ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

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第074話 怒濤のツープラトン合戦!!

「ビッグフット・エクスプレス、発車オーライ!」

 

「いけー! タッグ・フォーメーションA――ッ!」

 

 両足を前に突き出した体勢の万太郎をカオスが背中合わせに担ぎ突撃するビッグフット・エクスプレス。

 対。

 タワーブリッジにかけたロビンマスクをキッドがしなりにしならせ相手にぶつけるタッグ・フォーメーションA。

 

『さあ、マッスルブラザーズ・ヌーボーはあの“きらめきの流血列車”2000万パワーズのロングホーン・トレインに打ち勝った21世紀型超特急ビッグフット・エクスプレス! 対してジ・アドレナリンズは、キッドが本来の技の掛け手であるロビンマスクをタワーブリッジに極め投げ放つタッグ・フォーメーションA! 注目の衝突ははたしてどちらに軍配が上がるのか――っ!?』

 

 横向き縦回転で射出されたロビンと、マッスルブラザーズ・ヌーボーの合体超特急。

 双方の距離は瞬く間に縮まり、その瞬間は訪れる。

 

『激突――っ! 凄まじい衝突音――っ!!』

 

 見る者が一瞬目を背けてしまうほどの激しい音だった。

 

「グアアア――ッ」

 

 続いて耳に飛び込んできた悲痛な叫びは誰のものなのか。

 観衆が目で確認する。

 

『あ――っと! 未来の超特急に跳ね飛ばされ、宙を舞っているのは……ロビンマスクだ――っ!』

 

 回転しながら宙を舞うロビンマスク。

 一方のビッグフット・エクスプレスは健在。

 

「なっ……ロビン!」

 

 パートナーが跳ね飛ばされた衝撃で、投擲手であるキッドにも隙が生まれた。

 超特急が迫る。

 

『ビッグフット・エクスプレス、続けざまにテリー・ザ・キッドもぶっ飛ばした――っ!』

 

 かつてキッドの父テリーマンは新幹線を身一つで止めたことがあるが、その再現とはならなかった。

 ロビンと同じように宙を舞い、キッドの体がキャンバスに落ちる。

 

『地に落ちたロビンとキッド! アドレナリンズ、揃ってダウンだ――っ!』

 

 ビッグフット・エクスプレスvsタッグ・フォーメーションA。

 ツープラトン対決の結果は、“マッスルブラザーズ・ヌーボー”の完勝となった。

 しかし、一撃KOには至らない。

 

「フフフッ……バッファローマンのロングホーンが折れるわけだ」

「初お披露目のテリー・ザ・キッド版タッグ・フォーメーションがこうも簡単に蹴散らされるとはな……」

 

 ダウン判定となったロビンマスクとキッドが、すぐに起き上がってきたためだ。

 

『あ――っとアドレナリンズ、両者ともに立ち上がってくるぞ! 凄まじい不屈の精神だ――っ!』

 

 とはいえ、ダメージは極大。

 ふたりともすぐに攻撃に移れる状態ではなく、防御や回避もままならないだろう。

 すなわち、追撃のチャンスである。

 

『さあ優位に立ったマッスルブラザーズ・ヌーボー、2000万パワーズ戦ではこのツープラトンからさらなるフィニッシャーへと繋げていったが……』

 

 好機と捉えたマッスルブラザーズ・ヌーボーはビッグフット・エクスプレスを解除。

 自身の背中から降りた万太郎に、カオスが言う。

 

「万太郎、ひとつワガママを言っていいか?」

 

 万太郎は2000万パワーズ戦で見せた新ツープラトンで勝負を決めようと思ったが、カオスは待ったをかける。

 

「地獄のカーペンターズ戦で叶わなかったアレを……今のおまえとオレで、もう一度試してみたい」

 

 アレ――抽象的な指示語だったが、しかし万太郎にはそれだけで十分だった。

 カオスが超人として大きく成長するきっかけとなった“地獄のカーペンターズ”戦。

 そこで叶わなかったことといえば、ひとつしかない。

 

「ああ~~っ! わかったぜカオス! ならボクはキッドを!」

「オレはロビンマスクを!」

 

 役割分担を決め、各々が標的のもとに走る。

 

『万太郎はキッドを、カオスをロビンを、それぞれ弱った相手をかかえたまま大きく飛び上がったぞ――っ』

 

 ひとりずつ、相手の体を捕らえて空中へ。

 狙うのは激突落下技だ。その種類は星の数ほどあるが、この会場にいる者ならば誰もが技の正体を察するであろう。

 

 カオスは己の頭上でロビンマスクを逆さまにし、伸ばした両腕で両大腿部を掴み肩の上に首を載せる。

 万太郎は己の下でキッドを逆さまにし、両足首を掴んで開いた両脇に両足をかけて乗る。

 

『あ~~っとカオスはロビンをキン肉バスターの体勢に、万太郎はキッドをキン肉ドライバーの体勢に固めた――っ!』

 

 位置関係は、カオスのキン肉バスターが上、万太郎のキン肉ドライバーが下だ。

 

「オレが新宿・花山神社のショーでよく再現していた得意技! これを超人相手に実戦で成功させてこそ、オレは超人レスラーとして一人前を名乗れる――っ!」

「さっきは新技のダシに使われてしまったキン肉ドライバーだが、今度は微塵の隙もない! さあキッド、切り返せるもんなら切り返してみろ――っ!」

 

 キン肉バスターとキン肉ドライバーの同時発動。

 それぞれキン肉マンの代表的必殺技(フェイバリット)に固められ、ダメージの残るロビンとキッドは――

 

「ググ――ッ」

「ウウ~~ッ」

 

 抗おうとするも、抗えない。

 対抗策が見いだせぬまま、キャンバスに近づいていく。

 

『さあ上下の位置関係になったカオス&ロビンと万太郎&キッド! まったく同じタイミング、まったく同じ速度でキャンバスへと降下していく――っ!』

 

 キン肉バスター&キン肉ドライバー。

 タッグマッチでタッグそれぞれがこの技を同時発動したとして、単純な単発技で終わるだろうか?

 そんなはずはない。

 

 同志を察するはヘソに在り――カオスと万太郎がお互いのヘソを確認し合い、技の進入角度とスピードを合わせる。

 そうやって上下合体……本来キャンバスに着地するはずのキン肉バスターが、キン肉ドライバーの上に着地すれば。

 ザ・マシンガンズの得意とする“至高のツープラトン”が完成する。

 

「マッスル・ドッキング――ッ!」

 

 グガガガァン!

 リングキャンバスが波打ち、ウォーキューブ内が激震。

 一番下で叩きつけられたキッド、一番上で五所を蹂躙されたロビン、アドレナリンズが揃って血を吐いた。

 

『これは――っ! ザ・マシンガンズが誇る“至高のツープラトン”マッスル・ドッキングだ――っ!』

 

 この“究極の超人タッグ戦”では間引きバトルロイヤル以来のお披露目となった技の発動に、沸き上がる観衆。

 本来の使い手である“ザ・マシンガンズ”、テリーマンとキン肉マンが大きく反応する。

 

「キン肉マン……これは!?」

「ウウ……み、見事なマッスル・ドッキングだ……」

 

 他の超人が技をパクることにうるさいあのキン肉マンをして、そう言わざるを得ないほどの完成度だった。

 

「ロビン! キッド!」

 

 マシンガンズとはまた別の位置からアドレナリンズの名を叫んだのは、彼らを応援しているウォーズマンである。

 その傍ら、パートナーのネプチューンマンはゾクリと身を震わせていた。

 

「武道とともにやられた痛みが甦る……やるじゃねえか、マッスルブラザーズ・ヌーボー」

 

 本来の使い手だけでなく、その技をくらった者からも称賛が飛ぶ。

“マッスルブラザーズ・ヌーボー”版マッスル・ドッキングはそれほど美しかったということ。

 リング上、カオスはなおもドッキング体勢を維持したまま感慨に耽る。

 

「こ、これだ……これをやりたかったんだ。超人レスリングファンなら誰もが憧れる、至高のツープラトン……それをキン肉マンの息子である万太郎とやってみたかった……」

 

 一回戦の“地獄のカーペンターズ”戦では、万太郎にこのマッスル・ドッキングを求められるも己が未熟であったばかりにキン肉バスターを解除してしまい、ツープラトンを成功させることができなかった。

 そのときの宿願が叶った……試合中だというのに、カオスは涙が出そうなほど嬉しい思いだった。

 それに……なんだか気が遠くなっていく感覚もある。

 

「カ……カオス、おまえ……」

 

 万太郎がパートナーの異変を察知する。

 感慨を口にするカオスだったが、その声にはどこか力がない。

 ただ喜びを噛み締めているだけではこうはならないだろう。

 

「グウウ~~ッ」

 

 答えはすぐに出た。

 カオスは苦しそうなうめき声を発し、万太郎の肩の上から崩れ落ちる。

 当然、バスターに捕らえれていたロビンも一緒に倒れた。

 万太郎もキッドを開放し、リングに降り立ってその惨状を確認する。

 立っているのは……ひとりだけとなった。

 

『あ――っとマッスル・ドッキング解除! そしてキャンバスに倒れ伏したのはジ・アドレナリンズのふたりと……なんとカオスもともにダウンしてしまった――っ!』

 

 マッスル・ドッキングが決まったというのに、なぜアドレナリンズだけでなくカオスまでもが!?

 不可解な現象を目の当たりにし、混乱する観客たち。

 

「い、いったいなぜ……」

 

 ウォーズマンがつぶやく。

 ファイティング・コンピューターを有する彼でも、すぐにその答えを導き出すことはできなかった。

 真っ先に解答を手繰り寄せたのは、やはり直のその技をくらったことがあるこの男。

 

「首だ」

 

 ネプチューンマンは簡潔に言う。

 

「マッスル・ドッキングの上半分……キン肉バスターの弱点は、首のフックのあまさ。とりわけ本来の使い手ではないカオスの首のフックはキン肉マンや万太郎のそれよりあまかった。普段からキン肉マンの技対策に余念がなかったロビンのこと……その気になれば、おそらくは技から脱出することもできただろう」

 

 カオスが倒れた原因はキン肉バスターにかけられていたロビンマスクにある。

 その謎を解明したのはネプチューンマンだけでなく、キン肉マンもまた同じような考察を語っていた。

 

「しかしロビンは技から逃れるのではなく、技を利用して相手にダメージを与える選択を取った。首のフックがあまいのをいいことに、降下の段階で頭を大きく振ったんだ。結果、ロビンの全体重を支えるカオスの右肩には甚大な負荷がかかり、ドッキングの際の衝撃がその一点に集まってしまった」

 

 強大な必殺技は、時に諸刃の剣となるのだ。

 このことにはネプチューンマンやキン肉マンの他にも多くの超人が気づき、また別の客席ではジェイドとスカーフェイスが驚愕していた。

 

「敵の技をただ破るのではなく、利用するだなんて……」

「それにしたって無茶だ。自分がダメージを負ったのに変わりはねえんだぞ」

 

 どう考えたって、技から抜け出せたのであればそちらを選んだほうがいい。

 21世紀の超人レスラーらしい合理的な思考を、しかし彼らの傍らにいるブロッケンJrが一言で塗りつぶす。

 

「恐ろしい男なんだよ、ロビンって野郎は」

 

 このマッスル・ドッキング破りはロビンマスクだからこそ。

 それ以上は説明がつけられるものではない。

 そしてそんな捨て身の逆襲技をやってのけた当人は、静かに身を起こしてくる。

 

「フフッ……二回戦のマシンガンズ戦ではお目にかかれなかったマッスル・ドッキングを、まさかおまえたちに見せてもらうことになるとはな」

 

『ダウンした三人の中で真っ先に立ち上がったのは、ロビンマスクだ――っ!』

 

 ロビンマスクと対峙する万太郎。

 まさかマッスル・ドッキングを受けて立ち上がってくる超人がいるなんて……と畏怖の念を抱く。

 

「先ほどのビッグフット・エクスプレスとタッグ・フォーメーションAの衝突……私はただ跳ね飛ばされたわけではない。衝突の際、万太郎の脚の上側からエルボーを叩き込み……それを担ぐカオスの肩に、最大限の負荷を与えておいたのだ。すべてはマッスルブラザーズ・ヌーボー最大の脅威である、ツープラトンを封じるため!」

 

 そんな馬鹿な、と一笑に付すことはできない。

 ビッグフット・エクスプレスの上側を務めたのはほかでもない万太郎だ。

 確かに衝突の瞬間、ロビンマスクは回転しながらのエルボーを突き出してきた……スピードの乗ったビッグフット・エクスプレスの前ではそんなもの屁でもないとばかりに弾き飛ばしたが、下側にいたカオスにはしっかりダメージが通っていたのだ。

 

「あ、ああ……あああ~~っ」

 

 事前に痛めつけられていたカオスの肩は、キン肉バスターの際に暴れたロビンマスクを抑え込めなかったというわけだ。

 相棒が倒れ伏すからくり、さらに先を見据えて布石を打ってきたロビンマスクの策謀を知り、万太郎は愕然とする。

 

「さあ万太郎よ! もはやカオスは立ち上がってこれまい! たったひとりでこのロビンマスクをどう攻略するのかな――っ!?」

 

 万太郎が面食らっている間に、ロビンマスクは逆襲に転じる。

 頭部を突き出す形で突っ込んでいった。

 両腕で万太郎が逃げられないようガシッと腕を掴み、その場に固定する。

 

『あ――っとロビン、万太郎にヘッドバットを連射! それもただのヘッドバットではなく、鉄仮面の鋭利な突起部分で突き刺す凶気のヘッドバットだ――っ!』

 

 二回戦でキン肉マンに見舞った“死のコース”を思い起こさせる凶器以上の非凶器攻撃。

 

「ウワアア――ッ!」

 

 万太郎は激痛から叫び声を上げ、胸から鮮血を吹き出した。

 

『万太郎、大出血~~っ』

 

 凄惨なシーンが始まり、歓声と悲鳴を上げる観客席。

 観戦中の“新星・ネオ・イクスパンションズ”、ネプチューンマンとウォーズマンもロビンマスクの見せる闘志に熱狂していた。

 

「ここまでやるか……ロビンマスク!」

「ロビンは真剣にやってるんだ――っ!」

 

 ロビンマスクはなおもヘッドバットを連射。

 もはや仮面が万太郎の血で真っ赤に染め上がりそうなほどだ。

 

「さあどうした! このままでは私がキン肉マンのみならず、その息子のキン肉万太郎をも倒してしまうぞ! 黙って寝ていていいのか……キッド!」

 

 攻撃を続けながらも、後ろで倒れているチームリーダーに声を掛ける。

 ロビンはともかく、キッドにはキン肉ドライバーのダメージがダイレクトに伝わっているはず。

 煽ったところで立ち上がってはこれない――そう思われたが、

 

「い……いいわけあるか~~っ」

 

 キッドは煮えたぎるような瞳を携え起き上がってきた。

 スター・エンブレムを掲げるテリー・ザ・キッドのまさかの復活に、テリーマンが沸く。

 

「さっきのマッスル・ドッキングはミーたちで言うところのマッスル・ドッキングα……一撃瞬殺とされるマッスル・ドッキングβが上手くいかない場合の次善の策だ。本来のマッスル・ドッキングはキン肉ドライバーを仕掛ける側が司令塔となり、パートナーにドッキングの際のスピードや進入角度を細かく阿吽の呼吸で知らせる。その上でパワー自慢のキン肉バスター担当が加重をかけることにより、真の威力を発揮する」

 

 握る拳は汗ばんでいる。が、不思議と不快感がない。

 ここは今日一番の声援を送る場面だと思い、テリーマンはさらに大きく声を張り上げた。

 

「つまり、“マッスルブラザーズ・ヌーボー”がマッスル・ドッキングを放つならよりパワーに優れた万太郎が上を担当するのが理想……ドッキングこそ見事だったが、これでは威力不十分でアドレナリンズを倒すことはできない! ピンチのあとのチャンスだキッド――ッ!」

 

 父テリーマンの応援を耳にしたキッドは、へへっと笑い駆け出した。

 

「打倒・万太郎はこのテリー・ザ・キッドの役目だ――っ!」

 

 チームリーダーの奮起を見て、ロビンマスクもまた動く。

 

「よく言った! ではお次はこちらが見せつける番だ! ジ・アドレナリンズ必殺のツープラトンを!」

 

 ヘッドバットを中断し、万太郎の両腕に腕を絡めて強くキャンバスを蹴った。

 キッドもやや遅れて飛び上がる。

 

『ロビンマスク、万太郎をかかえて上昇していく――っ! キッドもそれに続いた――っ!』

 

「そうらキッド! パスだ――っ!」

「よっしゃ――っ!」

 

 ロビンマスクは空中で万太郎を放り、キッドに投げ渡す。

 キッドは万太郎の両足を交差させる形でキャッチし、そのまま技に移行した。

 

『キッド、空中で万太郎の両脚をテキサス・クローバー・ホールドに固めた! しかしその姿勢は上向き……先ほどの“ニュー・マシンガンズ・カウベルスタンピード”とは違う技なのか~~っ!?』

 

 先ほど披露したニュー・マシンガンズ・カウベルスタンピードは相手の胸を下にしそのままキャンバスに叩きつける技。

 だが今の万太郎は上向き。これではニュー・マシンガンズ・カウベルスタンピードはおろか、テキサス・クローバー・ホールドの威力も発揮できない。

 それをどうにかするのが、ロビンマスクの役目だ。

 キッドより高い位置にいたロビンは突如、バック宙から加速をつけて逆さまに落下。

 あっという間にキッドに追いつき、両脚で万太郎の頭を捕らえる。

 

『ロビンマスクが万太郎の頭を両脚で挟み込んだ! あ~~っ、そうだ~~っ! アドレナリンズにはこの技があった――っ!』

 

 相手の首を極めながら落下するこの技は、ロビン・スペシャル。

 そこに両足を極めるテキサス・クローバー・ホールドをかけ合わせれば、一回戦の“鬼哭愚連隊”戦で見せたジ・アドレナリンズのオリジナルツープラトンが完成する。

 名は――

 

「アドレナリン・ブリッジ――――ッ!」

 

 ロビンマスクとテリー・ザ・キッドがそれぞれ右手をキャンバスにつけ、着地。

 その際の衝撃によって、ロビン・スペシャルとテキサス・クローバー・ホールドがより深く極まった。

 万太郎の腹部に裂け目が入り、血が吹き出した。

 

『テキサス・クローバー・ホールドとロビン・スペシャルの夢の競演、再び――っ! 万太郎の首と両脚を痛めつけ、そして腹部を裂く大蹂躙技だ――っ!』

 

 一回戦ではあの中国秘術の使い手、死皇帝をKOしてみせたアドレナリン・ブリッジ。

 いかにキン肉万太郎といえども耐えられる道理はない。

 

『キン肉万太郎、ダウン! 完全決着へのカウントダウンが始まった――っ』

 

 白目を剥いてキャンバスに沈む万太郎。

 技を解除したロビンマスクとテリー・ザ・キッドは、息を切らしながらダウンカウントが刻まれていくのを聞く。

 

「さ……さすがに立ち上がってこれまい」

 

 アドレナリン・ブリッジは“ジ・アドレナリンズ”最大のツープラトン。

 それがパーフェクトに決まった今、あとは決着のゴングが鳴るのを待つだけだ。

 

「いや……立ち上がってくる」

「キッド」

 

 緊張の糸が切れようとしていたロビンを、チームリーダーであるキッドが強い語調で制する。

 

「万太郎ってやつは……どれだけの必殺技をくらい、どれほどの血を流しても、いつだって不死鳥の如く立ち上がってくる。父親譲りの火事場のクソ力……オレはその姿に何度も勇気をもらい、ネバーギブアップの精神を鍛えてきたんだ。こんなもんで終わるはずがねえ」

 

 キン肉万太郎の闘いを間近で見続けてきたキッドだからこそ、これで終わりではないことがわかる。

 

「フッ……ライバルであり、友でもある……それゆえの信頼か」

 

 かつてキン肉マンとの試合で決着を見誤ったことからすべての歯車が狂ったロビンマスクだ。

 一瞬でも油断してしまいそうになった自分を戒めつつ、キッドに倣って警戒心を強める。

 そして彼の言うとおり、キン肉万太郎の目に生気が蘇ってきた。

 

「そ、そうだ……キッドの言うとおりだ~~っ」

 

 破壊されたはずの首と両脚を奮い立たせ、裂けた腹部から血を流しながらも、闘志は絶やさない。

 その背後からは、彼のパートナーも追いついてくる。

 

「立ち上がれ、万太郎……まだオレたちは負けちゃいない」

 

 ひとりで立ち上がれぬのなら、ふたりで。

 万太郎とカオスがお互いの体に触れ、足りないパワーを補い合う。

 

『あ――っとマッスルブラザーズ・ヌーボー、今カオスと万太郎が互いを支え合うようにして共に立ち上がった――っ』

 

 ふたりの力で完全に立ち上がり、ファイティングポーズで試合続行の意思を示す。

 

『その姿は満身創痍……しかしそれはジ・アドレナリンズも同様か、四人ともいつ倒れてもおかしくはない様子だ――っ』

 

 向かい合う4人。万全といえる超人はもう誰ひとりとしていなかった。

 その中で、追い打ちのように血を吐く超人がひとり。

 

「カハッ」

 

 吐血したのは、“仮面の貴公子”だった。

 

「ロビン!」

「フフッ……やはりこの中で最年長の私が体力的には一番劣るか。なおのこと出し惜しんではいられないな」

 

 自分よりも歳を重ねたネプチューンマンがあれだけ豪腕を振るっているのだ。

 年齢を言い訳に早期リタイアなどできるはずがない。

 ならばこの場合の最善策は……あれしかあるまい。

 

『おーっとなにを思ったかロビンマスク、自らの象徴ともいえる鎧を脱ぎ去った――っ!』

 

 ガポッ、と首から鎧を抜いたロビンマスク。

 パートナーのとんでもない奇行を見て、キッドが思わず大声を出す。

 

「ロビン! おまえ、その鎧は歴史の鎧(ヒストリーアーマー)といって、先祖代々受け継がれてきた大事なものなんだろう!? それをこの大一番で脱ぐなんて!」

 

 キッドはロビンが乱心したかのように言うが、本人は首を横に振る。

 

「この鎧は防具の役割を果たす反面、私にとっては動きを阻害するハンディキャップとしての一面もある。ロビンスペシャルなどの重量がポイントとなる技の発動には欠かせない一方で、脱げば動きが良くなりすぎる分、体力の消耗が激しくなるというデメリットもある……装着はケースバイケースと言えよう」

 

 歴史の鎧が与えるのはプラスの効果だけではないのだ。

 だからこそ、ロビンは鎧をリングの外側に放り投げる。

 

「戦局を見たうえで、今回は防御や体力のことなど考えず、ここですべて出し切るべきだと判断した!」

 

 決意の感じられる瞳を見て、キッドはロビンが勝負をかけようとしているのだと理解した。

 

「なるほどな。おまえの覚悟、受け取ったぜ」

 

 ならばこちらも覚悟を決める。

 今のジ・アドレナリンズはふたりとも上裸の古典的なレスラースタイル。

 キッドとロビンは並び立ち、マッスルブラザーズ・ヌーボーに向かい合った。

 

 その突き刺さるような敵意を受け、万太郎とカオスもごくりと息を呑む。

 万太郎は重傷の身を押し、カオスに囁いた。

 

「カオスよ。ボクたちの念願だったマッスル・ドッキングは成功したが、アドレナリンズを倒し切ることはできなかった。だけどボクたちには、まだあのツープラトンがある……逆にあのツープラトンが出せなきゃ、ボクたちに勝ち目はない」

 

 まだこの試合中には見せられていない、マッスルブラザーズ・ヌーボーの最強必殺技。

 マッスル・ドッキングでも倒せなかったあのふたりを倒すには、もはやあれしかないだろう。

 

「いけるか?」

 

 問いかける万太郎に、カオスは強く頷いて返した。

 

「やってみせるさ。オレはキン肉万太郎の相棒だぜ」

 

 答えなど初めから決まっている。

 万太郎とカオスは並び立ち、ジ・アドレナリンズに向かい合った。

 

『さあ~~っ、ジ・アドレナリンズ対マッスルブラザーズ・ヌーボーの対決は最終局面! 真っ先に動くのはどの超人だ――っ!?』

 

 そして、最後の攻防が始まる。

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