ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ” 作:速筆魔王LX
“ネオ・イクスパンションズ”vs“ヘルズ・ベアーズ”――今度こそ決着。
決まり手はヘルズ・ベアーズのチームリーダー、ウォーズマンによるギブアップ宣言。
その決定に異を唱えたマンモスマンが暴走、ネプチューンマン、セイウチン、ウォーズマンの三者を相手取り大暴れを見せたが……最後はその3人のスリープラトンをくらい、キャンバスに倒れた。
「許せ、マンモスマン。こんな形でおまえをKOしたくはなかった……」
マンモスマンの首に喧嘩ボンバーを放ったネプチューンマンが涙する。
前回の“究極の超人タッグ戦”では、我が子のように面倒を見たこともあった幼き超人。
だが今回、彼を正しく導くことはできなかった……ネプチューンマンは歴史改変の過酷さを思い知る。
優先したのはマンモスマンという“
「セ……セイウチン!」
ネプチューンマンは倒れ伏すセイウチンに駆け寄る。
「しっかりしろ、セイウチン!」
「ウウ……」
息はあるが、危険な状態だ。
なによりも出血が酷い。顔は真っ白で意識は今にも落ちようとしている。
「ネプチューンマン……オ、オラはもう……ダメだ……」
「なにを言う! 試合はオレたちの勝利だ! 準決勝に進めるんだぞ!」
口ではそう言いながらもネプチューンマンは悟っていた。
先の試合中にウォーズマンが言ったとおり――セイウチンは限界だ。
「む……無茶を言わねえでくれだ。マンモスマンの鼻や牙にいっぱい刺されて、体は穴だらけ……内臓はグチャグチャ、口ん中はズタズタ……オ、オラはもう……リングに立つことはできねえ」
たとえここで勝利者となっても次の準決勝や決勝では闘えない。
つまり、“ネオ・イクスパンションズ”は……ここで終わる。
頭では理解しつつも、ネプチューンマンははいそうですかと受け入れることができなかった。
「バカを言うな~~っ。おまえはオレとイチバンになると言ったじゃないか――っ。二回戦を勝ち抜き……準決勝で
これでは“前回”と同じ結果になってしまう。
セイウチンとのイチバンタッグはどう足掻いてもここまでなのか? 歴史は変えられないのか?
思い詰めるネプチューンマンに対し、セイウチンは力なく笑う。
「ハ、ハハ……大丈夫だ。オラは……あんたらおっちゃんたちと違って若いんだ。イ……イチバンを目指せるチャンスはまだまだたくさんあるだよ」
精一杯の空元気だった。
若さは事実とはいえ、この怪我は確実に後遺症が残る。
未来に戻ったとて、再びリングに立ち上がれるかどうかは、正直なところ……。
「ウォ……ウォーズマン」
セイウチンはネプチューンマンのすぐそばに立っていたウォーズマンを呼びかける。
「オ……オラがここで倒れたら、ネプチューンマンのおっちゃんはひとりになっちまう。だからあんたがオラの代わりに……このセイウチンに代わって、ネプチューンマンのタッグパートナーになってほしいだ」
「なっ……!?」
その突拍子もない発言に、ウォーズマンもネプチューンマンも驚きをあらわにする。
セイウチンは我ながら名案だとでも思っているのか、不敵な笑みでふたりが闘う姿を想像した。
「フ、フフ……21世紀からやってきた現役引退ギリギリのベテランコンビ……万太郎のアニキとケビンマスクのタッグが“ザ・坊っちゃんズ”なら、あんたらふたりは“ザ・おっちゃんズ”ってところだな。に、人気が出るかはわかんねえけども……実力は誰もが認めるところ……」
ネプチューンマンの手を握り、ウォーズマンには生来の優しい瞳を向ける。
「きっと……時間超人も倒して、オラの友達を救ってくれる」
友達――ケビンマスクを助けたい気持ちを、大先輩のウォーズマンに託す。
「た……頼んだ……」
セイウチンは使命から解放された清々しさを噛みしめるように、フッと……事切れた。
「セ……セイウチ――――ン!」
ネプチューンマンが泣き叫ぶ。
セイウチンに反応はなく、呼気も伝わってこない。
「す……すぐに病院へ搬送だ!」
スタンバイしていた救急スタッフが駆け寄り、迅速にセイウチンを運び出していく。
助かるかどうかはわからない。ネプチューンマンは見送ることしかできない。
闘いしか能がない超人にできることといえば、散っていた者の意思を汲み取ることだけだ。
「ウォーズマン……」
ネプチューンマンは激闘を繰り広げたライバルに視線をやる。
ウォーズマンは黙って頷き、ネプチューンマンに同調した。
「……聞いてのとおりだ、ハラボテよ」
今大会の最高責任者に、セイウチンから託された想いを伝える。
「この試合はオレたちネオ・イクスパンションズが勝利した! しかし、我がパートナーであるセイウチンは名誉の負傷によりここで“究極の超人タッグ戦”をリタイアする! そして代わりに……ここにいるウォーズマンを新パートナーとして迎え、“
ネプチューンマンのまさかの宣言に、上野動物園特設会場にいる観衆が沸いた。
『な……なんとぉ――っ! 勝利チームのリーダーであるネプチューンマンより、タッグパートナーの交代とチーム名変更の宣言が成された――っ!』
セイウチンのリタイアとタッグパートナーの交代。
まさかの展開に、決着のゴングを鳴らしたハラボテの右腕的超人、ノックが問う。
「い……委員長! この場合は!?」
決定権を持つハラボテは難しそうに唸ったが、答えはすでに出ていた。
「むう~~っ。パートナー交代は前大会でマッスル・ブラザーズがザ・マシンガンズに……キン肉マングレートの中身がプリンス・カメハメからテリーマンに交代した前例がある。認めんわけにはいかんだろう」
前例はある。ルールブックにも抵触していない。
ハラボテは腹を決め、前代未聞の決着に対する裁定をくだした。
『よかろう! あらためて……“
この試合の勝者は、ネプチューンマン&ウォーズマン。
準決勝に進む3組目の超人タッグチームが決定し、上野動物園が沸き上がった。
◇
場所を移し、控室。
ヘルズ・ベアーズとネオ・イクスパンションズの試合を中継で見ていたチェック・メイトは、モニターに悔しげな視線を送る。
「セイウチン……試合には勝ったのに、まさかここで脱落してしまうなんて……」
悔しい――悔しいが、仕方がない。
それくらい、セイウチンが負った傷は酷いものだった。
もはや命が拾えたとしても超人レスラーとしての選手生命は拾えまい。
熱望していたライバルとの対戦は、永遠に失われてしまったのである。
「フン。トーナメントというものは複数回の勝利を積み重ねなければ真の勝者にはなりえぬもの。後先考えず目の前の一戦にすべてを費やしてしまうとは……セイウチンは戦略を誤ったのだ」
チェック・メイトと同じく控室で観戦していたパートナー、アシュラマンがつぶやく。
いかにも“魔界の
「それは違う……セイウチンがあそこで奮起しなければ、マンモスマンはさらに暴れ、ネプチューンマンやウォーズマンまでこの大会から脱落してしまう恐れがあった。セイウチンはそれよりも、己が捨て駒になってでもふたりを生かすべきと判断したんです。なによりも……打倒・時間超人とケビンマスク救命を重んじたばかりに」
新世代超人の中でも人一倍心優しい、セイウチンだからこその判断。
チェック・メイトをそれを尊重したかった。
だからこそ、悔しくは思いつつもセイウチンの行動を否定したりはしない。
しかし、アシュラマンは「フン」と鼻を鳴らした。
「正義超人……いや、未来からやってきた新世代超人の使命感とやらか。大したセンパイへのリスペクトだ。実際、マンモスマンに手も足も出なかったセイウチンよりは、ウォーズマンをパートナーに据えたほうがネオ・イクスパンションズが勝ち上がる可能性も高くなろう」
セイウチンの退場は戦略的観点から見れば成功だった――と、大事な友を軽んじられる。
「アシュラマン! あなた……セイウチンを侮辱する気ですか!?」
これにはさすがのチェック・メイトも憤り、声を荒げた。
興奮するパートナーを前に、しかしアシュラマンは小気味よく笑う。
「カーカッカ。怒るな怒るな。試合前にタッグパートナーとの不和など望んではおらん。私はただ、やつがそこまでする必要はなかった……と残念に思っているだけだ。なにせ新世代超人の標的である時間超人どもは、今から私たちが倒してしまうのだからな~~っ」
その言葉に嘘はない――アシュラマンは本当に残念そうな表情を浮かべていた。
ひょっとしたら彼もまた、ネプチューンマン&セイウチンと……自分たちと同じような
「アシュラマン……」
深く聞く意味はない。
ただ、今のアシュラマンに悪気がないことだけは確かだった。
「行くぞ」
Bブロックの第1試合が終わったということは、すぐに第2試合が始まる。
出陣するのは自分たち“ザ・ナイトメアズ”だ。
控室を出ようとするアシュラマンの背中に、チェック・メイトも続く。
「見ていてください、セイウチン。あなたとの直接対決は叶わなくなってしまいましたが……時間超人を倒し、あなたがあとを託した“新星・ネオ・イクスパンションズ”をも倒すことで、約束を果たすことにしますよ」
チェック・メイトはセイウチンにそう誓い、闘いの場へ向かう。
「行きましょう、アシュラマン! わたしたちザ・ナイトメアズの闘いに!」
「カーカッカッカ!」
チェック・メイト&アシュラマン――“ザ・ナイトメアズ”。
本来の歴史には存在しなかった異色の超人タッグコンビが、いよいよ時間超人に挑む。