたりは揃ってキャンバスの上に転がることとなった。

 

「ジジジ――ッ」

「シャラシャラ~~ッ」

 

『これは“イリュージョンズ”、脱落濃厚か――っ!? まさか新世代超人・セイウチンがここまでやるとは――っ』

 

 3組目の脱落者が出そうになり、実況や観客の注目がネプチューンマンたちに注がれる。

 イリュージョンズもこのまま敗退するのを良しとするつもりはないのか、意地を見せ立ち上がった。

 

「グゥ~~ッ、シャッフルよ……ここは」

「おお~~っ、任せろ相棒」

 

 パートナーに合図を出す字・アルファベット。

 わずかなアイコンタクトでマスターシャッフルは動き、自分たちが立つリングとは別の、もう一方のリングに向き直った。

 

「シャッフル・ボディ――ッ!」

 

 マスターシャッフルの巨体が崩れ始める。

 

『あ――っとマスターシャッフル、トランプの集合体で組み上がった自分の体をバラバラにしていく――っ』

 

 彼のボディを形成するトランプの数々が、それぞれ意思を持つかのように展開。

 もう一方のリングへの架け橋となった。

 

「ビッグウェーブカード! 一時撤退――っ!」

 

 字・アルファベットはそのトランプの架け橋に飛び乗り、自身を回転。

 カードは字・アルファベットの移動を補助するように倒れていく。その様はまるでドミノ倒し。

 

『字・アルファベット、マスターシャッフルのカードの上を渡り“ネオ・イクスパンションズ”のいるメインリングからサブリングへと逃れようとする――っ!』

 

 相棒のトランプボディを利用した長距離瞬間移動術。

 だがこの技は“前回”を知るネプチューンマンには通用しない。

 

「敵前逃亡とはみっともないぜ! イリュージョンズ!」

 

 獲物を逃がすまいとするネプチューンマン。

 セイウチンの胴を後ろから抱え、そのまま後方に向かって投げた。

 

『な……なんと! ネプチューンマン、自らのパートナーであるセイウチンを投げっぱなしジャーマンのような形で放り投げた――っ!』

 

 ネプチューンマンに投げ飛ばされたことで勢いよく飛翔するセイウチン。

 あっという間にビッグウェーブカードで移動する字・アルファベットに追いつき、その頭部に蹴りを放つ。

 

「サイクロン・オーシャンキック――ッ!」

「グアガガ――ッ!?」

 

『ネプチューンマンの放り投げにより威力の増したセイウチンの蹴りが字・アルファベットを捉える――っ!』

 

 アイルランドの海で多くのクジラを沈めてきたセイウチンお得意の蹴り技。

 字・アルファベットの一時撤退はならず、先ほどよりも強くキャンバスに打ち付けられた。

 

「ジジ……ッ」

 

 されど意識はまだ潰えてはいない。もちろん闘志も。

 追撃が来る前に立ち上がり、追ってきたセイウチンとネプチューンマンに向き直った。

 

『字・アルファベット、なんとか立ち上がるがフラフラだ――っ』

 

 客観的に字・アルファベットの様子を捉える実況アナウンス。

 度重なる頭部への攻撃が、字・アルファベットの直立を困難にさせていた。

 グラつく体はあとたった一撃で永遠に立ち上がれなくなることだろう……ならば。

 

「セイウチンよ! 今こそオレたちのツープラトンを見せるときだ――っ!」

 

 ネプチューンマンは声高に言うが、隣に立つセイウチンの反応は鈍い。

 

「な、なにを言ってるだ~~っ。だからオラたちツープラトンの練習だなんて……」

 

 今日に至るまでに個人トレーニングは積んできたが、タッグとしての練習はほとんどしていない。

 ツープラトンといえば、タッグが息をピッタリ合わせることで生まれる合体技。

 結成間もないイクスパンションズがツープラトンを使いこなすなどできるはずがなかった。

 

 だがネプチューンマンは、多くは語らずただ左腕を天に掲げる。

 その仕草で、セイウチンには相棒がなにを言いたいのか理解できた。

 

「あ……ああ~~っ!! ヘラクレス・ファクトリーで習った! ネプチューンマンの代名詞的必殺技!!」

 

 ネプチューンマンの言うツープラトンとは具体的にどういう技で、どんなムーブを要求されているのか。

 事前の練習や打ち合わせが皆無であろうとも、21世紀の勤勉な超人なら直感でそれがわかってしまうのだ。

 

「そうだ――っ! このネプチューンマンとタッグを組む以上、この技以外のフィニッシュ・ストロークはありえねぇ――っ!」

 

 ネプチューンマンの叫びを、自身の考えが肯定されていると受け取ったセイウチンは、素早い動きで字・アルファベットの後方に移動。

 ふらふら立ちの字・アルファベットを挟み、ネプチューンマンとセイウチンが向かい合う形となる。

 そしてふたりとも、大げさなくらい左腕を上げ誇示していた。

 

「ウオオ――ッ!」

 

 息を合わせるためのかけ声。

 ネプチューンマンもセイウチンも、同タイミングで走り出した。

 共に左腕を構えた状態で、両者の間に置かれた字・アルファベットの首を目指して。

 

「クロス・ボンバ――――ッ!!」

 

 凄まじい衝撃音が轟く。

 正面と背後、前後から同時に繰り出されるラリアットの二重殺。

 これぞ、ネプチューンマンの代名詞とも言える必殺技にして、21世紀の超人界にも語り継がれる伝説的ツープラトン。

 

『あ――っと先の“宇宙超人タッグ・トーナメント”では“ヘル・ミッショネルズ”の必殺ツープラトンとして猛威を振るったクロス・ボンバーが、今“ネオ・イクスパンションズ”のフィニッシュ必殺技(フェイバリット)として字・アルファベットに炸裂――――っ! やはりネプチューンマンのタッグといえばこの伝家の宝刀だった――――っ!!』

 

 ふたりのラリアットは正しく字・アルファベットの首を捉え、クロス・ボンバーは完成した。

 相手の息がまだあるのを見て取り、ネプチューンマンは囁くように語りかける。

 

「運がよかったなぁ、字・アルファベット。本来ならライトニングとサンダーのふたりに殺されていたおまえが、今回はクロス・ボンバーの餌食になるだけで済んだのだから」

「な、なにを言って……」

「加えて、このクロス・ボンバーに顔の皮を剥ぐほどの威力はねぇ。おまえはマスクマンではないから狩るマスクもないしな……とはいえ、それだと決着が味気ない。よってここは、その顔面の“A”をもらおうか――っ」

 

 理解が追いついていない様子の字・アルファベット。

 もはや彼にはどうすることもできない。

 あとはただ、己がクロス・ボンバーの直撃を受けたのだと受け入れ果てるのみだ。

 

「ジジジ……ジィ――ッ!」

 

 断末魔の悲鳴があがり、字・アルファベットが吐血。

 彼の顔面に装着された“A”のアルファベットが弾けるように剥がれ、キャンバスに落ちた。

 まるで完璧超人時代のネプチューンマンが覆面狩りをしたときのように。

 

「アルファベット――ッ!」

 

 救援間に合わずパートナーが倒れるのを見届けることしかできなかったマスターシャッフルが、悲痛な叫びをあげる。

 もちろん字・アルファベットに応える力は残っていない。彼の意識は完全に葬られていた。

 

『字・アルファベットKO――ッ! これにより“イリュージョンズ”は脱落! 間引きバトルロイヤルも残す脱落チームはあと一組となった――っ』

 

 間引きバトルロイヤルではタッグのどちらかが敗れれば即敗退。字・アルファベットが落ちたことで、イリュージョンズは無念のマスターシャッフルを残し“究極の超人タッグ戦”から姿を消す。

 

 

 

「グ……グムー」

 

 3組目の脱落チームが現れた一方で、その模様を遠巻きに見ていたキン肉マンとテリーマンが神妙に唸った。

 

「マグネット・パワーが封印されたことで、ネプチューマンの代名詞であるクロス・ボンバーも封じられたと思っていたが……」

「ああ……今の一撃を見るに、その宝刀は未だ健在。新パートナーであるセイウチンとの息の合いっぷりも加味すると、相当厄介なツープラトンだぜ」

 

 先に行われた“夢の超人タッグ・トーナメント”で、ふたりともクロス・ボンバーの恐ろしさを味わっている。

 テリーマンはグレートのマスクを剥がされ、キン肉マンにいたっては左腕を切断された。

 それが帰ってきたとあれば、身の毛もよだつ思いだろう。

 

「いや、オレたちはそうは思わん」

「バッファローマンにモンゴルマン」

 

 マシンガンズのふたりとは対照的に、同じくネプチューンマンとの対戦経験のあるタッグチーム、2000万パワーズのバッファローマンとモンゴルマンは冷静にそう返してきた。

 

「ネプチューンマン、セイウチン、両者の個々のスペックに惑わされそうになるが、今のクロス・ボンバーのみを切り取って見てみれば……ビッグ・ザ・武道とマグネット・パワー有りで発動していたものとは雲泥の差。今回は字・アルファベットが虫の息だったからどうにかなったが、他の超人なら苦も無く技から脱出できただろうぜ」

 

 ヘル・ミッショネルズとして参戦していた頃のネプチューンマンが繰り出すクロス・ボンバーには、マグネット・パワーがあった。

 しかし今リングに立つネオ・イクスパンションズにはそれがない……クロス・ボンバーとしては不完全、パワーダウンしているという見方である。

 

「た、たしかに……クロス・ボンバーの厄介なところは磁力パワーによる絶対回避不能な点だ。その代用となるパワーがないのであれば、実際には労せず避けることができる……」

「21世紀ネプチューンマン……肉体強度や経験はたしかに上がっているのかもしれんが、“ヘル・ミッショネルズ”の頃よりは恐ろしくないのかもしれんのう」

 

 2000万パワーズの考察を受け、テリーマンとキン肉マンも認識を改める。

 

 

 

 ライバルたちが品定めをする一方で、イリュージョンズをくだしたネオ・イクスパンションズは次なる闘いに備えようとしていた。

 

「う……うう~~っ」

 

 が、セイウチンだけは体勢を立て直すこともせず、棒立ちのまま自身の左腕を見つめ、字・アルファベットの首を刈り取った感触を味わっていた。

 ネプチューンマンはそんなパートナーの様子を危ういと感じ、冷静に言葉で嗜める。

 

「ボンバーの余韻に浸りたい気持ちはわからんでもないが……セイウチンよ、試合はまだ続いている。とっととラスト1チームを間引いて本戦出場といこうぜ」

 

 そう声をかけた、次の瞬間。

 少し離れた位置から、おそらく観客のものと思われる悲鳴とも歓声とも取れる叫び声が聞こえてきた。

 

(なんだ? この絶叫は。向こうのリングのほう――)

 

 自分たちが立つリングとは別の、もうひとつの闘いのフィールド。

 そこではまたひとつ、間引きバトルロイヤルの決着の瞬間が訪れようとしていた。

 

 目撃したのは、時間超人サンダーがキン肉万太郎を抱えブリッジをする様。

 相方の時間超人ライトニングはブリッジしたサンダーの膝の上で倒立し、その両足を鋭利な刃物へと変化させていた。

 まるで時計の針のようなライトニングのレッグ・ニードルが……潰えた歴史ではロビンマスクの命を刈り取ったそれが、サンダーがクラッチする万太郎の心臓を貫こうとしている。

 

「あ、あ……あああ~~~~っ!」

 

 ネプチューンマンから嘆きの声が漏れ、滝のような汗が噴き出した。

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