ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

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第067話 三度目の“綱引きの儀”!

 そして準決勝の地、超人タッグの聖地トーナメント・マウンテンに朝日が昇った――

 

 日時は1983年5月13日。

 日本を代表する山、富士山の隣には数週間前に突如隆起した、いにしえの山が聳え立っている。

 

『全世界……いや全宇宙の皆さん、こちらは超人タッグの聖地、富士山に隣接されたトーナメント・マウンテンであります! この1億6千万年の歴史を持つ巨大建造物において12日前に“夢の超人タッグトーナメント”が開催されました。決勝戦でザ・マシンガンズvsヘル・ミッショネルズの一戦が行われ、90分を超える大激闘の末ザ・マシンガンズが三本勝負の二本を取り見事勝利。トーナメントマウンテン頂上に突き刺さるタッグトロフィーを引き抜こうとしましたが……突如、上空より時間超人と名乗るふたりと21世紀の未来からやってきたという謎の集団がほぼ同時に登場。時間超人はロビンマスクの妻アリサを襲い優勝セレモニーを妨害、その上トロフィーが抜けない事態に対し超人タッグ戦のやり直しを提案! 伝説超人(レジェンド)はアリサを救い時間超人という敵を倒すため、その要請に応じ……かくして“夢の超人タッグトーナメント”は“究極の超人タッグ戦”と名を変え再スタートされたわけであります!』

 

 宇宙超人委員会はここトーナメント・マウンテンの麓に観客席を設け、すでに大勢の超人レスリングファンが集っている。

 夢の超人タッグトーナメントが12日前に作り上げた記録は15万人。今回はそれを大幅に上回る20万人という大観衆だ。

 

『最初は全12チーム始まったタッグ戦でしたが日本各地で行われた激闘を勝ち抜いた4チームが本日、いよいよ聖地トーナメントマウンテンに場所を移し準決勝戦を闘うわけであります! まさにトーナメントマウンテン立錐の余地なし!』

 

 トーナメント・マウンテンの麓には、観客席に囲まれる形で4チームの控室、そこから続く花道、そしてリングが置かれている。

 このリングは試合用ではなく、このあとに予定されている“綱引きの儀”のためのもの。

 準決勝の対戦カードを決める重要な儀式は、20万人の大観衆が見守る中で行われるのだ。

 

 観客の多くは人間だが、超人の姿もある。

 勝ち残った4チームと縁の深い者、強豪超人の闘いを研究しようとする者、正義超人界の未来を憂う者、悪行超人の時代到来を期待する者、そして――ここに至るまでの闘いで、惜しくも敗れ去ってしまった者。

 

「まったく、20世紀の医療設備ってのはボロっちくてかなわねえぜ。おかげで退院まで時間がかかっちまった」

「だが、どうにか準決勝に間に合った。おかげで仲間たちの闘いを間近で見届けることができる」

 

 先日、怪我により入院していた病院を退院し、体調万全で観戦に駆けつけたこのふたり。

“スーパー・トリニティーズ”のスカーフェイスとジェイドである。

 

「時間超人の“死時計の刻印(デスウォッチ・ブランディング)”で心臓を貫かれたイリューヒンとバリアフリーマン……それに今も入院中のセイウチンやチェック・メイトがこの場にいないのは残念だが、せめてオレたちが万太郎やキッドの応援をしてやらないとな」

 

 ジェイドは新世代超人(ニュージェネレーション)の一員として、勝ち残った仲間の応援をするつもりだ。

 パートナーのスカーフェイスも目的は同じだが、彼の注目株は万太郎やキッドとは別のチームだった。

 

「ケッ。それよりも気になるのはネプチューンマンのおっさんだぜ。ヤロウ、オレたちを倒して勝ち上がっておきながらパートナーをセイウチンからウォーズマンに変更するなんていうウルトラCをかましやがった。これで負けたら承知しねえぞ」

 

 スカーフェイスとジェイドは一回戦でネプチューンマン&セイウチンの“ネオ・イクスパンションズ”に敗れている。

 超人レスラーとしていつかリベンジを果たしたくもあり、自分たちを負かしたからこそ優勝を願いたい気持ちもあった。

 そんなふたりの背後から、ひとりの超人が声をかける。

 

「ヨオ、ご両人」

 

 スカーとジェイドが振り向き、ふたりとも――特にジェイドのほうは目を丸くして驚いた。

 

「あなたは……ブロッケン師匠(レーラァ)!」

 

 現れたのは、軍服軍帽の青年。

 ジェイドの未来の師匠である伝説超人ブロッケンJrだった。

 

「よかったら一緒に観戦しねえか?」

 

 この時代にやってきた当初、新世代超人はタイムスリップなど信じられない伝説超人に敵対視され、針の筵を味わっていた。

 しかし“究極の超人タッグ戦”中に見せた数々の正義超人魂が、彼ら伝説超人の警戒心を削ぎ落とし、信用に至ったのである。

 

「ぜ……ぜひ!」

 

 ジェイドはブロッケンJrの誘いを快く受け入れ、相棒のスカーフェイスも子供のようにはしゃぐジェイドを見て笑みを作った。

 

 

 

 そして、定刻である。

 大会運営委員長、ハラボテ・マッスルがマイクを取った。

 

『只今より、“究極の超人タッグ戦”準決勝組み合わせ抽選会“綱引きの儀”を執り行う!』

 

 一斉に歓声を上げる観客たち。

 ハラボテのアナウンスに合わせ、実況も声を張り上げる。

 

『今、全宇宙の超人レスリングファンが注目する“究極の超人タッグ戦”準決勝の組み合わせ抽選会“綱引きの儀”の開始が大会委員長ハラボテ・マッスルから高らかに宣言された――っ!』

 

 20万人の大観衆が、それぞれ贔屓のチームがいる選手控室に注目する。

 4つの花道から続く4つの控室。そこでは4組のタッグチームが入場のコールを待っていた。

 

『タッグチーム入場!』

 

 音割れしそうなほどの大音量で、ハラボテが言い放つ。

 控室のドアが開いていき、中から準決勝進出を果たした4チームが顔を出した。

 

『ブルーコーナーからはネプチューンマン&ウォーズマン“新星(ノヴァ)・ネオ・イクスパンションズ”!』

 

 まずは元完璧(パーフェクト)超人&正義超人、そして共に齢50を超える大ベテランコンビ。

 

『グリーンコーナーからはキン肉万太郎&カオス“マッスルブラザーズ・ヌーボー”!』

 

 続いて新世代超人筆頭&鮮烈デビューを果たした新進気鋭のニューカマーコンビ。

 

『ブラックコーナーからはライトニング&サンダー“世界五大厄(ファイブディザスターズ)”!』

 

 さらに今大会の元凶である悪行・時間超人コンビ。

 

『レッドコーナーはテリー・ザ・キッド&ロビンマスク“ジ・アドレナリンズ”だ――っ!』

 

 最後に前チャンピオンを下し勝ち上がった新世代超人&伝説超人コンビが現れ、花道を進む。

 実況はまず“世界五大厄”にスポットを当てた。

 

『まずはブラックコーナーより登場したこのふたり! “世界五大厄”の不敵な笑みはすでに優勝を確信しているかのようだ――っ! なにしろ“シノバズ・ポンド・デスマッチ”であの優勝候補の一角であったアシュラマン&チェック・メイト組をなんなく破っているのですから――っ! サンダーが肩に担ぐはあいも変わらず消滅危機に陥っている未来の超人ケビンマスク! X形クリアベッドの中で仲間の助けを今か今かと待ち望んでいる――っ!』

 

 観客からはブーイングの嵐。

 引っ込めー!地獄に落ちろー!と、空き缶やら漫画雑誌やらが投げ込まれている。

 しかし、そんなものはライトニングにとってもサンダーにとってもどこ吹く風だ。

 

「ジョワジョワジョワ。本当に正義超人の殲滅が現実のものになりつつある。せいぜい今のうちにオレたちに物をぶつけるのだな」

「人間とは弱い動物よ」

 

 ブーイングなどふたりにとってはただの環境音。

 むしろ心地よい音色と言ってしまえるほどに、“世界五大厄”はその境遇を楽しんでいた。

 

『そしてグリーンコーナーの花道からは21世紀よりタイムスリップしてきたというキン肉マンの息子、キン肉万太郎&カオスの“マッスルブラザーズ・ヌーボー”であります! 初戦の“地獄のカーペンターズ”戦こそ危なっかしいギリギリの勝ち方でその大言壮語のメッキが剥がれかけましたが、続く第二回戦であの優勝候補の筆頭と目されていた“2000万パワーズ”のモンゴルマン&バッファローマンを破るという大アップセットを演じ、そのあたりから観客たちが彼らを見る目も本物を見る目に変わり始め、未来から来た超人として認知されるようになり、伝説超人たちと同等の大歓声を受けるようになりました――っ』

 

“世界五大厄”とは打って変わって、大人気超人タッグとしての声援を受けるマッスルブラザーズ・ヌーボー。

 カオスは堂々とした顔つきで花道を歩き、お調子者の万太郎はみんなに投げキッスを振りまく余裕を見せていた。

 

「イエ~~イ、みんな愛してるよ~~ん!」

 

 もはや万太郎をダメ超人だのペテン師だのと蔑む者はいない。

 この誰もが認める人気ぶりに、しかし密かに嫉妬している男がいた。

 観客席にいる“ザ・マシンガンズ”、キン肉マンことキン肉スグルである。

 

「グムー。やっぱり“夢の超人タッグトーナメント”で優勝したはずのわたしたちがあの花道を歩いていないのはおかしくないか? あらためて考えてみるとむちゃんこ理不尽に思えてきたわい」

 

 マシンガンズは前大会の覇者。本来なら優勝トロフィーは彼らのものとなるはずだったが、時間超人を始めとした未来の連中が現れたことによりその権利を剥奪され、仕切り直しとなったこの“究極の超人タッグ戦”では二回戦敗退という憂き目にあったのである。

 キン肉マンの不満はもっともだったが、パートナーのテリーマンは大人の余裕で彼を諭す。

 

「ぼやくなぼやくな。“夢の超人タッグ戦”は“夢の超人タッグ戦”、“究極の超人タッグ戦”は“究極の超人タッグ戦”だ。それでいいじゃないか」

 

 再びグムーと唸るキン肉マン。

 彼の視線は、終始万太郎に注がれていた。

 

「ナンバーワーン!」

 

 入場の途中、一際威勢のいい声が響き渡る。

 ナンバーワン――“オレこそがイチバンだ”と高らかに主張するのは、もちろんネプチューンマンだ。

 

『さあブルーコーナーの花道を歩くのは、超人タッグ戦において連続で準決勝以上に残った強豪、ネプチューンマンであります! 一回戦は新世代超人のセイウチンと共にスカーフェイス&ジェイド組を復活のクロス・ボンバーで破り、盤石のタッグかと思われましたが……二回戦のアニマル・チェンバー・デスマッチでまさかの大異変! ヘルズ・ベアーズの一角マンモスマンがチームリーダー・ウォーズマンのギブアップに従わず大暴走、その際の負傷によりセイウチンが無念のリタイアとなってしまい、代わりとしてなんとそのとき激闘を演じていたウォーズマンが指名されました。結果、パートナー交代という大事件を経て“新星・ネオ・イクスパンションズ”としてここに立っているのであります!』

 

 マッスルブラザーズ・ヌーボーに勝るとも劣らない歓声を浴び、ときにファンサービスをしながら花道を進むネプチューンマン。

 もはや彼も立派な正義超人。人気は絶大、特にその年齢のせいか年配の超人レスリングファンからの支持が厚かった。

 

「この歓声と声援……懐かしいぜ――っ。前回オレがこの“綱引きの儀”に臨んだときは、時間超人どもと同様に物を投げられブーイングの嵐だったからな――っ」

 

 ネプチューンマンは悪行超人として立った“前回”のことを懐かしむ。

 彼の後ろを歩くウォーズマンは薄く笑った。

 

「フッ……セイウチンを見限りマンモスマンを強奪するなどという悪行を働けば当然だ」

 

 普段は寡黙なパートナーの嫌味に、ネプチューンマンは振り返る。

 

「イジるなよ。だが超人レスリングファンってのは現金なやつらだぜ。“夢の超人タッグ戦”決勝のときは観客のほとんどがオレと武道の“ヘル・ミッショネルズ”に声援を送り、キン肉マンたち正義超人を応援するのは同じ正義超人のブロッケンJrくらいだったんだぜ。おまえは死んでたから知らねえだろうがよ――っ」

 

 その死の原因を作ったのはほかでもないネプチューンマンなのだが、ウォーズマンはあえて言わず、調子の良さそうなパートナーを頼もしく思った。

 

「昔語りはほどほどにしておけ。おっさんの悪いクセだぜ」

 

 ネプチューンマンが黙る。

 しばらく行動を共にしてわかったが、彼にはおっさんいじりが一番効くようだ。

 

『最後のレッドコーナーからは、テリー・ザ・キッド&ロビンマスクの“ジ・アドレナリンズ”がやってきます! 一回戦では“鬼哭愚連隊”を倒し新旧混成タッグの実力をありありと示し、二回戦ではあの超人タッグ界“珠玉の逸品”ザ・マシンガンズまでも破っております! テリー・ザ・キッドはテリーマンを倒しての“父親超え”、そしてロビンマスクはキン肉マンを倒しての“ライバル超え”を果たしました! 強豪揃いの準決勝進出4チームですが、今最も勢いがあるのはこのふたりと言ってしまってよいでしょう!』

 

 先行するのはチームを率いるテリー・ザ・キッド。

 若者を軽んじる往年の超人レスリングファンの中には、まさかテリーマンにそっくりの金髪ヤンキーがここまでやるとは、と意外に思っている者も少なくない。

 だがキッドはそんな連中を虜にするほどの実力を見せつけた。今のアドレナリンズは優勝候補筆頭だ。

 

「期待していてくれよ、ファンボーイ&ファンガールたち! 今度の試合も観ている側がアドレナリン全開になることを約束するぜ――っ!」

 

 腕を回してファンの声援に応えるキッド。

 対して、相棒のロビンマスクは一切のファンサをすることもなく静かに花道を歩いていた。

 

「ヘイ! どうしたロビン、テンションが低いじゃないか!」

「フフッ……いや、なに。数奇な運命だと思ってな」

 

 調子が悪いわけでも、決戦を前に緊張しているわけでもない。

 ロビンは目の前にそびえ立つトーナメント・マウンテンを眺め、思う。

 

「一度はあのトーナメント・マウンテンで敗れたこの私が……よもやまたあの山を登る機会を得られるとは」

 

 ロビンがあの山から転げ落ちたのが数週間前のこと。

 よもやこんなにも早く再挑戦の機会が訪れるとは思っておらず、胸に込み上げてくるものがあった。

 

「感慨にふけるのは早いぜ。オレたちはあの頂上までいくんだからな!」

 

 トーナメント・マウンテンには初挑戦となるキッドは、若々しい覇気でもってロビンを先導する。

 頼もしいチームリーダーを持ったものだ、とロビンは笑う。

 

「ああ。そのとおりだ」

 

 それぞれがそれぞれの思惑で花道を進み……その先に設営されたリングの前に立つ。

 

『さあ今、全宇宙より選ばれし強豪4大チーム全員が準決勝のカード抽選会の定位置についた――っ』

 

 リング上は白いシートが被せられており、不自然に盛り上がっている。

 ハラボテがマイクを手に説明を始めた。

 

『それでは只今より、古式よりの作法に則った“綱引きの儀”について説明する! ルールは簡単、このシートの下にはよじれてもつれた二本の綱が隠されておる』

 

 スタッフが白いシートを外し、隠れていた綱が姿を現す。

 

『複雑に絡み合った二本の綱の端がリングの中心から四方向に垂れ下がっておる。今から三分間、おまえたちに時間を与えるのでどの綱の端を取るか、各チーム慎重に一本ずつ選ぶがよい! 綱を選んだら一斉に引っ張ってもらう! 同じ綱を引いたチーム同士がそのまま準決勝のカードとなる寸法じゃ!』

 

 一見しただけでは、どの綱同士が繋がっているかはわからない。

 まさに運命の綱。どのチームと当たるかは運次第というわけだ。

 

『ようし、勝ち残った超人たちよ! あのトーナメントマウンテンの頂き目指してさあ選べ、綱を!』

 

 ハラボテのコールと共に、デジタル時計によるカウントダウンがスタート。

 制限時間は3分。各チームはその間に決断をしなければならない。

 

『過去の歴史を繙けばこの“綱引きの儀”こそが優勝の行方を左右してきたと言っても過言ではありません! 激しいサバイバルトーナメントを勝ち抜いてきた各チームには様々な想いが交錯していることでしょう! しかしいかなる強豪タッグであろうとも己の意志は一切通じない、運命を“神の手(ゴッドハンド)”に委ねるほかないのであります――っ』

 

 リングの周囲を練り歩く4チーム。

 3分という時間は短いようで長い。まだ判断を急ぐ必要はないが、早々に立ち止まるチームが現れた。

 ライトニング&サンダーの“世界五大厄”である。

 

「ジョワジョワ、オレたちの目的は正義超人の殲滅。どのチームと当たったって構わねえ」

「ヌワヌワ、そうだな――っ。さっきからカオスのガキがガン飛ばしてきてうざってぇし、さっさと決めちまうか」

 

 悪行・時間超人コンビふたりは目の前にある綱を手に取った。

 

『ライトニング&サンダー、ろくに吟味もしないで無造作に一本の綱を選んだ――っ』

 

 一番手となった“世界五大厄”。

 あとに続くのは、“ジ・アドレナリンズ”である。

 

「よし、これにしようぜロビン。オレのインスピレーションがこの綱だと囁いている――っ」

「いいだろう。乗ったぜキッド」

 

 キッドが決め、ロビンが賛同し、ふたりで一本の綱を掴む。

 

『続いて綱を選んだのはテリー・ザ・キッド&ロビンマスクのふたりだ――っ』

 

 残されたのは“マッスルブラザーズ・ヌーボー”と“新星・ネオ・イクスパンションズ”。

 万太郎は時間をたっぷり使い、残り2本となった綱のどちらにするかを考えていた。

 

「え~、ど……どうしようかカオス」

「オレはどのロープでも構わないぜ」

 

『あ――っとキン肉万太郎&カオスはまだ悩んでいるようだぞ――っ』

 

 優柔不断は万太郎の悪いクセ。しかしこの“綱引きの儀”はそれが悪い方向に作用するとは限らない。

 それを証明するかのように、“新星・ネオ・イクスパンションズ”も動く気配がなかった。

 

『そしてネプチューンマン&ウォーズマンもなにやら思案中のようだ――っ』

 

「選ばないのか? ネプチューンマン」

 

 ウォーズマンは初めからチームリーダーのネプチューンマンに任せるつもりでいた。

 まさか万太郎のように優柔不断を発揮しているわけではないだろう。

 ネプチューンマンは己の思惑を語る。

 

「オレがこの“綱引きの儀”に臨むのは三回目になる。過去二回の経験で学んだことは、自分が本当に闘いたい相手の綱が引かれたことなど一度もないということだ。だったらここはあえて自分からは選ばず、運命ってやつに身を委ねてみるのも一興かと思ってな」

 

“夢の超人タッグ・トーナメント”では対マッスル・ブラザーズを望み、“前回”では対ザ・マシンガンズを望んだネプチューンマンだったが、どちらも叶わなかった。

 夢の超人タッグとも前回とも目的や思想が異なる今回、ネプチューンマンが闘いたいと願うのはもちろん――悪行・時間超人。

 それを実現させるために、ネプチューンマンはあえて動かないつもりだった。

 

「フッ……違いないな」

 

 この“綱引きの儀”にファイティング・コンピューターの高度な計算は無意味。

 ならばネプチューンマンの言うとおり運命に身を委ねるのもアリというものだろう。

 そんなイクスパンションズの思惑は知らず、ついに万太郎が動いた。

 

「よっしゃ! ボクたちはこの綱だ――っ!」

 

『時間ギリギリでキン肉万太郎&カオスが綱を選んだ――っ!』

 

 マッスルブラザーズ・ヌーボーの選択を受け、ネプチューンマンたちも動く。

 

「ならばオレたちはこっちだ――っ」

 

『残った綱をネプチューンマン&ウォーズマンが手に取った――っ!』

 

 これで全チームが綱を選んだ。

 北側に“ジ・アドレナリンズ”。

 東側に“マッスルブラザーズ・ヌーボー”

 南側に“新星・ネオ・イクスパンションズ”

 西側に“世界五大厄”。

 雄大なトーナメント・マウンテンが見下ろすその場所で、4組の超人タッグが腕に力を込める。

 

『ようしそこまで――っ! それではおのおの綱を引くがよい――っ!』

 

 ハラボテの号令で、8人が一斉に綱を引っ張った。

 

『さあリング中央で複雑に絡み合った綱がどんどんほどけていく~~っ! 引き合うのはどのチームとどのチームだ――っ!?』

 

 綱はスルスルと解けていき……やがて、バチィン!という快音を鳴らした。

 綱が伸び切った証明である。

 

「これは……」

 

 ネプチューンマンはウォーズマンと共に持つ綱に並々ならぬパワーを感じながら、その先を目で追う。

 キャンバスの上を通過し、リングロープを越え、綱の先端を持つ超人ふたり。

 得体の知れない模様を体に入れた白面と、X形クリアベッドを担いた獅子の面がこちらを睨んでいた。

 

『あ――っと“綱引きの儀”で引き合ったのは“新星・ネオ・イクスパンションズ”vs“世界五大厄”……そして“ジ・アドレナリンズ”vs“マッスルブラザーズ・ヌーボー”という組み合わせだ――っ!』

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