ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

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第084話 リーダーとしての責務!

『なんとぉ――っ! ネプチューンマン、突如“ベルリンの赤い雨”を発動しサンダーのリオン・フィンガーを切断した――っ!』

 

 ネプチューンマンがベルリンの赤い雨でサンダーのリオン・フィンガーを切断。

 衝撃の光景に、観戦していたキン肉万太郎は驚きの声を上げた。

 

「どうしてネプチューンマンがジェイドやブロッケンJrの必殺技(フェイバリット)である“ベル赤”を使えるんだ――っ!?」

 

 ベルリンの赤い雨は単純な手刀ではない。

 手の側面から刃を出し、闘気の力を宿した炎を発生させるブロッケン一族の至宝。門外不出のはずだ。

 掟破りでロビン・スペシャルやアルティメット・スカー・バスターを繰り出したことがあるネプチューンマンだが、この技ばかりは見様見真似では再現できないはず……と混乱する万太郎に、ベル赤の使い手であるジェイドが言う。

 

「なにを言うんだ万太郎。おまえだって“ベルリンの赤い雨”を使ったことがあるだろう」

 

 ジェイドの指摘に、万太郎が数秒固まる。

 そんなことがあっただろうか……記憶を検索していくと、ジェイドと出会った最初期の頃の闘いが脳裏に蘇ってきた。

 

「あ……ああ~~っ! ヘラクレス・ファクトリー入れ替え戦でスカーと闘ったとき!」

 

 新世代超人(ニュージェネレーション)入れ替え戦決勝、キン肉万太郎vsスカーフェイスの一戦。

 あのときドクロの徽章を託された万太郎は、悪行超人だったスカーフェイスに病院送りにされたジェイドの無念を感じ取り、咄嗟にベルリンの赤い雨を発動させたのだ。

 

「試合前、ネプチューンマンにブロッケン一族に伝わるドクロの徽章を渡しておいた。あのときのような奇跡が起こるのを期待してな」

 

 理屈ではない。

 正義超人の魂は時にこのような奇跡を起こす……ジェイドの期待は、ネプチューンマンがベルリンの赤い雨という形で現実のものにしてくれた。

 

「リングに立っているのはオレとウォーズマンのふたりだけだが、おまえたち時間超人を倒したいと思っているのはふたりだけじゃねえ。オレたちは全正義超人の万感の思いを背負ってこのリングに立っているんだ」

 

 仲間の必殺技でリオン・フィンガーを打ち破ったネプチューンマンは、サンダーを諭すように言う。

 このまま攻勢に出たい……が、直前に“審判のロックアップ”で感じた違和感が頭から消えてくれなかった。

 

「し……しかし、それはおまえが純粋な悪行・時間超人であった場合の話。もしおまえがなんらかのワケアリ正義超人であるならば……」

 

 サンダーを悪行超人として成敗することに躊躇いを見せるネプチューンマン。

 その困ったような表情を見て、サンダーは吐き捨てるように言う。

 

「敵に仏心を見せるとは、やはり耄碌しちまったようだなネプチューンマン」

 

 そして、横にひねりを加えたジャンプで足を繰り出す。

 

「オレの答えはこれよ――っ!」

 

『サンダー、フライングニールキックでネプチューンマンを拒絶する――っ!』

 

 超重量の飛び蹴りを胸にくらい、ネプチューンマンの体が後退する。

 一瞬優しい顔を覗かせていたネプチューンマンだったが、この仕打ちを受け顔を顰めた。

 

「若僧が年寄りの親切を無碍にしやがって~~っ」

 

 相手がその気ならば応えるのみ。

 再びドクロの徽章が宿る右手を振りかざし、サンダーに放つ。

 

「連続ベルリンの赤い雨――っ!」

 

 炎立つ手刀の連続攻撃。

 サンダーは身を引いて避けるが、構わない。当たるまでぶん回すだけだ。

 

『ネプチューンマン、ベルリンの赤い雨による連続攻撃だ――っ!』

 

 袈裟斬り、横斬り、縦斬り、時折突き。

 ブロッケン一族伝統の必殺技を出し惜しむことなく豪勢に連発していく。

 

「ダメだネプチューンマン! そんながむしゃらな連撃では、ベルリンの赤い雨は当たらない――っ!」

 

 ベル赤の連続攻撃は一見恐ろしいが、いたずらに手数を増やせばいいというものではない。

 特にこの必殺技は相手との間合いが重要。

 ジェイドはなんとかネプチューンマンにそのことを伝えようと声を張り上げるが、その肩を叩く手があった。

 

「いや、あれでいい」

「ブロッケン師匠(レーラァ)!?」

 

 ジェイドの師であり、彼以上にベルリンの赤い雨の極意を知るブロッケンJrが助言を制する。

 このままではネプチューンマンが手痛い反撃を受けてしまうだろうことは目に見えているというのに、なぜ!?

 困惑するジェイドの視線の先、リング上のネプチューンマンは――

 

「ウオー!」

 

 先ほどよりも大きく右腕を振りかぶり、サンダーの胸元を狙わんと袈裟斬り気味に手刀を放った。

 

『大振りの一撃――っ! しかしサンダー、これも冷静に回避してみせる――っ!』

 

 ネプチューンマンの渾身の一撃はまたしてもハズレ。

 だが、彼の口元はニィッと笑みを浮かべていた。

 

「ヌワ~~ッ」

 

 攻撃を回避したはずのサンダーが情けない声を漏らし、その左脚がガクッと折れる。

 

『あ――っと回避が続くあまり足にきたか!? サンダーの体勢が崩れた――っ!』

 

 片脚状態となったサンダーはすぐには次の行動に移れない。

 

「オレの本命はこっちよ――っ!」

 

 ネプチューンマンは初めからこれを狙っていた。

 ドクロの徽章が宿る右手の手刀ではなく、長年使い込んできた名刀――左の一振りを高く掲げる。

 そのど真ん中の刃を使い、サンダーの首を狩った。

 

喧嘩(クォーラル)ボンバ――ッ!」

 

『ネプチューンマン渾身の必殺技がサンダーをコーナーポストまでぶっ飛ばす――っ!』

 

 おなじみの豪腕ラリアットがサンダーの巨体に炸裂。

 ジェイドはその見事なコンビネーションを見て、己はネプチューンマンを侮っていたと痛感する。

 

「ベルリンの赤い雨でたっぷり右を意識させてからの……喧嘩ボンバーの左!」

 

 まさかブロッケン一族の伝統的必殺技を囮に使うとは。

 かつてベルリンの赤い雨に助けられた過去がある万太郎、そしてそのパートナーのカオスもまた、ネプチューンマンの判断に舌を巻く。

 

「普通、強力な必殺技を得たらついついそれをフィニッシャーにと考えてしまいがちだが……」

「あくまでもサブとして運用することで、自分本来の必殺技を引き立たせるとは!」

 

 ミートくんはやったー!といった感じに腕を上げ、ぴょんと跳ねた。

 

「さすがはネプチューンマン! 技の組み立てが巧みだ――っ!」

 

 喧嘩ボンバーのクリーンヒットは、肉体時計逆回転(ボディクロックバックスピン)で全快したばかりのサンダーをコーナーで座り込ませるほどの威力となった。

 相手がダメージを回復するというのであれば、再びダメージを与えるまで。

 ネプチューンマンは諦める心を捨て、追撃を仕掛けるべく合図を出す。

 

「ここだ――っ! 来い、ウォーズ!」

「オオ――ッ!」

 

 その相手はもちろん、後ろに控えていた相棒ウォーズマンである。

 ダメージで動きの鈍いサンダーに対し、それぞれがドロップキックのような体勢で足から飛びかかる。

 されどダブルドロップキックではない――ふたりはわずかに両足の先を開き、サンダーの頭を挟んだ。

 

『お――っと“新星(ノヴァ)・ネオ・イクスパンションズ”、よろめくサンダーに飛びかかり、お互いの両脚で頭部を挟み込んだ――っ!』

 

 サンダーの頭部を両足で挟み込み、投げたりはせずそのまま固定。

 加えるのは、横の回転だ。

 

『そのままサンダーに対し回転をくわえる――っ』

 

 サンダーの頭を軸に、ネプチューンマンとウォーズマンが両足で挟んだまま回転。

 その動きはリンゴの皮を包丁で螺旋状に剥くがごとく。

 相手超人のマスクを問答無用で削り取ってしまうことから、こう呼ばれている――

 

「マスク・ジ・エンド――ッ!」

 

 またの名をアップル・シェイバー!

 マスクハンターネプチューンマンの本領発揮とも言うべきツープラトンが、サンダーのライオンマスクを容赦なく削り取る!

 

「ウグアアア――ッ」

 

『聞いたこともないようなサンダーの悲鳴――っ! イクスパンションズは技を解き着地――っ』

 

 マスク・ジ・エンドをくらってしまったサンダーだったが、彼が装着する獅子の面の強度もまた凄まじく、さすがにリンゴの皮のように薄く削れたりはしなかった。

 だが両目から後頭部に至るラインは赤い血に塗れ、サンダーは視力を失ったのか、その場にうずくまっている。 

 

「ヌワ~~ッ、ヌワア~~ッ」

 

“前回”の闘いでは悪行超人化したセイウチンと共に繰り出し、同じようにジェイドの顔面をズタズタにしたこともあるマスク・ジ・エンド。

 通常ならこれでKOとなってもおかしくはない必殺のツープラトンだが――

 

「肉体時計逆回転を使え、サンダー!」

 

 これしきのことで勝負を諦める“世界五大厄(ファイブディザスターズ)”ではない。

 チームリーダーのライトニングがエプロンから叫び、激痛に悶えるサンダーが我を取り戻す。

 

「きょ、兄弟……そうだ。オレたち時間超人にはこれがあった」

 

 すぐにガチッとマウスピースを噛みしめる。

 

「エヴォリューションマウスピースリバース!」

 

 額にある鍵穴のような傷跡から、エキゾチック物質と呼ばれる煙が噴出。

 煙はループするような軌道で再び鍵穴を通って体内に戻っていく。

 

「肉体時計逆回転!」

 

 肉体の時間を逆行させる時間干渉が始まり、サンダーの負った傷がみるみるうちに塞がっていった。

 

『あ――っと大ダメージを負ったサンダーの肉体がまたもや再生していく――っ』

 

 ベルリンの赤い雨で切断されたリオン・フィンガーも、喧嘩ボンバーで窪んだ首元も、マスク・ジ・エンドで破壊された目元も、すべて元通りだ。

 肉体時計逆回転。時間超人が奥の手として取っておいたのにはそれ相応の理由があるはず。

 ひょっとしたら一回限りという制限があるのでは……と期待していたネプチューンマンだったが、この二回目の肉体時計逆回転によりその願いは崩れ去った。

 

「そ、そうくるならば、何度でも――っ」

 

 ぜーはーと息切れを起こしながら次なる攻撃を仕掛けようとするネプチューンマン。

 そんな相方の様子を鑑み、ウォーズマンは我先にと前に出た。

 

「少し休め、ネプチューンマン」

「ウォーズマン!?」

 

 チームリーダーであるネプチューンマンの了解を待たず、サンダーに足から飛びかかる。

 

『ウォーズマン、矢のようなドロップキックで復活したサンダーを強襲――っ!』

 

 サンダーの傷は全快したが、まだ体勢が整っていない。

 畳み掛けるチャンスはまだ潰えていないということだ。

 

「休む間は与えん!」

 

 ウォーズマンは続けてサンダーの後ろに回り、ロープを使って高く飛び上がった。

 

『続けざまにフライングボディアタックだ――っ』

 

 背中を狙った絨毯爆撃。

 しかし巨漢超人であるサンダーにとって、ウォーズマン程度の投擲弾など恐ろしくもなんともない。

 

「ヌワ!」

 

 サンダーは瞬時に振り返り、飛びかかってきたウォーズマンを両手で受け止める。

 そして、そのまま助走をつけてからキャンバスに叩きつけた。

 

『サンダー、ウォーズマンをダイレクトキャッチしオクラホマ・スタンピードで投げ返した――っ!』

 

 回復直後の隙を狙ったウォーズマンだったが、作戦は上手くいかず切り替えされてしまった。

 常のウォーズマンならもう少し慎重に事を運んだはず……この事態を、セコンドにつくバラクーダは重く捉えていた。

 

「グム~~ッ、まずい。まずいぞネプチューンマン。ウォーズマンの活動限界時間が迫っている――っ」

「バラクーダ」

 

 ネプチューンマンは冷や汗を流すバラクーダと目を合わせた。

 

「やつはおそらくおまえの体力を気にかけている。時間超人が見せた肉体時計逆回転の能力を計算に入れ、この試合が大マラソンマッチになると予想した……先に闘えなくなるであろう己の役目を“捨て石”と割り切ることで、少しでもおまえの体力を温存させようとしているに違いない~~っ」

 

 タッグマッチにおける勝利の理想は、タッグ揃って勝ち名乗りを受けること。

 だがそれは存外難しいもの……実力が伯仲した対戦ともなれば、どちらかが決着前に力尽きてしまうこともままある。

 闘える時間に制限があるウォーズマンは初めからそのことを踏まえ、この試合における己の役割を果たそうとしているのだ。

 

「ウォーズマン……」

 

 ネプチューンマンはそんなウォーズマンの覚悟を感じ取り、背中を見守る。

 ウォーズマンの決意をオクラホマ・スタンピードで返したサンダーは、全快したがゆえの余裕さで毒を吐く。

 

「ヘッ、34年の年月が経ってもポンコツはポンコツ。30分しか闘えないとは悲しいもんだな~~っ、ウォーズマン」

「ナメるな――っ!」

 

『ウォーズマン、ジャンプし両脚でサンダーの頭部を挟み込む――っ』

 

 先ほどと同じマスク・ジ・エンドの体勢――まさか、後ろからネプチューンマンが!?

 顔面を削られたトラウマで身を強張らせるサンダーだったが、今回の狙いはそうではない。

 ウォーズマンはサンダーの頭部を足で挟んだまま身をひねり、捕らえた脳天をキャンバスに叩きつける。

 

『フランケンシュタイナーでサンダーの巨体を倒した――っ』

 

 何の変哲もないシングル技だ。判断が遅れさえしなければ返すのは容易だったはず。

 

「サンダーのやつ、肉体の損傷は元通りだが……動きがあきらかに鈍くなっている。30分近く試合を続けている精神的疲労は回復してはいないのか」

 

 コーナーに下がったネプチューンマンはサンダーの動きを見てそう分析する。

 そうだ。時間を巻き戻し肉体を元通りにするといっても、意識や記憶まで飛んでしまっているわけではない。

 だとすれば一度くらった必殺技への警戒心、痛みの記憶などはそのまま……そこにつけ入る隙があると見た。

 

「代われサンダー。ウォーズマンはオレがやる」

 

 ライトニングにもそれがわかっていた。

 だからこそフランケンシュタイナーをくらってしまったサンダーに交代を促すのだが、起き上がった彼は首を横に振った。

 

「すまねえが兄弟……ここは譲れねえ」

「な……なにを言っている?」

 

 サンダーはライトニングを信頼し、戦略を預けている。

 そんな彼が兄弟と呼び慕うパートナーからの交代を拒否するなど、常であるなら考えられなかった。

 

「超人ってやつは生まれ持った血の宿命には逆らえねえ! 正義超人を気取っている完璧・残虐野郎どもにそのことをわからせてやる!」

 

 サンダーを突き動かすのは、ネプチューンマンとウォーズマンに対する憎悪だ。

 数々の残虐ファイトを繰り広げておきながら正義超人面をしているジジイふたりを、叩きのめしたくてたまらない。

 

『怒りのサンダー、ウォーズマンにヘッドバットの連射砲を見舞う――っ!』

 

 ネプチューンマンが読んだとおりサンダーの動きは精神的に鈍くなっているかもしれないが、ウォーズマンのほうは肉体的に動きが鈍くなっている。

 愚直なヘッドバットでも正面から受けるしかなく、しかし回避がままならぬなら捕らえて返すだけとばかりに腕を伸ばした。

 

『ウォーズマン、サンダーをフロントネックの体勢に捕らえた――っ!』

 

 右脇でサンダーの首を挟み込み、そのまま倒そうというのがウォーズマンの狙いだ。

 だがしかし、サンダーの首を捕らえるにはリスクが大きすぎる。

 

「リオン・クリニエール!」

「グアッ!?」

 

『サンダーの鬣が回転し、ウォーズマンの腕を斬り刻む――っ!』

 

 超人レスラー共通の弱所である首。そこはサンダーにとって弱所にあらず。

 軽はずみに腕を回そうものなら、高速回転する獅子の鬣がそれをズタボロに引き裂いてしまうからだ。

 ウォーズマンの右腕はもはやチェーンソーで斬り刻まれたも同然。

 当然フロントネックロックも外され、鮮血を滴らせた。

 

「どうした、血も涙もない機械野郎が! おまえは泣く子も黙るファイティング・コンピューターだろう! 見ている者の身が凍るような残虐ファイトをオレにも見せてくれよ――っ!」

 

 サンダーは口悪く挑発するが、ウォーズマンは言い返す余力もないのか距離を取るので精一杯だ。

 

「ウォーズマンは血も涙もない機械などではない!」

 

 代わりに言い返したのは、リングの外――“新星・ネオ・イクスパンションズ”のセコンドを務めるMr.バラクーダである。

 

「たまたま機械の体を持って生まれ、たまたまクレムリンの秘密組織に残虐ファイトを教え込まれはしたが……その心根に根ざしているのは、心優しき正義超人の魂! おまえたちのような冷徹非道な悪行超人とは違う!」

 

 トレーナーとして彼を指導し、家族と言ってもいいほどに多くの時間を共有してきたバラクーダだ。

 ときには厳しいコメントを残したりもしたが、ウォーズマンが心優しい男であることは彼が誰よりも知っている。

 

「ウォーズマンを復讐の駒にしようとしたやつが偉そうに~~っ!」

 

 サンダーは憎悪を滾らせバラクーダを睨みつける。

 過去のしでかしを棚に上げ正義超人面をしているという意味では、このバラクーダ――いやロビンマスクも、ネプチューンマンやウォーズマンに負けず劣らない。

 

「ああそうさ! それのなにが悪い!?」

 

 だからなんだ。

 ロビンはそんなちっちゃい後悔に押し潰されるような弱いハートの持ち主ではない。

 過去は過去、今は今、開き直りとも取れる尊大な態度で、バラクーダはサンダーに向け言う。

 

「あの頃の私は若く、そして愚かだった! そんな青臭さや愚かしさを正してくれたのがキン肉マン……そして心優しき愛弟子、ウォーズマンだ! 彼らとの出会いが、私を超人としてより大きく成長させてくれた!」

 

 ひとりでは愚かしいままだったろう。

 しかしひとりではなかったからこそ、愚かしさを認め這い上がることができた。

 そう――友と呼べる皆がいたからこそ。

 

「ネプチューンマンにしたってそうだ! 超人とは幾ばくかの過ちを犯すもの……しかし多くのライバルたちとの闘いを重ねることで己を見つめ直し、友としてわかりあっていくのだ!」

 

 正義超人にとって、ライバルこそが友。闘いの数だけ友が増えていった。

 その大切さは、先の“夢の超人タッグ戦”でキン肉マンたちが教えてくれている。

 それを経て開催されたこの“究極の超人タッグ戦”で、今さらなにを惑わされることがあろうか。

 

「ロビン……」

 

 ネプチューンマンはバラクーダの言葉を横で受け止めながら、その真名をつぶやく。

 激闘の直後でありながら、セコンドとして再びリングに臨むことを選んだロビンマスク。

 彼はもしかしたら、正義超人にとって最も大切なこの信念を……時間超人たちに伝えたかったのではないか?

 

「サンダーよ! おまえもネプチューンマンやウォーズマンと拳を合わせ、なにかを感じ取っているのではないか!? だから言葉で強く否定し、自らを悪く、大きく見せようとしている!」

 

 ロビンマスク。

 正義超人軍のリーダーである、彼だからこそ。

 

「セコンドの分際でごちゃごちゃと~~っ」

 

 しかしながら、頭に血が上っているサンダーにはロビンの訴えも届かない。

 むしろその怒りはより強く煮詰められ、彼の体を動かした。

 ウォーズマンの背中側に回り、胴体を両腕でクラッチした。

 

『サンダー、ウォーズマンを投げっぱなしジャーマンだ――っ!』

 

 後ろへの反り投げ。しかしキャンバスに叩きつけるのではなく、後方へぶん投げる。

 狙いはリングの外、ウォーキューブの壁面かと思われたが――

 

『あ――っとウォーズマンが飛んでいった先にはセコンドのバラクーダが~~っ!?』

 

 ウォーズマンはウォーキューブの壁面ではなく、セコンドとして立っていたバラクーダに激突した。

 

「ググウ……」

「ロ、ロビン!」

 

 ウォーズマンの下敷きになる形で倒れるバラクーダ。

 激突の際の衝撃によるものか、長髪のカツラが取れ、正体であるロビンマスクの鉄仮面があらわになっていた。

 

「きたねえぞサンダー! セコンドのバラクーダ……いやロビンマスクを狙うなんて!」

「そうだー! こんなの反則だ――っ!」

 

 トーナメント・マウンテンの麓から、カオスと万太郎が野次を飛ばした。

 サンダーはそちらの方角を睨みつけながら、一切悪びれることなく叫ぶ。

 

「なにを言いやがる! オレはただウォーズマンを投げただけ……その先に偶然バラクーダがいただけだろうが! むしろこいつこそ、ウォーズマンを受け止め衝撃を殺そうとしたんじゃねえのか――っ!? だとしたらセコンドの枠を逸脱したアシスト行為として咎められるべきだ――っ!」

 

 サンダーの言い分に、試合を取り仕切る立場のハラボテ・マッスルは「ムゥ……」と唸った。

 ロビンは怪我を負ってしまっただろうが、ウォーズマンのダメージが抑えられたことは事実。

“新星・ネオ・イクスパンションズ”にとって有利な結果になってしまった以上、“世界五大厄”を咎めることはできない。

 

「わ、私は大丈夫だ……リングに戻れ、ウォーズマン」

「しかし、ロビン……」

 

 己はあくまでセコンド。ウォーズマンの足を引っ張ることはできない。

 そういった考えから弟子の背中を押すロビンだったが、その身は今にも力尽きてしまいそうなほど弱々しかった。

 

「戻れねえってんならオレさまが手伝ってやるぜ――っ!」

 

 そんなふたりのもとに、リングから飛び出したサンダーが降り立つ。

 先ほどの投げっぱなしジャーマンと同じ要領で、背中側から標的の胴体をクラッチした。

 だがその対象は――

 

『お――っとサンダー、ウォーズマンではなくロビンマスクを抱えてジャンプしたぞ――っ!』

 

 対戦相手ではなくセコンドだ。

 

「あいつ……今度こそ故意にロビンマスクを狙ったぞ!?」

「やっぱり反則じゃねえか――っ!」

 

 ジェイドとスカーフェイスが声に怒りを乗せ抗議するが、そんなものは悪行・時間超人の耳には届かない。

 

「こちとらマスク・ジ・エンドで目をやられちまったからな~~っ! ターゲットを見間違えちまうことだってあるだろうよ!」

 

 サンダーの目は肉体時計逆回転によって完治している。とんでもない言い訳だ。

 

「しかしそこは超人レスリング! 真剣勝負に不幸な事故はつきものだ!」

 

 事故――セコンドとはいえ、真剣勝負の場に立つならば技の余波をくらうことは覚悟しなければならない。

 もちろんロビンマスク自身、バラクーダとして参戦することを決めた時点でその覚悟はできていた。

“マッスルブラザーズ・ヌーボー”との闘いで重傷を負い、こんな平凡なジャーマンから抜け出せないことも……当然ながら自覚できていた。

 

「消えろ――っ! 無様な敗北者よ!」

 

 サンダーはそのまま跳躍の勢いを乗せ、ロビンマスクを反り投げる。

 狙いはウォーキューブ外側のガラス面。

 だがそこは、入場の際にネプチューンマンがライトニングを投げつけ割れている。

 

『サンダー、ウォーキューブに開いた大穴から地表めがけてロビンマスクを放り投げた――っ!』

 

 必然、ロビンマスクの身はウォーキューブの外へ投げ出されることとなった。

 そう、ウォーキューブの外――20万人の観衆がひしめくトーナメント・マウンテンの麓へ。

 

「ロビーン!」

 

 真っ逆さまに落ちていく師を前に、ウォーズマンは届かぬ手を伸ばすことしかできなかった。

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