ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

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第079話 おちょくれ!磨き抜かれたタクティクス!!

 サンダーを自身最大の必殺技“パロ・スペシャル”に極めたウォーズマン。

 この試合をたった今観始めた者は「お、もう大詰めか」と思うかもしれないが、実際にはまだ始まったばかり。

 

『なんと――っ! ベア・クローからのスクリュー・ドライバー……さらにパロ・スペシャルと、ウォーズマン開幕から必殺技(フェイバリット)のフルコースでサンダーを秒殺に切って落とそうとしている――っ!』

 

 ウォーズマンの出し惜しみのない攻勢により、“究極の超人タッグ戦”準決勝第2試合はスピード決着を迎えようとしていた。

 本来なら焦りすぎとたしなめたいところだが、ウォーズマンの連続攻勢はサンダーに着実にダメージを与えている。

 これならいける――という期待が込み上げ、彼をよく知るキン肉マンとテリーマンも沸き立った。

 

「こんな序盤からスクリュー・ドライバーにパロ・スペシャルまで出してくるとは!」

「今日のウォーズマンは最初からフルスロットルだぜ!」

 

 まさに今日のウォーズマンはアクセル全開ベタ踏みだ。

 このままエンジンを全開にし、パロ・スペシャルに極めたサンダーの両腕を捻り上げる。

 

「さあ時間超人サンダーよ! 痛い思いをしたくないなら早々にギブアップするんだな!」

 

 パロ・スペシャルは火事場のクソ力を有するキン肉マンですら破れなかった特上のサブミッション。

 いくらサンダーといえど、この形になってしまったからには脱出不可能と思われたが――

 

「ヌワヌワヌワ」

 

 技をかけられている本人は不敵に笑う。

 

「なにがおかしい!」

 

 サンダーの笑いが癇に障ったか、ウォーズマンは両腕に力を込めながら大声をあげる。

 当人はまったく怯んだ様子もなく、余裕すら感じられる声調で喋り始めた。

 

「ウォーズマンよ。おまえはこのパロ・スペシャルに相当な自信を持っているようだな。無理もない……この技はあの火事場のクソ力を発動させたキン肉マンですら破れなかった技。だが絶対に攻略不可能な代物かといえばそんなことはねえ」

 

 ウォーズマンの表情はまだ変わらない。

 サンダーは続ける。

 

「この技はおまえが華々しくデビューした第21回超人オリンピック・ザ・ビッグファイトの直後……“7人の悪魔超人”襲来時に対戦したバッファローマン相手に仕掛けたが、1000万パワーという圧倒的超人強度の前にあっさり敗れ去っている」

 

 そう指摘され、ウォーズマンの表情がわずかに歪んだ。

 ウォーズマンにとっては苦々しい思い出のある、まだ悪魔超人だった頃のバッファローマン戦――彼の規格外のパワーはパロ・スペシャルの術理を無視したのである。

 

「加えて、おまえは“キン肉星王位争奪サバイバルマッチ”の際、対戦予定だったマンモスマンの不意打ちを受け試合前にリタイアしているな~~っ。やつのパワーはこの“究極の超人タッグ戦”でも実証済み。ここから導き出される結論はひとつだ」

 

 伝説超人(レジェンド)の研究に関しては余念のない“世界五大厄(ファイブディザスターズ)”である。

 サンダーにはある確信があった。

 

「人の過去をつらつらと……いったいなにが言いたい!?」

 

 嫌な予感を覚えつつも、ウォーズマンは強気に問う。

 サンダーもまた強気に答えた。

 

「わからねえか~~っ! おまえはオレのような巨漢ファイターに弱い! パロ・スペシャルなど、シンプルに強すぎるパワーの前では無意味ということだ――っ!」

 

 次の瞬間、サンダーの巨体がウォーズマンごと揺れた。

 

『あ――っとサンダー、両腕を掴まれたままウォーズマンの体を前方に大きく振り……投げ飛ばした――っ!』

 

 パロ・スペシャルにかけられた超人がそんなことをしたところで、両腕を破壊されて終わりだ。

 だがこのサンダーもまた、かつてのバッファローマンやマンモスマンのように規格外のパワーを持っている。

 アリ地獄ホールドだろうがツンドラの墓標だろうが、力尽くで振りほどくことなどわけはない。

 

『ウォーズマン、空中で回転し着地! ダメージは見られないが、早期決着を狙ったパロ・スペシャルは破られてしまった~~っ』

 

 技を解除され、サンダーを睨みつけるウォーズマン。

 サンダーは勝ち誇ったように口元でにやついていた。

 

「ヌワヌワ、口ほどにもねえ」

 

 しかしウォーズマンは、フッ、と笑い返す。

 

「それはこちらのセリフだ。サンダーよ、自分の右腕をよく見てみろ」

「なにィ~~ッ」

 

 ウォーズマンが指で差して指摘し、サンダーは自身の右腕に目をやった。

 その右腕は――不自然に上を向き、捻れたような形で硬直していた。

 

「ゲェ――ッ!?」

 

『あ――っとサンダーの右腕があらぬ方向に曲がってしまっている――っ! これは肩が外れたか――っ!?』

 

 サンダーの意思ではピクリとも動かせない、どころか動かそうとすると激痛が走る。

 ウォーズマンはしたり顔で語り始めた。

 

「オレはあえて力尽くで振りほどける程度にパロ・スペシャルのかけ方を弱めていたのだ。そして技を振りほどかれるその刹那、おまえの右腕一点に集中して負荷をかけ、右肩を破壊した。より堅実に戦力を削ぐためにな」

 

 もとより時間超人を秒殺に切って落とせるなど思ってはいない。

 パロ・スペシャルが振りほどかれるのは想定内。だからこそ、利用した。

 コーナーにいるバラクーダは愉快そうに高笑いを上げる。

 

「ハハハッ! この緻密な戦略こそがファイティング・コンピューターの真骨頂よ! 34年間研鑽し続けたパロ・スペシャルにはこういう使い方もある!」

 

 誇らしげに言い、胸元から鞭を取り出した。

 ぴしゃん!とウォーキューブ内の床を打ちつける。

 今こそ調教師と言われたバラクーダの本領を発揮するときだ。

 

「さあウォーズマンよ! たたみかけるのだ!」

「了解!」

 

 新たな指示――追撃指令を出し、ウォーズマンも応える。

 が、ウォーズマンはサンダーに突撃するのではなく、エプロンにいるネプチューンマンと掌を合わせた。

 

『あ――っとウォーズマン、バラクーダの指示に反してネプチューンマンにタッチした!』

 

 即座にトップロープを踏み、リング内に跳ぶネプチューンマン。

 もちろんその先にいるのはサンダーだ。

 

「ヌワ!?」

 

 ウォーズマンの追撃に備えていたサンダーは虚を突かれる形となった。

 満足に対応することもできず、そのままネプチューンマンが突き出した両脚をくらってしまう。

 

『虚を突かれたサンダーにドロップキックが炸裂~~っ!』

 

 せめてダメージを負っている右腕と胸板は庇おうと左側面で受けたサンダー。

 巨体が揺れ、しかしダウンは許すまいと懸命にこらえる。

 

「おっと、ウォーズマンがこの私の指示通りに動くしか能のないウスノロ戦闘マシーンとでも思ったか!? この程度のブラフに騙されるとは愚かだな~~っ、時間超人!」

 

 バラクーダの口撃に苛つきの表情を見せるサンダー。

 視線がつい彼の立つコーナーに誘導されてしまい――その間にネプチューンマンが左腕を構えていた。

 

「硬度10、ダイヤモンド・アーム!」

 

 まさしくダイヤモンドのような輝きすら見せる左の豪腕。

 この豪腕によるラリアットは、唯一無二の必殺技として観衆の記憶に刻まれている。

 

喧嘩(クォーラル)ボンバ――ッ!」

 

 ネプチューンマンが一直線に駆け、サンダーの首元に左腕を叩きつけた。

 揺れていた巨体が、今度は豪快にぶっ飛ぶ。

 

『ネプチューンマン渾身の喧嘩ボンバーがヒットし、サンダーの巨体がコーナーポストに激突~~っ!』

 

 サンダーは背中を強打し、その場に尻もちをついてしまう。

 

「ヌワ~~ッ」

 

 スクリュー・ドライバーで胸元を抉られ、パロ・スペシャルで右腕を外されたところに、喧嘩ボンバーをまともにくらってしまった。

 さすがのサンダーでも重傷と言わざるをえない。このままリングに立ち続けるのは悪手というものだろう。

 

「代われサンダー。今日のおまえは真面目すぎるぜ」

「きょ……兄弟」

 

 戦況を見たライトニングがリングの外からサンダーに手を差し伸べる。

 

「相手は50、60過ぎのオジンと耐久年数の過ぎたオンボロなんだ。外野にいるコスプレ野郎は目障りだが、所詮は地力が違う……小細工などにつきあわず、やつらの最も嫌がる闘い方をしてやればいい」

 

 そう、これはタッグマッチ。ひとりで闘わずとも、すぐ外には心強い兄弟がいる。

 サンダーはライトニングの掌に触れた。

 

「ヌワ~ッ、お手並み拝見といくぜ」

「おうよ」

 

 タッチが成立し、“世界五大厄”が選手交代する。

 

『さあ、サンダーに代わり出てきたライトニング! ネプチューンマンを睨みつけたままリング内を静かに練り歩く――っ』

 

 ライトニングの歩調は散歩でもするかのようにゆったりとしている。

 サンダーのように勢い任せで突っ込んできてくれたら御しやすいが、“世界五大厄”の頭脳はそう簡単ではない。

 ならばこちらから仕掛けるまで、とネプチューンマンが走り出す。

 

『ネプチューンマン、ロックアップの体勢に捕らえるべく掴みかかった――っ』

 

 両腕を上げ、獰猛な熊のように襲いかかるネプチューンマン。

 だがライトニングはスッと後ろに跳び、その腕から逃れた。

 

『あ――っとしかしライトニング、ロックアップを拒否! 素早く身を引いてネプチューンマンの掴みを躱した――っ!』

 

 ネプチューンマンが経験した“前回”の準決勝では、目の前のライトニングと“審判のロックアップ”で組むシーンがあった。

 あのときはライトニングの得体の知れないパワーにやられ片膝をつかされるという屈辱を味わった。

 そのリベンジを果たすためにも、このロックアップは成功させたい。

 

「チィッ!」

 

 再度ライトニングに襲いかかるが、またもや軽やかな後ろ跳びで逃げられた。

 

『ネプチューンマン、なおも掴みにかかるが……ライトニングも避ける避ける! フットワークを駆使した華麗な回避でネプチューンマンを翻弄する~~っ!』

 

 技の回避直後とは相手の攻撃失敗直後と同義。

 通常ならば反撃のチャンスだが、審判のロックアップを拒否したこのライトニングは――

 

「ジョワジョワ」

 

 なぜかネプチューンマンには一切手を出さず、ステップを刻みながら笑うのみ。

 

『しかもライトニング、なぜか反撃を入れる様子がない――っ! 不敵な笑みは余裕の表れなのか――っ!?』

 

 舌打ちをするネプチューンマン。

 ライトニングの狙いはわかっていた。

 本人はそれを観衆にも教えてやろうと、あえて説明を始める。

 

「老超人コンビよ。おまえらふたりの弱点はその年齢による体力のなさ。特に30分の活動限界時間があるウォーズマンはさっさと勝負を決めたいのだろうが、そうは問屋がおろさない……オレたちが本気になれば、こうやって攻撃を避け続けることだって可能なんだぜ」

 

 回避に専念し、相手の体力を消耗させる。それがライトニングの狙いだ。

 塩試合必至の小狡い戦法は、とても“究極の超人タッグ戦”と呼ばれる舞台の準決勝で使うべきものではない。

 だがネプチューンマンたちもソードデスマッチを拒否した手前、確実な勝ちを狙おうとしているライトニングを非難することはできないのだ。

 

「さあ次はどうする? もう一度喧嘩ボンバーか? それともウォーズマンに代わってスクリュー・ドライバーか? おまえたちの時間は有限なんだ……さっさと次の手を打ってこい」

 

“逃げ”に専念する強豪超人を捕らえるのは至難の業だ。

 むやみやたらに攻めても体力の無駄遣い。ネプチューンマンは観念して両腕を下ろしてしまう。

 

『当てられるものなら当ててみろと挑発するライトニング! ネプチューンマンは完全に手が止まってしまった――っ』

 

 いったいネプチューンマンはどうするつもりなんだ――麓のファンたちは固唾を呑んで見守った。

 そのネプチューンマンが、くるりと反転してライトニングに背を向ける。

 自軍コーナーで腕組みして見ていたバラクーダに対し言う。

 

「バラクーダ、アレを」

「よし、待ってろ」

 

 アレ、で察したバラクーダはその場にしゃがみ、なにかを用意し始める。

 ネプチューンマンはライトニングに向き直ったりはせず、そのままコーナーへと歩いていった。

 

『おっと、どうしたことだネプチューンマン!? 大胆にもライトニングに背中を向け、自軍のコーナーへと帰っていく――っ』

 

 長期戦を望むライトニングは無防備な背中を前にしても攻撃には移らない。

 罠の可能性もある……黙ってネプチューンマンの動向を観察した。

 

 一方、バラクーダはいつの間にか持ち込んでいたティーポットでカップに紅茶を注ぐ。

 カップから湯気が立ち、風味豊かな香りがウォーキューブ内を満たした。

 バラクーダはそれをわざわざソーサーに乗せ、ネプチューンマンに手渡す。

 同じものをもうふたつ用意し、ひとつはウォーズマンに、ひとつは自分用に確保。

 そして、3人一斉にカップに口をつけ始めたのである。

 

『な……なんとぉ――っ!? ネプチューンマン、パートナーのウォーズマンやセコンドのバラクーダとともに、試合中であるにもかかわらず紅茶を飲み始めたぞ~~っ!』

 

「な、なにィ~~~~ッ!?」

 

 対戦チームが取ったまさかの行動に、ライトニングはひっくり返りそうなほど驚いた。

 

「フッ、このバラクーダのとっておきの茶葉だ」

「ティーパックマンとの試合を思い出す味だぜ」

 

 リング外のバラクーダとウォーズマンはリラックスした態度で紅茶の味を楽しんでいる。

 リング上に立つネプチューンマンもまた同様。

“新星・ネオ・イクスパンションズ”陣営3人の態度は、とても試合中とは思えないものだった。

 

「おちょくってやがるのかテメエら~~っ! さっきまでの時間超人憎しな勢いはどうした!? さっさとオレたちを倒し、アリサやケビンマスクを救いたいんじゃねえのか――っ!?」

 

 ライトニングは至極真っ当な指摘をするが、ネプチューンマンは逆に常識を疑うような目で返す。

 

「おかしなことを言うやつだ。おまえが試合をする気がなさそうだから、ならその気になるまでティーブレイクと洒落込んでいるだけだぜ。別にタッグマッチの最中にセコンドの淹れた紅茶を飲んではいけないなんてルールはないだろう?」

 

 ウォーキューブの外、宇宙超人委員会の面々が慌てて反応する。

 

「い、委員長!」

「あるわけないじゃろ~~っ、そんなルール!」

 

 ノックもハラボテもネプチューンマンたちの行動に対処しきれず、傍観することしかできない。

 ネプチューンマンはふた口目を啜り、ニヤリと笑んで言う。

 

「なんならおまえたちの分も淹れてやろうか?」

 

 茶会に誘われ、ライトニングの堪忍袋の緒が切れた。

 

「ジョワ――ッ! もう我慢ならねえ~~っ!」

 

 時間稼ぎはやめだ。

 今すぐあの不快なニヤケ面に飛び膝を叩き込んでやる。

 

『業を煮やしたかライトニング、ジャンピング・ニーパットでネプチューンマンを急襲――っ!』

 

 ネプチューンマンは慌てず騒がず、カップをソーサーに置き、残っている中身をこぼさぬようバラクーダに返した。

 そして、空いた両手でライトニングの飛び膝蹴りを受け止めたのである。

 

『しかしネプチューンマン、ティーカップをソーサーに戻す余裕を見せつつライトニングをキャッチ――ッ』

 

 ネプチューンマンはキャッチしたライトニングの左足を持ち上げ、自身は片膝立ちになる。

 

「オリャ――ッ」

 

 そのままライトニングの左膝を自身の右膝に叩きつけた。

 

『ネプチューンマン、ライトニングの左足に強烈なニークラッシャーだ――っ!』

 

 立ち回りの要である脚、それも膝関節を破壊する強烈な打ちつけ技。

 ライトニングの片脚は一撃で使い物にならなくなり、なすすべもなくキャンバスの上に転げ落ちた。

 

「ジョワ~~ッ」

 

『ライトニング、ダウーン!』

 

 左膝を抱えながら転げ回るライトニングに、ネプチューンマンは粘りつくような笑みを見せる。

 

「いけねえな~~っ! こんな簡単に敵の誘いに乗ってしまっては!」

 

 相手が満足に抵抗できないであろうことを見越し、腹部を狙って足裏を落としていった。

 踏みつけ攻撃である。

 

『ネプチューンマン、ダウンしたライトニングの腹にフットスタンプの連打だ――っ!』

 

 相手をKOするのに難しい技などいらないのだ、とばかりに原始的な攻撃を繰り返すネプチューンマン。

 威力は抜群。だからこそライトニングもされるがままにはならない。

 

「ジョワッ!」

 

 ネプチューンマンが落とした右足を掴んで抱え、即座に身をよじる。

 

『しかしライトニング、ネプチューンマンの片足を掬って転がした――っ』

 

 仰向けに倒れたネプチューンマンの右足を掴んだまま、自身の両脚を絡めて関節技へと移行。

 

『そのまま転倒したネプチューンマンを足四の字固めに捕らえた――っ!』

 

 4の形になったネプチューンマンの両脚が悲鳴を上げる。

 だがそれは比喩だ。当のネプチューンマン本人は悲鳴ではなく、余裕の窺える声を出す。

 

「なんの~~っ」

 

 足四の字を仕掛けるライトニングごと大きく体を反転、仰向け体勢からうつ伏せ体勢になる。

 

『ネプチューンマン、軽々と四の字返し――っ!』

 

 そして上半身を起こしてしまえば――

 

『そのまま体をブリッジ、背中側からライトニングの首を取り……鎌固めに入った――っ!』

 

 両足と首を同時に痛めつける、足四の字よりも強烈なサブミッションが完成する。

 

「我ながら完璧な鎌固めだ――っ。首と両足をこうもがっちりクラッチされてしまっては、さしもの時間超人といえども外せはしまい――っ」

 

 グギゴギと骨が軋む音が鳴る。

 無論、それはライトニングのものであったが、ネプチューンマン同様に本人の表情は涼し気だった。

 

「ジョワジョワ……なにをこんなもの~~っ」

 

 鎌固めは確かに強烈な関節技だが、極められているのは足と首だけで両腕が空いている。

 ならば、時間超人のみに許された“あの手”が使えるではないか。

 

「両手と顔面がフリーになっている時点で、この技は完璧でもなんでもねえ。オレにとっては抜け出し放題のゴミ技よ――っ」

 

 そう言ってライトニングが取り出したのは、マウスピース。

 格闘技において口腔内の外傷を防ぐために用いられるその道具は、しかし特別な名称を与えられている。

 

「エヴォリューション・マウスピース!」

 

 エヴォリューションとは、すなわち進化の意。

 自分たちは有象無象の劣等超人から進化した種であるということを示すべく、ライトニングはそのマウスピースを口の中にセットした。

 

「アクセレレイション!」

 

 マウスピースを噛みしめることにより、側頭部の鍵穴のような傷跡からエキゾチック物質と呼ばれる煙が噴出。

 続いてライトニングの体が液状に溶け出し、ネプチューンマンの拘束を無視してその場から消失する。

 

『あ――っとライトニングが消えた――っ!』

 

 クラッチしていた足と首が消えてしまった結果、ネプチューンマンは鎌固めの体勢を維持できず仰向けに倒れた。

 そうやって晒された腹部めがけて――ネプチューンマンの真上にいきなり出現したライトニングが、頭を下にしながら垂直に落下してきた。

 

「ノースサウスヘッドバット――ッ!」

 

 ライトニングの頭部がネプチューンマンの鳩尾にめり込み、時間超人がついに反攻の狼煙を上げる。

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