ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

75 / 106
第075話 “ここにはいない者”の声援を受けて!!

“マッスルブラザーズ・ヌーボー”vs“ジ・アドレナリンズ”最終局面。

 キン肉万太郎、カオス・アヴェニール、テリー・ザ・キッド、ロビンマスクの4人が睨み合う中で、真っ先に動いたのは――

 

「デリャア――ッ!」

 

“ファイティング・ロデオマン”――いや、“テキサスの暴れ馬”テリー・ザ・キッド。

 標的を万太郎に絞り、お得意のブロンコ・フィスト・ラッシュで攻め立てる。

 

『あ――っとキッドがいった! キッドがいった! キッドがいった~~っ!』

 

 キッドの真骨頂とも言える勇姿に、歓声で興奮を知らせる観客たち。

 その声がまたキッドのパワーとなり、高速の鉄拳が万太郎を打つ。

 

「そうだ――っ! こういう局面、臆さずいの一番に挑みかかるのがおまえの役目……それでこそテリー一族! 本物のテキサスブロンコ魂だ――っ!」

 

 さらに父テリーマンの声援がキッドの背中を後押しする。

 万太郎は肉のカーテンでの防御態勢に入るが、蓄積したダメージもありその強度は万全とは言えない。

 

「私も続くぜ――っ!」

 

 心強いチームリーダーの闘志にあてられ、“仮面の貴公子”ロビンマスクも走り出した。

 キッドが万太郎に行くならこちらはカオス。

 相手の両肩を掴み、身動きを封じた上で頭突きを繰り出していく。

 

『あ――っとロビン、負傷しているカオスの右肩を狙ってマスクの突起部分でのヘッドバット! 仮面の貴公子が血に飢えまくっているぞ――っ!』

 

 先程のマッスル・ドッキング破りで負荷がかかっている肩を重点的に狙い撃つ攻撃。

 ロビンらしさあふれるファイトに、彼の弟子であるウォーズマンが沸き上がった。

 

「時に冷酷に、時に残忍に……的確に相手の弱点を狙い攻撃する! これこそ“仮面の貴公子”ロビンマスクの真骨頂だ――っ!」

 

 片や直前にアドレナリン・ブリッジをくらってしまった万太郎。

 片やマッスル・ドッキングの際にダメージを跳ね返されてしまったカオス。

 防戦一方となるのは致し方ないこと――観客はそう思ったが、当のふたりは虎視眈々と反撃のタイミングを狙っていた。

 

「アドレナリンズの向こう見ずなところは長所でもあるが……」

「欠点でもある……オレたちはそこを突かせてもらうぜ――っ!」

 

 好機が訪れ、ふたりが同時に動く。

 まずは万太郎。

 殴りかかってきたキッドの左腕を掴み、パンチの勢いに逆らうことなく引っ張って股で挟み込む。

 さらに技を外そうと伸ばしてきた右腕を両腕で掴んで締め上げ、左腕を挟んでいる脚をさらにキッドの左大腿部に引っ掛け倒す。

 これはジェネラル・パラストのデスマッチルーム“悪魔の涙(ジェネラル・ラクリマ)”で悪魔超人ザ・コンステレーション相手に仕掛けた関節技――

 

「48の殺人技のひとつ! “足絡み腕封じ”――っ!」

 

 キッドがキャンバスに組み伏せられた。

 一方のカオスはロビンの両腕を振り払い、ヘッドバットを仕掛けるため前傾になった彼をそのまま後ろに引っ張り倒す。

 その際、両脚でロビンの胴体を挟み込み、左腕をアームロックに極めてグラウンドへと移行した。

 

「同じく48の殺人技! カメハメ・ロック――ッ!」

 

 万太郎は21世紀の未来で父キン肉マンから、カオスは先日の特訓でシャネルマンから教えてもらった48の殺人技。

 攻勢に出ていたアドレナリンズが一転して劣勢になった。

 

『マッスルブラザーズ・ヌーボー、ジ・アドレナリンズの打撃技に対し関節技で切って返した――っ!』

 

 消耗した終盤での関節技はエスケープが難しく、そのまま決着ともなりうる。

 だがジ・アドレナリンズはそう簡単に抑えつけられるタマではなかった。

 

「こんなお上品な関節技じゃ、オレたちのアドレナリンは止められねえ――っ!」

 

 両腕と片足を極められている状態でありながら、テリー・ザ・キッドは全身に力を込める。

 アドレナリンが分泌され痛みが散っているのだ。

 関節破壊など恐れず、右腕を動かしの万太郎のクラッチを外した。

 そこからさらに左腕と左脚も抜く。

 

『キッド、ものすごいパワーだ! 力尽くで万太郎の関節技から脱した――っ』

 

 勝負は振り出しに戻った。

 さあロビン、もう一度オレたちのターンだ――と相棒に目配せするが、

 

「グウ~~ッ」

「ロ……ロビン!」

 

 ロビンマスクは関節技から逃れることができず、うめき声を上げていた。

 

『しかしロビンはつらいか!? カオスの放つアームロックに苦しんでいるぞ――っ!』

 

 自力では無理だと判断したキッドはロビンを救いに向かう。

 

「おっと、救出にはいかせないよ」

 

 その背後、万太郎がキッドの胴に両腕を回しクラッチ。

 間断なく後ろへ反り投げる。

 

「くらえ! ザッ・シャネルマン直伝バックドロップ――ッ!」

 

『万太郎、美しい曲線を描くバックドロップでキッドを投げた――っ!』

 

 頭部をキャンバスに突き刺されたキッド。

 これではロビンマスクを助けに行くどころではない。

 しかしパートナーのピンチは結果的にロビンを奮い立たせた。

 

「キッド! お、おのれ~~っ!」

 

 キッドのように力尽くで技を解除するような真似はできない。

 ならばここはベテランらしく、技の弱所をつく。

 唯一自由を許されている右腕を使い、カオスの頭部にパンチを繰り出した。

 

『ロビンマスク、左腕をアームロックに固められながらも……空いている右手でカオスの右側頭部を殴りつける! しかしそこはヘッドギアで守られているため効果は薄いか~~っ!?』

 

 手は届く。だが寝技をかけられながらのパンチは力が入らず、通常なら無意味な抵抗だ。

 そう、通常ならば。

 

「グ、グウ~~ッ」

 

『いや! 効果はあるようだ――っ』

 

 手打ちの打撃に苦しむカオス。

 ロビンのパンチが強力なのではない。問題は打たれている箇所だ。

 バックドロップの体勢から復帰した万太郎が叫ぶ。

 

「そこは魔時角を抜いた傷跡がある箇所……やめろ――っ! ロビンマスク――ッ!」

 

 万太郎はすぐさまロビンを止めようと駆け寄るが、それよりもカオスが力尽きるほうが早かった。

 

『ロビンマスク、カオスのカメハメ・ロックから脱出!』

 

 関節技から逃れたロビンは起き上がり際にカオスの両脚を持ち、その身を丸太のように持ち上げる。

 そして、それをまさしく丸太のごとく横薙ぎに振るったのだ。

 

「ダリャ――!」

 

 ぎょっとする万太郎の鳩尾を、武器にされたカオスが打つ。

 

『これは豪快~~っ! ロビンマスク、カオスの体をジャイアントスウィングの要領でぶん回し向かってくる万太郎を薙ぎ払った――っ!』

 

 ぶっ飛ばされる万太郎。

 これは使える、と判断したロビンはカオスを羽交い締めの形で捕らえ直し、パートナーに声を放る。

 

「ヘイ、キッド!」

「おっしゃー!」

 

 アドレナリン全開のキッドは万太郎のバックドロップをくらいながらもピンピンしていた。

 コーナーポストを登り、大空へと羽ばたく。

 

『ロビン、カオスを捕らえたままキッドに合図を出す――っ』

 

 空中で両膝を折りたたみ、ロビンが捕らえるカオスの頭部――やはり左側頭部を守るヘッドギアめがけて、テリー一族伝来の技を放つ。

 

「テキサス・コンドル・キック――ッ!」

 

 禿鷲の一撃は見事、地上の獲物を捉えた。

 

『パートナーがターゲットを捕らえた状態でのテキサス・コンドル・キックが炸裂――っ! これはクリティカルヒット間違いなしだ――っ!』

 

 苦悶の表情を見せるカオス。

 その両腕は力なく垂れ下がり、どう見ても自力での脱出は不可能だ。

 ゆえにロビンも拘束を解かず、さらなる追い打ちをパートナーに指示する。

 

「休むなキッド! もう一撃いくぞ!」

「オーケイ!」

 

 再びコーナーポストに向かおうとするキッド。

 それを阻むべく、先ほど薙ぎ払われた万太郎が戻って来る。

 

「暴れすぎだ、アドレナリンズ!」

 

 助走をつけてから体を横向きにし、キャンバスの上で連続側転。

 さらなる加速をつければ、それは十字手裏剣のような破壊力を持った蹴りとなる。

 

「マンタローエア――ッ!」

 

 ロビンマスクは万太郎の側転蹴りを回避することができず、蹴り飛ばされると同時にカオスを解放。

 同時にコーナーポストへ向かおうとしたキッドも蹴り飛ばし、アドレナリンズのコンビネーションを封じる。

 

『万太郎、側転で突っ込みカオスを救出! さらにアドレナリンズを分断した――っ』

 

 自由の身となったカオスは軽く頭を振り、瞳に反抗の熱を宿す。

 万太郎と目配せし、標的をロビンマスクに定めた。

 

「今度はボクたちが逆襲する番だ! カオス!」

「オオ!」

 

 万太郎は左側から、カオスは右側から。

 それぞれロビンの体を逆さにした状態で持ち上げ、跳ぶ。

 

『あ――っと万太郎にカオス、互いに逆さにしたロビンマスクを片方ずつ肩にのせ上昇していくぞ――っ』

 

 ただ肩に載せただけではない。ひとりずつ左右の大腿部を腕で掴み、見事にクラッチしている。

 2対1という変則的な形ではあるが、これはまさしく五所蹂躙絡み。

 

W(ダブル)キン肉バスタ――ッ!」

 

『これは~~っ!? タッグで繰り出す豪華版キン肉バスターだ――っ!』

 

 タッグマッチならではのキン肉バスターがキャンバスに着弾。

 首折り、股裂き、背骨折りの同時発動によりロビンに大ダメージを与える。

 

「さ……さすがの私もダブルでのキン肉バスター対策は考えていなかった……グハッ」

 

 キン肉マンの必殺技(フェイバリット)対策を徹底していたロビンマスクとて、ふたりがかりでの技は耐えられるものではない。

 吐血のあとキャンバスにダウンするが、すぐにでも起き上がろうと手足の先が蠢いていた。

 

「油断するなよカオス! ロビンマスクはこれくらいじゃ沈んだりしない!」

「ああ! 嫌ってくらいわからされたぜ!」

 

 ロビンマスクという超人のしぶとさを考慮し、カウントを待たずさらなる追撃に出るマッスルブラザーズ・ヌーボー。

 再びロビンマスクを逆さまにし、左右分担して持ち上げ上昇。

 ただし今度は肩の上に載せるのではなく、開いた両脇に足を載せさらに足首を持った。

 

「お次はダブルのキン肉ドライバーだ――っ!」

 

『マッスルブラザーズ・ヌーボー、再び飛翔! ロビンマスクを左右で分担して固め、キン肉ドライバーで落とそうとする――っ!』

 

 Wキン肉バスターとWキン肉ドライバーの連続コンボなら、さすがのロビンマスクとはいえひとたまりもあるまい。

 確かな勝利の予感を感じ取り、万太郎とカオスの手に力が入る。

 それをキャンバスから見上げていたのは、テリー・ザ・キッドだ。

 

「フィニッシュタイムになると意気揚々と大技を繰り出そうとするのが万太郎の悪いクセ……」

 

 キッドは先ほどの側転蹴りで出血した鼻を親指で拭い、キン肉ドライバーめがけて飛び上がる。

 飛翔の最中、両膝を万太郎に向かって突き出した。

 

「“テキサス禿鷲(コンドル)は二度飛翔する”――っ!!」

 

 思わぬ横槍に対処することができない万太郎。

 キッドの膝は万太郎のど真ん中をぶち抜き、Wキン肉ドライバーの片側が崩壊した。

 

『キッド、上昇しながらのテキサス・コンドル・キックで万太郎を狙い撃ち――っ!』

 

 万太郎が担当していたのは、ロビンの左半身。

 右半身を担当していたカオスはロビンの足首から手を離さなかったが、バランスが崩れ脇に置いていた足を外してしまう。

 

「ナイスだキッド!」

 

 ロビンマスクは自由となった右腕を使い、カオスの右足を脇で挟む。

 

『片側だけとなったキン肉ドライバー! ロビンがカオスの脚をロックしそのまま降下してくる――っ』

 

 現在最も下に来ているのは、自由を失ったカオスの右足。

 この状態でキャンバスに着地すればどうなるか。

 

「ロビン式キン肉ドライバー殺し~~っ!」

 

 落下の衝撃はカオスの右足に一点集中。

 靭帯と骨に強烈な負荷がかかり、カオスが絶叫する。

 

「ウギャア――ッ!」

 

『カオスの左脚を目一杯伸ばした状態で着地! 二人分の体重が乗っかり、ダメージは甚大だ――っ!』

 

 激痛によりキャンバスの上を転げ回るカオス。

 

「カ、カオス――ッ!」

 

 テキサス・コンドル・キックで迎撃された万太郎がすぐに駆け寄ろうとするも、その頭部が後ろから掴まれた。

 

「背後への注意が足りねえなあ、万太郎」

 

 振り向けないほどの握力で頭をロックされ、さらに後頭部に膝が当てられる。

 ここはリングコーナーのすぐそば――キッドは万太郎の後頭部に膝を当てられるほどの高い位置にいたのだ。

 

『あ――っといつの間にかコーナーポストの上に陣取っていたキッド! 万太郎の後頭部をつかみヒザを当てている――っ』

 

 キッドがこの状態でコーナーから飛び降り、前方向に倒れればどうなるか。

 もちろん万太郎の体も前に倒れ、頭部はキャンバスとキッドの膝でサンドイッチにされることだろう。

 

「カーフ・ブランディング(仔牛の焼印押し)――ッ!」

 

 しかして、そのとおりになった。

 万太郎の頭部は顔面からキャンバスに叩きつけられる。

 

『出た――っ! テリー一族伝統の必殺技(フェイバリット)だ――っ!』

 

 キッドの父、テリーマンがフィニッシャーとして使うことも多いこのカーフ・ブランディング。

 万太郎はダウンを余儀なくされ、結局カオスも救い出せぬまま、マッスルブラザーズ・ヌーボーはダブルダウンとなった。

 

『なんというシーソーゲーム! 際立つのはロビンマスクとキッドのタフさ! 強いぞジ・アドレナリンズ――ッ!』

 

 勝負はジ・アドレナリンズの優勢。

 観衆、特にマッスルブラザーズ・ヌーボーのファンがハラハラした様子で見守る中、ひとり滝のような冷や汗を流す超人がいた。

 

「あ……ああ~~っ!」

 

 ザ・マシンガンズのふたりと共に観戦していたアレキサンドリア・ミートくんである。

 冷や汗の理由は、現在リング上に立っているふたり――テリー・ザ・キッドとロビンマスクの体にあった。

 ふたりの体が、神秘的な光に包まれていたのである。

 

「で……伝播している! ロビン王朝(ダイナスティ)の者しか持ち得ぬはずの大渦(メイルストローム)パワーが……キッドにも!」

 

 大渦パワー。

 それは、ロビンマスクの息子であるケビンマスクが過去に見せたことがある尋常ならざる力の発揮。

 ロビン一族版火事場のクソ力とでも言うべきそれは、この“究極の超人タッグ戦”において父であるロビンマスクも見せていたが……今、同様のパワーをロビン一族ではないテリー・ザ・キッドが見せている。

 

「まだまだいけるよな、キッド!」

「もちろんだ!」

「ならば仕掛けるぞ、我らのフィニッシュ・ホールドを!」

 

 畳み掛けるならここしかない。

 ロビンマスクとテリー・ザ・キッドが最後の技を発動させるべく動いた。

 

 キッドはダウンするカオスの両脚を掴んで交差させ、四葉の形に固める。

 ロビンマスクはダウンする万太郎を仰向け姿勢で肩に担ぎ、首と右大腿部を掴む。

 

『アドレナリンズ、キッドがカオスをテキサス・クローバー・ホールドに、ロビンが万太郎をタワーブリッジに捕らえた――っ』

 

 それぞれが得意とする必殺技に極めるが、どちらもシングル用の技だ。

 もちろん各個撃破などという地味な決着は望まない。

 タッグマッチの花形はやはりツープラトン――それを仕掛けるべく、両者跳ぶ。

 

『そしてそのまま、両者上昇――っ』

 

 十分に高度を稼いだところで互いに目配せした。

 

『さらに両者とも体勢を上下逆さにし、降下体勢に入る――っ』

 

 敵を量るは目に在り、同志を察するはヘソに在り。

 ツープラトンの極意を体現し、万太郎を逆タワーブリッジに極めたロビンがキッドのほうへ――より正確には、キッドが捕らえるカオスのほうへ脚を伸ばす。

 

『あ――っとその過程でロビンがカオスの首に両脚を引っ掛けた――っ!』

 

 両脚に加え首までクラッチされてしまったカオス。

 この体勢はまさしく先ほど万太郎がくらったアドレナリン・ブリッジだが、今回はさらに逆タワーブリッジまで同時発動している。

 

『こ、これは~~っ! 先ほど万太郎にかけたアドレナリン・ブリッジに逆タワーブリッジを加えた完成版ツープラトンだ――っ!』

 

 逆タワーブリッジ+ロビン・スペシャル+テキサス・クローバー・ホールド。

 特筆すべきはやはりロビンマスク。いくらキッドの補助があるとはいえ、自身が有する必殺技をふたつも同時に仕掛けるとは。

 

「バケモノかよロビンは! 逆タワーブリッジとロビンスペシャルを同時にかけるだなんて!」

 

 ロビンマスクという超人をよく知る20世紀の伝説超人(レジェンド)、ブロッケンJrでもこれにはさすがに仰天せざるをえない。

 傍らにいるジェイドはブロッケンと同じ気持ちで、しかしこの無茶すぎるツープラトンの問題点を指摘する。

 

「無茶だ! あれでは重量のバランスがロビンマスクに寄りすぎている! アドレナリン・ブリッジのウリである腹裂きの効果は見込めないぞ!」

 

 事実、アドレナリンズは同時着地を狙い降下していくがキッドの体がやや浮き気味だ。

 このままではカオスの体でブリッジを描くことはできないだろう。

 

「いや、だがその分カオスの首にかかる負荷が凄まじいものになっているはずだ! これが決まればカオスの首はただじゃすまねえ――っ!」

 

 一回戦で残虐戦法を使ったスカーフェイスですら、ロビンマスクの狂気とも思える技を見ておののいた。

 ロビンは万太郎やカオスを殺す気か!?

 そんな生ぬるい指摘は、もはやアドレナリンズのふたりには届かない。

 

「もっと体を反らせキッド! このツープラトンはおまえの側に重量が寄るほど効果が倍化する!」

「わかってらぁ――っ!」

 

 ロビンマスクのストラテジーはこの新型アドレナリン・ブリッジを成功させることで完成されるのだ。

 逆に言えば、この新型アドレナリン・ブリッジの成功なくしてマッスルブラザーズ・ヌーボーに勝利することはありえない。

 一意専心、ロビンもキッドも残ったパワーのすべてを込める。

 

「ロビン・スペシャルとテキサス・クローバー・ホールドに捕らえられたカオスはとてもじゃないが脱出できない……ボクがなんとかしなければ~~っ」

 

 絶体絶命のピンチに、チームリーダーである万太郎が奮起する。

 とはいえロビンマスクのタワーブリッジ攻略は至難の業。

 シャネルマン式の表裏を入れ替える攻略法もカオスが序盤に失敗している……いったいどうすれば。

 

「鎧だ――っ! 万太郎――っ!」

 

 刹那、耳に飛び込んできたのは幼い頃から聞き馴染んできた父の声。

 

「ち……父上!」

 

 トーナメント・マウンテンの麓から、キン肉マンが自分の名を呼びただ「鎧だ」と伝えてくる。

 それだけで、父がなにを言いたいのかは察せられた。

 

「そうだ~~っ! ロビンマスクは鎧を脱いでしまっている……だからこそ逆タワーブリッジとロビン・スペシャルの同時発動なんて無茶なムーブを実現できたが、そこに体力を使いすぎてしまい、技が成立した今は従来よりクラッチが弱くなっているはずだ――っ!」

 

 ロビンマスクは鎧を脱ぐことで身軽になる一方、体力の消耗が激しくなるのだ。

 

「だから……シャネルマンの教えが活きる!」

 

 万太郎は背骨が折られることを恐れず、思い切り体を捻った。

 

『万太郎、タワーブリッジにかけられたまま体をグルリと反転し表裏を入れ替えた! これは試合中盤でカオスが失敗したタワーブリッジ破りのムーブだ――っ!』

 

 仰向け体勢で捕らえらていた万太郎の体が、反転してうつ伏せ体勢になる。

 これにより背骨が折られる心配はなくなり、タワーブリッジは無効化される。

 だが――この技はすでにタワーブリッジではない。

 

「フハハハハ! バカめ! ただのタワーブリッジならいざ知らず、あとはキャンバスに叩きつけるだけの逆タワーブリッジで表裏を入れ替えたとて意味などない! 背骨とセットで肋骨が粉々になるだけだ――っ!」

 

 そう、あとはキャンバスに背中から激突するか胸から激突するかの違いでしかない。

 キン肉マンがグランドキャニオンで見せたタワーブリッジ破りのムーブは、逆タワーブリッジに対しては無力なのだ。

 

「た……確かにそうだ……っ! じゃあどうすれば……ボ、ボクは負けるのか~~っ!?」

 

 カオスを助けるどころか、技から逃れることすらできないなんて。

 強豪超人を前にした際に何度も味わってきた絶望が、万太郎の戦意を削いでいく。

 もはやこれまでか――

 

「“Ⅱ世”――――っ!」

 

 そのとき、ありえない声が万太郎の耳朶を打った。

“Ⅱ世”――すなわち、キン肉マンⅡ世。

 万太郎のことをそう呼ぶ存在など、ひとりしかいない。

 しかしその人物は未来に残り、この時代には来ていないはずだ。

 だが事実、万太郎の耳に届いたその声の主は――

 

「ミ……ミート!?」

 

 トーナメント・マウンテンの麓、キン肉マンの足もとで泣きそうな顔を浮かべるアレキサンドリア・ミートくんだった。

 

「勝ってください! あのとき果たせなかった打倒・ロビン王朝(ダイナスティ)を……ボクに見せて――っ!」

 

 小さな体に見合わぬ声量で、ありったけの想いを叫ぶミート。

 傍らのキン肉マンは従者の思わぬ言動に戸惑いを隠せない。

 

「ミート、おまえⅡ世って……」

「ハッ……ボ、ボクはなにを……?」

 

 ミート自身、自分がなにを口走ったのか理解できていないようだった。

 それもそのはず、ここにいるのは万太郎のことを“Ⅱ世”ではなく“万太郎さん”と呼ぶ20世紀のミート。

 万太郎がロビン王朝を打倒するところを見たいという願いを口にさせたのは、未来から送られてきた21世紀ミートの記憶だ。

 

 ――ワワアア~~ン、悔しいよ~~っ!

 ――お泣きなさい。思いっきり、気の済むまで……

 

 超人オリンピック・ザ・レザレクション決勝、対ケビンマスク戦。

 自身の負傷が原因でセコンドにつけず、結果万太郎を優勝に導けなかった後悔は、ミートの記憶の中でずっと燻り続けていたのだ。

 

「ミート……そうだね。信じて送り出してくれた21世紀ミートに……過去の世界でまたロビン王朝に敗れましたなんて土産話をするわけにはいかない~~っ」

 

 未来の正義超人界のため、30余年もの間肉体を冷凍保存させる決断をした崇高な少年。

 そんな彼に報いるためにも、二度と悔しい思いはさせたくない。

 ケビンやカオスには悪いが……今この瞬間だけは、ミートのために!

 

「火事場のクソ力――っ!」

 

 万太郎の体から炎のごときパワーが溢れ出し、額の“肉”マークが燃え上がる。

 K・K・Dの大噴出。

 それはロビンマスクの両腕のクラッチを外し、逆襲の一手を生んだ。

 

「閉門クラッシュ!」

 

 自由になった両肘と両膝をくっつけるように――まさしく門を閉じるかのようにぶつけ合わせる。

 直前まで万太郎はタワーブリッジにかけられていたが、シャネルマン式攻略法によりその表裏を逆転させていた。

 となればもちろん、両肘と両膝の間にはロビンマスクの頭がある。

 

『あ――っとタワーブリッジのクラッチを外した万太郎、両ヒジと両ヒザでロビンマスクの頭部を挟み込んだ――っ!』

 

 ロビンマスクの仮面が揺れ、脳髄がシェイクされる。

 

「グワアッ!」

 

 さすがのロビンも悲鳴を上げ、アドレナリンズのツープラトンは空中分解を起こす。

 

『ロビンマスク、たまらずロビン・スペシャルを解除――っ! 新型アドレナリン・ブリッジの形が崩れた――っ』

 

 中空に投げされた万太郎とロビンマスク。

 唯一、テリー・ザ・キッドだけがカオスを捕らえて離さなかった。

 

「クッ……だがこのテキサス・クローバー・ホールドだけは!」

 

 アドレナリン・ブリッジは修復不可能。しかし片側だけでも極めてみせる!

 キッドは交差させたカオスの脚をそのままに、片腕で着地して衝撃を加えようとした。

 

「万太郎が作ってくれたチャンス! パートナーとして無駄にはできねえ――っ!」

 

 テキサス・クローバー・ホールドという技はそういうふうにはできていない。

 テリーマンの技をキッドと同じくらい知るカオスだからこそ、臆さず体重をかけていった。

 

「テキサス・クローバー・プレス(テキサス四つ葉の押し花)――――ッ!」

 

 技名を叫んだのは、カオス。

 キッドはテキサス・クローバー・ホールドを維持したまま片手でキャンバスに着地したが、やはり片手だけではその体重を支えきれず、ぽきりと折れた。

 そのまま重量に任せ、カオスがキッドを押し潰す。

 

『あ――っとカオス、テキサス・クローバー・ホールドを維持しようとするキッドを下敷きにする形で落下――っ! ダメージはキッドのほうが上だ――っ!』

 

 テキサス・クローバーは押し花のようにぺしゃんことなった。

 下敷きにされたキッドは不格好な姿勢でダウン。

 しかし直前まで脚の拘束を解かなかったため、カオスにもダメージが入っていた。

 

「グッ……万太郎――っ! シャネルマンの教えを思い出せ――っ!」

 

 だからどうしたと言わんばかりに、カオスが声を張り上げ痛みを散らす。

 

「おう! “正義超人は相手の闘志を完全に削り奪い取るまでは攻撃の手をゆるめてはならぬ”だ――っ!」

 

 逆タワーブリッジを攻略しキャンバスに着地していた万太郎は、相棒の呼びかけに勇ましく答えた。

 万太郎とは違い着地に失敗したロビンマスクを担ぎ、再び飛翔する。

 

『お――っと万太郎、ロビンマスクをキン肉バスターにかかえて飛び上がる――っ!』

 

 逆さにした相手の両大腿部を掴み、肩の上に首を載せるご存知キン肉バスターの構え。

 新型アドレナリン・ブリッジの失敗直後という大チャンスを活かすべく、電光石火の仕掛けを試みた。

 

「敵を量るは目に在り――っ!」

 

 ウォーキューブの最頂点まで達した万太郎は、真下のカオスを見る。

 カオスもまた万太郎のやろうとしていることを理解し、悶絶しているキッドを捕らえた。

 

『それに続いてカオスもキッドをかかえてジャンプ――ッ!』

 

 逆さにしたキッドの大腿部に座るような体勢を取り、脛のあたりを掴むカオス。

 そのまま両脚をかけて後方に転がればジャパニーズ・レッグロールクラッチが決まるが、マッスルブラザーズ・ヌーボーが狙うのはシングル技ではない。

 

「同志を察するはヘソに在り――っ!」

 

 カオスが叫び、万太郎のヘソを見る。

 万太郎もまた、カオスのヘソに視点を合わせた。

 

『さあ万太郎、上昇から落下に転じ……カオスは宙で止まりそれを待ち構える――っ!』

 

 降りてくる万太郎の速度は、通常のキン肉バスターとは比較にもならない速さだった。

 ロビンの体はまるでパラシュートのように膨れ上がり、肋骨や内臓が飛び出そうなほどの負荷がかかる。

 その負荷を最大限高めるため、万太郎はさらに両脚でロビンの両腕を挟み込んだ。

 

『急降下によってかかる強烈なG(重力)によってロビンマスクの体が逆方向へ反り返る――っ! そして下ではジャパニーズ・レッグロールクラッチにキッドを極めたカオスが……今、万太郎の体をリバース・ジャーマンスープレックスの形でキャッチした――っ!』

 

 この技は万太郎とカオスが2000万パワーズとの対戦で見せたツープラトン。

 否、あのときよりも精度は増している。

 

「マッスル・G(グラビティ)――ッ!」

「キングジャーマン・スープレックス――ッ!」

 

 21世紀の超人レスリング界において最強と呼ばれたキン肉万太郎の必殺技“マッスル・G”を、カオスが最も得意とする“キングジャーマン・スープレックス”で投げ威力を倍化、さらにジャパニーズ・レッグロールクラッチで捕らえた相手にもその衝撃を伝える。

“究極の超人タッグ戦”で生まれた21世紀版“至高のツープラトン”の名は――

 

「マッスル・エボルシオン!!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。