ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

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第071話 伝統と伝統のホコタテ対決!

 万太郎が仕掛けたのはフライング・ヘッドシザース。

 かつてロビンマスクの窮地を救った技で、今度はロビンマスクの窮地を作り出す。

 

「どうだキッドよ、覚えているか――っ!? ボクたちが20世紀の地に降り立って初めて披露した記念すべきアクションを――っ!」

 

 万太郎はキャンバスに頭が突き刺さったロビンマスクではなく、エプロンのテリー・ザ・キッドに声を飛ばす。

 誘われている――そう直感したキッドは、ロープを飛び越え攻撃直後の万太郎を狙った。

 

「そういうことならオレはこいつだ――っ!」

 

 万太郎の背中側から後ろ手に首を持ち、肩に載せる形でその場に落とす。

 衝撃で万太郎の脳が激しく揺れた。

 

『ロビンマスクに代わり前に出たキッド、万太郎をショルダー・ネックブリーカーの形で叩き落とす――っ!』

 

 ショルダー・ネックブリーカー。

 こちらは同じく、キッドがロビンの窮地を救うべく時間超人サンダーに見舞った技だ。

 観客席にいた当人たち、“世界五大厄(ファイブディザスターズ)”のライトニングとサンダーは肩を震わせる。

 

「ジョワジョワ、数日前にロビンマスク抹殺を妨害されたあの一連の出来事を思い出すぜ」

「ヌワヌワ、あのときはまあまあ見事な連携だったが今は敵同士とは……正義超人ってやつは愚かしい連中だぜ」

 

 正義超人同士の争いは悪行・時間超人たちにとっては滑稽なものに映っただろう。

 見世物のショーを楽しむような下卑た笑い声を漏らしつつ、ウォーキューブに怨念を送る。

 そんな仇敵の怨念などは意に介さず、リングに立つ因縁のライバルふたりはあらためて向かい合った。

 

『さあ~~っ、リング上はキン肉万太郎vsテリー・ザ・キッドの対決にシフト! こうして向かい合った姿はまさしくあの“ザ・マシンガンズ”、キン肉マンとテリーマンに瓜二つ! 未来のⅡ世対決と言われても納得せざるをえない光景であります!』

 

 轟く超人レスリングファンの歓声。観客席のボルテージも高まる。

 ネプチューンマンもつい立場を忘れて見入ってしまいそうだった。

 

「キン肉マンとテリーマンの対戦カードは、非公式な私闘を除けば34年後の未来にいたっても実現しなかった夢のカードだ……それがよもや、この20世紀の地で先に息子たちによって擬似的に実現されてしまうとはな」

 

 沸き立っているのは隣のウォーズマンも同じ。

 ネプチューンマンに同調しつつ、リングで技を競い合っている若者ふたりの心中を思う。

 

「キン肉万太郎vsテリー・ザ・キッドのカードだって、21世紀の超人レスリングファンからしてみればありそうでなかった夢のカードさ。ふたりとも元は、悪行超人の脅威から人間を守るために修行を積んできたヘラクレス・ファクトリーの戦士……直接対決で実力を競い合うことになるなど、お互い夢にも思わなかったろうぜ」

 

 大先輩たちに見守られながら、キン肉万太郎vsテリー・ザ・キッドの対決は動きを見せようとしていた。

 先に動いたのは万太郎である。

 

「キッド。ボクはおまえと対戦するとなったらぜひとも試してみたかったことがある」

「なんだと?」

 

 先制攻撃を仕掛けるわけではなく、相手に言葉を投げかけてから構えを取る。

 下半身をその場にどっしりと根差し、胸と顔面を覆うように両腕を縦にするガードポジションだ。

 

「さあ、お得意のテキサス流ブロンコ・フィストでこい」

 

 キン肉万太郎が今大会で初めて披露するこのガードポジションは、しかし会場の誰もが知っていた。

 

『あ~~っと万太郎、これはキン肉マンの“肉のカーテン”か――っ!?』

 

 第56第キン肉大王ことキン肉タツノリが『三日三晩もの間敵の攻撃を防ぎ続けた』という逸話を残すほどの防御技。

 それはキン肉族に代々受け継がれるだけあって、鉄壁の防御性能を誇る。

 万太郎はそれを、キッドが攻撃を繰り出す前から見せてきたのだ。

 

「キン肉族に伝わる難攻不落のガードスタイル……それにテキサス・ブロンコ・フィストを打ち込んでこいとは、挑発しやがるぜ」

 

 万太郎の狙いは、ブロンコ・フィストvs肉のカーテンの真っ向勝負だ。

 互いの得意技をぶつけ合い、どちらが勝つかの力比べをしようと提案している。

 

「さあどうした怖いのか!? テリー一族伝統の技がキン肉族の伝統技に負けるのが!」

「ほざけ! この矛盾(ホコタテ)対決を制し、肉のカーテンの不敗神話も打ち砕いてやるぜ――っ!」

 

 キッドは正面から接近し、万太郎の強気な表情に拳を打ち込む。

 

『万太郎の誘いに乗ったキッド、その顔面に向けてブロンコ・フィストを連射していく――っ』

 

 正面からのストレートパンチ、下からのアッパーカット、横からのフック、勢いをつけてのナックルアロー。

 技の角度や速度を変え試行錯誤を繰り返すが、そのことごとくが万太郎の両腕に阻まれる。

 

『し……しかしこれはやはり、キン肉マン印の肉のカーテン! 鉄壁のガードポジションで顔面にパンチが到達するのを防いでいるぞ――っ』

 

「クッ!」

 

 思いどおりにいかず歯噛みするキッド。

 父テリーマンから受け継ぎし自慢のブロンコ・フィストが肉のカーテンに敗北するなど納得できない。

 キッドは堅牢な城門をこじ開けるがごとく、万太郎の前髪を掴んだ。

 

『あ――っとキッド、万太郎のマスクから露出した髪の毛を掴みさらなる連射体勢に入る!』

 

 より殴りやすい体勢を整えてからの、猛烈なラッシュ。

 万太郎は一切ガードを緩めることなく、集中した眼差しを両腕の間から覗かせる。

 キッドはその顔つきを情けないものに変えるべく、がむしゃらにパンチを打ち込み続けた。

 

『肉が肉を、骨が骨を打つ、激しい打撃音が鳴り響く~~っ! しかし両腕のガードの向こう側に見える万太郎の表情からは余裕が消えない! 肉のカーテン、鉄壁すぎるぞ――っ!』

 

 生半可な打撃では、何発打ち込んだところで埒が明かない。

 だったらどデカい一発を叩き込むまでだ――キッドは一度、万太郎から距離を取った。

 

「これならどうだ――っ!」

 

 左腕をぐるぐると回す所作。

 

『キッド、父テリーマンを思わせるアングリーシャッフルだ――っ』

 

 万太郎に回避はない。

 だからこそ、これでもかと勢いをつけた大振りのパンチが命中する。

 

『渾身の一撃を叩き込む――っ!』

 

 肉のカーテンが大きく揺らぎ、巨木のような安定感だった2本の脚がズザーッと後ろに下がった。

 だが――ガード自体は健在。

 万太郎の表情が変わることもなかった。

 

『ま……万太郎、大きく後退したものの、そのガードポジションは崩れず! テキサス・ブロンコ・フィストを一発も顔面に食らわせないまま、猛攻を耐えきりました!』

 

 右手、左手、共に痛みを訴える拳を見て、キッドは悔しさに顔を歪める。

 

「グググ……チクショウ~~ッ」

 

 矛盾対決は盾の勝利。

 突きつけられた敗北にキッドは気持ちの整理が追いつかず、諦めきれないといった様子で息を切らしていた。

 

「いかん! キッド、一旦息を整えろ!」

 

 後ろからロビンのアドバイスが飛ぶが、遅い。

 万太郎はすでに踏み込んでいた。

 

「疲れが見えたぜ、キッド――ッ!」

 

『あ――っと万太郎、肉のカーテンを解除しキッドに突っかけた――っ!』

 

 疲労からやや前傾姿勢になっていたキッドを、上から潰す。

 両腕を背中側から腰に回し、ひっくり返して持ち上げようとしていた。

 

「このタイミングなら――っ!」

 

『キッドの体に上から覆いかぶさり胴体に両腕を回す――っ! これはまさか、キン肉バスターのセットアップか――っ!?』

 

 実況が語らずとも、キッドには万太郎の狙いが読めている。

 持ち上げられる前に両腕を振った。

 

「あまい!」

 

『しかしキッド、まだ体力は残っている! 掴みにきた万太郎を両腕で振り払った――っ』

 

 キン肉バスターのセットアップをカットしたキッド。しかし今の抵抗でパワーを使い切った。

 

「それも折り込み済みだ――っ!」

 

 万太郎の本命は二の矢。

 キッドの左腕を掴み、リングロープに向かって投げ放った。

 

『キッドの抵抗を予期していたか万太郎、即座にキッドをロープに振る――っ』

 

 反動で戻ってきたキッドの左肩下に、自身の肩を差し入れる。

 首は左腕でがっちり捕獲。抵抗する力を奪いつつ、そこを支点に持ち上げた。

 

「“両腕の絡みを強固にして、大地の巨木を引き抜く心構えで、敵の体を高くさし上げる”!」

 

 まさに巨木を引き抜くような動作で頭上高くまで持ち上げれば、先程狙ったように相手はひっくり返った体勢となる。

 

「“高く鷹の如くに舞い上がる”!」

 

『反動で返ってきたキッドを、再度捕らえ……跳んだ――っ!』

 

 その状態でリング上空に躍り出た万太郎は、キッドの体をぐるりと回し表裏を逆転させる。

 あらためて相手の右肩下に自身の肩を差し入れ、両腕は両大腿部をホールド。

 

「“宙で敵を独楽の如くに回転させ、両大腿を押さえ体の自由を封じる”!」

 

 逆さのまま体が“コ”の字のように折れ曲がるキッド。

 万太郎はそんなふうにキッドを捕らえ、落下体勢に入ろうとしていた。

 

「“このまま勢いよく敵をマットに叩きつければ……首・背骨・腰骨・左右の大腿部の五ヶ所が粉砕される”!」

 

 ここまでの一連の流れはキン肉マンの得意技、キン肉バスターに酷似している。

 だがひとつ大きく違う点は、技をかけられている側のキッドの向き。

 表向きの万太郎に対し、キッドは裏側を向いているのだ。

 

「な、なんじゃ~~っ! あのキン肉バスターの形は~~っ!?」

 

 見たこともない新型バスターに度肝を抜かれるキン肉マン。

 万太郎は得意げに、しかし技に注ぐ集中力を乱さないよう言う。

 

「20世紀のみんなが馴染みのあるキン肉バスターは相手を正面に向けるが……このキン肉万太郎が得意とするバスターはやや違う! これぞ、48の殺人技のひとつ“ターンオーバー・キン肉バスター”だぁ――――っ!」

 

 その視覚的インパクトは強く、あのアルティメット・スカー・バスターやアルティメット・阿修羅バスターが披露されたときのような歓声が巻き起こる。

 しかしながら、キッドもまだ抵抗する意思を失ってはいない。

 

「こ……こんなもの、超人オリンピック・ザ・レザレクション決勝でケビンがやったように首から抜けてしまえば……」

 

 そう、キッドはこのターンオーバー・キン肉バスターが破られるシーンを目撃したことがあるのだ。

 (やわ)らかきこと(ましら)(さま)に――キッドはケビンマスクに倣い首から抜こうと考えるが、万太郎のフックはビクともしない。

 

「無駄だよキッド! おまえにはケビンのような体の柔らかさも、ましてやバッファローマン先生のような6を9にひっくり返すほどのパワフルさもない! おとなしくくらえ――っ!」

 

 テリー・ザ・キッドにキン肉バスターを破ることは不可能。

 残酷な現実を突きつけ、ついにその瞬間が訪れた。

 

『キン肉万太郎のターンオーバー・キン肉バスターが今、キャンバスに着弾~~~~っ!』

 

 キッドの首、背骨、腰骨、左右の大腿骨――五所粉砕。

 

「ガハッ!」

 

 口から盛大に吐血し、その体は白いキャンバスに沈んだ。

 

『テリー・ザ・キッド、無念のダウン~~ッ!』

 

 技を解いた万太郎は、ゆっくりと立ち上がる。

 倒れるライバルを見下ろしながら、確かな必殺技(フェイバリット)炸裂の余韻を堪能しているのだ。

 追い打ちは必要ない。ただダウンカウントを待つ。

 

 

 

「つ……強い!」

 

 思わず叫んだのは、客席のウォーズマンである。

 

「確かに万太郎はもともと強かったが……キッドとの直接対決において、ここまで明確に差が生まれてくるとは! いや、一回戦の“地獄のカーペンターズ”戦や二回戦の“2000万パワーズ”戦と比べてみても明らかにパワーアップしている! いったいなぜ……!?」

 

 キッドを圧倒する万太郎の実力に疑問を持つウォーズマン。

 その答えは、傍らのネプチューンマンが持ち合わせていた。

 

「親父だよ……」

 

 ネプチューンマンは静かに、そう唱える。

 

「準決勝が始まるまでの準備期間で、万太郎は実の父親であるキン肉スグルに鍛えてもらったんだ……たった数日だが、万太郎にとってはまさに値千金、今までで一番濃密な修行期間だったろうぜ……」

 

 彼は知っているのだ。

 自らが仲介を果たしたシャネルマンと、キン肉万太郎の地獄のような――いや。

 ある意味では“天国のような”とも表現できる、あの特訓の日を。

 

 

 ◇

 

 

 時は遡る。

 師匠カメハメに倣い、シャネルマンとして“マッスルブラザーズ・ヌーボー”を鍛えることにしたキン肉スグルは、万太郎相手にカメハメ特訓木人と称した組木を操っていた。

 

「どうした~~っ! キン肉マンの息子ってやつはこんなものか――っ!」

 

 すでに日も落ちた夜。

 シャネルマンは疲労からバテ始めてきた万太郎に檄を飛ばす。

 

「フフフッ……」

 

 万太郎は明らかに疲弊した姿で、しかしなぜか幸せな夢でも見ているかのように笑みを浮かべた。

 

「こら~~っ! 練習の最中になにを笑っていやがる! まだ余裕があるようならもっともっと厳しくいったるぜ――っ!」

 

 シャネルマンはスパルタで接しようとするが、妙なスイッチが入ってしまった万太郎は笑みを崩さぬまま言う。

 

「ごめんごめん……準決勝を控えたこんなときに、本当はいけないんだろうけど……ボクは今、嬉しくてたまらないんだ」

「う、嬉しいだと~~っ?」

 

 まさかこのキン肉万太郎という男、ドMちゃんなのでは……?

 キン肉マンは言わなくてもいいことを口にしそうになるが、万太郎はそれよりも早く心中を語り始める。

 

「21世紀の未来……ボクがミートくらいちっちゃかった頃、まだ40過ぎくらいだった父上はボクに超人レスリングのイロハを教えてくれた。でもボクが10代になり、体も大きくなっていよいよ正義超人としてデビューするぞって頃には、父上は50を過ぎて筋肉も落ち、スパーリングなんてできないような体になってしまった……」

 

 サングラスを貫通して目玉が飛び出しそうなほどの爆弾発言だ。

 

「なっ……具体的には!?」

 

 キン肉マン、いやシャネルマンは聞き捨てならず、食い入るように詳細を問うた。

 万太郎は少しだけ溜めを作り、シャネルマンの不安を煽ってから続きを言う。

 

「長い闘いの後遺症でヒザの靭帯は断裂! 腰は椎間板ヘルニア! 他にも老眼、痔持ち、胃潰瘍……」

「ええ~~っ!? キン肉マンって将来そんな風になるの~~っ!?」

 

 50過ぎといえばまだまだ働き盛り。現にネプチューンマンもそれくらいだが今も前線で闘っているというのに、なんで!?

 シャネルマンはショックを隠しきれず愕然とする。

 そんな父キン肉マン……いやシャネルマンに、万太郎は優しげな微笑みを見せた。

 

「だから嬉しいんだ。こうやってシャネルマンとスパーリングをしていると……幼い頃ボクを鍛えてくれた父上が戻ってきてくれたみたいで」

 

 反抗期もそれなりに……いやけっこうあったりはしたが、万太郎は超人格闘技のイロハを教えてくれた父のことが大好きだった。

 大きくなって、父と対等な超人に成長したらまたスパーリングをしたい。できれば全盛期の頃の父と。

 実現不可能と思われた夢がこうして現実のものとなり、万太郎は感動を抑えきれなかった。

 

「万太郎……」

 

 未来から来た息子の思わぬ感慨を受けて、シャネルマンは自身を見つめ直す。

 今はまだ、この変装を解いてやつを認めてやることはできない。

 それでも、将来息子の願いを踏みにじるような父親にだけはなるまいと強く思うのだった。

 

「フン……オレ様はおまえの親父のことなんて知らねえが、今の話を聞いて個人的にもう少し……い、いや、かなり……健康ってやつに気をつけてみようと思ったぜ」

 

 父と子の絆。

 ネプチューンマンが経験した“前回”と形は違えど、すでに両者の確執は解消されている。

 愛する父からの手ほどきを受けた今のキン肉万太郎は、二回戦のときよりも何倍にも強くなっているのだ。

 

 

 ◇

 

 

 時は戻り、準決勝第1試合のリング。

 ダウンカウントが後半まで進み、あわやこれまでか――というところで、テリー・ザ・キッドが立ち上がった。

 

「タ……ターンオーバー・キン肉バスター。“新世代超人(ニュージェネレーション)入替え戦”決勝……スカーフェイス戦で万太郎が開発した技だが……同じ試合でもうひとつの代表的必殺技“マッスル・ミレニアム”を編み出しただけに今ひとつ影の薄い技だった。だが……と、とんでもねえ。こちらも必殺級の破壊力だぜ……」

 

『あ――っとキッド、カウント9で立ち上がった! しかし見るからにダメージが残っている~~っ』

 

 立ち上がりはしたが、その立ち姿はふらふらで、いつまた倒れてもおかしくはない。

 あたりまえだ。

 超人が立つ上での要となる首、背骨、腰骨、左右の大腿骨を粉砕する五所蹂躙絡み……それをまともにくらって9カウントで立ち上がれただけ見事なもの。

 彼のパートナーとしては、よく立ち上がってくれたと激励を送るべきだろう。

 

「チッ、テリー・ザ・キッドのうすのろ野郎」

 

 だが、ジ・アドレナリンズの片翼であるロビンマスクはそう甘くはなかった。

 

「ロ……ロビン?」

 

 信頼するパートナーの口からこぼれた、辛辣な一言。

 キッドは耳を疑いたくなるよう思いでロビンの顔を見た。

 残念ながら仮面による鉄面皮を見ても、その奥に隠された真の表情は窺えない。

 

「ブロンコ・フィストで肉のカーテンを突破することに失敗し、あまつさえキン肉族の代名詞ともいえる必殺技・キン肉バスターを食らってしまうとは……この勝負、もはやテリー一族の完全敗北と言ってしまっていいだろう」

「なっ……!?」

 

 激励を送るどころか、完全敗北を言い渡すとは。

 重傷の相棒にムチを打つような所業だ。キッドはつい声を荒げてしまう。

 

「なにを言うんだロビン! 確かにみっともねえ姿を見せちまったが……オレはまだやれる! テリー・ザ・キッドとキン肉万太郎のガチンコ勝負は、ここからが本番だぜ!」

 

 そうだ。キン肉バスターをくらいはしたが、まだダメージが蓄積しきっていなかったためKOには程遠い。

 キッドはファイティングポーズを取って健在ぶりをアピールするが、ロビンはふるふると首を振る。

 

「私は失望してるんだよ、キッド……」

 

 そう言って、ロビンマスクはため息をこぼす。

 キッド、さらに彼と闘っている万太郎、そして後ろに控えているカオス、この場にいる全員に向けて宣言する。

 

「あの雨の日、おまえをパートナーとして選んだのは失敗だった。ライバルとの闘いに負けるような男など、ジ・アドレナリンズには必要ない! 今すぐ代われ! 万太郎もカオスも、このロビンマスクがひとりで蹴散らしてくれるわ――っ!」

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