ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ” 作:速筆魔王LX
準決勝第1試合“マッスルブラザーズ・ヌーボー”vs“ジ・アドレナリンズ”。
先発として出たカオス・アヴェニールはテリー・ザ・キッドをお得意のキングジャーマンに捉え、金髪の脳天を見事キャンバスに突き刺した。
『こ、これは――っ! まさしくキングの名に相応しい美しすぎるブリッジのジャーマンスープレックスだ――っ!』
ジャーマンスープレックスを使う超人は数多くいるが、見た目の美しさでカオスに勝る者はなかなかいないだろう。
そしてジャーマンスープレックスの美しさとは、そのまま技の破壊力に比例する。
「ウウ~~ッ」
事実、脳天を強打されたキッドの顔は青くなっていた。
『キッド、これはクリティカルヒットか――っ!?』
試合はまだ始まったばかり。
いかに
だからといって無理をする必要もなし。戦況を見極め、ロビンマスクはエプロンから手を伸ばした。
「よしキッド、ここは一度タッチだ」
幸いにも十分に手が届く距離だ。
キッドは激痛に震えながらも腕を伸ばし、信頼できるパートナーに後を託す。
『あ――っとキッドに代わってロビンマスクがリングイン!』
軽快にロープを飛び越え、参戦を果たす仮面の貴公子。
粘着質なキッドが消えた!と万太郎も勇み手を伸ばす。
「ようし! カオス、ロビンマスクはボクが!」
カオスに選手交代を進言するが、彼はふるふると首を振りこのタッチを拒否した。
「悪いが万太郎、もう少しやらせてくれ」
「カオス」
カオスはリングに上がってきたロビンマスクに向き直り、背後の万太郎に続けて言う。
「シャネルマンはオレに、実戦回数の少なさによる経験不足を指摘した。それを少しでも埋めるため、大ベテランのロビンマスクと一度拳を合わせておきたい」
準決勝までの準備期間、コーチを務めてくれたシャネルマンの助言を思い出す。
カオスの課題はなによりも経験不足。これはカメハメ特訓木人でも安々と解決できる問題ではない。
特効薬があるとすれば、経験豊富な超人との直接対決だろう。そう考えれば、目の前のロビンマスクはまさに適任といえる。
「た、たしかにそれもいいかも……」
カオス自身、まだ大したダメージは受けていない。別にこのまま任せても問題ない局面だ。
万太郎は手を引っ込め、引き続きパートナーに試合を任せることにした。
「フッ……私に指導を乞うか。ヘラクレス・ファクトリーとやらの校長になるらしい未来の私ならいざ知らず、今の私ではあまりいい教師にはなってやれんぞ」
カオスの意図を聞き、謙遜するように言うロビンマスク。
彼を尊敬するカオスは、真摯な態度で反論する。
「なにを言う。あなたはすでにMr.バラクーダとして正義超人界にウォーズマンを輩出するという偉業を成し遂げている。その功績は21世紀の未来まで見てもあまりに大きい……経験不足を埋める相手としちゃ申し分ないさ」
将来正義超人育成学校の校長になるという話も頷ける器だ。
カオスから惜しみない称賛を受けて、しかしロビンはフフフフフと怪しげに笑う。
「私がおまえを秒殺で倒してしまってもか?」
「えっ?」
カオスが間の抜けた反応を返した、次の瞬間。
「言葉通りの意味だ――っ!」
ロビンはいきなり両腕を振ってダッシュ。
一気にカオスの眼前に踏み入り、大振りなパンチを繰り出す。
それも一発では終わらない。右と左で交互に連撃を放っていった。
『あ――っとロビンマスク、型もなにもないがむしゃらなパンチの連打だ! まるで“さっきからずっとおまえを殴りたくてたまらなかった”と言わんばかりのラッシュでカオスをタコ殴りにしていく――っ!』
技というよりは、ただの暴力。
お手本にしろなどとはとても言えない攻撃に、カオスは虚を突かれた。
「トァ――ッ!」
大振りにもほどがあるナックルアローがカオスの身を弾き飛ばす。
「クソォ――ッ」
カオスはあえてその衝撃を利用し、後ろのロープまで下がった。
体重を預け、ぐいーんと反動をつけてからキャンバスを蹴る。
『吹っ飛ばされたカオス、逆にロープの反動を利用してローリング・ソバットの逆襲!』
勢いをつけた跳び後ろ回し蹴り。
当たればロビンの象徴ともいえる鎧が粉砕されそうな一撃だったが、ターゲットは地面を這うほどの低姿勢でこれを回避。
技を外したカオスの着地隙を狙い、次なるアクションに移る。
『ロビンマスク、これを躱して素早く背後に回った!』
カオスの両脇に後ろから両腕を差し込み、羽交い締めにする。
そうやって身動きを封じてから、一度外に引っ込んだ相棒に合図を出す。
「ヘイ、キッド!」
「オーケイ、ロビン!」
ロビンの合図を受け、キッドがリングに舞い戻る。
「くらえカオス! ジェロニモ先生直伝のトマホーク・チョップだ――っ!」
羽交い締めにされたカオスの正面に立ち、彼の両肩めがけて左右2本の手刀を振り下ろす。
まさしくトマホークのごとき重さを持った刃が、カオスの鎖骨を強く打った。
「グッ!」
激痛に歯を食いしばるカオス。
まだまだ、肩を狙ったのはほんの挨拶代わり。
相手が羽交い締め状態であるならば、もっと有効的な箇所――顔面を狙うべきだろう。
『あ~~っとこれは悪辣! ロビンマスクが背後からカオスを羽交い締めにし、キッドが正面からトマホーク・チョップの嵐! カオスの顔面が血にまみれていく――っ!』
一方が相手を羽交い締めにし、一方が動けない相手にチョップの連打。
効果的ではあるが、こんな技術もへったくれもない連携はツープラトンとも呼べない。
「ま、まさかキッドとロビンがあんななりふり構わない攻撃を仕掛けてくるなんて!」
万太郎は我が目を疑いたくなった。
とてもあのザ・マシンガンズを打ち破ったタッグチームの戦法とは思えない。
これではまるで素人の喧嘩殺法だ。
「さあ、そろそろオネンネしたいんじゃねえのか――っ!?」
威勢よく次なるチョップを叩き込もうとするキッド。
「誰が――っ!」
カオスは狙われている頭部を自ら前に突き出し、攻撃のタイミングを外させる。
『あ――っとカオス、キッドのチョップに頭突きを合わせた――っ!』
どんなに強力なトマホークとはいえ、頑強な岩に打ち付ければ案外脆いもの。
思わぬ反撃をもらってしまったキッドは攻撃の手を止め、それを見ていたロビンも動揺から拘束を緩めてしまう。
「そうら――っ!」
カオスはその隙にロビンの腕を振りほどき、後ろに向き直る。
正面を向いた状態から腰に手を回し、後ろへの反り投げた。
『続けてカオス、背後のロビンマスクをフロント・スープレックスで投げた――っ!』
キャンバスに倒れるロビン。
すぐに起き上がろうとするが、させるものかとカオスが足を繰り出していく。
「そらそら――っ!」
その攻撃方法は、踏みつけ。
それも一度や二度ではない、地団駄を踏むように何度も足裏を落としまくる。
ロビンは起き上がるのは無理と判断し、亀のように丸まって耐える構えを取った。
『カオス、うずくまるロビンに対しフットスタンプの連打! 先ほどのキッドとの技術的な攻防から一転、ロビンが出てきてからまるで子どもの喧嘩のような展開が続く――っ』
単調な攻撃は続けていく内に隙が生まれるもの。
ロビンはやがて必ず訪れる好機を待つ。
カオスは一撃の威力を高めようと、太腿を必要以上に高く上げた。
「ここだ!」
踏みつけのリズムが狂ったその間隙を狙い、ロビンが手を伸ばす。
カオスの身が宙に浮いた。
『ロビンがカオスの蹴り足をキャッチし、立ち上がった――っ』
このままキャンバスに叩きつければ大ダメージは必至。
だが超人レスリングの試合とは常にチャンスを狙うもの。
ロビンはより大きなリターンを求め、カオスを下に落とすのではなく上に抱え上げた。
上――そう、肩の上である。
相手の体を仰向けにして両肩に橋渡し。
右手で首を掴み、左手で右大腿部を捕らえ、首を支点に全身をしならせる。
これぞ、ロビンマスクの大得意技――
「タワーブリッジ!」
『あ――っと、ここで伝家の宝刀、タワーブリッジのお披露目だ――っ!』
ロビンマスクといえばこれ、と言うべき必殺技の発動に、観客が沸き上がる。
「二回戦のマシンガンズ戦では終盤まで温存させていたタワーブリッジだが、この技は他の技への繋ぎとしても機能する! まさか序盤で繰り出してくるとは予想できなかったかな!?」
相手の想定を外すことは戦術の初歩。
まさか、と驚いている間にKOまで持っていかれかねない。それがロビンマスクのタワーブリッジという技だ。
「クククッ……タ、タワーブリッジか」
背骨を軋ませられながらも、カオスは不敵に笑む。
「この技はすでにシャネルマンから対策を教えてもらっているぜ。今にも背骨がへし折られそうなこの痛みから逃げず、勇気を持ってぐるりと体を半回転させれば……体の反りが逆側になり、脅威はなくなる!」
カオスのコーチを務めたシャネルマンは過去にロビンのタワーブリッジを攻略したことがある。
準決勝ではアドレナリンズとの対戦も考えられたため、その極意は事前に教えてもらっていた。
「フッ……シャネルマンか。懐かしい名だ。あやつめ、どうやらこの三日間でおまえたちに肩入れしていたようだな」
ロビンマスクが昔を懐かしむ形で虚勢を張ろうとするが、関係ない。
仰向け体勢からうつ伏せ体勢へ、カオスは全身をぐるりと反転させようとする。
「だが!」
ロビンは首を捕らえる右手と右太腿を捕らえる左手に力を込め、その動きを制した。
「グッ……ビ、ビクともしない!?」
体を半回転させる、と一口に言ってもそう簡単ではない。
ロビンマスクは特別パワー自慢の超人ではないが、力のかけ方を熟知したクラッチはそう簡単に外せるものではなかった。
「なめるなよ! グランドキャニオンの一戦でキン肉マンに破られたときの未熟な私ならまだしも……“
タワーブリッジ継続。
このままではカオスの背中はアムステルダムの跳ね橋のように中央で真っ二つとなるだろう。
だがロビンはさらなる効果を求め、キャンバスを強く蹴った。
「トア――ッ!」
『ロビンマスク、カオスをタワーブリッジに極めたまま跳んだ――っ』
先に言ったとおり、タワーブリッジという技は他の技へのつなぎとしても機能する。
その代表格は、タワーブリッジの体勢で飛び上がったところから仕掛けるこの派生技。
ロビンマスクは上下逆さまの形になり、仰向けから一転してうつ伏せになったカオスの背中に仮面の突起を突き刺す。
そして重力の導くままに落下すれば、カオスの前面はキャンバスに叩きつけられる。
「逆タワーブリッジ――ッ!」
タワーブリッジによる背骨破壊、ロビンマスクの重量を乗せた激突技としての衝撃、そして仮面での刺突。
三重の責め苦がカオスに降りかかり、その口から赤い液体が飛び散った。
「ゴハァッ」
『ロビンマスクの逆タワーブリッジが決まった――っ! カオス、ダウンカウントとともにキャンバスに沈む~~っ』
うつ伏せに倒れるカオス。
ロビンマスクは悠然と立ち、苦しむライバルを見下ろした。
「グググ~~ッ」
ダメージが大きすぎるのか、カオスは立ち上がることはおろか背中を伸ばすことも適わない。
丸まった虫のような体勢で、キャンバスの上を這っていく。
「手を伸ばせカオス――ッ!」
目的地はエプロンから身を乗り出し腕を伸ばしている万太郎だ。
『タッチを要求する万太郎! しかしカオス、若干距離があるか!? キャンバスの上を這い万太郎のもとまで手を伸ばす――っ』
カオスの進みは遅い。妨害は容易だろう。
だというのに、ロビンはあろうことか腕組みをして傍観していた。
『それに対しロビンマスク、余裕の態度! 来るなら来いと言わんばかりの横綱相撲スタイルでどっしり構えているぞ――っ』
罠を警戒して追撃に来ないのか? それとも実は疲労困憊で回復に努めているのか?
いや、おそらくは実況の言うとおり強者ゆえの余裕。
これで決着してはつまらないと言わんばかりの慢心が、万太郎の癪に障った。
「なめやがって~~っ」
無事安全圏までたどり着いたカオスの手に、万太郎が触れる。
『マッスルブラザーズ・ヌーボー、ここで万太郎にタッチ成立!』
タッチに成功した万太郎がロープを潜りリングに入った。
なんとかロープを使って立ち上がったカオスは、忌々しい目つきでロビンのほうを見やる。
「き、気をつけろ万太郎。今日のロビンマスクは試合の組み立て方なんてまるで考えちゃいない。リビドーのままにやりたい放題やってくるぜ」
「ああ。おかげでちょっとロビンマスクという超人の見方が変わったよ」
万太郎の中のロビンマスクは教育機関の長を務めるに相応しい人格者。
ファイトスタイルも正義超人然としたスマートなフェアプレー主体と思っていたが……とんでもない。
今のロビンマスクを一言で言い表すならば、“暴れん坊”だ。
「どうするキッド? お目当てが来たが代わろうか?」
そのロビンは、やはり心身共に余裕。
万太郎たちが体勢を立て直している間、控えているキッドに語りかける。
万太郎はチームリーダーのキッドが熱望していた相手。譲るのもやぶさかではなかったが、本人は首を振った。
「いや、ここはロビンに任せるぜ。おまえだってキン肉マンの息子とやってみたいんだろう?」
ニッ、と笑むキッド。
「フッ……お見通しか」
終生のライバルと見定めた男の息子。心が踊らないといえば嘘になる。
リーダーの厚意に甘え、ロビンは引き続きリングの上に立った。
「さあ、未来の息子の友人よ。おじさんが軽く揉んでやろう」
両手を前に突き出しながら、万太郎との距離を詰めていく。
『ロビンマスク、万太郎に手四つで組もうとしてくるぞ――っ』
万太郎も臆さず前に進んでいく。
しかし両手は胸の前で構えたまま、決して不用意には繰り出さない。
「ロビン戦法No.2、相手の誘いには絶対乗るな」
「なにっ?」
ぼそっとつぶやき、万太郎が繰り出したのは――蹴り。
それもロビンマスクの側頭部を狙った上段蹴りだ。
『あ――っと万太郎のハイキックが炸裂――っ! これは先に行われたロビンマスク対キン肉マンのワンシーンを思い起こさせる息子の意趣返しだ~~っ!』
二回戦ではキン肉マンの手四つを拒否しハイキックをくらわせたロビンマスク――まさかそれを息子である万太郎にやり返されるとは。
「おおーし! いいぞ万太郎! やったれ~~っ!」
観戦していたキン肉マンの応援にも熱が入る。
万太郎は怯んだロビンマスクに向かって飛びかかり、ドロップキックの要領で頭部を挟み込んだ。
「くらえ、フランケンシュタイナ――ッ!」
『万太郎、隙を突いてロビンマスクの頭を挟み込み、バック転しながら両足の力だけで後方へ投げた――っ!』
脳天をキャンバスに突き刺されダウンするロビンマスク。
体勢は背中を見せるうつ伏せ。
ならば、と万太郎は追撃に取り掛かる。
「まだまだいくぜ――っ!」
軽い跳躍、そして肘を下に突き出しながらの落下。
落下地点には無防備なロビンの背中があった。
『さらに万太郎、体重を乗せたエルボー・ドロップを次々とロビンマスクの背中に落としていく――っ』
背中攻めを得意とするロビンではあるが、自身の背中が無敵かといえばノーだ。
万太郎は確かな手応えを感じながら、なおもエルボー・ドロップを繰り返そうとする。
「こんなものか~~っ、キン肉マンの息子とやらは~~っ」
だがそのとき、ロビンの体がくるっと反転した。
落ちてきた肘を冷静に両手で掴む。
『ロビンマスク、体を仰向けに反転し万太郎のエルボーをキャッチした――っ』
捕らえた肘を起点に、両足も使って万太郎の四肢をさらに捕らえていく。
仕掛ける技は変形の吊り天井固めだ。
『そしてそのまま、リバース・ロメロ・スペシャルに固めた――っ』
直接的な痛みはないが、四肢を吊り上げることで身動きを封じるリバース・ロメロ。
それはツープラトン発動のための下準備となる。
「キッド!」
「おうよ!」
一度後ろに下がっていたキッドが勢いよく飛び出し、先程の万太郎を真似るように肘打ちを落とす。
「アドレナリンズ流“エルボー・ドロップ返し”!」
『あ~~っとリバース・ロメロに固めた状態の万太郎に、キッドがエルボー・ドロップのお返しだ――っ!』
万太郎の背中にキッドのエルボーが落ち、ロビンが四肢を封じているためその衝撃は逃げることなく襲いかかる。
「グハッ!」
たった一撃のエルボー・ドロップでも、先程の連続エルボーに匹敵する威力だ。
これがツープラトンによるマジック。さっきまで優勢だった万太郎は手痛い反撃をくらってしまった。
反撃はふたりでより効果的に。タッグマッチの基本に則った仕掛けは、しかしそう簡単にこなせるものではない。
観戦中のテリーマンはごくりと生唾を飲む。
「さすがはロビン……さっきのカオスへのトマホーク・チョップといい、パートナーであるキッドにツープラトンの合図を出すタイミングが絶妙だ。試合序盤から荒々しいファイトを見せつけている一方で、根底にある超人レスラーとしての経験値の高さはいかんなく発揮されている」
ただの暴れん坊であれば万太郎もここまで苦戦はしないだろう。若者の苦労が偲ばれる。
ジ・アドレナリンズのふたりはそんなの知ったことかと言わんばかりにやりたい放題を続行。
悶絶する万太郎を見下ろしながら、大げさな挙措で煽る。
「ヘイ! どうした万太郎!? 出てきたばかりでもうダウンか!?」
「ヘイヘイ! なんだったら今から山を下りて、パパに助けを求めてきたらどうだ!?」
『テリー・ザ・キッドとロビンマスク、ふたり揃って万太郎を煽りまくっているぞ~~っ』
痛烈なツープラトンをくらった直後にこの逆鱗を撫でるような挑発。
メンタルコントロールに優れた超人でも怒りで我を忘れてしまうだろう。それは大きな綻びとなり、さらなる隙を生む。
だが、キン肉万太郎という超人はそれほど簡単ではない。
「ロビン戦法No.2“相手の誘いには絶対乗るな”……このキン肉万太郎はこれでもロビンマスク先生のことを尊敬しているんだ。ゆえにこの教えは徹底させてもらう」
万太郎の表情は、真顔。
そこに我を忘れるような怒りは感じられない。
『万太郎、アドレナリンズの誘いには乗らず静かに立ち上がる――っ』
アドレナリンズの挑発は空振りに終わった。
ロビンマスクは未来の教え子が自身のロビン戦法を引用していることに嬉しさを覚え、しかし表面上は対戦相手として口悪く罵る。
「フンッ、意気地なしめが!」
クールに振る舞う万太郎に、ロビンは思う。
キン肉マンとは性格が似ているようで違う……親の教育がそうさせたのか、それとも時代や友達の影響によるものか。
冷めている、とも言いかえられる万太郎の対応に失望じみたものを感じるロビンマスクだったが、目の前の若者は突如として牙を向けてきた。
「そしてマンタロー戦法No.1! “相手のナメた誘いには拒否したフリして乗ってやれ”だ!」
おとなしかった少年が、突然感情をあらわにして襲いかかってくる。
その迫力は百戦錬磨のロビンを動揺させるほどのもので、金縛りのような棒立ちを強いられた。
万太郎はそんなロビンに飛びかかり、頭部を両足で挟み込む。
これは、キン肉万太郎が20世紀の地に降り立ち初めて見せたワンアクション。
トーナメント・マウンテンの頂きで、眼前のロビンマスクを救うべく時間超人ライトニングに仕掛けた奇襲技。
相手の頭を挟み込んだまま、体を捻る。
『万太郎、油断していたロビンマスクの頭部をフライング・ヘッドシザースでキャンバスに叩きつけた――っ!』