ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

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第065話 “超人師弟コンビ”の語らい!

 アリサが入院する病院の中庭で、ロビンマスクとウォーズマンは語らいの機会を得た。

 超人レスラーには不似合いな花壇横のベンチに並んで座り、両者ともに話を切り出すタイミングを窺う。

 先陣を切ったのはロビンマスクだった。

 

「フフフ……こうして間近で見てみると、ありありと実感できるな。ネプチューンマンに勝るとも劣らない数の傷跡……年季の入った筋肉の張り……21世紀からやってきたというのも頷ける素晴らしい肉体だ」

 

 未来からやってきた弟子の体を、しげしげと眺めるロビンマスク。

 34年の時を経たロボ超人の肉体は、ロビンに一種の感動を伝えていた。

 しかしながら、ウォーズマンはそっぽを向いて言う。

 

「よしてくれ。オレもネプチューンマンもなかなか大人になりきれず、まだまだやれる、まだまだ若いと過去の栄光にしがみついているだけ……本来は34年後の未来で正義超人養成学校ヘラクレス・ファクトリーの校長を務めるあんたのように、後進の育成に励むべく裏方に徹するべきなんだ。そう褒められたもんじゃない」

 

 師・ロビンマスクからの賛辞を受け流そうとするウォーズマン。

 殊勝な彼らしい反応だ。年老いてもその性格は変わっていないらしい。

 ロビンは嬉しく思い、さらに饒舌になる。

 

「なにを言う。キッドから聞いた話では、おまえは我が息子ケビンマスクの専属コーチとして奮起し、あのキン肉マンの息子・キン肉万太郎を倒させ超人オリンピックチャンピオンのベルトをロビン王朝(ダイナスティ)にもたらしたそうじゃないか。しかもそのために、準決勝でソ連……未来でいうところのロシア代表超人イリューヒンをも踏み台にしたと聞く。おまえにとっての祖国を裏切ってまでロビン一族に尽くしてくれたこと、心より感謝する」

 

 未来でのウォーズマンの偉業を褒めちぎるロビンだったが、ウォーズマンは首を横に振る。

 

「超人オリンピック・ザ・レザレクションのこともあまり持ち上げないでくれ……マンモスマンを相手に似たようなことをしようとして、あのザマだ。恥ずかしくなってくる」

 

 そう言って俯くウォーズマンは、どうやら照れ隠しなどではなく落ち込んでいるようだった。

 

「そ、そうか……すまん」

 

 先日の“ヘルズ・ベアーズ”vs“ネオ・イクスパンションズ”戦……マンモスマンを制御できなかったのがよほど堪えたのだろう。

 ロビンは素直に謝り、しばらく無言の時間が訪れた。

 

「ロビン……アリサさんは……」

 

 やや間を置き、今度はウォーズマンから話しかけた。

 容態のことを聞きたいのだろう。ロビンは答える。

 

「ああ。“鬼哭愚連隊”戦のときにケビンが提供してくれた血液、それに先の“シノバズ・ポンド・デスマッチ”で手に入れたピアス……ケビンの仮面についていた高濃度の酸素吸入が可能なソレのおかげでなんとか持ち直している。竜巻地獄でケビンのクリアベッドを私のもとに送り届けてくれたアシュラマンには感謝してもしきれない」

 

 アリサの血液型は非常に珍しいものだったが、幸いにも息子のケビンが同じ血液型であり、だからこそ彼が息子であることを認められる一因になった。

 そしてケビンがつけていた仮面、そのパーツである葉っぱのピアス。それは吸入器の役割を果たし、容態が急変したアリサに20世紀の医療設備では難しい高濃度の酸素を供給するに至った。

 

「だがアリサさんには時間超人に対するトラウマが根強く残ってしまった……やつらの顔や存在が消えかけているケビンの姿を見れば、心的ショックですぐにでも容態が悪化してしまうだろう。加えて、ケビンは希少な血液を提供するため自らの手で無理に傷を負ってしまった……このままクリアベッドの中にいては、アリサさんの回復を待たずケビン自身が失血死してしまうおそれがある」

 

 ウォーズマンの見解は文句のつけようがない。ロビンは厳かに頷いた。

 

「どちらにせよ、ケビンマスクの救出も時間超人の討伐も急務というわけだな」

「いや……そのことなんだが、もっと手っ取り早くアリサさんもケビンも救う方法がある」

「なっ……!? いったいどうやって?」

 

 ウォーズマンは自身の胸――心臓の位置に手を当て、言う。

 

「オレの命を使う」

 

 ロビンにはその発言の真意がわからず、続く言葉を待った。

 

「知ってのとおり、オレは21世紀の未来から来た。その時代のコンピューターは今より何倍も高性能なものになっており、医療技術も格段に向上しているんだ」

 

 20世紀を生きるロビンマスクでもそれはわかる。特に科学と医療の発展は目覚ましいものだ。

 

「我がファイティング・コンピューターの中軸を担うウォーズマン・デバイス……“命の欠片”を摘出しアリサさんの治療に使えば、トロフィー球根(バルブ)を待たずともその傷を完治させることが可能だろう」

 

 今から34年後の未来技術はそれを可能にする。

 ロビンとしては願ってもない――が、ウォーズマンの「命を使う」という発言。

 

「だが、それではウォーズマン……おまえは……」

 

 あまりにも聞き捨てならない。

 ウォーズマン自身、それを伏せておくのは不義理だと感じたのだろう。彼はそういう男だ。

 

「フッ……心配せずとも、オレはそう遠くない未来に超人墓場よりおまえたちのもとに舞い戻る。この時代の数日前、ネプチューンマンとビッグ・ザ・武道の“ヘル・ミッショネルズ”にやられた20世紀型ウォーズマンがな。今のオレからすればまだまだひよっ子で、少々頼りないかもしれないが……必ず正義超人界の力になってくれると約束するぜ」

 

 詳細は語らずとも、続く言葉の内容でどういうことかはわかった。

 ウォーズマン・デバイスを使えばアリサは助かるが、代わりに目の前のウォーズマンが死ぬのだ。

 しかしここにいるのは21世紀のウォーズマンで、ロビンのよく知る20世紀のウォーズマンとは別人。

 ゆえになにも問題はない……ウォーズマンはそう言いたいのだろう。

 

「そういうことじゃないんだよ、ウォーズマン」

 

 ロビンは言う。

 友のため己を犠牲にするのはウォーズマンの悪癖だ。かつて彼は悪魔六騎士のひとりプラネットマンに人質にされた際、キン肉マンに己ごと倒させた挙げ句、そのまま体内をリングにされたことがある。正義超人の中でも類を見ない彼の優しさは称賛すべきだが、だからといって貧乏くじを引き続けていいわけではない。

 それに――

 

「20世紀型だろうが21世紀型だろうが、私にとってはどちらも等しくウォーズマンだ。共に打倒キン肉マンに燃え、ミートくんのボディパーツを奪還すべく7人の悪魔超人と闘い、“夢の超人タッグ戦”優勝を夢見て超人師弟コンビとして並び立った……かけがえのない友だ」

 

 生きた時代が違えど、ウォーズマンはウォーズマンだ。

 実際に対面し、その体をよく観察したことで、あらためて実感できた。

 

「そんな友の命を犠牲にすることは、アリサだって望んじゃいない。弟子として手ほどきを受けたケビンならなおさらだろう。すべてが終わって34年後の未来にケビンたちが戻ったとき、未来の私は息子からこう言われるだろう……“なぜダディはウォーズマンを見捨てたのだ。自分の家族さえ守れればそれで満足なのか”とな」

 

 ロビンは未来の家族に思いを馳せ、はっきりとウォーズマン・デバイスの使用を拒否する。

 

「そんな罵倒をされるのはごめんだ。私は息子とは円満な親子関係を築きたい」

 

 それが、ロビンマスクがウォーズマンに示す友情だった。

 

「ロビン……」

 

 ウォーズマンは師であり友でもある男に対し、尊敬の念を抱かずにはいられない。

 ネプチューンマンには悪いが、ロビンの決断しだいではトーナメントを降りることも真剣に考えていたから。

 

 ……それはそれとして。

 

 ロビンにはひとつ、伝えておかなければならないことがある。

 それはもしかしたら残酷なことかもしれないが、ロビンならきっと受け止めてくれるだろう。

 

「残念だが、おまえの息子は将来グレる運命だ。主におまえの教育が原因でな」

「な……なにィ~~~~ッ」

 

 ロビンは病院の中庭を散歩していた人々がぎょっとするほどの声量で叫んだ。

 

「どういうことなんだウォーズマン! これだけ家族のことを想う私の……息子が将来グレるというのは! クリアベッドの中にいるケビンと語らった限りでは、そんな兆候は微塵も感じなかったぞ~~っ!?」

 

 子育てに失敗するなど、きっとロビンは考えたこともなかったのだろう。

 ウォーズマンは師のオーバーリアクションをおもしろがり、つい悪戯心を発揮してしまう。

 

「おっと……あまり先のことを教えてしまっては歴史が変わってしまう。息子の教育に関してはぶっつけ本番で頑張ってくれ」

 

 もったいぶるように言うと、ロビンは仮面の向こう側で悔しそうに唸った。 

 

「グウウ~~ッ」

「フフッ……」

 

 よもや弟子を救いに過去へ舞い戻った先で、師のこんな姿を見ることになるとは。

 ネプチューンマンが体験した“前回”ではこんな展開はなかったはず。

 だとすれば、この交流も彼の努力の賜物と言えるのだろうか。

 

「準決勝前にこうしてあんたと語らうことができてよかった。二回戦では醜態を晒しておきながら、ネプチューンマンとセイウチンの好意で先に進めたオレだが……ようやく決心がついたよ」

 

 ウォーズマンは晴れやかな気分でそう言った。

 

「決心とは?」

 

 ロビンは言葉の意味を問う。

 

「ケビンマスクの救出、それに時間超人討伐という使命を果たすのは当然として……ロビン。オレはあんたが念願のキン肉マン打倒を成し遂げたことで、ある欲を抱いちまったのさ」

 

 自分の命を使う、といったような重苦しい決意ではない。

 希望に満ち溢れた雰囲気だ。

 ゆえに答えが気になり、ロビンは再度問うた。

 

「それはいったい……」

 

 ウォーズマンはそんなロビンの目を見つめ、答える。

 

「弟子に与えられた宿願……“師匠超え”さ」

 

 弟子であるウォーズマンが、師匠――ロビンマスクを超える。

 あんたを乗り越える、と言ってのけたのだ。

 

「ネタバレになるが、21世紀の未来にいたってもまだ、オレは超人レスラーとして偉大なるロビンマスクを超えられちゃいない。いや、オレはあんたを師匠として尊敬するばかりで、超えてみせようという気持ちすら抱かなかった。だがあんたがキン肉マンに勝ったとき、思っちまったんだ。ライバル超えを果たした師匠をこの手で乗り越えれば、オレが最強だ――とな」

 

 最強。

 多くの野心家が語るその称号は、おおよそウォーズマンには似つかわしくないものだった。

 ロビン王朝のため、正義超人界のため、友のため――他者のために闘ってきたウォーズマンが、自らのために闘おうとしている。

 

「準決勝……いや、できれば決勝がいいな。ロビン。オレはあんたと闘いたい」

 

 まさに感無量。

 ロビンには、弟子の成長が嬉しくてたまらない。

 

「未来からやってきた弟子……それに私がキン肉マンよりも前に終生のライバルと見定めた男、ネプチューンマンのタッグか。確かに、言われてみれば……超人レスラーとしてこれほど心が踊る相手もいない」

 

 あのトーナメントマウンテンの頂きで、テリー・ザ・キッドと共にウォーズマン&ネプチューンマンと闘う。

 マシンガンズを倒した今、ロビンにとってこれ以上の決勝戦はない。

 時間超人の打倒など通過点にしてしまえ。アリサもケビンも先に救った上で、己も憂いなく最強を目指そうじゃないか。

 

「望むところだウォーズマン。その挑戦状、確かに受け取った」

 

 ロビンはベンチから立ち上がり、ウォーズマンに手を差し出した。

 ウォーズマンもまた立ち上がり、ロビンの手を握る。

 

「いいファイトをしよう」

「ああ」

 

 固い握手を交わし、対戦を誓う“超人師弟コンビ”。

 夢の超人タッグ戦で敗れたふたりの超人は、異なるチームで再びトーナメントマウンテンの頂上を目指す。

 

 

 ◇

 

 

 その頃――ロビンマスクのパートナーであるテリー・ザ・キッドは。

 

「ハァ……ハァ……ハァ……」

 

 練習用施設に設営されたリングの上、ファイティングポーズで立ちながらも息を切らしていた。

 足もとにはおびただしい量の汗が滴り、行っていたスパーリングの過酷さを物語る。

 さらにキッドのスパーリング相手であるジェロニモは――キャンバスに伏していた。

 

「ウ、ウウ……」

 

 苦しそうに呻くジェロニモ。失神こそしていないが、実戦ならKOを言い渡されてもおかしくはない状態だ。

 彼と共にキッドの相手をしていたテリーマンは、ジェロニモほどではないが疲労困憊の姿で問いかける。

 

「ヘ……ヘイ、キッド。今の技は……」

 

 テリーマンは見ていた。

 ジェロニモは技を――テリー・ザ・キッドの“新技”をくらったのだ。

 

「ま……まさか、あそこからあんなムーブを繰り出すとは思わなかったズラ……」

 

 息も絶え絶えの様子で、ジェロニモ本人が言う。

 新技、と思ったのはジェロニモもテリーマンも見たことがない技であったから。

 そしてなにより、技を仕掛けたキッド本人も驚いた反応を見せていたからだ。

 

「オ……オレはずっと、テリー一族の得意とする地味な技の数々にコンプレックスを抱いていた。もっともっと格好いい、ド派手なスーパー・ホールドが欲しいと……常々思っていたんだ」

 

 キッドの手はわなわなと震えていた。

 ガチスパー中、ジェロニモの猛攻に抗うため本能が体を動かした。

 それは普段のキッドのファイトスタイルからは考えられないムーブを生み、父テリーマンが驚愕するほどの技となったのだ。

 

「だが……こ、この技なら。筋肉が付きにくく投げ技や激突技を苦手とするテリー一族の体格にも見合い、今まで培ってきた経験も活かせる……まさにオレが理想としていた、至宝の必殺技(フェイバリット)だ!」

 

 テリー一族の誇りを引き継ぎ、父のお下がりとも言える技ばかりを使ってきたキッド。

 そんな彼が、ニュー・マシンガンズとのスパーリングでオリジナルフェイバリットを編み出すに至った。

 なんという運命のイタズラだろうか。

 

「まさかこの20世紀の地で、恋い焦がれた必殺技に巡り会えるとは……か、感動のあまり震えが止まらねえ~~っ」

 

 歓喜に震えるキッドを見て、テリーマンは笑む。

 

「フッ」

 

 必殺技の誕生は全超人にとって祝福すべきもの。

 しかしながら今は準決勝前の特訓中――おめでとう、などと手を叩いている暇はない。

 手を叩くよりも、蹴りを繰り出すべきだ。

 

「トア――ッ!」

「ウオッ!?」

 

 悠長に喜びを噛み締めているキッドの背中に、ドロップキック。

 無様に転んだ後輩を叱りつける。

 

「調子に乗るなよキッド! 今おまえが見せた技はシングル用の技……タッグマッチで披露する機会があるとは限らん! いや、そもそも二度と再現不可能なまぐれ技という可能性だってあるんだ!」

 

 テリーマンの言葉に、キッドは怒りの形相で起き上がった。

 

「ま、まぐれだと~~っ」

 

 テリーはヘヘッと鼻をこすり、キッドを挑発するように手招きする。

 

「怒ったか!? だったら証明してみせろ! 次の準決勝では“ニュー・テリー・ザ・キッド”としてリングに立ってみせるとな――っ!」

 

 キッドとニュー・マシンガンズのガチスパーは続く。

 

 愛弟子との対決を誓ったロビンマスク。

 そして新兵器(ニューウェポン)の開発に成功したテリー・ザ・キッド。

 準決勝を前にし、ジ・アドレナリンズは完成されつつあった。

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