ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

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第085話 “女房を質に入れてでも見たいファイト”!!

『トーナメント・マウンテン準決勝のリングがあるウォーキューブから投げ落とされたバラクーダ……いやロビンマスク! このまま地面に激突死してしまうのか~~っ!?』

 

 準決勝第1試合の“マッスルブラザーズ・ヌーボー”戦のダメージが残るロビンマスクに、落下を防ぐすべはない。

 重力に導かれるがまま、頭からトーナメント・マウンテンの麓に落ち……その鉄仮面を頭蓋骨ごと割るのみだ。

 そんなことを、観衆に紛れる正義超人の仲間たちが許すはずがない。

 

「させるか――っ!」

「ダメだ、間に合わない――っ!」

「間に合わせてみせる――っ!」

「うぉおお――っ!」

 

 キン肉マンが、テリーマンが、ミートくんが、万太郎が、カオスが、ブロッケンJrが、ジェイドが、スカーフェイスが、誰もがロビンめがけて走り出し、その身を受け止めようと必死になった。

 

 しかし――距離が遠い。

 見守っていた人間たちが間に合わないのを悟り、ある者は顔を背け、ある者は目を閉じた。

 

 やがて、ズドン、という衝撃音が響き渡る。

 ロビンが地表にたどり着いたのだ……おそらくは脳天激突という形で。

 観衆がおそるおそる目を開くと、まず呆然と立ち尽くす正義超人たちが目に入ってきた。

 落下死してしまったロビンマスクを見て失意に沈んでいるのだろう。

 

 いや――違う。

 

 彼ら、呆然と立ち尽くす正義超人の奥のほうを見れば……ロビンの身は何者かによって受け止められている。

 

『あ――っと突如飛び込んできた謎の影がロビンマスクをキャッチした――っ』

 

 プロとして一瞬たりとも目を離さなかった実況は、トーナメント・マウンテンに集った観衆に大声でそれを知らせる。

 意識を途絶えることなくその姿を見たロビンは、驚きを口にした。

 

「お……おまえは……」

 

 我が身を受け止めたのは、上裸にパンツ一枚のキン肉マンのような姿。

 されどキン肉マンではない。

 その顔は布製のマスクではなく、鋼鉄の仮面によって覆われていたからだ。

 

「ケ……ケビンマスク!」

 

 見間違えるはずがない。

 ロビンマスクを助けたのは……未来に生まれてくる息子、ケビンマスクであった。

 

『なんとウォーキューブから転落したロビンマスクを救ったのは、時間超人ライトニング&サンダーに捕らえられ、クリアベッドの中で今にも消滅の危機に瀕していたはずの……ケビンマスクだ――っ!』

 

 実況の言うとおり、ケビンマスクは囚われかつ消滅寸前の身だった。

 

「な、なにぃ~~っ!?」

「なぜケビンマスクがここにいる~~っ!」

 

 そのケビンマスクが五体満足、自由の身で出歩いていることに、クリアベッドを控室に置いてきたライトニングとサンダーは驚愕している。

 何者かが侵入しケビンマスクを解放したのか? だとしても消滅しかかっていた肉体が元に戻っているのはどういうことだ?

 困惑する時間超人たちに反し、ロビンマスクは答えを手繰り寄せていた。

 

「そ、そうか……もともとおまえの体が消えかかっていたのは、親である私やアリサに命の危機が迫っていたからだ。しかしここ数日でアリサの容態が安定したことにより、消えかかっていた肉体が元の姿を取り戻すまでに回復できたのか」

 

 ロビンやアリサが健康であるならば、21世紀に生を受けるケビンマスクが消滅することもないという理屈だ。

 

「そしてさすがは私の息子。体さえ動かせるようになれば、自力でクリアベッドから脱出することなどわけはないと……」

 

 そう言って、ロビンマスクは自身を抱きかかえるケビンマスクの体に触れた。

 次の瞬間、

 

「グアアッ」

「ケビン!?」

 

 ケビンの体は糸が切れたように崩れ、地面に倒れ伏してしまう。

 ロビンはそんなケビンのそばに寄り添い、肉体の状態を確認してすべてを察した。

 

「無茶なことを……いくら肉体の消滅が免れたとはいえ、おまえの体は何日間もあの狭いクリアベッドの中に閉じ込められていたのだ。全身の筋肉は弛緩し、使い物にならなくなっていたはず……それなのに、この私の身を高所から受け止めるなど……」

 

 ケビンマスクの体は痙攣を起こしている。おそらくは骨も弱っているだろう。

 高所から落ちたロビンマスクを受け止めるなど、いくら超人であっても負担にならないはずがない。

 

「と……囚われている間も、“究極の超人タッグ戦”の一部始終は把握していたつもりだ……」

 

 ケビンマスクはぷるぷると震えながらも、ここに駆けつけるまでの経緯を語ろうとしていた。

 

「万太郎たち新世代超人(ニュージェネレーション)の仲間や、ダディたち伝説超人(レジェンド)のお歴々……正義超人のみんなが、オレを救うために熱闘を繰り広げていた」

 

 クリアベッドの中でずっと身動きの取れないケビンマスクだったが、意識はハッキリとあった。

 時間超人コンビがわざわざ試合会場にクリアベッドを持ち込むものだから、各試合の模様も頭に入っている。

 強豪2000万パワーズを倒した万太郎とカオス……因縁の対決を制したロビンとキッド……暴走するマンモスマンと正義超人として散ったセイウチン……未来で自身を苦しめた悪魔超人アシュラマンの勇姿。

 

「そして準決勝。敵は今大会の火付け役にして元凶でもある時間超人で、リングに立っているのは尊敬するダディが終生のライバルと見定めた男ネプチューンマン……そしてダディの弟子であり、オレにとっては師匠でもあるウォーズマンのコンビ。さらに、ダディ自身もセコンドとして参戦しているという」

 

 消えかけていた肉体が再生したのは、まさに“新星(ノヴァ)・ネオ・イクスパンションズ”vs“世界五大厄(ファイブディザスターズ)”の一戦が始まったそのときだ。

 だというのに、あの時間超人ふたりは肝心なところでケビンを控室に置き去りにした。

 これでは注目の一戦を拝むことができない。

 見たい――今すぐに、ネプチューンマンやウォーズマン、そして父ロビンマスクが闘う姿を。

 そのためならば、なんだってする。

 

「体が動くようになったオレの頭には、ある超人レスリングファンの古豪のセリフが浮かんできた」

 

 ケビンはロビンの目を見て言う。

 

「これは女房を質に入れてでも見なければ、と」

 

 そのセリフは、ロビン自身どこかの試合会場で耳にした覚えがあった。

 まだ若いケビンマスクに女房などいないはず。おそらくは比喩で言っているのだろうが、

 

「妻帯者である私にとってはとんでもないセリフだ」

 

 ロビンマスクは軽く笑い、ケビンマスクの想いを汲み取った。

 立ち上がることも難しいであろう彼に肩を貸し、立ち上がらせる。

 すべてはケビンに上を――闘いの舞台、ウォーキューブを見上げさせるために。

 

「クロエ……いや、ウォーズマン!」

 

 ケビンはリング上からトーナメント・マウンテンの麓を覗き込む師に向けて言い放つ。

 

「正直、あんたにどんな言葉をかければいいか……言いたいことは山ほどあるはずなのに、いざそのときになってみると上手い言葉がなにも思い浮かばねえ」

 

 超人オリンピック・ザ・レザレクション決勝のフィナーレで別れてから、満足に会話をすることもなかった師弟。

 ウォーズマン自身は仮初の姿で接触したこともあったが……こうやって素の姿で向き合うのは随分久しぶりだ。

 

「だから、この場はなにも取り繕わず……今の素直な気持ちをぶつけさせてもらう!」

 

 ケビンマスクは大声を発するために息を大きく吸う。

 

「勝ってくれ! ウォーズマン!」

 

 自分たち親子のために闘ってくれる師に向けて、精一杯の応援を届けるために。

 それを受け取ったウォーズマンに、返す言葉はない。

 元来寡黙である彼が、今さらなにを語ろうか。

 

「コーホー」

 

 口から漏れるのは、ただただ機械的な呼吸音のみ。

 しかし……その口元は、パカッという音と共に開き口角を上げた。

 まるで笑みを作るように。

 

『あ――っとウォーズマンスマイル! ウォーズマンスマイルが出たぞ――っ!』

 

 ウォーズマンスマイル。

 それは、残虐超人であったウォーズマンが敵を八つ裂きにする際に見せる邪悪な笑み。

 スマイルという言葉のイメージからはかけ離れた恐怖の象徴として捉えられていたが……このときばかりは、誰もが思った。

 

“ウォーズマンが嬉しさのあまり笑っている”と。

 

「不気味な笑い顔なんぞ見せやがって~~っ」

 

 そうは思わなかった数少ないひとりが、リング上で対峙する時間超人サンダーだ。

 どさくさに紛れて抹殺しようとしたロビンが助かり、ケビンにまで逃げ出され、ウォーズマンは不快な笑みを見せている。

 サンダーの苛立ちはピークに達し、もはや殺意は抑えられないほどに迸っていた。

 

「リオン・フィンガ――ッ!」

 

『サンダー、左肩から獅子の爪を伸ばしウォーズマンに襲いかかる――っ』

 

 こうなったら弟子の目の前でその不気味なスマイルを破壊してやる。

 そう意気込みリオン・フィンガーによる斬撃を繰り出そうとするが、標的はタイミングを見計らい宙を舞った。

 

『ウォーズマン、それをジャンプで躱し……』

 

 空中で身を反転させ、逆さ姿勢へ移行。

 向かってくる爪に臆することなく、その切っ先を顔面で――いや、口で受けた。

 

「ウォーズマンスマイル!」

 

 先ほどパカッと開いた口の部分で、リオン・フィンガーを挟み込んだのである。

 そしてそこからさらに首をバネのようにし、より高く飛んだ。

 

『あ――っとウォーズマンスマイルによって開かれた口がサンダーのリオン・フィンガーをキャッチし、そこを発射台にしてさらに飛んだ――っ!』

 

 ウォーズマンの身はウォーキューブの天井にまで達し、その面を強く蹴って降下。

 超スピードを生み出しながら体を捻り回転。

 突き出した右拳からはベア・クローを展開し、超人削岩機となって直下のサンダーを狙う。

 サンダーの――より正確には、サンダーの脳天を。

 

「ブレイン・クラッシュ・スクリュー・ドライバ――ッ!」

 

 真上から落ち、脳天に突き刺さる必殺スクリュー・ドライバーだ。

 

「ウギャアア――ッ!」

 

 サンダーの頭頂部からシャワーのような鮮血が噴き出し、今試合最高の絶叫が上がった。

 

『こ、これは強烈――っ! ウォーズマン、サンダーの脳天を抉る極悪スクリュー・ドライバーだ――っ!』

 

 ともすれば頭蓋骨が削り取られ、脳髄がぐちゃぐちゃに破壊されかねないほどの一撃。

 サンダーの持ち前の超人強度のおかげか、それともウォーズマンが理性を持って威力をコントロールしたか、そこまではいかなかったが……直前まで殺意を滾らせていた巨体は、当然のごとく倒れ伏した。

 

『大出血のサンダー、ダウーン!』

 

 ウォーズマンはサンダーが倒れる前に脳天からベア・クローを抜き、華麗に着地。

 ウォーズマンスマイルはまだ元に戻っていない。今の彼の笑みはまだまだ消えることはない。

 

「まずい……いくら時間超人といえど、その出血量は命に関わる! サンダーよ!」

「わ、わかっている~~っ」

 

 慌てるライトニングに答え、サンダーは意識が途絶える前にマウスピースを噛み締めた。

 すぐに額からエキゾチック物質が噴出し、また元の傷穴へと戻っていく。

 

肉体時計逆回転(ボディクロックバックスピン)!」

 

『お――っとサンダー、致命傷を帳消しにすべくまたもやエキゾチック物質を放出! 自身の体内に逆流させることで肉体をダメージを負う前まで戻そうとしているぞ――っ』

 

 サンダーの脳天の傷が元通りに修復されていき、同時に立ち上がろうとする。

 だが傷が深すぎるせいか、回復速度が以前よりも緩慢だった。

 

「その隙は見逃さん」

 

 ウォーズマンスマイル状態のウォーズマンが、サンダーの背後に迫る。

 未だ力が入らぬであろう両腕を掴み、相手の両脚に自らの両脚を差し入れロック。

 スクリュー・ドライバーと並ぶ必殺技(フェイバリット)で勝負を決めにいこうとした。

 

『ウォーズマン、サンダーが回復に手間取っている間、本日三度目のパロ・スペシャルを仕掛けにいく――っ!』

 

 今のうちにパロ・スペシャルを極めてしまえば、サンダーの傷が完全回復する頃にはジ・エンドだ。

 それがわかっているからこそ、エプロンにいたライトニングが飛び出した。

 

「これはさすがにカットさせてもらうぜ!」

 

 ライトニングの位置はウォーズマンの真後ろ。

 パロ・スペシャルに集中するあまり無防備になっている後頭部へ蹴りを放つ。

 

「ジョワ――ッ!」

 

『ライトニング、後ろからの延髄斬りでウォーズマンを撃退! サンダーを救出――っ!』

 

 延髄斬りの衝撃でウォーズマンの身が大げさなくらいぶっ飛ばされる。

 いや、実際大げさだ。ライトニングはそこまで強く蹴ってはいない。

 

『蹴り飛ばされたウォーズマン! その先ではネプチューンマンが待ち構えている――っ!』

 

 ウォーズマンはただ蹴飛ばされたわけではなく、次なるアクションに移るために蹴りの勢いを利用したのだ。

 空中で身を翻し、姿勢を整えてから、両脚を大きく開く。

 その股ぐらに待ち構えていたネプチューンマンが右腕を差し入れキャッチする。

 

『あ――っとネプチューンマンがウォーズマンをワンハンド・スピン・スラムの体勢に捕らえた――っ!』

 

 ネプチューンマンは勢いをつけるため、その場で回転。

 遠心力を味方につけ、続けて発射態勢を整える。

 

「この試合、開幕の狼煙となったワンハンド・スピン・スラム! ライトニングにお見舞いしたオレの強力(ごうりき)をもう一度見せてやろう!」

「先ほどは狙いが別にあったためただの模倣だったが……これぞオレたちイクスパンションズ流のタッグ・フォーメーションだ!」

 

 ウォーズマンはベア・クローを展開し備える――そう、パートナーによる自身の投擲に。

 これぞ、タッグ・フォーメーションAを改良進化させた“新星・ネオ・イクスパンションズ”のオリジナルツープラトン。

 

「タッグ・フォーメーション・ノヴァ――ッ!」

 

 ネプチューンマンはウォーズマンをそのままワンハンド・スピン・スラムで投げ放った。

 

『ウォーズマン、銃弾のような回転をしながら“世界五大厄”のふたりに襲いかかる――っ!』

 

 サンダーは身動きが取れない。通常の回避は不可能だろう。

 ライトニングはパートナーを見捨てるわけにもいかず、時間超人の常套手段で返す構えを取った。

 

「チィッ! エヴォリューションマウスピースストレート!」

 

 上下逆さにしていたマウスピースを正しい向きで嵌め直し、加速能力を発動させようとする。

 コンマ1秒先の未来へ移動するこの技ならば、向かってくるウォーズマン弾をその場で回避することが可能だ。

 

「アクセレレ……なっ!? サンダー!?」

 

 ライトニングは傍らのサンダーも同じように対処していると思った。

 が、サンダーはライトニングと同じくマウスピースを嵌め直すところまではいったものの……額からエキゾチック物質が出ていない。

 これではアクセレレイションを発動できないではないか。

 

「ベア・クロ――ッ!」

 

 そうこうしている間に、ウォーズマンが回転しながらのベア・クローを突き出し突進してきた。

 もはやなにをやっても間に合わないと悟り、ライトニングはガード体勢でそれを受ける。

 

『“新星・ネオ・イクスパンションズ”のツープラトン、タッグ・フォーメーション・ノヴァがライトニングを蹴散らした――っ!』

 

 ベア・クローの一撃がガードなどお構いなしにライトニングの体を斬り刻み、後ろへと弾き飛ばす。

 

『さらに蹴散らされたライトニングがサンダーを巻き込み、両者ダウーン!』

 

 重なり合うようにダブルダウンとなった“世界五大厄”。

 サンダーは仰向けのまま「ヌワ~~ッ」と苦しげに唸り、ライトニングは「ジョワ~~ッ」と言いながらもひとり立ち上がろうとする。

 血に濡れたベア・クローを構えながら不気味に笑うウォーズマンを見やり、ライトニングは表情を歪めた。

 

「あ……あんな火花や煙があがっているような死にぞこないが、なぜここまで……」

 

 試合時間は30分を経過した。とっくにロボ超人のボディがショートしてもおかしくないはずなのに。

 ウォーズマンはライトニングの心中を見透かすように言う。

 

「活動限界時間をオーバーしたことによる機能停止を期待しているなら無駄だ……スーパーユウジョウモードを発動した今のオレに、死角はない!」

「ス……スーパーユウジョウモードだと――っ」

 

 ライトニングのデータにはない機能だ。

 科学技術の未発達なこの20世紀の地で、いったいいつの間にそんなバージョンアップを果たしたというのか。

 

『“世界五大厄”、ライトニングが先に立ち上がる! サンダーはまだ苦しいか~~っ!?』

 

 このまま敗れるわけにいかない。

 ライトニングはサンダーが立ち上がるの待たず、ウォーズマンと相対しようとしていた。

 そういった戦況を鑑み、ウォーズマンはある決断を下す。

 

「ネプチューンマンよ、アレをやるぞ」

「なに!?」

 

 相棒からの“アレ”という指示を受け、しかしネプチューンマンの反応は鈍かった。

 ウォーズマンがなにを伝えたいのかは把握している。

 だがだからこそ、このタイミングで“アレ”をやるのは承服できない。

 

「おまえには迷惑をかけてしまうことになるが……オレが仕事を果たせるのは、もはやここしかない。正義超人の先達として、21世紀からこの地に来た者としての任をまっとうする。協力してくれるな?」

「ふざけるな。今にもショートしそうな音を鳴らしやがって。おまえとは二度も命のやり取りをした仲だが……今は大切なタッグ・パートナーだ。みすみす死にに行かせることなどできるか~~っ」

 

“アレ”とは、いわゆる奥の手……ウォーズマンの活動限界時間が間近に迫ったとき、最後に打つべき一手として考えていた仕掛けだ。

 発動させればおそらくウォーズマンは試合を続けることができなくなる……いや、あるいはそれ以上に悲惨な結末が訪れてしまうかもしれない。

 

「安心しろ。こいつらに勝ってもまだ決勝が残っている……命までは使わんさ」

「命をかけるやつらはみんなそういうことを言うんだよ」

 

 ネプチューンマンの脳裏には、“前回”のウォーズマンがよぎっていた。

 マンモスマンを強奪され、地獄の氷結落としをくらいオーバーロードしてしまった悲劇のウォーズマン。

 あの歴史を繰り返すわけにはいかない。頑として譲る気はなかったネプチューンマンは、しかし。

 

「師匠と……弟子の前なんだ。格好つけさせてくれよ、ネプチューンマン」

 

 穏やかな――恐怖の象徴と恐れられたウォーズマンスマイルと一切変わらないというのに――表情で笑うウォーズマンを見て、考えが変わった。

 

「ウォーズ……」

 

 相棒の想い、相棒の覚悟を感じ取り、己も腹を決める。

 了承の言葉は不要。

 男は黙って行動で示すのみである。

 

「来い――っ!」

 

『あ――っとネプチューンマン、左腕を構えた――っ!』

 

 リング上でネプチューンマンが左腕を振り上げる所作、その意味といえばひとつしかない。

 

「おお!」

 

『ウォーズマン、その対角線上に位置取りをする――っ!』

 

 ネプチューンマンから離れた位置――そこはトップロープの上。

 ウォーズマンは絶妙なバランス感覚でロープの上に立ち、同じく左腕を構えた。

 両者の左腕から光の管が一直線に伸び、繋がる。

 ライトニングの体を貫通して。

 

「ジョワッ!?」

 

『ネプチューンマンとウォーズマンの間に光の管が繋がれ……その間には、立ち上がったばかりのライトニングが捕らえられた――っ!』

 

 これはネプチューンマンとセイウチンの“ネオ・イクスパンションズ”の必殺ツープラトン。

 マグネット・パワーの代わりに21世紀のテクノロジーであるオプティカルファイバー・パワーを使用した、新型クロス・ボンバーだ。

 

「ああ~~っ! これはもしや、ネプチューンマンお得意のクロス・ボンバーの体勢か――っ!?」

「ということは……まさか、使えるのか!? ウォーズマンもクロス・ボンバーが!」

 

 クロス・ボンバーの恐ろしさをよく知るキン肉マンとテリーマンがフィニッシュ・タイムの予兆を感じ取り、

 

「ウォーズマンはさっきも磁気嵐クラッシュでオプティカルファイバー・パワーを使っていた!」

「だとしたらセイウチンと同じように超威力のクロス・ボンバーが打てるはず! フィニッシャーとしては申し分ない!」

 

 万太郎とカオスもついに悪行・時間超人が倒れるときが来たのかと身構え、

 

「いや、だが見てみろ! ウォーズマンはなぜかロープの上に立っているぞ!」

「それに構えもクロス・ボンバーではない! いったいなにをするつもりなんだ!?」

 

 唯一その技をくらったことがあるスカーとジェイドは、ふたりの狙いがクロス・ボンバーではないことに気づいた。

 

 注目するべき点は3点。

 1、ウォーズマンはなぜかロープの上段にのぼっている。

 2、ウォーズマンは左腕だけでなく右腕まで上げている。

 3、ウォーズマンの全身がスーパーユウジョウモードの発動により光り輝いている。

 

『ロープ上段で全身を輝かせるウォーズマン! ベア・クローを装着した両腕を高々と天に掲げた――っ!』

 

 さらに右手と左手のダブルでベア・クローを展開。

 

「100万パワー+100万パワーで、200万パワー!」

 

 二刀流――とでも呼ぶべきベア・クローを見て、キン肉マンは戦慄する。

 もしやウォーズマンは、かつて悪魔超人との闘いで見せた“アレ”を仕掛けようとしているのではないか。

 

「いつもの2倍のジャンプが加わって、200万パワー×2の400万パワー!」

 

 ロープの反動を使い、高く飛び上がるウォーズマン。

 やはりアレは、“7人の悪魔超人”との闘いでバッファローマン相手に繰り出した捨て身の一撃に違いない。

 

「そしていつもの5倍の超回転を加えて、400万×5の2000万パワー!」

 

 1000万パワーのバッファローマンに対抗するため、ウォーズマン力学を駆使してパワーを増大させた“二刀流スクリュー・ドライバー”。

 ウォーズマンは今回、その技に未来からのギフトをプラスする。

 

「さらに我が友ネプチューンマンが21世紀の未来から持ち込んだ超技術……オプティカルファイバー・パワーが突進力を5倍に引き上げ2000万×5の1億パワー!」

 

 天井すれすれまで飛び上がったウォーズマンは全身をドリルのように回転させ、ライトニングめがけて突撃。

 ネプチューンマンとの間に築いたオプティカルファイバー・レールを通ることで破壊力を倍化させた。

 キン肉マンとテリーマンが叫ぶ。

 

「あ……あれはまさか! バッファローマンとの試合で見せた捨て身のスクリュー・ドライバーの強化版か~~っ!?」

「ネプチューンマンの必殺技であるクロス・ボンバーを単なるオプティカルファイバー・パワーの受け皿にすることで、ライトニングの回避を阻止するつもりだ――っ!」

 

 通常のクロス・ボンバーが喧嘩(クォーラル)ボンバー+喧嘩ボンバーだとするならば、これは喧嘩ボンバー+二刀流スクリュー・ドライバーのアレンジ版クロス・ボンバー。

 しかもスクリュー・ドライバーのほうは1億パワーなどという聞いたこともないようなパワーだという。

 命中すれば勝利は間違いない――が、ターゲットにされたライトニングは怪しげに笑む。

 

「バカめ! オレにはこれがある……アクセレレイション!」

 

 エヴォリューションマウスピースを噛み締め、側頭部の傷穴からエキゾチック物質を噴出。

 コンマ1秒先の未来へ移動する加速能力でツープラトンを回避しようとする。

 しかし、その体が液状になって消えることはなかった。

 

「ジョワッ~~!? エキゾチック物質が風で流されていく!」

 

 煙状のエキゾチック物質は、スクリュー・ドライバーの高速回転によって発生する風の力で吹き飛ばされた。

 

「いつもの5倍の超回転と言っただろう! くらえ――っ!」

 

 スクリュー・ドライバーはライトニングの正面から迫っている。

 このままでは一回戦で敗退した“チーム・コースマス”スプートニックマンのように、胴体に風穴を開けるだろう。

 

「おっと! この技は後方からも迫ってくるぜ! 喧嘩ボンバー!」

 

 後ろからはネプチューンマンが、ライトニングの後頭部を刈り取らんと豪腕を掲げながら迫る。

 オプティカルファイバー・レールによって射竦められたライトニングにはどちらも避けることができない。

 

100000000(ワンハンドレッドミリオン)パワー・喧嘩(クォーラル)スクリュー・ドライバ――――ッ!!」

 

 直撃の瞬間、ネプチューンマンとウォーズマンが同時に技名を叫ぶ。

 

「喧嘩ボンバーと二刀流スクリュー・ドライバーのサンドイッチじゃ――っ!」

 

 客席のキン肉マンもまた、大興奮のあまりガッツポーズで叫んだ。

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