ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ” 作:速筆魔王LX
「ロビンマスクが……カオスの父上に!?」
ロビンマスクを前にして突然足を止めてしまったカオス。
その理由は“ロビンマスクが死んだはずの父ミニッツ・アヴェニールに重なって見える”という理解不能なもの。
万太郎はわけがわからず、カオスの言葉の続きを待った。
「あの落ち着き払った物腰……“さあおまえの自慢の技をかけてみろ”と言わんばかりの寛大な態度……幼い頃オレに時間超人格闘術を教えてくれ、やがてライトニングとサンダーのふたりに惨殺された父……ミニッツ・アヴェニールとそっくりだ~~っ」
カオスはなおも狼狽した様子でそう言う。
「そっくりって、カオスの父上ってロビンマスクみたいな鉄仮面をつけてたの?」
「あ、あくまでも風格の話さ。顔は似ても似つかない……だというのに、面影を感じてしまう。オレ自身も意味がわからず困惑しているんだ。試合が始まった当初はこんなことはなかったのに、どうしていきなり……」
ロビンは特別なことなどなにもしていない。であるならば、これはカオス自身の変調だ。
カオスの過去などなにも知らないロビンマスクは、動かなくなった相手に己の見解を口にする。
「フッ……カオスよ。やはりおまえのウィークポイントは実戦経験の少なさだな。2000万パワーズとの闘いでは勢いに任せた攻撃でなんとかなっていたかもしれないが、私のような経験豊富な戦巧者がこうどっしり構えていると、どんな技を繰り出していいか正解がわからなくなってしまう。なにを仕掛けてもたやすく返されてしまうような……そんな頭の中の悪しきイメージによって足を止められているのだろう?」
カオスは否定も肯定もしない。そうするだけの余裕がない。
「ウウッ」
しかしこのまま手をこまねいていても仕方がない。
ロビンは父などではなく倒すべき敵なのだと言い聞かせ、無理やり体を動かした。
「ウワア――ッ!」
『カオス、時間をかけたわりには真正面からタックルで突っ込んだ――っ!』
無意識に任せて選び取った選択肢は、凡庸なタックル。
「ダメだカオス――ッ! そのタイミングでは!」
すぐに後ろの万太郎が失策を指摘するが、カオスは止まれない。
「そうだ、それは不正解だ――っ!」
ロビンマスクは腰を深く落とし、回避ではなく真っ向から受け止める構えを取った。
カオスがロビンの腰に組みつく――が、しかし。
『あ――っとロビンマスク、微動だにしない! カオスのストレート・タックルをくらいながらも余裕の直立不動だ――っ』
テイクダウンならず。
倒せないならすぐ離れて別の手を打つべきだが、カオスはそこでさらに力を込めた。
「ウググ~~ッ」
意を決して仕掛けたタックルだ。
再び距離を取って攻撃の手を考えるのは、なぜだかわからないが恐ろしい。
このまま倒せれば気持ちが楽――ロビンマスクはカオスのそんな弱さを攻めてくる。
「強引に倒そうとしても無駄だ」
自身の腰にしがみつくカオスを見下ろしながら、両腕を上げた。
「ほ~ら背中がむき出しになっているぞ! これでは反撃が入れ放題ではないか――っ」
無防備になっている背中に握った両拳を振り下ろす。
右、左、右、と交互にリズムよく拳打を繰り返した。
『ロビンマスク、タックルでのテイクダウンにこだわるカオスに鉄槌の乱れ打ち! まるで太鼓をバチで叩くかのごとく打撃音が鳴り響く――っ!』
ダメージは入っているはずだが、それでもカオスはロビンを離さない。
「なら……これならどうだ――っ!」
巨木を倒すのではなく引っこ抜くイメージで力の方向性を変えた。
ロビンの足がキャンバスから離れる。
『なんとカオス、ロビンマスクを倒すのではなく持ち上げた! ここから投げ技に移行か!?』
ボディスラムか? フロント・スープレックスか? それともまだ見ぬ
“マッスルブラザーズ・ヌーボー”のファンが眼差しに期待を込めるが……ロビンを捕らえるカオスの腕が緩んでいく。
ロビンはその腕を掴んで外し、拘束から逃れた。
『お――っとしかし躊躇したかカオス! 次のムーブに移る前にロビンマスクがエスケープ!』
なんのダメージもなくキャンバスに足をつけたロビンは、再びカオスから距離を取る。
カオスはすぐに追う――べきだったが、逃げられたショックのせいか棒立ちになっていた。
『どうしたんだカオス!? リング上で立ち尽くしている――っ』
否、逃げられたショックのせいなどではない。
カオスは今の一連の攻防で、ある気づきを得ていた。
「そ、そうか……そういうことだったのか……」
ひとりで納得するカオスに、しかしロビンは待ってはくれない。
「タァ――ッ!」
今度はロビンから仕掛け、カオスの両肩を掴んだ。
抗うべく、カオスもロビンの両肩を掴む。
『ロビンマスクにカオス、リング中央でロックアップ――ッ!』
この大会では主にネプチューンマンが得意とした、力比べの構図になった。
ロビンもカオスも特別パワー自慢というわけではないが、だからといって非力でもない。
だが、優勢と劣勢の関係は見るも明らか。
ロビンに比べ、カオスの腰が引けていた。
互いに肩を組み合う至近距離を利用し、ロビンが問う。
「これまで様々な強者とこの体勢で組み合ってきたが――これほど手応えのない感触は初めてだ。カオスよ、なぜいきなり腑抜けになった?」
試合当初のカオスはこうではなかった。
ダメージの蓄積による後遺症とは思えない……だとすれば、精神的な不調か。
カオスは答える。
「オレは……ライトニングとサンダーのふたりに両親を惨殺された」
「!?」
思いもしなかった衝撃の告白に、ロビンの力が緩む。
しかしカオスは押し返したりはできず、弱々しい口調で続きを話した。
「それだけじゃない……凶行はまだ幼かったオレにまで及ぼうとした。父と母は死の間際、オレを逃がすために懸命に時間を稼いでくれたんだ……」
ロビンマスクを狙い、現在は妻子を命の危機に追いやっている悪行・時間超人。
それがよもやカオスの両親を惨殺していたなど……試合中に聞きたくはなかった。
しかしその話が真実であるならば、時間超人を憎むカオスの闘争心は計り知れないはず。
ここで敗退しては彼らまでたどり着けない。それが突如腑抜けになる理由とはなんなのか。
「子を守ろうとする親の心……オレはそれを、ケビンマスクを救おうとするあんたに重ねてしまった」
ああ――と、ロビンは一瞬で理解した。
カオス・アヴェニール。
彼もまた、万太郎のような心優しい超人なのだと。
「両親に命がけで守られ生き延びたオレが……子を命がけで救おうとするロビン、あんたの邪魔をするのは道理に合わないのではないか……正義超人の在り方に反するのではないかと……父のようにどっしり構えるあんたを見たとき、そう思ってしまったんだ。そしたら次の瞬間、何通りも考えていた攻防のパターンが全部真っ白になったよ……」
カオスにとって、ロビンを倒すことは我が子を守ろうとした父ミニッツを惨殺するにも等しい所業なのだろう。
そんなものは正義超人とは呼べない。あの憎き時間超人と同じだ。
そのことに気づいてしまったからこそ、ロビン本人とのマッチアップで力を発揮できなくなってしまった。
「……まさかこの私が手心を加えられてしまうとはな」
チラッ、とエプロンサイドを見やるロビンマスク。
万太郎は哀しげな表情を浮かべている。おそらく彼もカオスの胸中に気づいているのか。
カオスの懊悩は、チームリーダーの万太郎にとっても叱り飛ばせるようなものではない。
「ならばその悩みを抱えたまま沈むがいい――っ!」
だからどうした。
今は真剣勝負の真っ最中だ。
ロビンはカオスの両肩を握りつぶさんほど強く掴み、そのまま体を持ち上げた。
そして、その場で回転する。
『ロビンマスクのパワープレイ! ロックアップの体勢のままカオスをぶん回す――っ!』
カオスに抵抗はない。足は宙に浮き、されるがままだ。
「デリャッ!」
遠心力を乗せて投げ放つ。
向かう先は、万太郎がすぐそばに立つコーナーポスト。
『投げた――っ! カオス、コーナーに大激突だ――っ!』
背中からぶつかったカオスはその場に崩れ、尻もち状態で座り込んでしまう。
「グウ~~ッ」
メンタル、そして肉体にまで大ダメージを受けてしまったカオス。
その弱々しい姿は、見る者すべてを悲壮な顔つきにさせた。
『突如として力をなくしてしまったカオス! 体力切れか!? マッスルブラザーズ・ヌーボー絶対絶命~~っ!』
いったいどうすればいい。
カオスは悩み、ふと、ロープの向こう側に立つ相棒と目が遭った。
「ま……万太郎……」
これまでも数々の窮地を救ってくれた頼れる相棒、キン肉万太郎。
あとは彼にすべて託してしまえば……いや、それでロビンを倒したとて結局は同じ話。
万太郎にもそれはわかっていた。
「タッチはしないよ、カオス」
だからカオスが言うより早く、厳しくも優しい意見を口にする。
「ロビンマスクとは闘えない……それがおまえのくだした決断なら仕方がない。ボクはおまえの意思を尊重する。おまえがギブアップを宣言するとき、それはマッスルブラザーズ・ヌーボーが敗北するときだ」
ケビンマスクを救いたい気持ちはジ・アドレナリンズも同じ。
ロビンとキッドに後を託し、自分たちは身を引く。それも悪い判断ではないだろう。
「だけどカオス、これだけは言わせてもらう」
だが――カオスにはまだ迷いが見える。
だからこそ、万太郎は正義超人の先輩として言うべきことを言う。
「心に愛がなければ、真の
それは、敬愛する父キン肉マンから教わってきたことだった。
「あ……愛」
万太郎が口にした“愛”という言葉を噛みしめるカオス。
言葉の意味は理解できれど、その捉え方は無限と呼べるほどにある。
万太郎の言う愛とはいったいいかなる意味なのか。
「他者を慈しみ、守るだけが“愛”じゃないさ。ライトニングとサンダーに故郷を滅ぼされ、長い時を嘆きと悲しみに費やしたおまえのように……あのロビンマスクも、多くの試練にぶち当たってきたんだ。でも決してくじけず、逆境をバネに何度も闘って……そしてこの先も闘い続けるために、今おまえの目の前に立っている」
カオスは追撃をせず立つロビンマスクに視線をやった。
宿敵との闘いに敗れ、国を追われ、愛する人と袂を分かち、復讐心に塗れ、時には命まで落とし、今度は未来に生まれてくる息子まで失われようとして……それでもなお、彼は正義超人として。
ヒーローとして、このリングに立っている。
「それが、ヒーロー……」
ロビンが被る仮面の奥底から感じられるのは、対戦相手のカオスを憎む心などではない。
こんなところで折れるな、立ち上がってこいと言わんばかりの――愛だ。
「ああそうさ! 超人ってやつは常に相手と真剣勝負を重ね、わかり合ってきたんだ! おまえみたいに勝手に自分の不幸を相手に重ねるような真似は、愛の押し付けでしかない! おまえが尊敬する父、ミニッツ・アヴェニールのような正義の超人になりたいなら、ロビンとはもう一度真剣に闘ってから答えを出すべきだ! ロビンとケビン……おまえが守りたい親子のために、なにをするべきなのかを!」
ロビンマスク、ウォーズマン、バッファローマン、そしてネプチューンマン……名だたる超人たちが勝負の果てに“愛”と“正義”を体得してきた。
その立役者となってきたのが、万太郎の父であるキン肉マン。
彼のそばで多くの闘いを経験してきたロビンマスクだからこそ、カオスにも同じことを伝えようとしている。
わかりあうために。
この真剣勝負を通して。
「あ……ああ~~っ」
これが、カオスが真に憧れた正義超人の姿なのか。
己はとんでもない思い違いをしていたのだと気付かされ、カオスは天を仰ぐ。
そのとき、聞き覚えのある声が耳朶を打った。
(フッ……カオスがいち早く己のことを打ち明け……そして偉大なる父キン肉スグルが寄り添ったことで、万太郎はチームリーダーとして大きく成長したようだ……私の出る幕はなかったな)
それは、二回戦の2000万パワーズ戦でカオスの体内に仕込まれた髪飾りが届けた幻聴。
死した魂がいつか伝えようとしていた大事な事柄は、先人ではなく友が教えてくれた。
「ラ、ラーメンマンの声……」
ずっと彼がそばで見守ってくれていたような……カオスはそんな温かさを感じた。
「カオス――ッ!」
呆けている間、カオスを呼びかける声は地上からも響いてきていた。
「カオス! カオス!」
「ガンバレ、カオス――ッ!」
「カオス、勝って――っ!」
ウォーキューブからトーナメント・マウンテンの麓を見下ろす。
花山神社のプロレス仲間、がきんちょハウスの子供たち、ガールフレンドの二階堂凛子……その他にも大勢の観客たちが、カオスの再起を願って声援を送ってくれている。
「みんな……」
両親を殺された己はひとりだと、ずっとそう思って生きてきた。
だが違った。
今のカオスには、こうやって“愛”してくれる人たちがたくさんいる。
「あ……悪を憎む心だけでもダメ、情け深いだけでもダメ……へへっ、正義超人ってやつは難しいな……」
愛を伴う声援は、カオスに安らぎと幸福を与える。
それを理解するだけで、いつもの励ましとは比べ物にならないくらいの力が溢れてきた。
「ギブアップはしないよ、万太郎」
カオスは静かに立ち上がり、万太郎に穏やかな表情を向ける。
「凛子ちゃんやがきんちょハウスのみんなが応援してくれているんだ……その声援を無視して、自分勝手な正義超人の理想像を押し通すことなんてできない」
ロビンマスクに抱いていた憐れみのような感情は、彼の愛を侮辱するにも等しいものだとわかった。
ジコチューというやつだ。
「だろ?」
カオスはバツが悪そうに笑い、万太郎の肯定を待った。
万太郎はわかってくれたか、と喜びをあらわにした。
「カ……カオス~~ッ。そうだよ。みんなの期待に応える。それがまた正義超人の……ヒーローのつらいところさ」
数々の逆境を愛する仲間たちの声援で乗り越えてきた万太郎だからこそ、カオスをここまで導くことができた。
いや、あるいは相手が正義超人界随一の苦労人で知られるロビンマスクでなければ気づきは得られなかっただろう。
彼もまたカオスの復活を歓迎するかのように声を弾ませた。
「フッ……覇気が戻ったようで嬉しいぜ。私としても、マシンガンズを倒したあとの試合が不完全燃焼で終わっては後の決勝戦へ傾けるモチベーションが落ちるというもの。やはりここは、二回戦を凌ぐ完全勝利を掴まなければ!」
さあ、準備が整ったのであれば試合再開だ。
ロビンは腰を落とし、片手をキャンバスにつける。
『これは~~っ! ロビンマスク、お得意のライナータックルの構えに入った――っ』
「さあ、今のおまえにこの突進が捌けるかな!?」
わざわざ挑発を言ってのけてから、ロビンはスタートを切った。
速度はあるが直線的、速度があるからこそ直線的であろうと避けられない、ロビン謹製のラグビー流タックル。
だがカオスは恐れることなく、開脚しながら跳んだ。
『カオス、これを華麗なジャンプで躱した――っ』
キャンバスには着地せず、着地するための脚でロビンの胴を捕らえる。
『そのままロビンマスクのバックにまわり、胴体に両脚をクラッチして……後方に勢いよく回転する――っ』
ローリング・バック・クラッチの要領で相手を後方に投げつけるこのムーブは、対バッファローマンでも披露した返し技――
「カオス・スフィア・ボトム!」
『キャンバスに叩きつけた――っ!』
あのロビンマスクが得意技を避けられ、仰向けにダウンする。
「ロビンマスク! あんたはオレの実戦経験が不足していると言っていたが……今のオレはキン肉万太郎という歴戦の勇士とともにこの“究極の超人タッグ戦”を準決勝まで勝ち抜いてきたんだ! 試合数は少なくとも、獲得した経験値は何百何千試合分もの価値がある――っ!」
カオスは高らかに言い、ロビンの両手を掴んだ。
『カオス、ロビンマスクをかかえ上空に跳び上がった――っ』
掴む箇所を両手首に調整し、空中で背中合わせのような体勢になる。
『これは、ハイジャック・バックブリーカーの体勢か――っ!?』
「これはただのハイジャック・バックブリーカーじゃない! オレがこの大会でくらった技の中でもとびきり痛かった蹂躙技――っ!」
そこからさらに、相手の両足を自らの両大腿部と脇でクラッチ。
仕上げに掴んだ両手首を相手の喉付近まで折りたたみ、互いの後頭部同士を強く押し当てる。
そのまま臀部から着地すれば、相手に頭がもげてしまったと錯覚するような激痛を与えるだろう。
「獄門・吊燈籠――っ!」
カオスの数少ない実戦経験から掘り起こしたこの技は、確かにロビンマスクに届いた。
『なんとカオス、一回戦で対戦した“地獄のカーペンターズ”デーク・棟梁の必殺技をロビンマスクへお見舞いした~~っ!』
「グオオッ」
解放され、しかし激痛のあまりキャンバスの上をのたうち回るロビン。
「続けてこいつだ!」
カオスはこのチャンスを逃がすまいと、うつ伏せ状態になっていたところにのしかかった。
相手の腰の上に体の中心を置くことで立ち上がれないようにし、膝立ち姿勢の両大腿部には相手の両腕を引っ掛ける。
そして両手を組んで相手の顎を持てば、かつて残虐超人の代名詞とも言われた技が完成する。
「
『あ――っと、今度はラーメンマンの代表的必殺技、キャメルクラッチの体勢にロビンを捕らえた――っ!』
ロビンの顎を捕らえたまま後ろに体重をかけるカオス。
たったそれだけの動作で、ロビンの上半身は大きく反り上がる。
それこそ、腹から真っ二つになってしまいかねないほどに。
「グヌ~~ッ、なにを偉そうなことを言ったかと思えば……こんなものはただ、今まで闘ってきた対戦相手たちの見様見真似! これしきのことで経験不足を否定するとは片腹痛い~~っ」
ロビンは右脚を立て、なんとか片膝立ちの体勢に移行する。
しかしその程度ではカオスを振り落とせはしない。
ならば、と左脚も立て、カオスごと立ち上がろうとした。
『ロビンマスク、キャメルクラッチをかけられたまま立ち上がってくる――っ』
完全に立ち上がってしまえばこちらのもの。キャメルクラッチは機能しなくなる。
「ならば! ラーメンマンが教えてくれたキャメルクラッチ対策への対策……スタンディング・キャメルクラッチで!」
ラーメンマンはこの体勢のまま飛び上がり、着地の際に相手の両足をキャンバスに突き刺すことで固定、キャメルクラッチを維持してみせた。
見様見真似を馬鹿にすることはできない。特にカオスはその技をくらった張本人なのだから。
が、
「千の技を誇っていたラーメンマンの妙技を、おまえのような若僧がたやすく模倣できると思うな――っ!」
ロビンマスクはカオスが飛び上がるよりも先に自ら跳んだ。
そのまま後ろへ倒れ込むように着地する。
「ロビン流・
『完全に立ち上がったロビンマスク、背中からキャンバスにダイブしカオスを潰した――っ!』
キャメルクラッチの体勢のままロビンとキャンバスにサンドされたカオス。
必然、ラーメンマン直伝の必殺技は解かれることとなる。
「カオス~~ッ!」
追撃をもらうわけにはいかないとすぐに身を起こしたところに、パートナーの大声が聞こえてきた。
エプロンにいた万太郎が、コーナーポストを登りながら叫んでいる。
「“同士を察するはヘソに在り、敵を量るは目に在り”だ――っ!」
その言葉は――先の2000万パワーズ戦の中で、キン肉マンが彼ら“マッスルブラザーズ・ヌーボー”に伝えたもの。
タッグマッチの心得、ツープラトン発動のための助言、ふたりにとってはある技の始動スイッチ。
『あ――っと万太郎、コーナーポストの上に立ち、パートナーのカオス目掛けて飛び上がる――っ』
カオスは万太郎の思惑を察し、体勢を整えた。
「ヘイ、ロビン! やつら仕掛けてくるぜ!」
「ああ! キッド、ここはチェンジだ!」
アドレナリンズも黙ってはいない。
リング上のロビンマスクはキッドにタッチし、選手交代。
キッドはリングに飛び出し、ロビンはエプロンに行くのではなくロープ上段へ登った。
『アドレナリンズ、マッスルブラザーズ・ヌーボーの動きを見てテリー・ザ・キッドに交代! そしてすぐさまロビンマスクがロープを使って高く飛んだ――っ!』
飛んだ先は、再びリング内――それもたった今交代したばかりのキッドの真上だ。
仰向け姿勢で彼の肩に降り立てば、多くの者が見慣れたロビン・ザ・フェイバリットの形が再現される。
『こ……これはなんというレアな光景! あのロビンマスクがタワーブリッジにかけられている! しかも技をかけているのはパートナーであるテリー・ザ・キッドだ――っ!』
ロビンの首を右手で、ロビンの右大腿部を左手で捕らえ、その体を大きくしならせるキッド。
決して同士討ちではない。これはツープラトン発動のための予備動作だ。
ロビンマスクはキッドの頭上、ともすれば滑稽にも映る技をかけられた姿で言う。
「この技はロビン
「テキサス魂の乗ったスペシャル・タワーブリッジから繰り出されるこの技……教えてやるぜ! タッグ・フォーメーションAのAは“アメリカン(American)”のAだ――っ!」
キッドが威勢よく唱え、次に放つ技を予告する。
が、相手チームも形は違えどやることは同じ。飛び上がった万太郎がカオスの上に着地する。
こちらは背中合わせの合体。しかしカオスは前傾姿勢で、万太郎は両足を前にピーンと突き出す特異な形になった。
『一方のマッスルブラザーズ・ヌーボー、カオスが両足を前にした万太郎を背中合わせに担ぎ……ああ~~っ! こ、この体勢は2000万パワーズとの試合で見せたあのツープラトンか――っ!?』
そう、万太郎の脚をまるで槍に見立てるかのようなこの技は、以前にも披露されている。
ジ・アドレナリンズのマッスルブラザーズ・ヌーボー、どちらの技の形もよく知るテリーマンとキン肉マンは、この状況を即座に把握した。
「こ……これは!」
「ツープラトン対ツープラトンか!?」
二回戦ではロビンマスクがキッドをタワーブリッジにかけ、万太郎がカオスを背中合わせに担いでいたが――今回どちらのチームも位置関係が逆転している。
されど狙っている技は同じだろう。二回戦で猛威を振るったあのツープラトン――
「ビッグフット・エクスプレス――ッ!」
“マッスルブラザーズ・ヌーボー”は21世紀の最新鋭列車となって飛び出し、
「タッグ・フォーメーションA――ッ!」
“ジ・アドレナリンズ”は大きくしならせたロビンを投擲武器として投げ放った。