ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ” 作:速筆魔王LX
パイルドライバーでライトニングを頭から落とし、ベアハッグで捕らえたサンダーの頭部に激突させる荒業。
わずかでも位置がズレれば自爆の危険性もありうるツープラトンを、“新星・ネオ・イクスパンションズ”はオプティカルファイバー・パワーによる補助を加えることで危なげなく成功させた。
『アクセレレイションにより一度は姿を消した“
頭頂部から鮮血を噴き出し、キャンバスに倒れるライトニングとサンダー。
ツープラトンを決めたネプチューンマンは颯爽とリングに降り立ち、地上にいたウォーズマンと並び構えた。
見事な連携を見せたふたりに対し、“ザ・マシンガンズ”のキン肉マンとテリーマンが唸る。
「ネプチューンマンめ。まだマグネット・パワーが健在だったヘル・ミッショネルズ時代の技を使ってくるとは!」
「ただ形だけ同じ技なのではない。21世紀のオプティカル・ファイバー・パワーを利用することでバージョンアップを果たしている!」
オプティカルファイバー・パワーにはこういう使い方もある。
前チャンピオンチームが予想できなかった手札は対戦相手である“世界五大厄”にとっても予想外だったようで、キャンバスに倒れ伏しながら憎々しく言う。
「ま……まさかここまで徹底してアクセレレイションを対策してくるとは……」
「予想外だぜ……新星・ネオ・イクスパンションズ……ッ」
頭部の出血は危険域に達している。
表情も弱々しく、油断させるためのポーズとも思えない。
『ライトニングとサンダーに特大のダメージ! これは立てるか~~っ!?』
“新星・ネオ・イクスパンションズ”は追い打ちに走らず、警戒に努めた。
ダウンする“世界五大厄”から意識を逸らさぬまま、ネプチューンマンはウォーズマンを気遣う。
「ウォーズマンよ、そろそろ30分だ。アクセレレイション対策がハマり優勢ではあるが、悠長にはしていられんぞ」
ウォーズマンというロボ超人には活動限界時間があるのだ。
極度の長期戦は不利になる。本音を言えばここで勝負を決めてしまいたい。
「優勢か……ネプチューンマン。おまえはどう思う?」
ウォーズマンも気持ちは同じだろうが、彼に勝負を急ぐような素振りはなかった。
さすがは現役を続ける21世紀の
ネプチューンマンは言う。
「悪いがまったく安心はできねえな。こいつらは過去、マンモスマンにアクセレレイションを封殺された際もチームワークを駆使して窮地を脱している。これで終わるなんてことはありえん」
言って、冷や汗を一筋垂らす。
その呼吸音がわずかに乱れていることを、ウォーズマンの精巧なセンサーが見逃すはずもなかった。
「ネプチューンマン、もしやおまえ体力が……」
ロボ超人ではないが、ネプチューンマンは老超人だ。
“究極の超人タッグ戦”に参加している他の超人と比べれば、体力は衰えているはず。
それこそウォーズマンと同じく活動限界時間があると言ってしまってもいい。
だが本人は気丈に振る舞う。
「よせやい、老人扱いするんじゃねえよ。ミートの奇策により、オレの心臓は持ち直している。どんだけのマラソンマッチになったとしても走りきってみせるぜ」
言葉だけを受け取れば、やせ我慢のようにも感じられる。
ミートの奇策――時空船に残ったエキゾチック物質を転用しネプチューンマンの心臓を再生させるという計画は成功している。
しかしだからといって、老人は老人。ネプチューンマンは決して若返ったわけではないのだから、体力の限界は無視できない問題だ。
『あ――っとライトニングとサンダー、お互いの体を支え合いながら立ち上がってきた――っ』
そうこうしているうちに、“世界五大厄”が立ち上がってきた。
実況が言うとおり自力では立ち上がれないのか、ふたりで寄り添うように体を支えている。
好機ではある――が、なんとなく不穏な空気を感じ、ネプチューンマンもウォーズマンも足を止められていた。
「使うか兄弟……あれを」
「ああ。致し方あるまい」
時間超人ふたりは重々しく言い、それぞれ自分の口に手を伸ばす。
『ライトニングとサンダー、加速能力を発動させるキーアイテムであるエヴォリューションマウスピースを口から出した――っ』
手に持ったマウスピースを、くるりと反転。
再度口腔内にセットした。
「エヴォリューションマウスピースリバース!」
『お――っとなんだ~~? エヴォリューションマウスピースを逆さにして再度口の中に入れる――っ』
エヴォリューションマウスピースを一旦外し、逆さにしてまた入れ直す。
一見しただけではどういう意味があるのかわからない行動だった。
「ジョワ!」
「ヌワ!」
続けて、ライトニングとサンダーの頭部……鍵穴のような傷跡から、エキゾチック物質が噴出する。
黒い煙のようなそれは、今まで何度も見てきたアクセレレイションのための予備動作だ。
「なんだ……? いったいなにをする気なんだ?」
ハッタリか……?
ネプチューンマンとウォーズマンは警戒を強める。
その背後、セコンドにつくバラクーダが鞭をぴしゃんと叩き叫んだ。
「ネプチューンマンにウォーズマンよ! エヴォリューションマウスピースを装着し、エキゾチック物質を出しているということはアクセレレイションを使おうとしているのは間違いない! 引き続き加速能力対策を実行するのだ!」
バラクーダの指示を受け、ネプチューンマンとウォーズマンが目配せする。
ふたり同時にロープのほうへ走り出し、跳んだ。
『ネプチューンマン、ウォーズマン、ロープの反動を利用して高々とジャンプ――ッ! そして自分の両手でお互いの両足を取り合い、“世界五大厄”めがけ大回転する――っ!』
その状態から体を反らせ、輪のような形を作るネプチューンマンとウォーズマン。
組体操のような体勢はれっきとしたツープラトンのセットアップだ。
この状態で勢いよく回転すれば――
「超人メリーゴーランド――ッ!」
メリーゴーランドなどという言葉では生ぬるい、強大な風を生み出す超人サーキュレーターが誕生する。
標的はもちろん、エキゾチック物質を放出しているライトニングとサンダーだ。
『さあネプチューンマンとウォーズマンのメリーゴーランドが突風を巻き起こし、“世界五大厄”の額から出るエキゾチック物質を吹き飛ばす――っ!』
風力は先ほどのタッグ・フォーメーション以上。
あの“ザ・ナイトメアズ”を苦しめたアクセレレイションにこんな攻略法があったのかと、キン肉マンは手を叩く。
「すげー! ライトニングとサンダーの体内から放出されるエキゾチック物質を風で吹き飛ばすことで加速能力を無力化している!」
興奮するキン肉マンの横で、しかしミートくんは険しい表情を浮かべていた。
そして、ある恐ろしい事実に気づき嘆きの声を上げるのだ。
「あ、あ……あああ~~っ!?」
「ど、どうしたんじゃミート~~っ?」
「よく見てください、あのエキゾチック物質の流れを!」
ミートが指差し、キン肉マンはその小さな指が示す先を見る。
「い、一度ライトニングとサンダーの頭部鍵穴下部から噴出されたエキゾチック物質が、風に流されながらもループを描き鍵穴の上部に戻っていく!」
今までとは明確にエキゾチック物質の流れが違う。
放出したエキゾチック物質をわざわざ元の穴に戻すなど、はたしてどんな意味があるというのか。
「
ライトニングとサンダーが猛々しく唱える。
次の瞬間、目を疑いたくなるような変化が起こった。
『なんと~~っ、ライトニングとサンダーの体に刻まれた無数の傷が……どんどん塞がっていく――っ!』
まるでゲームの回復魔法をかけられたかのように、ライトニングとサンダーの傷が消えていくのだ。
いや――それは回復というよりも、時間が巻き戻っているようだった。
“叡智の子”ことミートくんは、この現象の正体を瞬時に理解する。
「そうか~~っ! “世界五大厄”のエヴォリューションマウスピースは逆さにするとアクセレレイションを促すエキゾチック物質が逆の作用をライトニングとサンダーに与えることになる!」
「つまり……どゆこと?」
隣のキン肉マンはアホ面で問うた。
「つまり、コンマ1秒先の世界へ加速するのではなく、自分たちの体内の時計の針を逆回転……バックスピンさせノーダメージの状態まで戻したんですよ!」
ミートの説明に、周囲にいた超人たちが「ええ~~っ!?」とどよめいた。
キン肉マンのみならず、テリー、万太郎、カオス、ブロッケン、ジェイド、スカー、知恵者からアホまで等しく驚愕している。
それくらい、ライトニングとサンダーの“肉体時計を逆回転させてダメージを帳消しにする”という所業は埒外だったのだ。
「オレたちは時を自在に操れる時間超人!」
「肉体も疲弊しなければ心も絶対に折れない!」
ライトニングとサンダーは怒気を込めて言い放ち、タイミングを揃えてキャンバスを蹴った。
『ライトニングとサンダー、上空高くジャンプ――ッ!』
空中で互いの両手両足を持ち、新星・ネオ・イクスパンションズと同じような輪の形になった。
『あ――っとライトニングとサンダーもお互いの両足と両手を持ち超人メリーゴーランドの体勢になった――っ! 凄まじい回転でネプチューンマン&ウォーズマンのメリーゴーランドに突っ込んでいく――っ!』
「ディザスターメリーゴーランド――ッ!」
超人メリーゴーランド対ディザスターメリーゴーランド。
回転ツープラトン対決となった両者の衝突は、まるでジャパニーズトレンドホビーベーゴマのごとく。
技は同じだが、“世界五大厄”は直前でダメージを回復させている分、“新星・ネオ・イクスパンションズ”よりも回転に勢いがあった。
『勝ったのはライトニングとサンダーのメリーゴーランドだ――っ!』
ベーゴマも回転力で勝るほうが勝つのは当然のこと。
空中で弾かれたネプチューンマンとウォーズマンを狙い、ライトニングとサンダーもメリーゴーランドを解除する。
「逃がすか~~っ!」
ライトニングがウォーズマンを、サンダーがネプチューンマンを、それぞれ背後からリバース・フルネルソンの体勢に取った。
『“新星・ネオ・イクスパンションズ”、ライトニングとサンダーにダブルアームスープレックスに捕らえられた――っ!』
身動きを封じたところで上体を反らす。
『そのまま放り投げる――っ!』
老齢超人ふたりが投げつけられたのは、白いキャンバスの上。
ネプチューンマンとウォーズマンは並べられるように激突し、あえなく沈んだ。
『ネプチューンマンにウォーズマン、ダウンだ――っ』
一方のライトニングとサンダーは華麗に着地。
ダウンを奪った対戦チームに、そして恐れおののく観衆に向けて、声高に唱える。
「思い知ったか、我ら時間超人の恐ろしさを――っ」
そこに逆転を果たしたタッグチームを讃える賛辞……歓声は一切ない。
観客たちは皆、時間超人の見せた魔技を前に恐怖で震えていた。
キャンバスに沈められたウォーズマンは、今にも薄れそうな意識の中でつぶやく。
「ま、まさか試合中に肉体の時間を逆行させる……ノーダメージの状態まで回復させるなど……」
回復能力など、超人レスリングの根底を破壊しかねないほどのインチキ技ではないか。
いや、それ以前に自然の摂理に反している。
いくら使い手が時間の名を冠する超人とはいえ、尋常の技とは思えなかった。
「よ……予想していなかったわけではない」
「ネプチューンマン……」
ネプチューンマンはゆっくりと上体を起こそうとしながら、自らの見解を述べる。
「エキゾチック物質を用いて肉体の時間を逆行させる……前回の“究極の超人タッグ戦”でカオスがオレにやってくれたことだし、オレ自身ミートの奇策により心臓の状態を万全な頃に戻すという荒業をやってのけている。やつらはさらに、すぐそこに聳える富士山の時間を逆行させ噴火させるなんてこともやってのけていたしな……これくらいの時間干渉はお手の物といったところだろう」
この肉体時計逆回転は、ネプチューンマンが経験した“前回”の闘いでも見たことのない技だ。
おそらくは“世界五大厄”の奥の手。
マンモスマンと組んで臨んだ極悪超人タッグ対決、あの“
「しかし、風の力でエキゾチック物質を吹き飛ばせなかったのは想定外だ。このままではいずれ、オレたちのほうが先に力尽きる……いったいどうするつもりだ?」
問題はそれをどう対策するか。
ウォーズマンの問いに、ネプチューンマンはフッと笑う。
「さて、な……名将バラクーダよ。なにか策はあるか?」
ネプチューンマンに思いつく案はない。
なればこそ、こういうときはセコンドの助言が欲しい。
救いを求めてコーナーにいるバラクーダを見るが、
「グ、ググウ~~ッ」
戦略家で知られる彼とて、瞬間回復能力を有する超人への対策などすぐには出てこないか。
その万策尽きたと言わんばかりの苦しげな表情を見て、ネプチューンマンはまた笑う。
「フッ……悪い、無茶振りをしちまったな」
もうだめだ……と嘆くことは簡単だが、この試合だけはそれで終わるわけにはいかない。
ネプチューンマンはどっこいしょと身を起こし、無策を承知の上でファイティングポーズを取る。
『あ――っと“新星・ネオ・イクスパンションズ”、先にネプチューンマンが立ち上がった――っ!』
「悪行超人を前にした正義超人は、ネバーギブアップが信条。どんなに敵が強かろうと、試合を諦めるという選択肢はない~~っ」
立ち上がってきたネプチューンマンを前に、ライトニングは呆れたような顔をする。
「ジョワ~~ッ、なんてタフなオッサンだ」
ディザスターメリーゴーランドやダブルアームスープレックスのダメージは大したことがないかもしれないが、精神へのダメージは大きかったはずだ。
目の前にいる超人はどれだけダメージを与えようともそれを瞬時に回復させてしまう……耄碌するあまりその恐ろしさが理解できていないのか?
「ここはオレがいくぜ、兄弟」
「サンダー」
ライトニングを制し、サンダーが一歩前に出た。
その双眸は殺気を放ち、ネプチューンマンを睨みつけている。
「このオッサンが振りかざす正義超人のポリシーってやつが、オレは大会が始まってからどうにも気に入らなくてたまらなかったんだ。元悪行、元
ウォーズマンに破壊された関節も、ベア・クローで抉られた胸の傷も治っている。
サンダーは試合開始直後の万全の状態となった姿で、ネプチューンマンに挑みかかった。
「生まれ持った超人の血ってやつは、そう簡単に宗旨替えできるほど薄いもんじゃねえ! このオレがネプチューンマンの化けの皮をはがしてやるぜ――っ!」
正面から向かっていき、両腕を前に出す。
『サンダー、ネプチューンマンに力勝負を持ちかけてくる――っ』
ネプチューンマンもまた正面から受け、両腕を前に出した。
『ネプチューンマン、ロックアップでサンダーの要求に応えた――っ』
互いに両腕を組み合うロックアップの姿勢。
単純な力の押しつけ合いとなるこの攻防は、これまでの“究極の超人タッグ戦”の試合でも多く見られてきた構図だ。
「試合も中盤の山を越えたあたりだが……そういえばおまえにこれを試したことはなかったな。いい機会だから選定してやるぜ」
“前回”の記憶を掘り起こしてみても、ネプチューンマンがサンダーと組み合うのはこれが初。
ならばここは、時間超人攻略のヒントを探るためにもいつもの超人パワー測定法を試してみるべきだろう。
「“審判のロックアップ”――ッ!」
『ネプチューンマン、お得意の“審判のロックアップ”でサンダーの実力を推し量ろうとする――っ』
さすがは今大会でもトップクラスの巨漢超人であるサンダーだ。
フィジカル自慢のネプチューンマンが上から押しつぶされそうなほどの強力なパワーを感じる。
しかし“審判のロックアップ”で査定できるのは、単純なパワーだけではない。
「……っ!?」
腕を通して伝わってくるサンダーの地力……その奥底にあるものを感じ取り、ネプチューンマンは困惑する。
その困惑をサンダーも悟ったのか、威勢を強めた。
「ヌワ~~ッ! どうしたどうした!? オレさまの怪力を直に感じ、言葉も出ないか――っ!?」
これまで幾度となく“審判のロックアップ”を見てきた観客たちは思う。
もしやネプチューンマンは、時間超人の規格外のパワーを感じ取り格の違いに絶望してしまったのではないかと。
「こ、これはまさか~~っ」
汗を流しながら言うネプチューンマン。
彼は決して、格の違いに絶望したりなどはしていない。
困惑の原因は別のところにある……それを問うため、ロックアップを維持しながら口を開く。
「サンダーよ。おまえは……本当に純粋な時間超人なのか?」
「な、なにっ!?」
飛び出したのは突拍子もない質問だった。
サンダーの戸惑いを気にせず、ネプチューンマンは続ける。
「おまえのこの、正面からド直球にぶつけられてくるパワー……悪魔超人や完璧超人といったひねくれものたちのそれとは大きく違う。もちろんパートナーのライトニングから感じた得体の知れなさとも別物……これがあの悪行・時間超人のものだと言われても、オレは信じることができねぇ~~っ」
ネプチューンマンは“前回”の闘いでライトニングに“審判のロックアップ”を繰り出したことがある。
その際はまるで大蛸のようなヌメヌメとしたとらえどころのない感覚を味わい、実力を査定できなかった。
サンダーも同じ悪行・時間超人であるはずなのに……この腕からはライトニングのような得体の知れなさは感じ取れない。
いや、これはむしろ――
「なにをわけのわからないことを言っていやがる! そもそもテメー、兄弟に“審判のロックアップ”を仕掛けたことなどないだろうが! デタラメを言ってるんじゃねえ!」
「デタラメでもなんでもねえ。数々の超人にロックアップを仕掛けてきたオレの経験と技量が告げている。サンダー、おまえから……」
ネプチューンマンは己の直感を信じ、馬鹿げたことと承知しながらも、言う。
「正義超人のパワーを感じる」
数々の暴虐を働いてきた悪行・時間超人に対し、お前は正義超人なのではないか――と。
「ヌワ――ッ!」
サンダーは怒りで顔を歪め、大きな咆哮と共にネプチューンマンの腕を振り払った。
そのままネプチューンマンの両腕を閂に捕らえ、後ろに反り投げる。
『サンダー、ネプチューンマンの“審判のロックアップ”を切りカンヌキスープレックスで投げた――っ』
仰向けにダウンしてしまうネプチューンマン。
無防備にも晒された喉元へ、サンダーが片足を断頭台のように掲げダイブする。
『追い打ちのギロチンドロップを喉元に落とす――っ!』
超重量の片脚がネプチューンマンの首を切断してしまいそうなほどにのしかかった。
「もう一撃――っ!」
再度飛び、二発目のギロチンドロップを落とそうとするサンダー。
ネプチューンマンは悶絶する体に鞭を打ち、身を回転させてこれを避けた。
『ネプチューンマン、キャンバスを転がり回避した――っ』
不格好にもキャンバスを転がり続け、サンダーから距離を取る。
停止したところで起き上がろうとするが、そのときポロッと。
鉄鋲ベストの裏側に忍ばせていた、あるお守りがこぼれた。
「ドクロの徽章……」
禍々しいドクロを象った徽章。
試合直前、
ネプチューンマンはそれをじっと見つめながら、ジェイドの言葉を思い出していた。
「リオン・フィンガー!」
『サンダー、今度は左肩に備えた獅子の爪でネプチューンマンを狙う――っ』
サンダーはネプチューンマンに追撃をかけるべく、左肩の爪を展開し斬撃を見舞おうとする。
ウォーズマンのベア・クローのような爪を持たないネプチューンマンでは、リオン・フィンガーには太刀打ちできない。
だがネプチューンマンは回避を考えず、こぼれ落ちたドクロの徽章を拾った。
「奇跡ってのはそういうことか~~っ」
右手でそれを強く握り込み、立ち上がる。
正面にはすでにサンダーが、リオン・フィンガーの鋭利な切っ先が迫っていた。
その切っ先に対し、ネプチューンマンはドクロの徽章が宿る右手を振った。
――森の木の葉の如くに体軽やかに、腕を弓の如くに引き、流れ星の如くにふり下ろす。
――その時、手刀筋骨“壮”となる。
――その壮拳もって風擦れば炎立つ。
――敵の懐に深く入り、肉斬り骨断てば、ベルリンに赤い雨が降る!
「ベルリンの赤い雨――っ!」
あのブロッケンJrやジェイドが得意とする炎を纏いし手刀でもって、ネプチューンマンは迫りくる獅子の爪を切断した。