ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

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第087話 繰り返される絶望!?

 ネプチューンマンがフィニッシュ・ホールドのつもりで放ったタワーブリッジは、ライトニングのアクセレレイションによってたやすく返されてしまった。

 反撃のロンリー・クロック・キャノンにより、頭部を鉄柱に叩きつけられたネプチューンマンは、マスクマンの誇りである仮面を割られ、ダウンを強いられる。

 

「ジョワジョワ。マスクハンターがマスクを割られてりゃ世話はねえ」

 

 ライトニングは無様に転がるネプチューンマンを見下ろしながら、殺意を滾らせる。

 

「さあ、ここからさらに絶望を与えてやるとするか。エヴォリューションマウスピースリバース!」

 

 口腔内にあったマウスピースを取り出し、上下を変えて再セット。

 すぐさま噛み締め、側頭部の傷穴からエキゾチック物質を噴出させる。

 

肉体時計逆回転(ボディクロックバックスピン)!」

 

 体外へ出た黒煙は帰巣本能でもあるかのようにUターン。

 再度鍵穴へと戻っていき、ライトニングの肉体に変化をもたらす。

 

『あ――っとライトニングの頭部の穴から噴出したエキゾチック物質がループし……再度ライトニングの体内に侵入! ダメージを負った体が元通りに修復されていく――っ』

 

 ネプチューンマンがダウンしてしまった状態での全回復。

 絶望としか表現できない光景を見て、トーナメント・マウンテンの麓で見ていることしかできないカオスと万太郎が嘆きの声を上げる。

 

「ああ~~っ! ウォーズマンとのツープラトンや地獄の三重刑で与えたダメージがなかったことに……」

「そんな~~っ! 今までの苦労が水の泡になってしまう~~っ」

 

 その声が届いたのか否か、リング上に沈むネプチューンマンの指先がピクリと動いた。

 キャンバスに片肘を立て、上半身から順番に立ち上がろうとする。

 

「水の泡か……確かにそのとおりだな」

 

 本当はすぐにでも立ち上がって反撃に出たいが、あいにく年老いた体が「もう休め」と言っている。

 

「こちとら普通なら引退してる歳のオッサンだ。それが老体に鞭打ち頑張ってるってのに、インチキくせぇマウスピースを噛み締められただけでダメージが帳消しなんざ、ふざけんなってもんだ」

 

 家族を作って隠居することもせず、山に籠もって闘える肉体を維持し続けたネプチューンマン。

 試合前日には未来へ帰れなくなるリスクを冒してまで心臓を再生させた。

 それでも老いという限界を超えることはできない。

 体力が若い頃より衰えているのは抗いきれぬ現実なのだ。

 

「だ……だが不思議と諦める気にならねえ。オレを信じ、決死の覚悟で生かしてくれた大恩人の顔を見ると特にな……」

 

 ネプチューンマンはなんとか上半身だけを起こし、リングの……ウォーキューブの外へ視線を向ける。

 そこでは20万人の大観衆が心配そうな眼差しでこちらを見上げていた。

 その中のひとり……自身をここまで連れてきてくれた若者の姿を見ることで、限界を越えようとしていた。

 

「ネプチューンマン……今、カオスのことを見ていたのか?」

 

 カオスの隣に立つ万太郎はその視線を感じ取り、ネプチューンマンの心理を読み取ろうとする。

 だがそれは適わない。まさか今リング上で闘っている男が“究極の超人タッグ戦”二周目で、隣の相棒によって命を救われたなどとは思わないだろう。

 カオス自身、その答えにたどりつくすべはない。

 しかし答えにたどりつけずとも、かけるべき言葉は決まっていた。

 

「がんばれ! ネプチューンマン!」

 

 カオスは絶望など見せず、精一杯の声量で叫んだ。

 

「この時代のみんなはまだ知る由もないことだが……後の闘いでネプチューンマンが成す偉業を、オレは知っている! 子供の頃、父ミニッツ・アヴェニールに聞かせてもらった偉大なる超人の逸話……そんな憧れともいえる男が、こんなところで敗れるはずがない!」

 

 それは幼い頃の記憶。

 亡き父ミニッツ・アヴェニールは親が子を寝かしつけるときに絵本を読み聞かせるように、布団の中でネプチューンマンの物語を語ってくれた。

 20世紀に行われた“宇宙超人タッグ・トーナメント”において、残虐非道この上ない行いを働きひたすら憎まれ続けた孤高の男……しかしその男は正義超人に敗れると潔く負けを認め、仲間の完璧(パーフェクト)超人に敗北を知らせるため自らが破壊カプセルを呑み自爆、人狼煙となることで仲間たちを退散させるという立派な最期を見せた。

 

 ――その超人は本当は心のキレイな超人だったんだね。

 

 当時のカオスは子供ながらにそう思った。

 死んだと思われたネプチューンマンが完璧超人の仲間たちの施した死者を蘇らせる術によって復活し、正義の御旗のもと邪悪神に立ち向かうため正義超人たちを援護したという話には、「やったー! カッコイイー!」と我が事のように喜んだものだ。

 

「悪行超人の罪深さ……正義超人としての誇り……そのふたつの心を知るあんたなら、きっと悪行・時間超人にだって勝てる! いや! 復讐心にとらわれていたオレに、超人が闘うことの意味を教えてくれたあんたにこそ……ライトニングとサンダーを倒してほしい!」

 

 憧れだったネプチューンマンならば、きっとやってくれる。

 悪行・時間超人たちを倒し、正義超人として超人が闘うことの意味を知らしめてくれる。

 親や故郷のみんなを殺された復讐を果たすのではなく……ライトニングとサンダーには、そういう形での勝利を果たしてほしい。

 

「ネプチューンマン! ネプチューンマン!」

 

 本心からそう願い、カオスはネプチューンマンの名を唱え続けた。

 

「カオス……」

 

 腕を振るパートナーの姿を見て、万太郎も同じことを思う。

 

「ネプチューンマン! ネプチューンマン!」

 

“マッスルブラザーズ・ヌーボー”が揃って声援を送る。

 

「想いは同じだぜ……カオス! 万太郎!」

 

 消滅の危機を脱したばかりのケビンマスクは、ロビンマスクに体を支えられながらも同じように腕を振り上げる。

 

「ネプチューンマン! ネプチューンマン!」

 

 そんなケビンマスクを見て、傍らのロビンマスクが。

 そんなロビンマスクを見て、キン肉マンやテリーマンたち伝説超人(レジェンド)たちが。

 スカーやジェイド、ミートくん、イケメン、凛子、ジャクリーン、がきんちょハウスやプロレスショーの面々、多くの超人レスリングファンたちが。

 

「ネプチューンマン!」「ネプチューンマン!」「ネプチューンマン!」「ネプチューンマン!」「ネプチューンマン!」「ネプチューンマン!」「ネプチューンマン!」「ネプチューンマン!」「ネプチューンマン!」「ネプチューンマン!」「ネプチューンマン!」「ネプチューンマン!」

 

 口々にネプチューンマンの名を唱え、大音声(だいおんじょう)の応援となってウォーキューブに届けられる。

 

『あ――っとカオスを皮切りに、相棒のキン肉万太郎が! 新世代超人(ニュージェネレーション)の若者たちが! 伝説超人と呼ばれるアイドル超人軍の面々が! そして多くの観客たちが! ネプチューンマンに大声援を送っている――っ!』

 

 この会場に集った人々のネプチューンマンへの心象は様々だろう。

 宇宙超人タッグ・トーナメントでの彼の暴虐を知る者、実際にその恐怖に晒された者、圧倒的な実力に魅了された者、年齢を感じさせぬ動きに勇気づけられた者……形は違えど、今この一瞬においては心は同じ。

 ネプチューンマンが立ち上がってくれることを望んでいた。

 

「勝て――っ! ネプチューンマン! あんたはオレたちビッグ・ボンバーズを最も恐れ、評価してくれた男……」

「そのあんたが時間超人を倒せばオレたちにも箔が付く! あんたが時間超人を倒した暁には、あらためて“究極の超人タッグ戦”決勝の席を懸けてリザーブマッチを闘おうじゃないか!」

 

 会場の一角ではネプチューンマンに正義超人界の秘密兵器とまで言われたカナディアンマンとスペシャルマンが声を振り絞る。

 

「ここにはいないセイウチンやチェック・メイト、アシュラマンもきっとあんたの勝利を期待している! 伝説超人の底力を見せてくれ!」

「てめえはオレたちスーパー・トリニティーズを破ったんだ! 若者のチャンスを奪った責任を果たせ、ロートル老害ジジイ――ッ!」

 

 ネプチューンマンと直接対決をしたジェイドとスカーフェイスもまた、自分たちを倒したレジェンドが激勝を収めることを強く望み声を張り上げた。

 

「あ……ありがてぇ。あれだけの老醜を晒したオレに、こんな大声援が送られるなんて~~っ」

 

 リング上、ネプチューンマンは耳に届く声を糧に、底に眠っていたパワーを呼び起こす。

 

「キン肉マンに……万太郎。ここはあえて、おまえたちの言葉を借りて奮起させてもらうとするぜ」

 

 もう駄目だ、と思ったところからの逆転劇。

 それを言い表す適切な言葉を、ネプチューンマンはよく知っている。

 

「火事場の……クソ力~~~~っ!!」

 

 キン肉マン、そしてキン肉マンⅡ世から借りたその言葉を高らかに叫び、ネプチューンマンはついに2本の足で立ち上がる。

 彼らのようなスーパーヒーローに――“主人公”になるために!

 

『ネプチューンマン、皆の万感の思いを受け止め立ち上がった――っ!』

 

 脳天から血を垂れ流し、仮面を割られながらも、リング上の男は正義超人ネプチューンマンとして在り続ける。

 そんな対戦相手の勇姿を見て、ライトニングは憤慨の意を表した。

 

「ふざけるな――っ! どんだけ粋がったところで、体力や傷が回復するはずはない! おまえはもはや死に体の……幽霊のようなもの! それに対し、オレは肉体時計逆回転で心身ともに万全の状態だ――っ! こんな根性だけで立ってるようなジジイに負けるか――っ!」

 

 正義超人の友情パワーなど、火事場のクソ力など、まやかしだ!

 それを証明するため、ライトニングは左手の鎌を構え突進する。

 

「“煮えたぎる鎌(ボイリングシックル)”――ッ!」

 

 正面から向かってくる殺意の塊に、ネプチューンマンは怯まない。

 

「ライトニングよ。おまえはここ一番というところでその鎌に頼りすぎる」

 

 あと一撃でもくらえば今度こそ死に絶えてしまうかもしれない――そういった恐れを経験でねじ伏せ、今この瞬間に取れる最適な行動を取る。

 すなわち、飛び蹴りだ。

 

『ネプチューンマン、“煮えたぎる鎌”を恐れることなく向かってきたライトニングの顔面にジャンピング・ニーパットを叩き込んだ――っ!』

 

 凶気の鎌が届くその前に、顔面に膝を入れ叩き潰す。

 鮮血を散らしながら下がるライトニングと、華麗に着地してみせるネプチューンマン。

 

「刈り取ってみろ――っ。このオレの左腕を――っ」

 

 屈強な筋肉のついた左腕を誇示し、狙ってこいと挑発する。

 

「お望み通りに……切断してやる――っ!」

 

 その左腕を刈れば勝負は決したも同然。

 ライトニングは挑発を真っ向から受け、再び煮えたぎる鎌で斬りかかった。

 

「硬度10! ダイヤモンド・アーム!」

 

 ネプチューンマンは逃げず、光り輝く左腕を振りかぶった。

 

喧嘩(クォーラル)ボンバ――ッ!」

 

 煮えたぎる鎌と喧嘩ボンバーが、お互いのターゲットを破壊せんと同時に放たれた。

 そして、結果は――

 

『あ――っとネプチューンマンの喧嘩ボンバーとライトニングの煮えたぎる鎌が正面衝突を起こし……なんと、ネプチューンマンの左腕がライトニングの鎌を粉々に打ち砕いた――っ!』

 

 生身のラリアットが鋼鉄の刃をぶち折るという、凄まじい出来事が巻き起こった。

 

「ジョワ~~ッ、バカな~~っ」

 

 ライトニングは砕かれた鎌を見て驚愕に眉をひそめる。

 ネプチューンマンはその隙に背後へ。

 両腕を捕らえ、速やかに後方へ体重移動。

 

『ネプチューンマン、後方からライトニングの両腕をクラッチし……オースイ・スープレックスで投げつける――っ!』

 

 後頭部をキャンバスへ強打したライトニングは、すぐには立ち上がれまい。

 

「休む間は与えん!」

 

『ネプチューンマン、ふらつくライトニングの体をくの字にして抱えようとする――っ』

 

 ライトニングは肉体時計逆回転で全快したばかり。

 怒涛の連続攻撃で攻め立て一気にKOまで持っていかなければ、またすぐに回復されてしまうだろう。

 

「ヌゥ……エヴォリューションマウスピースストレート! アクセレレイション!」

 

 ライトニング自身もそれがわかっているからこそ、出し惜しみせずエキゾチック物質を放出した。

 黒煙が頭部より立ち上り、その身が液状化していく。

 

『い……いや! ライトニング、ネプチューンマンに完全に抱えあげられる前に体が溶けて消えていく! これはコンマ数秒先の未来へ移動するアクセレレイションだ――っ!』

 

 ネプチューンマンが技に入るよりも先に、ライトニングの体は完全に消えてしまった。

 

「グウゥ~~ッ」

 

『ネプチューンマン、もはやひっつき虫作戦を決行するだけの体力は残っていないか!? ライトニングを逃がしてしまう――っ』

 

 今の攻防、本来ならウォーズマンの考案したひっつき虫作戦で自身も同時にアクセレレイションすべきだったが、疲労のせいか判断も動きも遅れた。

 ライトニングはすぐに現れるはず――ファイティング・コンピューターと呼ばれたウォーズマンならまだしも、疲れの見えるネプチューンマンではその出現場所を正確に予測することはできない。

 

『あ――っとそしてライトニングはネプチューンマンの背後に現れた――っ』

 

 ネプチューンマンは簡単に背後を取られ「クッ」と悔しげな声をもらす。

 ライトニングはそんなネプチューンマンの胴に腕を回し、がっちりとホールドした。

 

「世の中には二通りのタッグチームしか存在しねえ! 墓穴を掘るチームと墓穴に無惨に葬られるチーム……おまえら“新星・ネオ・イクスパンションズ”は無惨に墓穴に葬られるチームだ――っ!」

 

 後方に反り返りながら跳ぶ。

 

『ライトニング、大きな弧を描きネプチューンマンをバックドロップで投げる――っ!』

 

 ライトニングらしからぬ大げさなムーブでのバックドロップは、相手の脳天をキャンバスに叩きつけるためではない。

 相手の脳天をキャンバスへ“突き刺す”ためだ。

 

『バックドロップの衝撃でネプチューンマンの頭がキャンバスにめり込み……追い打ちとばかりにライトニング、両足もキャンバスにめり込ませる――っ』

 

 首と両足をキャンバスにめり込まされたネプチューンマン。

 そして、そこは奇しくもコーナーのすぐそば。

 ライトニングはロープをのぼり、逆立ち体勢になる。

 

『ライトニング、ロープ上で倒立し左右の脚を巨大な一本のニードルに変形させた――っ!』

 

 天井へ向けてピンと伸ばした両足は、時計の針を思わせるレッグ・ニードル。

 直下には、首と足をキャンバスに固定されブリッジのような状態になったネプチューンマンがいる。

 

「あ……あの体勢は“死時計の刻印(デスウォッチ・ブランディング)”!」

「まさか、ツープラトン技をひとりで!?」

 

 ロビンマスクとケビンマスクが即座にライトニングの狙いを読み取り、危機感を募らせる。

 死時計の刻印。

 本来はパートナーであるサンダーが相手を捕らえておかなければ実現不可能なツープラトンだが、ライトニングはそれをキャンバスを上手く使い再現しようとしていた。

 

「ぜ……絶対にこの一撃で決める~~っ。ト……トロフィー球根(バルブ)を手に入れ……完全無比(コンプリート)超人となるために……」

 

 その額には、おびただしい量の汗が。

 額だけではなく、全身各所からも。

 

「ジョ……ジョワ~~ッ」

 

 泣く子も黙る悪行・時間超人から情けない声が漏れ、ピンと伸ばしておかなければならないはずのレッグ・ニードルがグラリと揺れた。

 

『お……お――っとすべての技のセットアップが完璧なライトニングが、“死時計の刻印”の体勢を崩した――っ』

 

 ロープをしっかりと握り倒立体勢を維持するが、ライトニングの顔は弱々しい。

 まるで「ひとりでは無理だ」と今にも弱音を吐きそうなほどに。

 

「バ……バカやろう。なにをしてやがるサンダー。“死時計の刻印”はオレとおまえの“阿吽の呼吸”があって初めて炸裂する殺人技だろう……台座役のおまえがしっかりオレを支えんから体勢が崩れてしまうんじゃねえか~~っ」

 

 役立たずの相棒に悪態をつくが、その表情は「今すぐ起き上がりオレを助けてくれ」と言っているようだった。

 

「ライトニング……おまえ……」

 

 ネプチューンマンは首をキャンバスにめり込まされながらも、ライトニングの悲痛な声を確かに耳にした。

 肉体時計逆回転により傷は塞がり、体調は万全……されど心は疲弊したまま。

 特に信頼を置いていた兄弟がリタイアし、ひとりで闘わなければいけないという事実はライトニングの心をひどく蝕んでいる。

 

「ハッ……オレはなにを血迷ったことを」

 

 ややの間を置き、ライトニングは表情を作り直した。

 これからネプチューンマンを殺す!という意気を込め、凛々しくレッグ・ニードルを伸ばした。

 

「デ……“死時計の刻印”はオレひとりでも十分撃てる!」

 

『ライトニング、崩れかけた“死時計の刻印”の体勢を再び立て直す――っ!』

 

 このまま12時の針が6時に向かうように振り下ろせば、ネプチューンマンの心臓は串刺しとなる。

 サンダーがいなくともやれる!

 孤独な時間超人はそれを証明するため、いよいよ“死時計の刻印”の角度を傾ける。

 

「ひ……人は自分が窮地に陥ったときに本音が出るものだ。高慢な完璧超人ならいざ知らず……おまえの口からサンダーに対して絆や友情を感じられるセリフが聞けるとはな……」

 

 ネプチューンマンは言い、ライトニングの胸中にわだかまる想いを理解した。

 

「ぬかせ~~っ! 意識が混濁中の戯言を本気にするな――っ!」

 

『ライトニング、“死時計の刻印”のニードルをネプチューンマンの心臓めがけ振り下ろす――っ!』

 

 ライトニングはネプチューンマンの言葉を苦し紛れの負け惜しみと解釈し、構わず“死時計の刻印”を放った。

 だが――

 

「意識混濁だと!? さっき体調万全になったばかりのおまえが……苦しい言い訳だな――っ!」

 

 キャンバスにめり込んでいるのは首と足だけ。

 ネプチューンマンはフリーになっていた両手をキャンバスに立て、力を入れることで首と足を抜いた。

 すぐさま防御行動に移る。

 

『あ――っとネプチューンマン、自らの両足をキャンバスから抜いて……ライトニングの両足ニードルを挟み込み“死時計の刻印”をディフェンスした――っ!』

 

 レッグ・ニードルは心臓には届かず、何の変哲もない元の両足に戻る。

 

『そのままライトニングを足の力で投げ飛ばす――っ!』

 

 ロープ上での倒立という不安定な体勢にあったライトニングは、たやすく投げ飛ばされた。

 反撃のチャンスだ。

 今度はネプチューンマンがロープにのぼり、反動を使って大きく飛んだ。

 

「的を絞れば畏怖を捨て」

 

 宙返りの要領で身を回転させ、勢いをつける。

 その過程で両腕をビシッと伸ばし、両掌を合わせて指先も伸ばした。

 

「身は弩弓のように。拳は矢の様に、回打し」

 

 ギュルギュルと弾丸のように回転するネプチューンマン。

 狙うは、投げ飛ばされた先で体勢を整えようとしているライトニングだ。

 

「敵を穿つ! くらえ、ウォーズマン譲りのマッハ・パルバライザ――ッ!」

 

『ネプチューンマン、全身をスクリューの如く回転させライトニングを穿たんと突撃する――っ!』

 

 必殺の超人削岩機が、ライトニングの体を貫かんと迫る。

 

「アクセレレイション!」

 

 判断早く、ライトニングは加速能力を使ってこの一撃を回避しようとした。

 だがただの突撃技ならともかく、回転するマッハ・パルバライザーには通用しない。

 

「無駄だ――っ! この回転の力はおまえのエキゾチック物質を風圧で散らし無効化する!」

 

 回転は風を生み、風は黒煙を吹き飛ばす。

 吹き飛ばされた黒煙――少量のエキゾチック物質では加速能力を満足に行使することができず、回避は不可能。

 

「ええい、こういったものは下手に避けようとするから逆にダメージを負ってしまうんだ! ならば正面から受け止めてしまえば!」

 

 通用しないのであれば次の策に打って出るまで。

 強力な能力を持っていようともそれにこだわり続けるのは悪手。

 ライトニングはアクセレレイションに見切りをつけ、大胆にも正面からマッハ・パルバライザーを受け止めようとした。

 

『ライトニング、ネプチューンマン渾身の一撃を素手でキャッチし、その突撃を阻止した――っ!』

 

 やはり、読みどおりだ――とライトニングはほくそ笑む。

 ネプチューンマンの体力はもはや風前の灯。

 こんなウォーズマンのモノマネ技では、そもそもの威力が不十分なのだ。

 だからこそこんなに簡単に受け止めてしまえる。どうだ、まいったか――と勝利を確信したところで。

 今度はネプチューンマンが笑んだ。

 

「かかったなぁ~~っ」

「な、なに!?」

 

 技を受け止められ、なぜ笑う!?

 それもまるで、罠にかかったとでも言わんばかりのセリフを添えて。

 そこまで思ったところで、ライトニングは気付いた。

 

「ジョワ~~ッ。てめえ、この両手にいつの間にか装着している篭手は~~っ」

 

 見事にキャッチしてみせた、ネプチューンマンの両手が――“黒い”。

 この黒色は彼の肌の色ではなく、手の甲に付けた装備品によるものだ。

 ライトニングはそれがなんなのかを瞬時に察し、が、遅い。

 ネプチューンマンの両手を掴む両手が、計8本の突起によって貫かれた。

 

『なんとネプチューンマンの拳の先から鋼鉄の爪が突き出し、一度止まった体が再び回転する――っ! その様はまるでウォーズマンの……』

 

 ネプチューンマンがリタイアしたウォーズマンをリング外へ運び出す際、こっそり拝借していたベア・クロー。

 思わぬ隠し玉に意表を突かれたライトニングは咄嗟に手を離すが、それによりネプチューンマンが再回転。

 ベア・クローを装着した状態で放つマッハ・パルバライザーはマッハ・パルバライザーにあらず。

“世界五大厄”の片翼であるサンダーを仕留めた必殺技(フェイバリット)が、残ったライトニングにも炸裂する。

 

「掟破りの二刀流スクリュー・ドライバーだ――っ!」

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