ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

76 / 106
第076話 ガチンコファイトの幕が下りる!

『トーナメントマウンテン、ウォーキューブ内に埃が充満していて中がよく見えない~~~~っ!』

 

 灰色に包まれるウォーキューブ内。

 トーナメント・マウンテンの麓に集った人々は皆一様に顔を上げ、その景色が晴れるのを望む。

 埃が舞ったのは激突の際の激しい衝撃によるもの……しばらくして、待ち望まれた瞬間は訪れた。

 

『見えたぞ――っ! リング上、マッスルブラザーズ・ヌーボーの必殺ツープラトン“マッスル・エボルシオン”が、ジ・アドレナリンズに決まった――っ!』

 

 あの2000万パワーズをくだした革命的必殺技は、ジ・アドレナリンズのふたりを完膚なきまでに叩きのめした。

 マッスル・G(グラビティ)を極められたロビンマスクは首、背骨、腰骨、左右の大腿骨に加え、凄まじい落下速度によって生み出されるGによってアバラや内蔵まで破壊された。まさに五所蹂躙絡みならぬ七所蹂躙絡み。

 ジャパニーズ・レッグロールクラッチに極められたテリー・ザ・キッドもまた、カオスがキングジャーマンで万太郎と合体したことにより落下の衝撃をダイレクトに伝えられた。ロビンのように局所破壊とはならなかったが、そのかわりダメージは全身に隈なく浸透している。

 

 確かな手応えを感じ、万太郎とカオスが捕らえていた相手をそれぞれ離す。

 アドレナリンズのふたりは反撃などできるはずもなく、キャンバスに崩れた。

 

『テリー・ザ・キッドにロビンマスク、仰向けに倒れる――っ』

 

 ツープラトンの成功は、タッグマッチにおける勝利のサイン。

 しかし、この“マッスルブラザーズ・ヌーボー”vs“ジ・アドレナリンズ”の場合は少し違った。

 

「ググ~~ッ」

 

 万太郎とカオスは勝ち名乗りを上げることもなくその場に崩れた。

 

『力を使い果たしたか、キン肉万太郎とカオスも同時に倒れた――っ』

 

 リングの上に倒れた超人は4人。

 立っている超人は誰ひとりとしていない。

 

『こ……これはよもや、両チームダブルノックアウトの引き分けか――っ!?』

 

 まさかの展開にざわつく会場内。

 試合のジャッジをくだす立場にいるハラボテ・マッスルは、毅然とした態度で采配を振るった。

 

「ダウンカウントじゃ! ジ・アドレナリンズとマッスルブラザーズ・ヌーボーの両チームに対して!」

 

 部下に指示を出し、勝者を決定するためのカウントダウンが行われる。

 

『さあ――っ、ダウンカウントが始まった! いち早く立ち上がり勝ち名乗りを受けるのはどちらのチームだ――っ!?』

 

 軍配はどちらに挙がるのか。トーナメント・マウンテンにいる全観客が息を呑んで見守った。

 その中に紛れる超人、ジェイド、スカーフェイス、ブロッケンJrの3人は熱狂しながらそれぞれの見解を口にする。

 

「万太郎もカオスも限界だったんだ! ツープラトンを極めたことで残っているパワーをすべて使い果たした!」

「だがキッドもロビンもマッスル・エボルシオンを食らっている! 立ち上がる可能性があるのはヌーボーのふたりのほうだ!」

「いや、試合全体を見てのタフさではアドレナリンズのほうが勝っている! ここで先に立ち上がって勝ちを掻っ攫っていってもなんら不思議じゃねえ――っ!」

 

 また別の位置では、ミートとテリーマンが贔屓のチームに声援を送っていた。

 

「万太郎さん! カオス! 立ってください! ここまできて10カウント負けなんてもったいなさすぎる――っ!」

「ヘイ、キッド! ミーの息子を名乗るなら今すぐ立ち上がってみせろ! 本物のテキサス男子ならこれしきのことで諦めたりするな――っ!」

 

“マッスルブラザーズ・ヌーボー”を応援するミート、“ジ・アドレナリンズ”を応援するテリーマン。

 そのふたりに挟まれたキン肉マンもまた、リング上の超人に声援を送る。

 

「ロビーン! おまえはわたしとテリーマンを……ザ・マシンガンズを倒したんだ! わたしたちの代わりにトロフィーを手に入れるのはおまえしかいない! 準決勝なんかで躓くな――っ!」

 

 己を倒した宿命のライバルには、こんなところで負けてほしくない。

 超人レスラーとしての純粋な気持ちは、しかし相反する感情とせめぎ合っていた。

 

「そして万太郎! おまえもこのキン肉マンの息子であるならば……未来の正義超人界を背負って立つヒーローであるならば、何度だって立ち上がりその手に勝利を掴むのだ――っ!」

 

 未来からやってきたキン肉マンⅡ世が倒れるところなど、絶対に見たくはない。

 どちらにも立ち上がってほしいからこそ、キン肉マンはロビンマスクと万太郎の両者に声援を送るのだった。

 

「フフフッ……」

 

 そのやかましい声を耳にし、静かな笑い声を漏らす超人がひとり。

 先に声援を送られたキン肉マンの友――ロビンマスクである。

 

「八方美人なやつめ。自分を倒した男が負けるのが許せない気持ちと、未来の息子が自分と同じようにライバルにやられるのが許せない気持ちで、板挟みにあっていると見える……」

 

 友の胸中を十分に察した上で、ロビンマスクは身を起こす。

 マッスル・エボルシオンによって大打撃を受けたアバラを押さえながら、まずは四つん這いになろうとした。

 

『あ――っとロビンマスク、フラフラながらも立ち上がろうとする――っ!』

 

 4人の中では最年長、誰よりも体力的に不利であるはずなのに、やはり最初に動いたのは彼だった。

 薄れゆく視界の端に苦しそうな鉄仮面の容貌が映り、テリー・ザ・キッドも奮起する。

 

「ロビン……あんたが立ち上がるってんなら、チームリーダーであるオレが立たないわけにはいかねえ~~っ」

 

 ジャパニーズ・レッグロールクラッチにより痛めつけられた両脚はすぐには使えない。

 だが上半身が動くなら身を起こすことは可能だ。

 キャンバスの上を虫のように這い、キッドはコーナーに手を伸ばす。

 

『キッドもコーナーポストを使い体を起こそうとしている――っ!』

 

 両脚を痛めているのはキッドだけではない。

 カオスもまた、キャンバスの上を這って進んでいた。

 

「ラ……ラストのほうでロビンとキッドにやられた脚の痛みがひどい。だが、なんとしてでも立ち上がらねば~~っ」

 

 キン肉ドライバー返しとテキサス・クローバー・ホールドで負ったダメージが、カオスを地に縛り付ける。

 それでも執念で手を伸ばし、リングロープを掴んだ。

 

『カオスもロープを使い上半身を起こそうと試みる――っ!』

 

 4人中、3人の超人がなんとか立ち上がろうと躍起になっている。

 試合続行の意思を示し、勝ち名乗りを受けるために。

“究極の超人タッグ戦”の次なるステージ、夢の決勝戦に進むために。

 

 では――あとひとりの超人はどうしてしまったのか。

 

 カオスにリングを見渡す余裕はない。

 ダウンカウントは止まってはくれないのだから、まずは立たなければ。

 リングロープを掴む手に力を込めるが、その腕が不意に何者かに掴まれた。

 まさか、ロビンマスクか? それともテリー・ザ・キッドか? オレが立ち上がるのを阻むつもりか!?

 カオスは一瞬身を固くするが、その腕はキャンバスに引きずり下ろされるのではなく、上方に引っ張り上げられた。

 

『あ――っと、そんなカオスを支えいち早く完全に立ち上がったのは、キン肉万太郎だ――っ!』

 

 カオスの腕を持ち上げ、肩を貸して立ち上がらせる万太郎。

 

「ま……万太郎」

 

 マッスルブラザーズ・ヌーボーのチームリーダー、キン肉万太郎はこの場の誰よりも早く立ち上がっていた。

 疲労困憊、重傷の身ではありながら、強気な表情をカオスに見せる。

 

「ごめんよカオス。不甲斐なくも一度ダウンしてしまった……けど、大丈夫だ。ボクたちのマッスル・エボルシオンは完璧に極まった。失神KOを取れなかったのは、キッドとロビンの執念の賜物。それは素直に讃えよう……」

 

 万太郎に促され、カオスはキッドとロビンを見やる。

 ジ・アドレナリンズのふたりは――

 

「グゲホッ」

「ガハアッ」

 

 まったく同じタイミングで吐血し、その場に崩れた。

 キッドはコーナーポストから手を離し、ロビンの体は完全に伏している。

 

「倒れた……キッドとロビンが」

「ああ……そういうことだ」

 

 ダウンから立ち上がろうとしたふたりは、しかしそれが叶わず再度ダウンしてしまった。

 ピクリとも動かなくなり、テンカウントが告げられる。

 ハラボテが木槌を振り上げた。

 

『ノックアウト! ジ・アドレナリンズvsマッスルブラザーズ・ヌーボーの一戦は……マッスルブラザーズ・ヌーボーの勝利じゃ!』

 

 カンカンカン!

 大会運営委員長のハラボテ自らゴングを叩き、完全決着の瞬間が訪れた。

 

『あ――っと準決勝第1試合を制したのはキン肉万太郎&カオスの“マッスルブラザーズ・ヌーボー”だ――っ! テリー・ザ・キッド&ロビンマスクの新旧正義超人コンビ“ジ・アドレナリンズ”をくだし、見事トーナメントマウンテンの頂きに王手をかけた――っ!』

 

 実況のアナウンスにより、巨大なトーナメント・マウンテンが揺れる。

 麓に集った人々の大歓声がそうさせるのだ。

 劇的な決着に誰もが喉を震わせ、万太郎とカオスの名を叫んでいた。

 

「すげえ~~っ! 万太郎にカオス! あのマシンガンズをも倒したアドレナリンズに勝っちまうとは!」

 

 ジェイドとスカーフェイスの肩を抱き、子供のように跳び跳ねて騒いでいるのはブロッケンJrだ。

 

「万太郎さん~~っ! ボクはなんでか知らないけど、涙があふれて止まらなくなるほど嬉しい――っ!」

 

 ミートは21世紀から送られてきた記憶の影響で、万太郎の打倒・ロビン王朝に感涙していた。

 

「フン! ロビンにキッドのやつめ、わたしたちに勝っておきながら不甲斐ない姿を見せおって」

 

 キン肉マンはブロッケンJrのようにはしゃぐことも、ミートのように泣くこともない。

 ただアドレナリンズが敗れたことに対し不満そうな顔を浮かべる。

 だが、それも一瞬の強がりだ。

 

「おめでとう……万太郎」

 

 最終的には優しげに微笑み、静かな声でマッスルブラザーズ・ヌーボーの勝利を祝福した。

 横にいたテリーマンはやれやれと肩を竦める。

 彼自身はジ・アドレナリンズの敗北を悔しく思い、自分以上に悔しがっているだろう未来の息子に視線を送る。

 

「諦めたりするなよ、キッド……リベンジはホームである21世紀に帰ってからすればいい。長い超人レスラー人生、おまえたちには未来があるのだから」

 

 正義超人はいつ如何なる時代も切磋琢磨。

 競い合える友がいるのは至上の喜びなのだ……キッドにもそういう相手がいることを喜ばしく思う。

 

 決着のゴングが鳴り響いてからしばらく、意識を回復させたロビンとキッドがゆっくりと身を起こす。

 

「立てるか……キッド」

「な、なんとかな……」

 

 互いに声を掛け合い、体を支え合って立ち上がろうとする。

 しかし、やはりマッスル・エボルシオンの破壊力は殺人的だ。

 ロビンもキッドも上半身を起こすのが精一杯で、完全には立ち上がれそうにない。

 

 そんなロビンの肩は、カオスが。

 そしてキッドの肩は、万太郎が支えた。

 

「ありがとう、ジ・アドレナリンズ」

「ふたりのおかげで……ボクたちはさらに強くなれた気がするよ」

 

 カオスと万太郎が、勝者が敗者に感謝の言葉を送る。

 試合が終わればノーサイド。それが正義超人の真剣勝負というものだ。

 両チームリーダーであるキッドと万太郎は、後腐れない顔つきで笑い合った。

 

「へへっ……絶対優勝しろよ、キン肉万太郎」

「ああ。任せてくれ、テリー・ザ・キッド」

 

 ライバルチームを支え、ライバルチームに支えられて、“マッスルブラザーズ・ヌーボー”と“ジ・アドレナリンズ”がリングアウトする。

 感動的な一幕を、トーナメント・マウンテンの観客たちが拍手で讃えた。

 

「ロビン……」

 

 客席の中、ロビンマスクの名を儚げにつぶやいたのはウォーズマンである。

 師匠超えを標榜し、決勝で相まみえることを約束したが……残念ながらそれが叶うことはなくなった。

 悔しくてたまらない。だがロビン本人の悔しさは自分などとは比べ物にもならないだろう。

 そして、横にいるこの男もまた感情を昂らせていた。

 

「泣いているのか、ネプチューンマン」

 

 仮面の下から涙が伝い落ち、頬を濡らすおっさん超人。

 

「年を取ると涙もろくなっていけねえや……」

 

 マシンガンズvsアドレナリンズのときは後輩のセイウチンに恥ずかしい姿は見せまいと誤魔化したネプチューンマンだったが、同世代のウォーズマン相手には取り繕う必要もない。

 正義超人たちとの闘いで生き方を大きく変えた者同士、本音を口にする。

 

「いいもんだな~~っ、正義超人同士のガチンコファイトってやつは」

「同感だ」

 

 かくして、“究極の超人タッグ戦”準決勝第1試合、“マッスルブラザーズ・ヌーボー”vs“ジ・アドレナリンズ”は幕を閉じた。

 本日の予定は2戦。

 この後に予定されているのは、もう一組の準決勝戦だ。

 

『それでは、今から3時間後の午後5時10分より、場所は同じくここトーナメント・マウンテンにおいて“究極の超人タッグ戦”準決勝第2試合“世界五大厄(ファイブディザスターズ)”vs“新星(ノヴァ)・ネオ・イクスパンションズ”を執り行う!』

 

 全観客に届くようハラボテがマイクを取って声を張り上げる。

 実況もそれに続いた。

 

『ああ~~っと、白熱の正義超人対決による興奮冷めやらぬ中、3時間後には今大会の首謀者ともいえる時間超人コンビ“世界五大厄”と、前大会を賑わせたふたりの超人によるドリームコンビ“新星・ネオ・イクスパンションズ”の試合が行われることが今、大会運営委員長より告げられた――っ!』

 

 名勝負によってマックスまで高められたボルテージは、たかが3時間程度では冷めるはずもない。

 観衆はこれから3時間叫び続けそうなほどの勢いで沸いた。

 

『これより3時間、休憩(インターミッション)とする! 第2試合に出場予定の2チームはただちに控え室で試合の準備をするように!』

 

 ハラボテが告げると同時、退屈そうに伸びをする超人がふたり。

 先ほど紹介された時間超人コンビ“世界五大厄”である。

 

「フッ、長時間正義超人の正統派ファイトを観続けて疲れたぜ」

「次は血で血を洗う悪行ファイトってやつを見せてやるぜ――っ」

 

 ライトニングとサンダーにとっては、正義超人たちの激闘など興味のない映画を見せられたようなもの。

 さしたる感慨もなく、控室へと続く花道を歩いていく。

 

「いくぜウォーズマン。次はオレたちの出番だ」

「ああ。いよいよ最大のミッションをこなすときがきた」

 

 ネプチューンマンとウォーズマンの“新星・ネオ・イクスパンションズ”もまた、控室に向かおうとしていた。

 両者が動いたタイミングはまったく同じ。

 となれば、道中で鉢合わせになるのも無理からぬこと。

 

『あ――っとそれぞれ控え室に向かおうとする“世界五大厄”と“新星・ネオ・イクスパンションズ”、道中で睨み合っているぞ――っ』

 

 3時間後には対戦する予定の超人タッグチームが顔を合わせて無反応で終わるわけもない。

 特に“新星・ネオ・イクスパンションズ”を鬱陶しく思っている“世界五大厄”は、ここぞとばかりに挑発を口にする。

 

「若作りが趣味のおっさんと耐久年数を過ぎたオンボロコンビ……準決勝の相手にしちゃ張り合いがねえ」

「確かにな。これならまだ二回戦で当たった悪魔超人と新世代超人(ニュージェネレーション)の混成タッグのほうが威圧感があったぜ」

 

 ふたりの最大のイジリどころである年齢を引き合いに出して煽るライトニングとサンダー。

 しかし安い。安すぎる挑発だ。

 ネプチューンマンもウォーズマンも余裕の態度でこれを受け取り、笑みで返す。

 

「グフフ……盛り上がること言ってくれるじゃねえか、ライトニングさんにサンダーさんよ」

「だがおあいにくだったな。次の試合で見られるのは悪行ファイトなどではない……」

「もちろん、正義超人らしい正統派ファイトでもない。そもそも超人レスリングの試合などと思わんことだ」

 

 意味深なことを言うふたりに、ライトニングが肩を竦めた。

 

「ほーん。それならなにを見せてくれるってんだ?」

 

 ネプチューンマンはニィ……と不気味に口角を上げる。

 

「決まっているだろう。なあ」

「ああ」

 

“新星・ネオ・イクスパンションズ”は互いに目配せし、仇敵に対し堂々言ってのける。

 

「ベテラン正義超人コンビによる、“悪行超人退治”さ」

 

 悪行超人退治――それは21世紀の正義超人である新世代超人に与えられた命題。

 20世紀から生きてきた伝説超人(レジェンド)のふたりは、その命題を掲げ闘いに臨む。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。