ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ” 作:速筆魔王LX
――“時間超人”。
それは元々は残虐超人の突然変種。ホーラ・アヴェニールという男性を祖とし、頭に“魔時角”と呼ばれる角を宿して生まれてきた超人のことを指す。
魔時角とは、それを抜けば過去・未来あらゆる時間にただ一度だけ移動することができる、宇宙の歴史をも変えてしまえる異能。
幸いなことに祖ホーラ・アヴェニールは正義の心に溢れた人物であり、一族に魔時角を悪用することを厳格に戒めた。それでもなお魔時角の悪用を恐れたホーラは、一族を率いて宇宙の最果ての惑星に移住し、そこに王国を築きながら平和に過ごした。
ホーラ亡き後もアヴェニール王国の民たちは決して魔時角を悪用せず、その後も200年以上に渡り平穏な時代が続いた。
しかし、その平穏な時はたったふたりの邪悪な民のために一瞬にして破られた。
そのふたりというのが、“
ホーラの子孫ミニッツ・アヴェニールが治める250年後のアヴェニール王国は、このふたりによって蹂躙された。民を虫けらのように虐殺し、ついにはミニッツ王やその妻までをも手にかけたのである。
なぜミニッツ王は時間超人の特権であるタイムワープ能力を禁じるのか。
この能力を使い過去に遡れば正義超人を根絶やしにできるのに。
地球を始めとするあらゆる惑星、いや宇宙のすべてを手中にできるのに。
元をたどれば時間超人は残虐超人の突然変種、いわば悪行こそが本来の属性。
正義を押しつけるアヴェニール一族、いやエセ時間超人は殲滅すべし。
それが、ライトニングとサンダーの主張だった。
そうやってアヴェニール王国は崩壊、住まう人々は皆殺しにされた。
だがたったひとり、生き残った子供がいたのだ。
それこそが、ミニッツ王の息子にしてアヴェニール一族の末裔――カオス・アヴェニール。
当時7歳の幼い子供であったカオス。どうせひとりではすぐに野垂れ死ぬだろうとライトニングとサンダーは放っておいたが、カオスは憎しみを糧に生き抜いた。そして父と母の墓前で魔時角を抜き、過去へ
ところが、時間跳躍を果たすにはカオスは未熟すぎた。過去へは渡れたが目的の時代よりも7年早い時間軸にたどり着いてしまい、さらに無理なタイムワープの反動で記憶を失ってしまう。
それからの7年はがきんちょハウスで孤児として育ち、しかし一方で超人格闘技に並々ならぬ興味を示し始める。とりわけ正義超人――キン肉マンを始めとした20世紀のアイドル超人に憧れを抱く気持ちは年々拍車がかかっていった。
そんな折、転機が訪れる。
“究極の超人タッグ戦”開催、そしてキン肉万太郎との出会いである。
彼とタッグを組み、数々の超人と闘っていく中で、頭の片隅にあった記憶の欠片が何度も合わさろうとした。
そして二回戦の“2000万パワーズ”戦の中で、ついにカオスは決断をする。
父から託され、タイムワープの際に一緒に持ち出した“ジャッジメント・キー”を使い、失っていた記憶をすべて取り戻したのである。
過去になにがあったのか、これから自分がなにを成し遂げなくてはならないのか、それらのすべてを理解したのだ。
ライトニングとサンダーを倒し、父や母、アヴェニール王国のみんなの仇を討つ。
時間超人は悪行ではなく“正義”として生きなければいけないことを世に示す。
それこそが、正義・時間超人の生き残りであるカオスの使命なのだ――
「……ま、まさかカオスにそんな過去があっただなんて」
一部始終を聞き終えたキン肉万太郎が重苦しい雰囲気で言う。
場所は変わらず新宿。
空き地に置かれたリングの上で、万太郎、カオス、ミート、ネプチューンマン、シャネルマンがサークル状に座っていた。
明かされたカオスの壮絶な過去、ライトニング&サンダーとの因縁、そこから生じる復讐心……いずれも「大変だったね」の一言では済ませられない内容だ。
ゆえに聞き手の4人は口を噤み、懸命に言葉を探していた。
その中で、万太郎がなにかに気づき立ち上がる。
「カオス……おまえ! だから昨日、今度の闘いが最後になるかもしれないなんて言ったのか!? 自分の命を投げ出し……刺し違えてでも時間超人への復讐を果たすために~~っ!」
“ザ・ナイトメアズ”vs“世界五大厄”の試合が終わり、準決勝のアナウンスが行われた直後のこと。カオスは万太郎にそんなふうなことをこぼしていたのである。
あのときからすでに、カオスは復讐のため命を投げ捨てる覚悟だったわけだ。
もはや遠回しな言い方は無意味と察し、カオスは声高に言う。
「ああ、そうさ! オレは今日この日に至るまで、やつらへの憎しみだけを糧にして生きてきた。あいにく無茶なタイムワープのせいでここ7年ほどはそのどす黒い感情を忘れていたが、先日の2000万パワーズとの闘いでそれを思い出すことができた……オレの使命は、父や母を殺し、アヴェニール王国を滅ぼしたライトニングとサンダーに復讐を果たすことだ!」
カオスは確固たる意志を眼差しに乗せ、万太郎を見つめる。
「そのためなら、この命だって惜しくはない」
だからわかってくれ、万太郎――と、眼力で訴える。
万太郎はそんな相棒の身勝手を承服できず、顔を歪めた。
「ふざけるな――っ!」
高い位置からカオスに怒声を浴びせる。
「気持ちはわかるし、ライトニングとサンダーの非道な行いは許せるものではない……でもだからって、おまえが命を捨てる必要なんて微塵もないじゃないか! おまえを守るために死んだミニッツ・アヴェニール王や母上だって、そんなことは望んじゃいない――っ!」
万太郎もカオスと同じく一国の王子様だ。もし自分がライトニングとサンダーにキン肉族を根絶やしにされたら……きっと同じように復讐に走っただろう。
しかしだからといって、我が身を捨てて、などといった覚悟には共感できない。
だって死んでしまえばもう大好物のカルビ丼が食べられなくなってしまうし、女の子とカラオケや王様ゲームで遊ぶこともできなくなってしまう……21世紀の超人である万太郎から言わせれば、カオスの考え方はあまりに前時代的だ。
しかしカオスはそんなことは百も承知と言わんばかりに、眉ひとつ動かさずこう返す。
「万太郎らしいもっともな意見だが、そんな考えではライトニングとサンダーのふたりは倒せない」
試合中のような迫力に、万太郎は「ウッ」と言って後ずさった。
「万太郎、おまえだってさっきまでビビっていたじゃないか! 相手はおまえが最も恐れた悪魔超人・アシュラマンをも倒してのけるワル中のワルなんだぜ! 五体満足で勝ちを拾えるほど、甘い相手なわけねえだろうが――っ!」
それを言われてしまっては、もはや返す言葉がない。
万太郎の体はへなへなとしぼみ、ぺたん、と尻もちをついてしまう。
「それに……そもそもの話、オレはこの“究極の超人タッグ戦”を生きて終えられたとしても、もう長くは生きられない」
「え?」
追い打ちをかけるように、カオスはその残酷な事実を伝える。
「オレたち時間超人は年齢が15歳に達する前に魔時角を抜いちまうと、エキゾチック物質の発散が制御できず致命的な後遺症が出てしまう。しかしオレはまだ7歳の頃、両親を惨殺したライトニングとサンダーへの復讐心に燃えるあまり……勢いに任せて角を引っこ抜いちまった!」
万太郎の顔が青ざめる。
「ま、まさか……」
カオスはすでにその運命を受け入れているのか、覚悟を持った表情で続けた。
「結果、オレはタイムワープを制御できずライトニングとサンダーが現れるより7年も前の時代に飛んじまった……まあそれは不幸中の幸いとなったが、懸念されていた後遺症はしっかりオレの体を蝕んでいる。オレの体はもはやライトニングとサンダーのように新たにエキゾチック物質を生成することはできず、体内に残ったわずかな絞りカスが尽きれば……その命は尽きてしまうだろう」
最後にフッと微笑み、聞き分けのない駄々っ子を諭すような優しい声を出す。
「万太郎。おまえがタッグパートナーに誘ってくれた際に言っていた……“間隙の救世主”には、どうやったってなれないんだよ」
――“間隙の救世主”。
キン肉マンたち伝説超人が現役を引退し、万太郎たち
その人物は人知れず悪行超人を打ち倒し、人類に平穏をもたらしたとされる。
万太郎やミートはカオスこそがその救世主ではないかと考えていたが……その考察はここに来て完全否定されてしまう。
オレはもうすぐ死ぬからそれはどうやっても無理だ、と。
「そ……そんな~~っ」
万太郎はショックのあまり涙を流した。
この際“間隙の救世主”のことなどどうでもいい。
万太郎にとっては、せっかく20世紀の地で知り合えた友達がもうすぐ死んでしまうという事実が耐えられなかった。
「なるほど。どうせ長くない命なら、近く控えている復讐の闘いのためにすべて使ってしまおうってわけか」
設定上カオスとは縁もゆかりもないシャネルマンは、だからこそ無感情に話を要約する。
「そういうことだ……」
カオスは目を瞑り、深く頷いた。
シャネルマンはその隙に立ち上がり、一歩カオスに近づく。
そして――
「気に入らねえな――っ!」
その悟りを開いた賢者のような頬っ面に、容赦のない蹴りを叩き込んだのである。
キャンバスを滑るカオス。いきなり蹴飛ばされるとは思わず、受け身もなにも取れなかった。
「シャ……シャネルマン! なにをするんだ!?」
口の中が切れたか。カオスは口元の血を拭いながら、シャネルマンの暴行に抗議する。
シャネルマンはまったく悪びれることなく、カオスを見下ろしながら言った。
「大人をからかっちゃいけないぜ、ボーイ。長くは生きられない……なんてそれっぽい理由を述べちゃいるが、結局のところおまえはそれを復讐を正当化するための盾にしているだけにすぎん」
この時代のシャネルマン……いやキン肉マンはまだキン肉星の王位には就いていないが、カオスはまだ14歳の子供。比べればぜんぜん大人だ。説教をする資格は十分にある。
「正・悪にかかわらず超人には皆、生まれながらにして仲間を思いやる心というものが備わっている。時間超人だってそれは変わらないはずだ……おまえにはそれが、正義超人界でいうところの“友情パワー”が欠けている!」
シャネルマンが口にした単語に、カオスはハッとする。
「ゆ……友情パワー」
テレビでキン肉マンの試合を何度も観戦し、正義超人への憧れを強く抱くに至った一要素。
言葉の響きだけでも魅力を感じてならないそれはどういったものなのか、シャネルマンは説く。
「二日後におまえたちが挑むのは最強の超人タッグチームを決める“究極の超人タッグ戦”なんだぜ? おまえひとりが決死の覚悟で臨んだところでどうにかなるものではない……パートナーが死ぬつもりだとわかっているのに、はたしてこのキン肉万太郎が真の実力を発揮できるかな? あの悪行・時間超人どもはそんなおまえたちの些細な綻びを的確に突いてくる。そうすれば復讐は果たせず、おまえは大切な友すら巻き込んでリング上で討ち死にしてしまうのだ」
カオスは“世界五大厄”との試合を脳内で思い描く。
おそらく己は時間超人憎しの心が先行し、がむしゃらに突っ込むだろう。友達思いな万太郎は己に無茶をさせまいと、気遣いながらのファイトを強いられる。そんな隙をあのライトニングとサンダーが見逃すはずはなく、ウィークポイントとして攻略されてしまうのは明白。
「あ、ああ~~っ」
カオスは万太郎と共にリングで倒れ伏す己を想像し、顔を青くした。
シャネルマンはフンと鼻を鳴らす。
「こんな自分の都合ばかりでタッグ戦のノウハウすら忘れちまうような若僧には任せておけん。万太郎よ。今からでも遅くない。準決勝にはカオスに代わって、このザッ・シャネルマンが出てやるぜ!」
自らに親指を突きつけ、高らかに名乗り出るシャネルマン。
ふたりのやり取りを見守っていた万太郎は、まさかの提案に驚愕する。
「父上……いや、シャネルマンがボクと!?」
万太郎の胸中に興奮が去来する。
思い起こすのは二回戦第2試合、“ジ・アドレナリンズ”vs“ザ・マシンガンズ”の一戦。
テリー・ザ・キッドとテリーマンの親子対決を見たとき、万太郎が抱いた感情は羨望だった。
キッドのように、ボクも父上と本気のファイトがしてみたい――だが一方で、キッドとロビンマスクのように、新旧の垣根を越えた正義超人タッグで闘ってみたいという欲も芽生えた。
そのとき想像した相手はもちろん、実の父であるキン肉マンだ。
万太郎はなんとなく、同じリングの上にいたネプチューンマンを見やる。
彼は助言を求められていると察したのか、己の考えを口にした。
「チームリーダーはおまえだ。ザ・マシンガンズやオレとウォーズマンの
答えは与えず、選択肢をそのまま突き返す。
万太郎は続けて、カオスのほうを見た。
カオスは蹴られた頬を赤くしながら、今にも泣き出しそうな顔で万太郎を見ている。
その視線だけで、言葉は不要だった。
「魅力的な申し出だが……」
万太郎は立ち上がり、シャネルマンに向き直る。
「ボクの、マッスルブラザーズ・ヌーボーの相方はここにいるカオス・アヴェニールしかありえない。どんなに復讐心に駆られ、捨て鉢になろうとも、まとめて面倒を見てやるのがチームリーダーの務めだ」
きっぱりと自分の考えを告げ、泣きべそをかきそうになっているパートナーに手を差し出した。
「“ふたりというものはいいものだ。楽しい時は二倍楽しめ……そして苦しい時は半分で済む”」
カオスは万太郎の手を握り、彼が口にした言葉を噛みしめる。
「それは……ブロッケンJrの」
一回戦“ネオ・イクスパンションズ”vs“スーパー・トリニティーズ”の決着後、正義超人ブロッケンJrがジェイドに語ったドイツの諺だ。
彼の言葉に感銘を受けたのはジェイドだけではない。万太郎やカオスもまた、理想のタッグの在り方としてその言葉を深く心に刻みつけていたのだ。
「一緒に準決勝に出よう。しかしカオス、キン肉万太郎の名にかけて、リングの上ではおまえを絶対に死なせやしない」
万太郎はカオスの腕を引っ張り立ち上がらせる。
「ま……万太郎……」
万太郎は相棒の復讐心を否定せず、されどタッグとして在り続けることを選んだ。
カオスにとって、これほど嬉しいことはない。
キン肉万太郎は己の運命を変えた超人……この先を闘い抜くために、彼以上のパートナーはありえないのだから。
「グスッ……さすがはキン肉マンの息子だぜ」
結果的にフラレる形になってしまったシャネルマンだったが、本人は満足げだ。
それどころか少し涙ぐみ、目元のクツズミが落ちないかと気にしていた。
そんな彼に、ミートが新しいサングラスを差し出す。
「もっと色の濃いサングラスのほうがいいと思いまして」
泣いているのがバレないように、と。
シャネルマンは一瞬サングラスを外し、ミートが用意してくれた色の濃いサングラスに付け替える。
「ありがとうミート」
絶縁状態になっていたシャネルマンとミートの間にも、関係修復の機会が訪れた。
盛り上がる4人を微笑ましげに眺め、ひとり座っていた男がどっこらしょと立ち上がる。
「さて……話もまとまってきたところで、少し現実的な提案をしようじゃねえか」
「ネプチューンマン?」
そう、聞き役に徹していたネプチューンマンだ。
彼は話を聞いていた最中、冷静に考え続けていた対策を口にする。
「おまえらひとつ忘れているようだが、この“究極の超人タッグ戦”に勝てばトロフィーと一緒にその台座に生えた“
「ええ~~っ? なんでトロフィー
万太郎にはそのふたつが結びつかないのか、アホ面を晒して問いかける。
これにはネプチューンマンと同じ考えに至っていたミートが答えた。
「お忘れですか? 21世紀ミートが持ち込んだ歴史書“超人大全”にも記載されていたでしょう。“トロフィー球根には、死者を黄泉の国から甦らせるパワーさえあるらしい――”と。1億4千万年前の歴史上、最強メンバーと言われた東西528チームの超人たちの優性超人ゲノムを内包しているトロフィー球根……中にはきっと類稀な再生能力を持ち合わせた超人もいたはずです」
そこまで説明されて、万太郎の脳裏には以前川崎の焼肉屋でミートが話していた内容が思い浮かぶ。
「そ、そうだ~~っ! ボクたち本来、それを重篤状態のアリサさんに食べさせてケビンマスクを救おうと頑張ってたんだった――っ!」
トロフィー球根はいわば優勝賞品であり、万能の回復アイテム。
悪行超人にとっては完全無比超人になれる進化の秘宝だろうが、正義超人にとってはそちらよりも副次的効果のほうこそが目的だった。
「では……オレがそのおこぼれにあずかれば、エキゾチック物質も体内で新たに生成できるようになり寿命が伸びるってことか~~っ」
「可能性は大いにあります!」
喜ぶカオスに対し、自信たっぷりに頷くミート。
ネプチューンマンはカオスの肩に手を起き、若者の苦労をねぎらうように言う。
「グフフ……なおのこと命を燃やすわけにはいかなくなったな」
「ネプチューンマン……」
カオスは引き続き感激し、彼に説教をしたシャネルマンも喜びをあらわにする。
「なんだったらおまえさんが無理して闘う必要もなくなったってわけだ。悪行・時間超人への仇討ちはこのザッ・シャネルマンに任せ、トロフィー球根が届くまで前菜に牛丼でも食って待っていていいんだぜ」
万太郎とカオスの絆が再確認できた今、冗談にしかならないだろうが――とは思いつつも、シャネルマンは再度の提案を投げる。
カオスは休ませ、ザ・シャネルマン&キン肉万太郎のマッスル親子コンビ……ではなく、ニュー・マッスルブラザーズなどいかが?と。
しかし当の万太郎はシャネルマンの熱烈な視線に気づきもせず、カオスと闘志を高め合っていた。
「よーし! そうとなれば俄然モチベーションが上がってきた~~っ! 練習を再開しようぜカオス!」
「おお――っ! やってやろうぜ万太郎!」
「おい~~っ! わたしを無視するな――っ」
すっかり常の調子を取り戻したマッスルブラザーズ・ヌーボー、あとおまけにキン肉マン。
「フッ……」
ネプチューンマンは静かに笑う。
カオスに素性を問うべく会いに来てはみたが、そこにキン肉マンが居合わせたことにより話は良い方向に進んでくれたようだ。
(しかし……そうか。まさかカオスにそんな事情があったとはな……だとすると前回の“究極の超人タッグ戦”、オレを未来へ送り返すためになけなしのエキゾチック物質を放出したカオスはおそらく……そしてその後、ひとりきりとなってしまった万太郎はライトニングとサンダーのふたりに決勝で……)
“前回”、カオスが時間超人であることやライトニングとサンダーに復讐心を抱えていることは死に際に知れたが、ここまでの壮絶な過去があったとは思わなかった。
すでに失われた歴史のこととはいえ、自分が助けられたあとの“前回”のことを思うといたたまれない気持ちになる。
トロフィー球根の入手という希望はあれど、今回の“究極の超人タッグ戦”でもまだ最大の難敵、“世界五大厄”は残っている。
(なおのことカオスに無理をさせるわけにはいかなくなったな)
万太郎はチームリーダーとしての気概を見せてくれたが、マッスルブラザーズ・ヌーボーと世界五大厄の直接対決には不安がある。できることなら両チームがぶつかるような事態は避けたいところだ。
となればやはり、ライトニングとサンダーを倒す役目は妻子を守る立場にあるロビンマスクか――カオスにも劣らぬ使命を持ったネプチューンマンにあるだろう。
「トロフィー球根……いっそ前借りして欲しいくらいだぜ」
もはや二回戦前の抽選会のときのように、今はまだそのときではない、などとは言っていられない。
ネプチューンマンは胸のあたり――軋む心臓を押さえながら、“前回”己が越えられなかった壁、準決勝を思うのだった。
「ネプチューンマン……」
ミートはつぶやき、苦しげな協力者の顔を見ていた。