ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

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第068話 “静”と“動”の闘争心!!

『“究極の超人タッグ戦”準決勝の組み合わせを決める伝統の抽選方法“綱引きの儀”。その注目の結果が今、我々の眼前に示されております!』

 

 綱を引き合っているのは、“新星(ノヴァ)・ネオ・イクスパンションズ”と“世界五大厄(ファイブディザスターズ)”。

 そして“マッスルブラザーズ・ヌーボー”と“ジ・アドレナリンズ”だ。

 

 組み合わせが決まった時点で抽選会は終わり。

 だというのに、4チームとも手にした綱を離さず、むしろ腕に込める力をさらに強めた。

 

「どうした? 背中が震えているぜ、ネプチューンマン」

 

 ネプチューンマンの後ろに立つウォーズマンが意地悪く言う。

 答えなどわかりきっていた。

 

「武者震いだよ。三度目の正直ってやつだ……三度目にしてようやく、この“綱引きの儀”で一番闘いたい相手と引き合えた」

 

“夢の超人タッグ・トーナメント”、そして“前回”と、なかなか思いどおりにはいかなかったのがこの“綱引きの儀”だ。

 しかし今回は望みが叶った。

 一番闘いたいと思っていた相手……怨敵“世界五大厄”とのマッチメイクが現実のものとなったのだ。

 

(オレの心臓のことを考えるなら、時間超人と当たるタイミングはここがベスト! さらにここでやつらを倒してしまえば、復讐に燃えるカオスが無茶をする必要もなくなる!)

 

 ネプチューンマンは心中でこの結果の重さを噛みしめる。

 静かな闘志を燃やす相方に、ウォーズマンはあえて大げさに声を張り上げた。

 

「オレも決勝でロビンマスクのいるジ・アドレナリンズと闘いたいと思っていた。その前哨戦の相手が我が師と愛弟子の命を脅かした憎き悪衆・時間超人だというなら願ってもない! このウォーズマンがおまえたちに引導を渡してやるぜ――っ!」

 

“新星・ネオ・イクスパンションズ”から向けられる敵意に、“世界五大厄”のふたりは不満げだった。

 顔を顰めたのはライトニングである。

 

「ジョワ~~ッ、こちらとしては現役伝説超人(レジェンド)のロビンマスクか、やたらとオレたちに敵意を向けてくるカオスあたりを先に始末したかったが……まさか老いぼれコンビと当たるとはな」

 

 敵は正義超人全体。どのチームと当たっても文句はないつもりだったが、“新星・ネオ・イクスパンションズ”の優先順位は一番低かった。

 ぐちぐち言っても仕方がない。サンダーはこの結果を好意的に捉えようとする。

 

「ヌワ~~ッ、しかし目障りだったネプチューンマンを消せるのは悪くない。オレたちの手の内を知っていたカラクリも、この機会に暴いてやるぜ~~っ」

 

 ネプチューンマン、ウォーズマン、ライトニング、サンダー、4人の戦意は十分。

 綱を引き合う力はなおも強く、一触即発というムードを漂わせていた。

 

 一方、“マッスルブラザーズ・ヌーボー”。

 キン肉万太郎はこの対戦カードに動揺を隠せない。

 

「まさか2000万パワーズに引き続き伝説超人と当たるなんて……しかもそれが、ボクたち未来から来た新世代超人(ニュージェネレーション)が当初救出する予定だったロビンマスクとは!」

 

 自分たち新世代超人の存在に懐疑的だった2000万パワーズはともかく、ロビンマスクはテリー・ザ・キッドと組んでいるからこそ万太郎たちに敵意を飛ばすようなことはなかった。

 それだけに、“ジ・アドレナリンズ”との対戦は一番想定していなかった事態ともいえる。

 万太郎の動揺は心情的なものだが、パートナーのカオスはトーナメントという大局を見た上でこの対決を憎々しく思った。

 

「ジ・アドレナリンズは二回戦で“夢の超人タッグ戦”覇者、ザ・マシンガンズを破ったことで勢いづいている。正直このまま優勝をかっさらっていっても不思議じゃないほどだ……本音を言えば、時間超人戦の前に当たりたくはなかった!」

 

“世界五大厄”との対戦を望んでいたカオスにとっては、不本意な結果と言わざるをえない。

 それは“ジ・アドレナリンズ”のロビンマスクにとっても同様だった。

 

「グウウ~~ッ! まさか未来に帰ったら家に遊びに来いなどと誘った万太郎と闘うことになってしまうとは。これでは格好がつかん!」

 

 ロビンは“ザ・マシンガンズ”戦のとき万太郎の声援に助けられたところがある。

 それもあって万太郎のことはライバルというより息子の友達と認識し始めていたのだ。

 そんな相手と、怨敵“世界五大厄”、宿敵“新星・ネオ・イクスパンションズ”を前にして闘えなど――

 

「ヘイ! なにを神妙な顔つきで唸ったりしてるんだロビン!」

 

 ロビンの迷いを振り払うように、アドレナリンズの若きリーダーが声を張り上げた。

 

「キッド!」

 

 チームリーダーとしてロビンの前に立つテリー・ザ・キッドは、綱を強く引く。

 

「対マッスルブラザーズ・ヌーボー、結構じゃねえか! オレは密かにあいつらとも闘いたいと思っていたんだ!」

 

 油断すれば体ごと持っていかれそうな綱に力を込めつつも、“マッスルブラザーズ・ヌーボー”のふたりは戸惑いを口にする。

 

「キッドが……」

「オレたちと!?」

 

 まさか、キッドは万太郎と同じ新世代超人。敵対する理由はないはずだ。

 その認識は間違っているぜと言わんばかりに、キッドは“マッスルブラザーズ・ヌーボー”を――特に万太郎の顔を睨みつけ言う。

 

d.M.p(デーモンプラント)を始めとした悪行超人との戦いにおいて、常にオレたち新世代超人の最前を突っ走ってきたキン肉万太郎! ヘラクレス・ファクトリーの同期でありながら輝かしい実績を作りまくるおまえが、オレは友人として誇らしい反面……妬ましくもあった!」

 

 万太郎はキッドが向けるギラついた眼光に覚えがあった。

 あれは、そう――ヘラクレス・ファクトリーに入学したての頃。“キン肉マンの息子”に対し嫌がらせをしてきたときの目だ。

 

「このままではオレは、キン肉マンの後塵を拝してきた父・テリーマンのように……キン肉万太郎というヒーローの影に隠れてしまう! そうならないためにも……おまえとは一度、どこかで白黒つけておきたいと思っていたんだ――っ!」

 

 ヘラクレス・ファクトリーのときは父キン肉マンの介入もあり、わりと良好な関係に落ち着いた。

 その後コギャルの女の子を取り合うことはあれど、ここまでストレートな敵意をぶつけられることはなかったはず。

 万太郎は、

 

「な……なんだそりゃ~~っ」

 

 と呆れることしかできない。

 今は“究極の超人タッグ戦”の真っ最中。盟友ケビンマスクの命がかかった一大事だというのに。

 このアメリカ野郎は……なんて身勝手な!

 

「フフッ……なるほどな。私がキン肉マンに執着していたように、キッドにも同世代のライバルがいたわけだ」

 

 理不尽さを感じる万太郎とは異なり、ロビンマスクはキッドに共感を覚えた。

 ライバルに勝ちたいという想いについて語らせれば、ロビンの右に出る者はいない。

 

「万太郎よ。聞けばおまえは34年後の未来で我が息子、ケビンマスクに敗れているらしいな。それも超人オリンピック決勝という大舞台で」

「ウウッ……」

 

 キン肉万太郎唯一と言ってもいい敗北のトラウマを突くロビン。

 フルフェイスの仮面から覗く眼光をキッドに負けないくらいの鋭いものにし、万太郎を敵として睨む。

 

「息子が負かした相手に、父親である私が負けるわけにはいかん! ここはキン肉マンのみならず、その息子キン肉万太郎も倒し……ロビンファミリーはキン肉マンファミリーよりも明確に“上”だと、後世に知らしめておかねば――っ!」

 

 アドレナリンズの両名から敵と認識された万太郎。

 本人は未だ戸惑いを隠しきれず――しかしパートナーを務めるこの男は違った。

 

「てめーら、揃いも揃ってオレを無視してんじゃね――っ!」

 

 威勢よく綱を引っ張ったのは、万太郎の後ろにいるカオス・アヴェニールだった。

 

「今やマッスルブラザーズ・ヌーボーはキン肉万太郎のワンマンチームではない! このオレ……カオス・アヴェニールがあのマシンガンズを倒したアドレナリンズを倒した男として、歴史に名を刻んでやる! さすれば、バッファローマンにラーメンマンにロビンマスク……そして実質キン肉マンとテリーマンにも勝利した“伝説超人キラー”として21世紀の超人教科書に載ることだろうぜ――っ!」

 

 一回戦や二回戦のカオスからは想像もできないような大言壮語が飛ぶ。

 年下の相棒にそうまで言われてしまっては黙っていられない、と万太郎も腹を決めた。

 

「よく言った、カオス!」

 

 カオスと共に綱を強く引っ張り、アドレナリンズを慌てさせる。

 思い起こすのは“究極の超人タッグ戦”開始直前、川崎の焼肉屋で開いた作戦会議の一幕だ。

 

「いいかキッド! ボクはこの“究極の超人タッグ戦”が始まる前、一番におまえをタッグチームに誘ったのに断られた恨みを忘れちゃいない! あのとき万太郎との“新世紀(ニューセンチュリー)マシンガンズ”を結成しておけばよかったと……次の一戦で後悔させてやる~~っ!」

 

 そう、あのときキッドが万太郎の誘いを受けていれば、本来はカオスの立つ位置に彼がいたはずなのだ。

 それをチンケな対抗心でフイにし、偶然フリーだったロビンマスクに声をかけられ、ジ・アドレナリンズ結成など……当時キッドが泣きついてくると高をくくっていた万太郎がどれほど焦ったものか。

 

「調子いいこと言ってんじゃね――っ! なにが一番に誘っただ! おまえ、オレよりも先にスカーのやつに声をかけてフラレてただろうが~~っ!」

 

 ギクッ、と肩を縮こませる万太郎。

 そういえばそうだった気もする。

 まあそれはそれ、これはこれだ。

 

「んな細かいこと覚えてるってことは少なからず未練があったんじゃないのか――っ!? 派手好きを謳ってるくせに、昔っから根っこが女々しいんだよおまえは~~っ!」

 

 ついには人格否定の罵詈雑言。

 万太郎とキッドが言葉をぶつけ合う姿は、まさしく悪友のそれだった。

 

『さあ~~~~っ! これはおもしろい展開になってまいりました! ベテランらしく静かに闘志を燃やすネプチューンマン&ウォーズマンに、余裕の態度でそれを受け止めるライトニング&サンダー! それとは対照的に、キン肉万太郎&カオスとテリー・ザ・キッド&ロビンマスクの二組は若々しく血気盛んに綱を引き合っている――っ!』

 

 互いに異なる形で闘争心をぶつけ合う。

 会場のボルテージは十分、観客も大盛り上がり。

 ハラボテはほくそ笑みながら次の段取りを進める。

 

『ようし! では赤いリボンの綱を引き合った“ジ・アドレナリンズ”と、“マッスルブラザーズ・ヌーボー”の対決が準決勝第1試合! 白いリボンの付いた綱を引き合った“新星・ネオ・イクスパンションズ”と、“世界五大厄”が準決勝第2試合とする!』

 

 試合順がアナウンスされ、そこでようやく4チームともが綱を離した。

 

『それでは20分の休憩の後、あちらに聳えるタッグの聖地トーナメントマウンテンにおいて、準決勝第1試合ジ・アドレナリンズvsマッスルブラザーズ・ヌーボーの一戦を執り行う! 一旦解散!』

 

 4チームそれぞれがリングを降り、元来た花道辿りを控室へ戻っていく。

 だが万太郎とキッドだけはなかなかその場から離れず、あっかんべーやら中指を突き立てたポーズやらおしりぺんぺんやらを繰り返したあと、互いのパートナーに叱られようやくリングを降りた。

 

 

 

 一部始終を見ていたスカーフェイスが呆れ顔で言う。

 

「オ……オレが言えた立場じゃねえが、この期に及んで新世代超人の盟友同士がああも醜くいがみ合うことになるとは……どっちかは確実に決勝に進めるとはいえ、このまま万太郎とキッドに任せていいのか?」

 

 スカーの胸にあるのは不安だった。

 新世代超人の最重要ミッションは時間超人の征伐。しかしこのままでは万太郎もキッドも共倒れだ。

 そんな相方の不安に対し、ふたりとの付き合いがスカーより少しだけ長いジェイドは己の見解を口にする。

 

「仕方ないさ。あのふたりは腐れ縁ではあるが、なまじタッグチームを組んでいた親同士の仲が良すぎるせいで、リングの上だと途端に意地を張り合うことが多くなる……キッドのほうは特にな」

 

 それを聞いたブロッケンJrは我が事のように思う。

 

「偉大なる父親と比べられることを嫌う子の心理か……オレも師匠であった父・ブロッケンマンの背中を追いかけて強くなった身だ。気持ちはわからなくもねえが、親父をラーメンマンに惨殺され復讐のための鍛錬に明け暮れた過去を思えば、まったく羨ましい悩みだぜ」

 

 超人レスラーとして闘っていればそんなこともある。

 ジェイドとて、超人オリンピック・ザ・レザレクションで敗北と同時に死した超人を数多く見てきた。

 そこから生じる復讐心もあるのだろう。もしジェイドが同じ立場で、師匠を誰かに殺されれば……と考えずにはいられない。

 

「おっと、そんな気まずい顔をすんな。もう断ち切った過去だよ」

 

 ジェイドの苦悩を読み取り、ブロッケンJrはさっぱりと笑う。

 だがやはり、彼がキッドに向ける視線は弟子を心配する師匠のようでもあった。

 

「こりゃあオレのもうひとりの師匠みてえな人の受け売りだけどよ。あのキッドって野郎は、親父のことなんざ忘れちまえばもっともっと強くなれると思うぜ……」

師匠(レーラァ)……」

 

 テリーマンやキン肉マン、そしてキン肉万太郎の存在はもはやテリー・ザ・キッドという人物を語る上で無視できるものではない。

 二回戦ではその対抗心が吉と出たが、万太郎との直接対決となる準決勝では――はたして、どうなるか。

 

 

 

 ブロッケンJrとはまた違った観点から、この両チームの対決を心配する者がいた。

 ザ・マシンガンズのキン肉マンである。

 

「グムー。まさかジ・アドレナリンズの相手が万太郎たちマッスルブラザーズ・ヌーボーに決まってしまうとは」

 

 アドレナリンズは自分たちを倒した相手。

 対して、ヌーボーは自身の息子を自称する超人がおり……あのザ・シャネルマンが肩入れしたチーム。

 

「二回戦でアドレナリンズに負けた身としては、やはり仇討ちを期待しちまうか?」

 

 テリーマンはおもしろそうに言うが、キン肉マンの心境としては容易に頷くことができない。

 

「いや……これで万太郎がロビンに勝ったとしたら、わたしがやつに負けたような気がして癪だ。かといって万太郎がロビンに負け、キン肉王族がロビン一族に完全敗北するというのも悔しいし……う~ん、わたしはいったいどちらを応援すれば……」

 

 腕を組みながら悩むキン肉マン。

 テリーは肩を竦め、大仰に首を振ってみせた。

 

「やれやれ……子供っぽいことを言っちゃいるが、根っこではすっかり万太郎のことを認めているんだな」

 

 準決勝までの僅かな期間、キン肉マンがマッスルブラザーズ・ヌーボーのところに出向いていたのはもちろん把握している。

 将来生まれてくる息子の力になりたい――その思いはテリーマンとて同じだ。

 だからこそ、彼もジェロニモと共にキッドのもとに赴いた。

 その成果は、ここにジェロニモがいないことが物語っている。

 

「ミーはもちろんおまえのことを応援するぜ。勝てよ、キッド」

 

 テリーマンは静かにつぶやいた。

 

 

 

 控室に戻る途中、万太郎は足を止めた。

 

「どうした万太郎?」

 

 怪訝に思ったカオスが振り返る。

 まさかまたキッドにあっかんべーをしたりはしないと思うが……と思いつつも。

 その心配はすぐ杞憂に終わった。

 

「ケビンマスク……」

 

 万太郎の視線は、“世界五大厄”――サンダーが担ぐX形クリアベッド、その中にいるケビンマスクに注がれていた。

 未だ消滅の危機から脱せず、会話もままならない彼に向け、万太郎は独り言をつぶやく。

 

「決勝へはボクたちのタッグか、おまえの敬愛するダディ……ロビンマスクのタッグいずれかが必ず上がる。反対側のブロックでは、おまえを超人オリンピックチャンピオンに導いたあのウォーズマンだっている……これだけの戦力が揃っていれば、きっと時間超人にだって負けやしないさ」

 

 第1試合の結果がどうなろうとも、正義超人チーム1組が勝ち上がることは確約された。

 先に時間超人と闘うのはあのネプチューンマンとウォーズマンのペア。

 時間超人包囲網は完成されている。あとは結果を待つばかりだ。

 

「だけどケビンマスクは21世紀の新世代超人で、ボクの盟友……叶うことなら、おまえのその消えゆく肉体はボクたちの手で元に戻してやりたい」

 

 ひょっとしたら、もう未来には戻れないかもしれない――そんなリスクを負った上で、万太郎は友を助けに過去へとやってきたのだ。

 目的はもう少しで完遂される。

 そしてその前に立ちふさがったのが友の父親というのであれば、倒して先に進むだけだ。

 

「ひょっとしたらケビン、おまえにはあとで恨まれてしまうかもしれないが……ロビンマスクはこのキン肉万太郎が倒させてもらう」

 

 万太郎はケビンから視線を外し、カオスと顔を合わせる。

 この地で出会った新たな盟友。築き上げた絆はケビンとの間にあったそれに勝るとも劣らない。

 

「行こうか」

 

 カオスは言い、万太郎は深く頷くのだった。

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