ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

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第077話 冷酷なる指導者の復活!

 準決勝第1試合が終わり、第2試合が始まるまでに設けられた3時間のインターバル。

 その試合に出る“新星(ノヴァ)・ネオ・イクスパンションズ”、ネプチューンマンとウォーズマンは控え室で作戦の確認やアップをしていたが、そこに思わぬ来訪者が現れた。

 

「これはこれは……ずいぶんと奇妙な組み合わせだな」

 

 出迎えたネプチューンマンは率直な感想を述べた。

 

 来訪者は、ふたり。

 ひとりはこの時代の伝説超人(レジェンド)であり、先ほど無念の敗退となってしまった“ジ・アドレナリンズ”の一角――ロビンマスク。

 そしてもうひとりは、未来からやってきた新世代超人(ニュージェネレーション)であり、ネプチューンマンとは一回戦でぶつかりあった“スーパー・トリニティーズ”の一角――ジェイド。

 

 タッグでもなければ直接の師弟でもない。ジェイドはヘラクレス・ファクトリー出身のため、未来の学校長と生徒ではあるかもしれないが……このふたりが会話をしていた記憶など、ネプチューンマンの中にはなかった。

 

「なに、彼とは偶然居合わせただけだ。要件は別々だ」

 

 ロビンはなんでもない風に言う。

 いや、なんでもないのはおかしい。

 

「ロビン、おまえはマッスルブラザーズ・ヌーボーとの激戦を終えたばかりで負傷も多いだろう。こんなところに顔を見せに来ている場合ではないはずだ」

 

 決め技となったマッスル・エボルシオンは並の破壊力ではなかった。

 現に二回戦でそれをくらったバッファローマンは今も入院中……ラーメンマンなど力を使い果たし消滅してしまったというのに、わずか一時間足らずでロビンが歩いているのはどういう理屈だ。大渦(メイルストローム)パワーでも説明できるものではない。

 

「フッ、終生のライバルと見定めた男と愛弟子がこれから死地に赴こうとしているのだ。呑気に病院で治療など受けていられるか」

 

 ロビンマスクに理屈はない。あるのは根性論だけである。

 まさしく火事場のクソ力……いや、火事場の馬鹿力と言ったほうが正しいか。

 

「次のおまえたちの一戦は、我が息子ケビンを救えるかどうかの瀬戸際でもあるしな」

 

 ネプチューンマンたちと時間超人の対決をこの目で見届けたい。

 その熱烈な思いだけが、重傷のロビンマスクを立たせていた。

 

 ネプチューンマンはチラリとウォーズマンを見るが、馬鹿弟子は「これがロビンだ」と言わんばかりの無表情。

 もはや呆れるしかなく、ネプチューンマンはため息をついた。

 

「まあ傍で観戦したいというなら止めないさ。おまえが傷を放置したばっかりにあとでぽっくり……なんてタマとは思えんしな。で、オレたちの控え室を訪れたのはなんの用だ?」

 

 普通に考えるならこれから試合に臨むライバルに激励を……といったところだろうが、ロビンマスクがそんな普通の行動を取るとも思えない。

 

「単刀直入に言おう。次の一戦……私も共に闘わせてほしい」

 

 予想通り、ロビンマスクはとんでもないことを言い出した。

 

「なっ……」

「なんだって!?」

 

 ネプチューンマンは仮面の貴公子の正気を疑いつつ、理路整然とした説得を試みる。

 

「おいおい、ロビンマスク。万太郎とカオスのマッスル・エボルシオンをくらった後遺症でタッグマッチのルールを忘れちまったのか? “究極の超人タッグ戦”準決勝第2試合は2対2……オレ&ウォーズマンvsライトニング&サンダーの4人で争うんだ。いくら正義超人の同胞とはいえ、3対2が許されるはずがねえだろうが」

 

 タッグマッチは2対2だからこそタッグマッチと呼べるのだ。

 そんな子供でもわかる常識を説明され、しかしロビンマスクはふるふると首を振る。

 

「そうではない。私も共に闘わせてほしいとは、つまりこういうことだ――」

 

 ロビンマスクもまた、己の真意をネプチューンマンたちに説明した。

 共に戦うとはどういうことなのか。

 その解を得て、ネプチューンマンは納得したふうに頷く。

 

「……なるほどな。それなら別にハラボテにも文句は言わないだろう。ウォーズマン、おまえはどうだ?」

 

 パートナーであるウォーズマンもまた、ネプチューンマンと同様に頷く。

 

「願ってもない。オレとあんたの“超人師弟コンビ”は数週間前に行われた“夢の超人タッグ・トーナメント”ではたいした成績も残せなかったが……まさかこうして、34年越しに捲土重来の機会を得られるとは。これほど嬉しく、また心強いことはないぜ」

 

 ウォーズマンにとって、ロビンマスクは師であると同時に元タッグパートナー。

 共に戦うと言われて喜ばないはずがない。

 

「だが再三言わせてもらうが、今のあんたは怪我人だ。決して無理はしないでくれ」

「ああ、もちろんだ。この私の命には、未来に生まれてくる息子の命もかかっているのだからな」

 

 力強く答えるロビンマスク。

 これなら心配することもないだろう、とネプチューンマンは視点を変えた。

 

「それで、ジェイドのほうはなんの用だ?」

 

 問われたジェイドが答える。

 

「オレもロビンマスクと似たようなものだ。形は違うがな……」

 

 そう言って、ジェイドはなにかを差し出した。

 

「ネプチューンマン、あんたにこれを託したい」

 

 それは掌に収まるサイズのドクロ……ジェイドやブロッケンJrが同じものを身に着けていた覚えがあるが、なんらかのアクセサリーだろうか?

 

「これは?」

 

 まさかファンボーイからのプレゼントというわけでもあるまい。

 首を傾げるネプチューンマンに、ジェイドは言う。

 

「ブロッケン一族に伝わるドクロの徽章。長く苦しい訓練に耐え抜き、一人前の超人と認められた際に師から託されるものだ」

「なんでそんな大切なものを、オレに……」

「お守りだよ。かつて悪行超人だったスカーフェイスとオレが対戦し、敗北した際……万太郎に託したこれが、ささやかな奇跡を起こしたことがある。リングに上がれるのはあんたたちふたりだけだが、相手は怨敵である時間超人……オレたち新世代超人の気持ちが乗ったこの徽章を、どうか一緒に持っていってほしいんだ」

 

 後輩らしい可愛げのある激励に、ネプチューンマンの口元がにやける。

 しかし、ジェイドはなぜか気まずそうに目を伏せた。

 

「ブロッケン師匠(レーラァ)に聞いたよ。あんた、ライトニングとサンダーをより確実に倒すために裏でいろいろ動き回ってくれていたんだってな」

 

 ブロッケンJr――彼もまたネプチューンマンの協力者のひとりだ。

 ウォーズマンのように“前回”のことを打ち明けるまではいかなかったが、悪魔超人ザ・ニンジャと共に“カーペット・ボミングス”を闇討ち、リザーバーであったアシュラマン&チェック・メイトを本戦に引っ張り上げるという大任を果たしている。

 

「正直、その話を聞いたときは自分が恥ずかしくなったよ……オレたちは愚直に真っ向勝負を挑むことしか考えられず、結果的にはそれすら叶わず途中退場してしまった身だ。ここには来ていないが、オレもスカーもブロッケン師匠みたいに時間超人討伐のための“仕事”をしたいんだ。だからどうか……」

 

 弟子は師に似るというが、このジェイドという男もまた、ブロッケンJrと同じく正義に熱い男なのだ。

 ネプチューンマンは後進の熱意ある様を嬉しく思い、からっと笑った。

 

「よせやい。真っ向勝負結構じゃねえか。おまえみたいな若い超人はそれでいいんだよ」

 

 託されたドクロの徽章をしっかりと握り込み、彼の願いどおり新世代超人の気持ちを受け取った。

 

「小細工は若さを失ったおっさんの役目さ。この徽章はありがたくリングに持って行かせてもらう」

 

 笑い合うネプチューンマンとジェイド。

 そんなときである。

 

「ふざけるな――っ! 便所は反対側じゃ――っ!」

 

 控え室の外から、突如ハラボテの怒鳴り声が聞こえてきた。

 ネプチューンマンたちはその声につられて外に顔を出してみる。

 

世界五大厄(ファイブディザスターズ)”の控え室から、万太郎とカオスがそそくさと退室しているようだった。

 カオスはさっぱりとした笑みを浮かべながら、がきんちょハウスの子供たちやプロレスショーの仲間たちにライトニングとサンダーの練習をこっそり偵察しようとしたら怒られちゃったよと語っている。

 後ろからウォーズマンが問う。

 

「なにかトラブルか?」

「大方、カオスが時間超人どもに宣戦布告をしたのだろう」

 

 このやり取りは“前回”でもあった。

“マッスルブラザーズ・ヌーボー”が決勝進出を決めた今、カオスと悪行・時間超人の直接対決は目前。

 だがそのためには、“世界五大厄”が“新星・ネオ・イクスパンションズ”に打ち勝つ必要がある……そしてそれは、決して叶わぬ夢として潰えるのだ。

 

「カオスの復讐心はオレが受け継ぐ。あいつには悪いが……決勝で当たるのはオレたち新星・ネオ・イクスパンションズだ」

 

 ネプチューンマンは闘志を燃やし、開戦のときを待った。

 

 

 ◇

 

 

 17時10分、定刻。

 ついに運命の一戦が始まろうとしていた。

 

『さあ今、トーナメントマウンテンの準決勝第2試合、ウォーキューブにスポットライトが当たる――っ』

 

 実況がマイクを取り、観客たちは歓声を上げ、リングアナが進行する。

 

『只今より“究極の超人タッグ戦”準決勝第2試合を行います! まずはブルーコーナーより、ライトニング&サンダー“世界五大厄”の入場です!』

 

 まず控え室から出てきたのは、死神を思わせる真っ白な容貌の超人と、獅子の仮面を被った超人。

 

『あ――っとブーイングの嵐の中……控え室より今、“世界五大厄”ライトニング&サンダーが厳かに出てきた――っ!』

 

 おどろおどろしい入場BGMが鳴り響き、テンション高めの観衆はブーイングを飛ばす。

 だがライトニングとサンダーが花道を練り歩き、その姿が近づいてくると、誰もが声を出すことをやめ一歩身を引いてしまう。

 

『地震・台風・津波・火事……世界にはあらゆる恐怖の災厄がありますが、その中でも自分たちが一番の災厄と言って憚らない、その名も“世界五大厄”ライトニング&サンダー。未来からやってきたこの悪党どもは未来を悪行超人の巣窟にしようとロビンマスクの妻アリサを傷つけ、将来生まれてくるであろうケビンマスクの姿を消し去ろうとし……そしてイリューヒン、バリアフリーマン、チェック・メイトと新世代超人を次々と撃破、正義超人殲滅の目的を着々と実行中であります!』

 

“世界五大厄”のふたりが放つ威圧感……いや、もはや殺気。

 それはどんなに血の気の多い超人レスリングファンでも耐えられるものではなく、会場が静まり返るのは当然のことだった。

 

『先ほどまでブーイングをしていた観客たちも、実際の“世界五大厄”を目の当たりにして恐怖のあまり固唾を呑んで見守るのみ!』

 

「オラオラ、ブーイングはどうした――っ? なんでぇその黙りっぷりはよぉ~~っ」

「おまえら先の“夢の超人タッグ戦”では完璧(パーフェクト)超人コンビ“ヘル・ミッショネルズ”に歓声を送っていたじゃねえか。悪行超人が大好きなんじゃねえのか――っ?」

 

 ライトニングとサンダーはそんな人間たちのリアクションをおもしろがり、ここぞとばかりに煽る。

 

「ハハァ~ン。おまえたち、本物の悪行超人というものを見るのが初めてとみえるな~~っ」

「人ってやつは本物の恐怖を目の当たりにすると、ただうろたえ声も出ねえって言うからなァ」

 

 観客の中には、あの“ヘル・ミッショネルズ”を超える悪行超人の試合を間近で見ようと訪れた反社会的な人間たちも多い。

 そういった面々ですら怖気づいてしまう空気の中、ただひとりの例外がいた。

 直前でライトニングとサンダーのふたりに宣戦布告をした、カオス・アヴェニールである。

 

「おっと、しかしただひとりだけはオレたちのことを睨んでやがる」

「恐怖よりもオレたちのことが憎くてたまらねえようだ」

 

 カオスは仇敵のふたりと目が合い、“ジ・アドレナリンズ”戦のダメージが残る体で闘志を滾らせる。

 

「て……てめえ~~っ」

 

 今にも掴みかかりそうなほどだったが、傍らのキン肉万太郎がそれを制した。

 

「約束だろうカオス。ご先祖ホーラ・アヴェニールのためにも、そして亡くなったご両親のためにも……“時間超人は正義として生きる”、“闘いの決着は必ず純白のリングの上でつける”と!」

 

 万太郎の説得を受け、カオスは穏やかな表情を取り戻す。

 

「そ……そうだった」

 

 場外乱闘なら望むところだったライトニングとサンダーは、つまらなそうに舌打ちをした。

 

「ジョワジョワ、どいつもこいつも見かけだけの腰抜けめ――っ」

「今から本物の殺し合いってやつをたっぷり見せてやるから小便漏らすなァ~~ッ」

 

 ずんずんと花道を進んでいく“世界五大厄”。

 リングアナは段取りを進める。

 

『続いてレッドコーナーより、ネプチューンマン&ウォーズマン“新星・ネオ・イクスパンションズ”の入場です!』

 

 場内にアナウンスが響き渡り、観衆が一斉にレッドコーナーの控え室を見た。

 

『さあ――っ、いよいよ期待の新鋭タッグ、“新星・ネオ・イクスパンションズ”が姿を見せるぞ! あるときは“ヘル・ミッショネルズ”vs“超人師弟コンビ”で……あるときは“ネオ・イクスパンションズ”vs“ヘルズ・ベアーズ”で真剣勝負を繰り広げてきたネプチューンマン&ウォーズマンというまさかの組み合わせ! そのタッグ相性はいかほどのものか――っ!?』

 

 二度に渡り死闘を演じてきたふたりが、今度はタッグを組む。

 意外すぎる展開を迎え、観客の期待値は最高潮に達していた。

 そんな大注目の視線が注がれる中、控え室の扉が開かれる。

 しかし――出てきたのは“新星・ネオ・イクスパンションズ”ではなかった。

 

『あ――っとなんだぁ――っ!? レッドコーナーの控え室から出てきたのは、ネプチューンマンでもウォーズマンでもない! 英国貴族のような礼装を纏った謎の長髪の男だ――っ!』

 

 まったく知らない人物が単独で現れ、ざわつく観客たち。

“究極の超人タッグ戦”参加超人ではない……それどころか、出で立ちからして超人レスラーとも思えない。

 

 いったいこの男は何者なのか?

 ごく僅かだったが、その正体に気づいた者もいる。

 ハッとしたのは、テリーマンとキン肉マンだ。

 

「あ……あれはまさか!」

「Mr.バラクーダじゃないか!」

 

 父たちの驚きの声を聞いた“マッスルブラザーズ・ヌーボー”、キン肉万太郎が口を開く。

 

「Mr.バラクーダって……たしか第21回超人オリンピック・ザ・ビッグファイトのとき、父上への復讐に燃えていたロビンマスクがソ連の新鋭超人ウォーズマンを送り出すために変装した姿だよね」

 

 隣の超人レスリングオタク、カオスがうむと頷いた。

 

「そのとおり。その性格は冷血にして残忍……ウォーズマンの公開特訓と称してテレビカメラの前で死刑囚を稽古台に惨殺ショーを繰り広げお茶の間を凍りつかせたりなど、鬼畜エピソードは枚挙にいとまがない」

 

 当時のロビンマスクの奇行は、超人レスリングファンの間では語り草だ。

 まさかバラクーダが“究極の超人タッグ戦”に現れるとは……カオスはごくりと息を呑む。

 

「そんなウォーズマンのトレーナー兼セコンド超人だったバラクーダがなぜ今になって……いや、そもそも3時間前にオレたちと激闘を終えたばかりのロビンマスクが、なんであんな格好をしているんだ?」

 

 あんな格好をするのはロビンマスクしかありえない。あのバラクーダは間違いなくロビン本人だろう。

 予定外の事態に、大会を取り仕切るハラボテが駆け寄る。

 

「おーい、ロビンくん! なぜ君が“新星・ネオ・イクスパンションズ”の控え室から出てくる? 今は大事な準決勝第2試合の入場シーンじゃぞ! 君の出番は終わったんじゃ!」

 

 もし負けた腹いせに大会の進行を妨げようとしているのであれば、いくらロビンマスクといえど排除せざるをえない。

 しかしロビン、いやバラクーダはいたって冷静に、ハラボテと視線を合わせた。

 

「委員長、今の私はザ・バラクーダです。そして質問には答えましょう」

 

 花道を歩く足を止め、ハラボテだけではなくこの場にいる全員に向けて宣言する。

 

「次の一戦……私は“新星・ネオ・イクスパンションズ”のセコンドとして参加させてもらう」

 

 セコンドとしての参戦表明。

 観衆は「ええ~~っ!?」と大きな声を上げた。

 

『なんと――っ! ロビンマスク……いや、かつて超人オリンピック・ザ・ビッグファイトであの“ファイティング・コンピューター”ウォーズマンを排出した伝説的トレーナー・Mr.バラクーダがまさかの参戦表明だ――っ!』

 

 まさかさっき敗退したばかりの超人が、次戦のセコンドを務めようとは。

 ハラボテは脳内のルールブックと照らし合わせ、悩ましげに唸る。

 

「ムムム~~ッ、確かにすでに敗戦した者がセコンドについてはいけないというルールはない。ネプチューンマンとウォーズマンが了承しているのであれば、君にも再びウォーキューブへ赴く権利はあるじゃろう」

 

 イレギュラー極まりない事態だが、ロビンマスクがバラクーダとしてセコンドにつくとなれば興行的にはどうやってもプラス。往年の超人レスリングファンは大盛り上がりだろう。

 ゆえにハラボテはこれを承認した。

 

「ありがとうございます」

 

 バラクーダはうやうやしく頭を下げる。

 サンダーとライトニングのふたりも足を止め、バラクーダの登場に反応していた。

 

「ケッ。誰が出てきたのかと思えば、さっきボロ負けしたばかりの惨敗超人じゃねえか」

「しかもそんなおかしな仮装までしてくるとは。もしやオレたちを笑い殺す作戦か?」

 

 対戦チームに有名セコンドがついたからといって、悪行・時間超人が畏怖を感じるものでもない。

 それどころか、ライトニングはおかしそうに笑う。

 

「ジョワ~~ッ、“伝説”破壊鐘におまえたちのトラウマをインプットする際に調べたからもちろん知っているぞ。Mr.バラクーダといえば、超人オリンピック・ザ・ビッグファイト決勝で弟子のウォーズマンの優勢に興奮するあまり、活動限界時間の30分を超過していたことに気付けなかったヘボセコンド……ソ連の戦犯ともいえる大悪党じゃねえか~~っ」

 

 サンダーもパートナー同様、バラクーダを嘲笑した。

 

「ヌワ~~ッ、いったいどちらから話を持ちかけたのかは知らねえが、そんなヘボが再びウォーズマンのセコンドにつくとはな。もしかしたら今回の試合でも失態を晒し、オレたちに有利なトンチンカンな指示を飛ばしてくれるかもしれねえぜ~~っ」

 

 あからさまな挑発に、バラクーダはノーリアクションで応える。

 そんな彼の様子を見て、難しそうに唸ったのがアレキサンドリア・ミートくんである。

 

「むう……」

「どうしたんじゃミート?」

「いえ……少し不可解に思いまして」

 

 すぐそばで怪訝な顔を浮かべるキン肉マンやテリーマンに対し、ミートは自分の考えを口にする。

 

「超人オリンピック・ザ・ビッグファイトのときは、イギリス超人であるロビンマスクがソ連代表のウォーズマンのセコンドにつくのはいろいろとまずいためあのバラクーダの変装をしていたのだと思います。ギリギリまで王子に正体を隠したかったという意図もあったでしょう。しかしあれから数年の歳月が経った今、バラクーダの正体がロビンマスクであるというのは公然の事実となった。新星・ネオ・イクスパンションズのセコンドにつくという狙いはわかりますが、なにもバラクーダの格好になる必要はないはずです……なのに、いったいなぜ?」

 

 セコンドならロビンマスクの姿のままやればいい。

 ミートの言うことには、キン肉マンとテリーマンのふたりも同感だった。

 

「確かに……ミートの言うとおりじゃのう」

「正体を隠す以外になにか意味があるのか?」

 

 疑問を眼差しに乗せる3人。

 花道を歩くバラクーダはちょうどその3人の前を通り過ぎるところで、不敵な笑みを見せた。

 

「フフッ……ミートくん。その疑問の答えは至極単純なものだ」

 

 話が聞こえていたらしいバラクーダは、含みを持たせた言い方で語る。

 

「品行方正で通っているロビンマスクのままでは、できない指示や作戦がある。だから私はこのバラクーダの姿でネプチューンマンとウォーズマンのふたりのセコンドにつくことを選択した。そう、たとえば……」

 

 そこで言葉を区切り、視線を“世界五大厄”に向けた。

 そして直後、視線をさらにその上へ――彼らの頭上へと傾ける。

 そのときだった。

 

「入場セレモニーの最中に奇襲をかますとかな――っ!」

 

 空から降ってきたネプチューンマンとウォーズマンが、落下と共に“世界五大厄”へエルボーを落としたのである。

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