ネプチューンマン・リビルド “究極の超人タッグ編Ⅱ”   作:速筆魔王LX

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第095話 受け継がれし技巧!至高の関節技対決!

『万太郎、クロエを開脚させた状態で脳天をキャンバスに突き刺した――っ! これはキン肉マンの48の殺人技のひとつ“風林火山”を彷彿とさせる連続技だ――っ!』

 

 相手超人を“イ”“ロ”“ハ”の三文字を象った技に極める“イ・ロ・ハ地獄巡り”。

 この技を間近で見たことがあるジェイドとスカーフェイスは、確かな手応えを感じていた。

 

「オレたちの同期、クリオネマンをKOした万太郎のオリジナル必殺技(フェイバリット)!」

「こりゃあ……早くも決まったんじゃねえか?」

 

 ふざけた技だが威力は抜群。

 だからこそ早期KOの期待が高まり、ふたりの作った握り拳に汗が溜まる。

 

『クロエ、文句なしのダウーン! まさか……早くも一本先取となってしまうのか~~っ!』

 

 仰向けに倒れたクロエはピクリとも動かず、ダウンカウントが始まる。

 

「立て――っ! クロエ、貴様イクスパンションズのブランドを地に落とすつもりか――っ!」

 

 ネプチューンマンはパートナーの不甲斐ない姿に激怒し、バンバンとキャンバスを叩いた。

 

『ネプチューンマンがエプロンサイドから檄を飛ばす! しかしクロエ、まったくのノーリアクションだ――っ』

 

 動かぬクロエに、激昂するネプチューンマン。

新星(ノヴァ)・ネオ・イクスパンションズ”の様子からしても、クリーンヒット間違いなし。

 

「ウヒャア~~ッ、久しぶりに出したけど会心のイロハ地獄巡りだ。こりゃ本当に秒殺しちゃったんじゃないの~~っ?」

 

 モンゴルマンやバッファローマン、ロビンマスクに続き、ついにウォーズマンまで倒してしまったか~と浮かれる万太郎。

 しかしクロエという超人をよく知る男は声を張り上げる。

 

「油断するな万太郎! クロエはまだ生きている!」

 

 コーナーのケビンマスクが万太郎に危機を伝えるが、本人は「へ?」ととぼけた表情を見せた。

 その一瞬の隙を、ダウンしていたはずの超人が突く。

 

『あ――っとよもや失神したかと思われたクロエ、体を後転させながら万太郎の片足を取った――っ』

 

 油断していた万太郎の右脚を両手で掴み、さらに両足も絡ませるクロエ。

 そこから一気に万太郎の体を倒し、足首と膝を同時に極めれば――

 

「クロエローリング・ピアートクラビィーチ!」

「ウギャア~~ッ!」

 

 クロエのオリジナル関節技が完成し、万太郎の口から悲鳴が上がる。

 

『クロエのダウンは擬態だった! 転ばせた万太郎にオリジナルのヒールフックを極め……足首とヒザに大ダメージを与える――っ!』

 

 一瞬の攻守逆転劇。

 さっきまで怒り狂っていたはずのネプチューンマンは、一転して落ち着いた挙措でリングを見ている。

 

「グフフ、演技は超人レスリングの花よ」

 

 クロエのダウンも、ネプチューンマンの激怒も、すべては万太郎の油断を誘うため。

 万太郎が間抜けといえばそれまでだが、目を見張るべきは技を仕掛けたクロエの技量にこそある。

 

「なんという電光石火の早業! あやつ、とんでもない関節技の名手だぞ――っ!」

 

 客席のキン肉マンも太鼓判を押した。

 このクロエローリング・ピアートクラビィーチは、足首は両手で、膝は絡ませた両足で極めている。

 人間界の格闘技ならば禁じ手にされているだろう危険性の高い技だ。

 それをダウンさせられた状態から反撃として繰り出すなど、使い手の尋常ならざる技量が窺い知れるというもの。

 

「ウアァア――ッ」

 

『万太郎の苦悶の叫び! クロエ、容赦なく右足を折りにかかる――っ!』

 

 いかに筋肉量に優れたキン肉万太郎といえど、関節に筋肉はつけられない。

 折れるときは折れる。技の危険度は他の超人と変わらなかった。

 だが関節を守る周りの筋肉は他の超人よりも発達している――攻略の鍵は、そのアドバンテージを活かすことだ。

 

「ダリャ――ッ!」

 

『しかし万太郎、右足を折られることを恐れず大胆に体を回転! 技から抜けた――っ!』

 

 一歩間違えれば足首と膝関節が破壊されかねない対処法だったが、このクロエの関節技に躊躇はそれこそ命取りになる。

 

「逃さん」

 

 振りほどかれたクロエだったが、再び脚を掴み直し立ち上がろうとする万太郎を制す。

 右手で万太郎の右足首を掴み、左足は相手の左足にかけ固定。

 さらに右膝に右膝を当てて押せば、今度は立ち上がることはおろか転がることすらできなくなる。

 

「ミハイルカーフスライサ――ッ!」

 

『再度万太郎を捕らえたクロエ、股裂き効果を合わせた変形のカーフスライサーで右のヒザを破壊しようとする――っ!』

 

 万太郎の股関節と膝関節がメキメキという異音を奏で、顔から血の気が引いていく。

 苦悶の声は消えた。

 真に強力な関節技は、痛みを訴える声すら出なくなるのだ。

 

『凄まじい関節技の練度! こんな超人が隠れていたとは、世界は広い――っ!』

 

 キン肉万太郎にネプチューンマンとド派手な技を多く持つふたりが出る試合で、まさかノーマークの超人がこんな華麗な関節技が見せてくれるとは。

 玄人好みの展開に古参超人レスリングファンが熱狂し、トーナメント・マウンテンにクロエコールが響き渡った。

 

「どうだ万太郎? ギブアップか?」

 

 万太郎から抵抗しようとする力が失われていくのを実感しつつ、クロエが問う。

 極悪極まりない関節技の最中にもたらされた慈悲に、万太郎はすがるような思いで声を絞り出す。

 

「ギ……ギブア……」

 

 しかしそれを口にしたら最後、敗北の烙印を押されてしまう。

 それでも、この苦しみから逃れられるのなら――

 

「万太郎――っ!」

 

 万太郎の心が折れかけたそのとき、パートナーの強い叫びが耳に届いた。

 

「手を伸ばせ万太郎! おまえがもう少し伸ばせばオレの手が届く!」

「ケ……ケビン!」

 

 エプロンから身を乗り出して手を差し出すケビンマスク。

 そう、これはタッグマッチ。

 つらいときは頼りがいのある味方がつらさを肩代わりしてくれる。

 

 下半身はこれでもかと痛めつけられているが、幸いにも両腕はフリー。

 万太郎の手がケビンの手に触れる。

 

『あ――っと万太郎、技をかけられたままケビンマスクにタッチした――っ』

 

 即座にロープへ登り、頂点からジャンプ。

 体勢を逆さにし、リング内へと降下する。

 

「トアタラ――ッ!」

 

 掛け声と共に、頑丈な鉄仮面をクロエの頭部に突き刺した。

 

『ケビンマスク、落下式のヘッドバットでクロエを強襲し万太郎を救助成功――っ!』

 

 カーフスライサーから脱出した万太郎はキャンバスの上を転がりリング端に避難。

 代わりに参戦したケビンマスクがクロエに向き合う。

 

「万太郎! おまえのおかげでオレの中の眠っていた闘争本能がだいぶ目覚めてきやがったぜ! このケビンマスク、さっそく汚名を返上させてもらう――っ!」

 

 意気込むケビンだったが、万太郎とてさんざん関節を痛めつけられたお返しがしたい。

 だからこそ再びリング中央に舞い戻り、クロエの背後に回った。

 

「おっとケビン、その前にボクらも見せてやろうぜ! タッグの醍醐味……ツープラトンを!」

 

 両腕でクロエの胴を捕らえ、後ろに反り投げようとする。

 

『万太郎、クロエをバックドロップの体勢に捕らえた――っ!』

 

 その際パートナーのケビンマスクに目配せを怠らない。

 ケビンは万太郎の意図を察し、再度ロープへ飛んだ。

 

『ケビンマスク、そのシーンに合わせロープから跳躍する――っ!』

 

 ケビンの体が浮き上がったのを確認し、万太郎がバックドロップを発動。

 同タイミングで空からケビンが降下し、クロエの首に両手を引っ掛けた。

 

『なんと万太郎がバックドロップを極めると同時、クロエの首にケビンマスクのネックブリーカードロップが突き刺さった――っ! なんという豪華コラボレート技だ――っ!』

 

 バックドロップにネックブリーカードロップを合わせた技の威力は、単純に2倍。

 超人レスリングの場では見慣れた単発技も、かけ合わせることで豪勢なツープラトン技へと進化する。

 技と技のマリアージュ、タッグ同士の絆の証明――これこそタッグマッチの醍醐味だ。

 

「よっしゃケビン! 追撃は任せるぜ!」

「言われずとも!」

 

ザ・坊っちゃんズ(ヤングマスターズ)”念願のツープラトンを決めたところで、万太郎があらためてリングアウト。

 相棒の調子が戻ってきたのは確認できた。ここからがケビンマスクという超人の本領発揮だ。

 

『ケビンマスク、クロエを強引に立たせ……両手首を持ち、そのままクロエの頭上で体を半回転させる――っ!』

 

 掴んだ両手首を軸に、ダイナミックなムーブでクロエと背中合わせになるケビンマスク。

 

『そして、自らの両足をクロエの両脚にフックさせた――っ』

 

 そのままキャンバスへは着地せず、両足を両大腿部に引っ掛けることでクロエの背中に乗った。

 必然、クロエは前傾姿勢になりながらも両腕を後方にめいいっぱい引っ張られる形となる。

 これぞ、ケビンマスクの持つ技の中でも最高難度を誇るエクストリーム・サブミッション――

 

「OLAP――ッ!」

 

『こ、これは――っ!? 20世紀の現代では見たこともない新技だ――っ!』

 

 見た目にも衝撃度の高い関節技の発動に、歴戦の雄であるザ・マシンガンズも驚嘆。

 

「このケビンマスクの技は大腿・腰骨・上腕・三頭筋・鎖骨と肉体のすべてをくまなく極めまくっている!」

「まるでウォーズマンのパロ・スペシャルを前後逆向きで仕掛けたような……どういうバランス感覚しとるんじゃ~~っ!?」

 

 テリーマンとキン肉マンの驚きの裏で、ロビンマスクは静かに震えていた。

 

「こ……これぞ我がロビン王朝(ダイナスティ)にだけ伝わる至高の関節技“OLAP”……」

 

 それというのも、ロビン王朝門外不出の秘技を未来の息子が実戦で披露してみせたため。

 ロビンはバラクーダとしてウォーズマンをスカウトした当時、彼にこのOLAPを会得させようと試みた。

 だが結果は上手くいかず、20世紀では使い手不在の幻の技とされていたが――まさかこんなところで実物を見ることになるとは。

 

「我が弟子ウォーズマンでも修得できなかった高等技を……我が息子ケビンマスクは21世紀でマスターしていたのか――っ!」

 

 感動に打ちひしがれると同時に、息子の底知れぬポテンシャルに恐れおののくロビン。

 その間も、ケビンはより深くOLAPを極めていく。

 

「あんたにもらった最高のギフトだ。お返しの品としてはいささか乱暴だが……全身の骨をバラバラにしてやるぜ」

 

 技をかけている相手はOLAPを教えてくれた実の師匠。

 だからといって手を抜く理由にはならず、むしろだからこそ本気で関節を破壊しにいくのだ。

 クロエは全身の関節が悲鳴を上げているのを理解しながら、それでも冷静に言葉を紡ぐ。

 

「す……素晴らしい。脚のフックに腕の取り方、そしてなにより体重移動のバランスが絶妙だ。どこに出しても恥ずかしくない、百点満点のOLAPだぜ……」

 

 弟子の技を直接受けることで、師としての称賛を送る。

 超人格闘技の師匠としては立派な振る舞いかもしれないが、ケビンマスクは気に入らなかった。

 

「高評価感謝するぜ! だが今のあんたの立場をわかっているのか!? 技を教える側ではなく技をかけられる側……すなわち、選択肢はギブアップか全身バラバラの二択しかねえ――っ!」

 

 OLAPは当時無敗だったキン肉万太郎の初敗北を決定づけた技。

 そんな難攻不落の関節技の餌食に遭いながら、師としての余裕を見せるなど……いけ好かないにもほどがある!

 

『ケビンマスク、後方に体を反らしさらなる重量負荷をかける! クロエの体がどんどん前のめりに沈んでいくぞ――っ!』

 

 このままでは両腕が捩じ上げられ、骨がへし折れてしまうだろう。

 いやそれだけでは終わらず、背中に乗ったケビンに組み伏せられ、キャンバスを舐める結果になるのは必定。

 

「パロ・スペシャル・ジ・エンドでKOされたわたしだからこそわかる! あれは火事場のクソ力を以てしても脱出不可能な代物……あれがケビンマスク! ウォーズマンの弟子というのも頷ける実力だ――っ!」

 

 キン肉マンは自身の経験からOLAPによる“ザ・坊っちゃんズ”の一本目先取を確信。

 脱出不可能と判断したのは外野だけではなく、技をかけられている張本人も目の前の敗北を受け入れようとしていた。

 

「さ、さすがはロビン王朝の秘伝……悔しいが、術理を熟知しているオレでも脱出は不可能だ……こ、このままでは……成すすべもなくKOされてしまう……」

 

 今にも息絶えそうな声で言うクロエだったが、締めの言葉としてこう続ける。

 

「だがそれは、シングルマッチならの話」

 

 シングルマッチなら――が、これはタッグマッチ。

 その場合はどうなるというのか?

 答えはケビンの視界に立つネプチューンマンが握っていた。

 

『あ――っとケビンマスクがクロエにOLAPを仕掛けるその目の前で、ネプチューンマンが不敵に見つめている――っ!』

 

 ロープを跨いだ先にいる男は、ケビンのことを闘うに値しないと審判した超人。

 しかしすでにその審判は覆ったのだろう。

 ネプチューンマンはニヤリと笑い、軽やかに跳躍した。

 

『ネプチューンマン、ロープを飛び越しジャンピング・ニーパットでケビンマスクの側頭部を穿つ――っ!』

 

「グアッ」

 

 頭部にいい一撃をもらい、衝撃で両手首のクラッチが外れる。

 もともと絶妙なバランス感覚で成り立っている立ち関節は外部からの衝撃に脆い。

 技は崩れ、ケビンはクロエの背中から落下してしまう。

 

『OLAP崩壊~~っ! タッグマッチはこれがあるから怖い!』

 

 ネプチューンマンはクロエを救助すると同時にタッチし、自らが前に出た。

 

「代わるぜクロエ。今のケビンマスクなら合格だ……こいつには一度“マスクハンター”ネプチューンマンの恐ろしさを味わわせてやりたいと思っていた」

 

 マスクハンター。

 ある時はマスク超人の仮面を、ある時は仮面のみならず顔面の皮を剥いでコレクションしてきた、恐ろしき超人の称号。

“前回”のことを深く反省し、今回の“究極の超人タッグ戦”では鳴りを潜めていたが……父と瓜二つの鉄仮面を見ているとどうしても左腕が疼いてくる。

 

『ネプチューンマン、ケビンマスクの背後に回り、チョークスリーパーホールドを仕掛ける――っ』

 

 両腕を首に回して絞める、単純なチョークスリーパー。

 もちろんネプチューンマンの仕掛けるスリーパーがただのスリーパーで終わるはずはない。

 形を維持したまま後ろに体重移動し、ブリッジ体勢を取った。

 

「地獄の三重刑その1――っ!」

 

『そのままスープレックスで投げた――っ!』

 

 チョークスリーパーをかけながらの反り投げ。

 頭部をキャンバスに激しく打ちつけると同時に、絞めている首にも衝撃を伝える。

 

「ゴフォッ……ぇが……っ」

 

 二重の衝撃はケビンマスクの喉を潰し、呼吸困難に陥らせた。

 

「ライトニング戦では相手がマスクマンではないがゆえアレンジ版となってしまったが……おまえが相手ならオリジナルの三重刑を披露することができるぜ――っ」

 

 お得意のスリーパー・スープレックスが決まり、ネプチューンマンはそこから繋がる次の技へと移行。

 ケビンマスクの鉄仮面を両手で掴み、グルンと回転させる。

 

『あ――っとネプチューンマン、ケビンマスクの被るマスクを裏返してみせた――っ』

 

 前が後ろへ、後ろが前へ。

 マスクというものは通常、前後逆向きに被ることはない。

 となると当然視界は失われ、ケビンは大混乱に陥る。

 

「ウアアア~~ッ」

 

 先ほどまで勝利目前だった男のものとは思えない悲鳴が響き渡る。

 

「グフフ……マスクの裏側に視界を確保するための穴は開いていない! 聴覚もまた同様……これが地獄の三重刑その2とその3よ」

 

 今のケビンは満足に喋ることもできず、目も見えず、耳も聞こえないはず。

 そんな状態では精神も乱れ、満足に闘うことなどとてもできないだろう。

 

『ケビンマスク、声と耳と目をトリプルで封じられ乱心してしまったか――っ! 明後日の方向に拳を振り続ける――っ!』

 

 こうしている間にもネプチューンマンが追撃を仕掛けてくるかもしれない。

 ケビンマスクはそういった恐怖心を振り払うためにもがむしゃらに拳を振るうが、ネプチューンマンはそれを嘲笑うかのごとく間合いの外から眺めていた。

 すべては狙い通り――地獄の三重刑の真価は、相手の精神を乱すことにある。

 

「今だクロエ! 仕掛けるぞ!」

「了解!」

 

 ネプチューンマンが合図を送り、一度外に引っ込んでいたクロエが再びリングに舞い戻る。

 その位置取りはネプチューンマンの隣ではなく、対角線上。

 間には乱心するケビンマスクがいた。

 

『あああ~~っ! ネプチューンマンとクロエがケビンマスクを挟み、左腕を高々と掲げた――っ! こ、これはまさか……ネプチューンマンが率いてきた歴代チームから継承されしツープラトン、クロス・ボンバーの体勢か――っ!?』

 

 ターゲットを間に挟み、前後から同時にラリアットをくらわせるツープラトン・オブ・ツープラトン。

“夢の超人タッグ戦”、“究極の超人タッグ戦”と、何度も猛威を振るってきたその技の前兆に、万太郎が危機を訴える。

 

「ま……まずい! 逃げるんだケビーン!」

 

 しかしマスクの前後を逆転させられたケビンには、その声は届かない。

 もちろん目で見て避けるといったことも不可能。

 これを見越しての地獄の三重刑だったのだ。

 

「無駄よぉ~~っ! 我が新パートナー・クロエももちろん光ファイバーの力を有している! 脱出不可なのはもちろん、迂闊にカットに入ろうものなら巻き添えをくらうぜ――っ!」

 

 そう言った直後、ネプチューンマンの左腕から光の管が伸びる。

 

「オプティカルファイバー・パワー!」

 

 対角線上にいるクロエの左腕からも光の管が伸び、間にいるケビンマスクの体を透過する形でネプチューンマンの管と繋がった。

 

『ネプチューンマンの左腕とクロエの左腕から光の管が伸び……ケビンマスクの体を貫通して連結! これはまさしく、“スーパー・トリニティーズ”や“世界五大厄(ファイブディザスターズ)”を葬ってきたイクスパンションズ必殺のツープラトンだ――っ!』

 

 ネプチューンマンとクロエが僅かに左腕を上げると、直線の形を取るオプティカルファイバー・パワーのレールも上へ。

 ケビンマスクの体は重力に逆らい、両足がキャンバスから離れた。まるで光の管に吊るされる燻製ベーコンがごとく。

 

「パートナーのピンチじゃぞ万太郎――っ! なんとかしろ~~っ!」

 

 クロス・ボンバーの脅威をよく知るキン肉マンが万太郎に野次を飛ばした。

 

「な、なんとかって~~っ」

 

 ケビン単独でクロス・ボンバーから逃れることは不可能だ。

 万太郎とてそんなことはわかっていたが、この技は外から助けに入れるような代物ではない。

“世界五大厄”のサンダーのように自身が割って入って身代わりとなるか?

 それとも“スーパー・トリニティーズ”のスカーフェイスのように自らも巻き込まれてダメージを分散させるか?

 

「スカー……」

 

 対策を考えている最中、友の姿が脳裏をよぎり、万太郎はウォーキューブの外を見た。

 キン肉マンたちと同じく、トーナメント・マウンテンの麓からこちらを見上げているスカーフェイス。

 超人レスラーとしてはまだまだ未熟だった14歳のあの頃、万太郎の前に立ちふさがった強敵の姿が――万太郎に天啓を授けた。

 

「あ……ある。イクスパンションズのクロス・ボンバーからケビンを救う術が……だ、だけどそれは……」

 

 思いついた対抗策は、ハッキリ言って奇策もいいところだ。

 いや奇策どころか、一歩間違えれば自爆……試合をここで終わらせることにもなりかねない。

 

「オプティカルファイバー・クロス・ボンバ――ッ!」

 

 そうこうしている間に、ネプチューンマンが技名を叫ぶ。

 

『ネプチューンマンとクロエ、クロス・ボンバーを発動――っ!』

 

“新星・ネオ・イクスパンションズ”のふたりが左腕を掲げたまま走り出した。

 

「ええい、迷ってられるか――っ!」

 

 万太郎は決断し、目の前のロープを掴んだ。

 

『なんだ~~っ!? 万太郎がロープを持ちリング外側に大きく飛び出した――っ』

 

 それを持ってリングの外へ飛び出し、ワイヤーの限界まで伸ばす。

 当然ロープは元の形状に戻ろうとし、万太郎の身を反対側――すなわちリングの中へと弾き飛ばした。

 

『凄まじい反動をつけてリングに舞い戻る――っ! そ、その先には~~っ』

 

 弓矢の要領で飛んでいく万太郎。その先端である頭部が狙うのは、ネプチューンマンでもクロエでもない。

 オプティカルファイバー・パワーにより身動きが取れなくなっているケビンマスクの背中だ。

 クロス・ボンバーが届くよりも早く、万太郎の頭はケビンの背中に突き刺さり、さらに両手首を掴んで技を完成させる。

 

「マッスル・ミレニアム――ッ!」

 

 ミレニアム――2000年を越えた未来、21世紀を象徴する新型フェイバリット・ホールド。

 スカーフェイスとの対戦で編み出した強力技を、万太郎はあろうことか味方であるケビンマスクに炸裂させた。

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