ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

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第062話 準決勝へ向けて…!

“究極の超人タッグ戦”準決勝まであと2日。

 勝ち残った8人の超人のひとり、テリー・ザ・キッドはその日も練習に励んでいた。 

 

「セリャア――ッ!」

 

 拠点としている練習施設、そこに設営されたリングの上でタックルを打ち込む。

 その相手はトレーニング用のダミー人形。意思を持たぬ人形はもちろん防御も回避もしない。

 本来なら共にスパーリングしているはずの相棒、ロビンマスクは野暮用があり外出中だ。

 コンビプレーの練習はできずとも汗を流さずにはいられない、とキッドは自主練に時間を費やした。

 そんなときである。

 

「“究極の超人タッグ戦”準決勝を二日後に控えているっていうのに、人形相手にタックル練習とは格好がつかねえな」

 

 練習場の入口に、予期せぬ来訪者がやってきたのだ。

 

「だ……誰だ!?」

 

 キッドは反射的に問う。

 来訪者はポロシャツにジーンズというラフな格好をしていた。

 服装からはあまり結びつかないが、その目元が隠れるほどの長髪には見覚えがある。

 

「ヨオ、後輩くん」

 

 前髪の奥から、鋭い目つきがキッドを捉える。

 

「あんたは……ジェロニモ先生!」

 

 ジェロニモ――“リアル超人レスラー”の異名を取る正義超人だ。

 デビューはあの悪魔六騎士のひとり、サンシャインとの闘い。彼は当時人間であったにもかかわらずサンシャインをくだし、後にスーパーマンロードの試練を乗り越え正式に超人となった。

 21世紀から見ても他に例を見ない、異質な生い立ちの超人。それがジェロニモである。

 

「フッ……ついこの間、人間から超人になったばかりの若輩中の若輩であるオラが先生と呼ばれるとは……未来ってのはなにが起こるかわからんもんズラ」

 

 彼もまた、他の正義超人と同じように21世紀ではヘラクレス・ファクトリーの教官として務めている。

 キッドにとっては恩師のひとり。雑談のひとつでもしたいところだが、あいにく今は準決勝のための調整で忙しい。

 

「なぜジェロニモ先生がここに?」

 

 キッドは問う。

 ジェロニモももちろんそんなことはわかっているはずだし、冷やかしに来たとは思えないが――

 

「おまえのパートナーのロビンマスクは入院中の妻、アリサさんを看てやりたい事情がある。スパーリング相手に不自由しているのではないかと思ってな」

 

 ジェロニモに引き続き、練習場に入ってくる人物がいた。

 ジェロニモと同じくポロシャツにジーンズという格好で現れたのは、キッドと瓜二つのハンサムガイ。

 

「パパ!」

 

 実の父、テリーマンだった。

 彼の言うとおり、キッドのパートナーであるロビンマスクは現在アリサが入院中の病院に出向いている。

 スパーリング相手に不自由しているのはまさにそのとおり。それを承知の上で現れたということは。

 

「まさか、アリサさんのお見舞いに行っているロビンマスクに代わり、二人がオレのスパーリングパートナーを務めてくれるっていうのか?」

 

 テリーマンはジェロニモと共に頷いた。

 

「おまえはかつて全米を震撼させたあのザ・マシンガンズを打ち破ったんだ。是が非でも優勝してもらわなきゃ、ミーたちの価値が下がるというもの」

 

 そう言って、テリーマンもジェロニモも身につけていた服を脱ぎ始める。

 

「次の準決勝……マッスルブラザーズ・ヌーボー、新星(ノヴァ)・ネオ・イクスパンションズ、世界五大厄(ファイブディザスターズ)……いずれと当たっても苦戦は避けられまい」

「だからこそ、オラたち程度軽くひねってもらわねば困るだ」

「程度……などとは思ってもらいたくないが、まあミーたちはふたりとも怪我人だからな。1対2ならいいハンデになるだろう」

 

 その格好は、上裸にレスリングパンツ一丁のファイティングスタイル。

 テリーマン&ジェロニモといえば、“宇宙超人タッグ・トーナメント”で“はぐれ悪魔超人コンビ”と好勝負を繰り広げた知る人ぞ知る実力派デュオ。

 そんなふたりがスパーリングパートナーに立候補してくれるとあっては盛り上がらないわけにはいかない。

 

「あの“ニュー・マシンガンズ”と1対2か。これを乗り越えられたらとんでもない自信になりそうだぜ」

 

 思わず口元が緩んでしまうキッドを見て、ジェロニモが気合を入れるためにも声を張り上げた。

 

「おっと! 見くびってもらっちゃ困るだ! オラ“究極の超人タッグ戦”には参戦できなくて体力も気力もあり余ってるから……スパーとはいえガチのガチでいかせてもらう――っ!」

 

 ジェロニモはキッドがいるリングに飛び上がり、開始の合図もなく突っ込んでいった。

 

「上等――っ!」

 

 ジェロニモのしごきはヘラクレス・ファクトリーで散々受けてきた。

 キッドは怯むことなく待ち構える。

 

「ウラララ――ッ!」

 

 独特なリズムを口ずさみ、キッドの肩口に大振りのチョップを叩き込む。

 キッドは両腕を前にしてそれを防ぎ、しかしあまりの衝撃に体ごと弾き飛ばされた。

 

「グウ~~ッ、こ……これが“リアル超人レスラー”ジェロニモのトマホークチョップ。ヘラクレス・ファクトリーで教わりはしたが、全盛期の本人が放つそれはまるで別物だぜ」

 

 まさしくトマホークのような手刀を構えながら、ジェロニモは先輩風を吹かせ言う。

 

「準決勝ではキン肉万太郎のキン肉族ならではのパワフルなパンチ……時間超人サンダーの巨体を活かした蹴り……そしてなによりネプチューンマンの喧嘩(クォーラル)ボンバーといった、もっと強烈な打撃技が飛んでくるだろう。オラのチョップが捌けないんじゃ、お話にもならねえ~~っ」

 

 ジェロニモの言うとおり、勝ち残っているタッグチームには打撃技の名手が多い。

 それらを相手にすることを考えれば、まさにジェロニモとのスパーはうってつけと言えよう。

 

「わかってらぁ!」

 

 キッドは腰を落としタックルの姿勢を取るが、

 

「敵タッグパートナーの動向にも常に気を配れ――っ!」

 

 いつの間にか背後に回っていたテリーマンが、その腰を捕獲。

 サイドスープレックスでキャンバスに倒した。

 

「グッ……」

 

 まさか背後から投げられるとは思わず、キッドはテリーマンを睨みつける。

 テリーはそんな視線をものともせず、倒れたキッドの頭を踏みつけるポーズを取った。

 

「二回戦ではついつい“テキサス・フィスト・デスマッチ”に付き合っちまったが、本来のタッグ戦であんなマッチアップは起こり得ない。目の前の1人に集中してたら背後から不意を突かれてジ・エンドだぜ――っ」

 

 そう、このスパーリングは1対2。

 タッグマッチは基本2対2だが、トラブルが起きればこういった状況に追い込まれることもありえる。

 それこそ先日のアニマル・チェンバー・デスマッチのような不条理さとも闘わなければならないかもしれない。ヘクラレス・ファクトリーの同期として、セイウチンの二の舞いはごめんだった。

 

「ウオオオ――ッ!」

 

 気合一声、キッドはニュー・マシンガンズに挑みかかる。

 テリーもジェロニモも、そんなジ・アドレナリンズの若きチームリーダーを手厚く歓迎した。

 

 

 

 3人によるスパーリングはその後も続き……数時間後。

 

「よし……一息入れるか」

 

 汗だくになったテリーマンがキッドに休憩を促す。

 キッドはジェロニモに水の入ったボトルを渡されながら、ずっと気になっていたことを問う。

 

「と……ところでパパ。スグルおじさん……キン肉マンはどうしているんだ? あの幻のタッグ、ニュー・マシンガンズを見れたのは嬉しいが、本来のパートナーである彼が来ていないのは……もしかしてまだオレたち新世代超人(ニュージェネレーション)は認められないってことなのか?」

 

 この“究極の超人タッグ戦”が始まってから、テリーマンは常にキン肉マンと行動を共にしていた。

 それが不在ということは、なにか意見の相違があったのではないかと考えたのである。

 しかしながら、テリーはフッと笑う。

 

「心配するな」

 

 どこか遠くを見やり、急用があると出ていった親友のことを思う。

 

「あいつにはここより行くべき場所が……対話すべき相手がいるのさ」

 

 一方その頃、“ザ・マシンガンズ”の片翼であるキン肉マンは――

 

 

 ◇

 

 

 新宿。数年後には都庁が立つ予定の空き地にて。

 そこでは準決勝進出チームの“マッスルブラザーズ・ヌーボー”が練習に励んでいた。

 

「一等賞――っ!」

 

 練習用のリングの上で、カオスのプロレスショー仲間である一等マスクがモノマネ喧嘩ボンバーを放つ。

 

「トア――ッ!」

 

 カオスは軽やかに宙を舞い、初代グレートを思わせるマーシャルアーツ・キックで切り替えした。

 リングの別方向では、同じくプロレスショー仲間のビーフマンがモノマネハリケーン・ミキサーを万太郎に仕掛ける。

 

「ウア~~ッ」

 

 超人でもなんでもない人間の一撃。

 しかしカオスのパートナーであるキン肉万太郎は回避の際に足が竦み、なすすべもなく弾き飛ばされた。

 

「ま……万太郎!」

 

 キャンバスに転ぶ万太郎を見て、カオスは練習を中断。

 かれこれ数時間はスパーリングを続けているが、今日の万太郎は絶不調と言えた。

 

「どうしたんだ万太郎。昨日から練習に身が入っていない……準決勝は二日後に迫っているんだぞ」

 

 カオスは心配して声をかけるが、万太郎はリングの上に座り込み俯いてしまう。

 

「わかってる……わかってるんだけど……昨日のザ・ナイトメアズvs世界五大厄のことが頭から離れないんだ」

 

 万太郎は、怯えていた。

 原因は時間超人。

 今大会における最終目標、倒すべき巨悪――ではあるが。

 

「ザ・ナイトメアズの一角……アシュラマンは、ボクが過去に対戦した超人の中でも随一の実力と恐ろしさを秘めた超人だった。そんなアシュラマンが、ああも無惨にやられるなんてという衝撃が強すぎて……な、情けないことにビビってしまっているのかもしれない」

 

 先日行われた“シノバズ・ポンド・デスマッチ”。

 不忍池を舞台にしたその一戦で、万太郎史上最大の強敵であったアシュラマンが敗れている。

 あの魔界の王子(プリンス)が無惨に倒され、挙句の果てに殺されるかけるなど……現実を直視すればするほど、なにかの間違いじゃないかと疑いたくなった。

 

「こうして対時間超人を想定し練習している間も……やつらに勝てるイメージがまったく湧かないんだ~~っ」

 

 あの歴史抹消(ヒストリーイレイザー)でぶん回されたら、世界崩壊の終曲(フィナーレ)で叩きつけられたら、死時計の刻印(デスウォッチ・ブランディング)で心臓を貫かれたら……恐怖のイメージは一度頭にこびりついてしまっては簡単には消えてくれない。

 

「万太郎! そんな臆病風など……」

 

 時間超人に格別の闘志を燃やすカオスは情けないパートナーを叱咤しようとした。

 しかしその前に、彼らの立つリングに不審な影が歩み寄る。

 

「強敵を前に臆病風に吹かれるのは、父親譲りの悪癖みたいなもの。あまり言ってやるな」

 

 現れたのは、鉄鋲付きのベストにレスリングパンツ姿のマスクマン。

 

「ネプチューンマン!」

 

 ご存知、元完璧(パーフェクト)超人のネプチューンマンである。

“夢の超人タッグ・トーナメント”で鮮烈なデビューを飾り、決勝戦まで進出。この“究極の超人タッグ戦”でもついに準決勝まで上り詰めたスター超人の登場に、プロレスショーの面々は身構えた。

 

「な……なんでネプチューンマンがここに――っ!?」

「同じ正義超人とはいえ、準決勝で対戦するかもしれんチームだぜ――っ!?」

 

 ビーフマンと一等マスクがマッスルブラザーズ・ヌーボーのふたりを守るように立つ。

 いい仲間を持ったじゃねえか、とネプチューンマンは口元で笑む。

 

「そう警戒するな。別に邪魔しにきたわけじゃない……ある人物がおまえらに会いたいと言うのでな。オレは仲介をしにきただけだ」

 

 平和的にそう告げるが、万太郎とカオスにはネプチューンマンほどの超人が仲介する来客に心当たりがない。

 

「ボクたちに会いたい人物だって?」

「いったい誰なんだ?」

 

 警戒心は解かぬまま、その人物の登場を待つ。

 来客はすぐにネプチューンマンの奥から歩み寄ってきた。

 

「ハハハハッ! 21世紀の超人ってやつは見てくればかり立派で中身はとんだ弱虫みてえだな!」

 

 現れたのは豪快な笑い声の男だった。

 襟付きのシャツを男らしく肘まで袖まくりし、屈強な筋肉を覗かせている。

 肝心の顔はテンガロンハットを目深に被っており、正面からでは確認できない。

 

「なんだ~~っ、あの変なおっさんは――っ!」

「無礼じゃねえか! 名を乗のれ――っ!」

 

 こちらの神経を逆なでる言動に、警戒心をむき出しにする万太郎とカオス。

 一方で、マッスルブラザーズ・ヌーボーのふたりと行動を共にしていたアレキサンドリア・ミートくんは怪訝な表情を浮かべていた。

 

「ネプチューンマンが微かに笑っている……あの人はもしかして……」

 

 男はテンガロンハットのツバを少し上げ、隠れていた顔を見せる。

 サングラスにブタのような大きな鼻、そして厚めの唇。

 肌は浅黒いがどこか偽物っぽいというか……もしかしてクツズミだろうか?

 

「名乗るほどの者じゃねえが……」

 

 男が再び声を発し、そこでミートは気づいた。

 思い出すのは数年前のアメリカ遠征時。

 キン肉マンに帯同し巡ったあの広大な大陸で、この男の姿を見たことがある。

 いや、見たというか……すぐ隣にいたというか。

 

「ザッ・シャネルマン!!」

 

 シャネルマンと名乗った男の声は、ミートにとって最も馴染み深いものだった。

 

「あ、あ……あああ~~~っ! なにやってんですか王子――っ!」

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