ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ” 作:速筆魔王LX
場所は後楽園ゆうえんちの特設ステージ。
多くの観衆が見守る中、トーナメントの醍醐味とも言えるイベントが始まろうとしていた。
『それではただ今より“究極の超人タッグ”組み合わせ抽選会を執り行う!』
ステージ上のハラボテ・マッスルが高らかに宣言する。
彼の背後に聳えるのは、巨大なガチャガチャマシーン。
さらにゴム状の粘液で身を固められ“キン消し風”になった12組の超人タッグ。
各タッグチームは本物のガチャガチャのようにカプセルに入れられ、巨大マシーンにセットされる。
そしてガチャガチャマシーンから排出されたカプセルはトーナメント表を背景にした巨大スマートホール台へ突入。
無数の釘で跳ね返り、時には超人それぞれが特技で動きをコントロールして、全12個のホールにすべてのカプセルが収まった。
この結果がそのまま、トーナメントの組み合わせとなる。
No.1 “ジ・アドレナリンズ” ロビンマスク&テリー・ザ・キッド
No.2 “鬼哭愚連隊” 死皇帝&ザ・ガオン
No.3 “スーパー・トリニティーズ” ジェイド&スカーフェイス
No.4 “ネオ・イクスパンションズ” ネプチューンマン&セイウチン
No.5 “地獄のカーペンターズ” デーク・棟梁&プラモマン
No.6 “マッスルブラザーズ・ヌーボー” キン肉万太郎&キン肉マングレートⅢ
No.7 “ヘルズ・ベアーズ” マイケル&ベルモンド
No.8 “チーム・コースマス” スプートニックマン&メテオマン
No.9 “2000万パワーズ” モンゴルマン&バッファローマン
No.10 “
No.11 “ザ・マシンガンズ” キン肉マン&テリーマン
No.12 “カーペット・ボミングス” オルテガ&モアイドン
No.1~No.8が一回戦を闘い、No.9~12がシード枠に該当する。
この結果はネプチューンマンが経験した“前回”とまったく同じ。
目下の敵である“世界五大厄”をシードから蹴落とすこともできなかった。
しかし、それも仕方がないこと。
ネプチューンマンにはどうしても“前回”と結果を同じくしなければいけない理由ができたのだ。
『一回戦Aブロック! “スーパー・トリニティーズ”ジェイド&スカーフェイス組vs“ネオ・イクスパンションズ”ネプチューンマン&セイウチン組!』
スマートホール台のカプセルが弾け飛び、中に収められた対戦チーム同士が向かい合う。
ネプチューンマン&セイウチン、そしてジェイド&スカーフェイス。
ジェイドにとっては望まぬ対戦カードだったのか、その表情には戸惑いの色が浮かんでいた。
「グゥゥ~~ッ。まさかケビンマスク救命という同じミッションを持つ同志、ネプチューンマン&セイウチン組と当たってしまうなんて~~っ」
言葉でも動揺を表現するジェイド。
セイウチンもまた同じ気持ちのようだった。
「し……しかもオラたちが倒すべき時間超人はシード枠……一刻も早くやつらを打倒し、生死の境をさまよっているアリサさんを救わねばならねえってのに~~っ」
セイウチンが時間超人たちのいるシード枠のホールを見やる。
ネプチューンマンはそんな相棒の肩を叩いた。
「仕方あるまい。トーナメントとはそういうものだ」
「ネ……ネプチューンマン」
スカーフェイスもまた、ネプチューンマンと同じようにジェイドの肩を叩く。
「口惜しくはあるが、これも天命と受け入れようぜ」
「スカー」
戸惑うジェイドとは対照的に、スカーフェイスはこの結果を受け入れているようだった。
「しかしセイウチンの言うことにも一理ある。志を同じくするオレたちがイタズラに潰し合うってのもナンセンス……後々の時間超人攻略戦のことを考えるなら、ここはダメージのない状態で勝ち上がりたいもんだ」
口元をいやらしく歪め、ネプチューンマンにねぶるような視線を向ける。
「そこでどうです、ネプチューンマン先輩。オレたちに勝ちを譲り、棄権するってのは」
予想だにしなかった提案に、セイウチンとジェイドがぎょっとする。
「き……棄権!?」
「スカー、おまえなにを!?」
挑発でもなんでもなく大真面目に棄権を提案するなど、超人レスリングの歴史でも聞いたことのない事例だ。
だがスカーフェイスはなにをそんなに驚くとでも言いたげに、理知的に話を進める。
「戦略的判断ってやつだぜ、ジェイド。もしオレたちが互いに一歩も譲らぬ激闘を演じ、勝ちはしたもののダメージは甚大、次の試合を闘えるだけの余力は残っていませんなんてことになってみろ。そんなことになって喜ぶのはあの悪衆・時間超人共だけだぜ」
スカーの想定は最悪のシナリオと評するべきだろう。
ジェイドやセイウチンもそれは理解しているらしく、だからといって納得している様子はない。
「それは……そうかもしれないが」
「だからって、なんでオラたちが棄権しなきゃなんねえだ?」
最悪のシナリオを回避するだけなら、棄権するのはスーパー・トリニティーズであっても構わないはずだ。
スカーフェイスはやれやれと首を振り、人を小馬鹿にするような声調で続ける。
「そんなの決まってるだろ――っ。おまえたちネオ・イクスパンションズよりも、オレとジェイドのスーパー・トリニティーズのほうが時間超人に勝てる公算が高いからだ――っ」
大胆不敵にもほどがある発言に、セイウチンは閉口した。
調子に乗ったスカーはさらに、超人としては大先輩のネプチューンマンに対してもこの態度を貫く。
「オレとジェイド、セイウチンの正義超人としての実績を比してもそれは明らか……
「それは先の間引きバトルロイヤルのことを言っているのか?」
ネプチューンマンが問うと、スカーフェイスは肩を竦める反応で答えを示した。
「マグネットパワーとやらを失ったあんたのクロス・ボンバーは全盛期と比べたら月とスッポン――まったく脅威足りえないってのが、現役伝説超人たちの評価らしいぜ」
おそらくはバッファローマン&モンゴルマン、そしてキン肉マン&テリーマンのことを言っているのだろう。
ネプチューンマンは「フム」と一言こぼし、さらに耳を傾ける。
「かくいうオレも同意見。もちろんこのジェイドもだ」
「ウウ……それは」
先輩を敬う気持ちがあるらしいジェイドは言葉を濁すが、否定まではしない。
無礼な後輩ふたりに、しかしやはりネプチューンマンの反論はなかった。
「以上の観点から、ここは後進に席を譲ってもらいたいんですがね。どうですか、先輩」
ディベートでもしているつもりなのか、慇懃無礼に問うてくるスカーフェイス。
ネプチューンマンは顎に手を当て、笑みをこぼしながら答える。
「グフフ……さすがは蒼白き脳細胞と呼ばれた知将、スカーフェイス。おまえの言う戦略とやらはごもっとも。オレのクロス・ボンバーが全盛期よりも衰えているという指摘も認めよう。“宇宙超人タッグ・トーナメント”で猛威を振るい、今は失われた力であるマグネットパワーはそれほどの代物だった……」
遠い過去に思いを馳せるよう、虚空を眺めるネプチューンマン。
その視線はゆっくりとスカーフェイスに向き、口角を上げながらこう続けた。
「しかしそれでも、おまえの要求を呑むわけにはいかんな――っ」
余裕の窺える拒否の返答。
「ほーん、それはなんでだ?」
スカーフェイスは心底理解できないといった風に、真顔で問い返した。
「簡単な話。クロス・ボンバーの弱体化を加味して考えても、おまえたちスーパー・トリニティーズの力がオレたちネオ・イクスパンションズに劣っているからだ――っ」
ネプチューンマンのはっきりとした回答、その馬鹿らしい理由に、スカーの余裕が崩れ去る。
「オレとジェイドがおまえらより下って言いてえのか~~っ」
「そう言っている。戦略的に考えるのであれば強いほうが勝ち進むべきなのは当然……おまえたちこそ棄権を表明してはどうだ?」
「この野郎――っ! 言わせておけば――っ!」
ついに言葉だけではなく手が出ようとしたスカー。
ジェイドがそれを制止し、観衆もその騒ぎに注目を始めた。
『お――っとどうしたことだ!? 21世紀からやってきた仲間であるはずのネプチューンマン&セイウチン組とジェイド&スカーフェイス組! 他の対戦チームに輪をかけて一触即発の様相を呈している――っ!』
他のタッグチームたちもなんだなんだとネプチューンマンたちに視線を集める。
「抑えろスカー!」
「ネプチューンマン~~ッ、あんたもスカーを煽るのはやめてくれ~~っ」
ジェイドとセイウチンに仲裁に入られ、悪目立ちすることを嫌ったスカーは拳を収める。
ネプチューンマンもまた挑発的な態度をあらため、一歩退いた。
「チッ、まあいい。お互い譲る気がないってんなら、方法はひとつしかありえねえよなぁ――っ」
「ああ。大会の趣旨どおり闘えばいいのさ。強いほうが勝ち上がり、ゆくゆくは時間超人と当たる!」
談合による棄権などもってのほか。超人とは常に真剣勝負で趨勢を決めるもの。
両雄納得し、ここにネオ・イクスパンションズ対スーパー・トリニティーズの対戦カードが決定した。
『ではA・B各ブロック、超人タッグチームは明日午後3時に始まる試合時間に間に合うよう、蔵前国技館および川崎球場に集まるように! なお、シード枠ホールに入った4チームは一回戦免除のため二回戦に備え敵情視察にA・Bブロックどの試合会場に足を運んでも構わない! それでは解散!』
ハラボテが今後のスケジュールを伝え、12チーム24人の超人たちは一時解散となった。
皆、明日の試合に備え最後の調整を行うことだろう。
それはもちろんネオ・イクスパンションズも同じ。
だが解散直後、ネプチューンマンは野暮用があると告げ、セイウチンと一旦別れた。
セイウチンには怪訝な顔をされたが、策を巡らせるネプチューンマンには他にもやることが満載だ。
(結局、トーナメント出場を果たした12チームの顔ぶれはオレが経験した先の“究極の超人タッグ戦”と一緒……それどころか一回戦やシード枠の組み合わせもまったく同じ結果になった。オレとセイウチンの相手も、変わらずスーパー・トリニティーズ。だが……これでいい。むしろこうでなくてはならねぇ)
道すがら、ネプチューンマンは今回の抽選会を振り返る。
結果が“前回”と同じになったのは、ネプチューンマンが歴史の改変に失敗したからではない。
自ら望んだのだ。
最優先事項として、時間超人をシード枠から蹴落とすことではなく……スーパー・トリニティーズとの対戦を第一に据えた。
それはなぜか。
(スカーフェイス……パートナーのジェイドはまだ気づいていないだろうが、やつは
他でもない、スカーフェイスとジェイドのため。ひいては正義超人界全体のためである。
時間超人を倒すことも大事だが、代わりに新たな悪が誕生しては元も子もないのだから。
(21世紀に帰り、後進を指導するという役目……カオスに託された大任はまだ果たせないが、無視もできない。スカーフェイスという若手超人の筆頭を魔の道に戻さないためにも、このオレが奮起せねば)
あれこれ考えている内に、ネプチューンマンはある一室の前に到着した。
彼らが一度、自分たちの控え室に戻っていく姿は確認している。
今ならば邪魔もなく話し合いができるはずだ。
(一回戦が始まるのは、明日。しかしその前に、まだまだやっておかなければならない仕込みがある)
その仕込みの内のひとつを完遂するため、ネプチューンマンはノックもなくドアを開けた。
「クゥーン」
中にいたのは、クマのぬいぐるみを着込んだ超人ふたりである。