それは、悲惨だった。
ヘラの眷属には魔法をぶつけられ、仲間には吊し上げにされ、ゼウスの眷属は見ているだけ。フレイヤの所もそうだ。
ヘスティアの所なんかは、殺すような殺気を放ち、俺を見ている。魔法を放とうとしているエルフなんかもいる。
そう、今まさに、『駄犬──ベート・ローガ処刑祭り!誰が1番いい悲鳴出せるか大会!』の開催中であるのだ。
こうなったのは、少し前に遡る。
少し前、とある白うさぎにチートスキルが発現したり、とある女神が朝起きたら寝ていて一悶着あったものの、人生上映会は進んでいた。
『あ〜、朝ごはんたべてないや……』
くるくる、と体の内側から聞こえてきた音、ベルはとぼとぼ歩きながらそう独り言をこぼす。
『……!!?』
そんなことをしていたと思うと、いきなり怖い顔をして後ろを振り返る。
「どしたんだろ〜?」
「さあ?」
なんてロキ・ファミリアの面々や知らないものたちは思うが、フレイヤ・ファミリアや神連中なんかは心当たりがあった。そして、とある町娘の影が近づく。
『あの……』
『!』
「あ、あの子!」
「あのヤベー女……」
「ああ、七年前にいたあいつか。」
「?知っているのですか?」
「「思い出したくないな(ねーな)」」
「?」
不信感が募るリューだったが、とりあえず詮索することはやめていた。
『ご、ごめんなさいっ!ちょっとびっくりしちゃって……!』
『い、いえ、こちらこそ驚かせてしまって……』
2人とも謝る。
「しるさまぁ……」
「愚兎め。」
『な、何か僕に?』
『あ……はい。これ落としましたよ』
そう言って出すのは紫紺の色をした結晶の小さな魔石だった。それに焦るベル
『え、『魔石』?あ、あれっ?』
自分が身につけている小袋を確認する。
「白々しい。」
「全くだ。」
「あれがはにーとらっぷってやつね!」
「それは違うだろぉ!?」
「アリーゼ……」
「てかはにーとらっぷってなに?」
「しるかよ」
なんて言い合う。
『す、すみません、ありがとうございます!』
「べる様ァ……」
「コ、コンっ!?リリ様が怖いですぅ!!」
「リリルカ、ベルは悪くない……はずだ。」
「そこは断言してあげよっ!?リオン!?」
まあ、ヘスティア・ファミリアは結構いつも通りにふざけているが。
『『……』』
そして、ベルの腹の虫がなり、沈黙が流れる。
『うふふっ、お腹、空いていらっしゃるんですか?』
『……はぃ』
『もしかして、朝食を取られていないとか?』
ベルは目の前の少女、シルと目を合わせず、コクリ、と小さく頷く。シルは何か考える素振りををすると、一度建物の中に入り、また戻ってくる。
『これを良かったら……。まだお店がやってなくて、賄いじゃあないんですけど……』
『えぇっ!?そんな、悪いですよ!それにこれって、貴方の朝ごはんなんじゃ。』
なんて言っているが、見ているもの、特にシル──フレイヤと関わりが深いものたちは顔を青ざめる。なぜなら
「……シルぅ……ぁ……思い出すだけで…………バタッ……私は……だめ、なようだ……」
「リオンっ!?」
「おい、何やってんだよ……」
「黙れ、ライラ!貴方はあの苦し……いや!あの味を知らないから言えるんだ!」
「いや、本当に何があったんだよ」
「「「「「俺たちでも、遠慮したい」」」」」
「大概ですねぇ」
壊滅的な料理センスのリューや、女神絶対崇拝であるフレイヤ・ファミリアの幹部連中までもそういうことで、シルの正体を知っているものはその料理に戦慄する。
「んー、アイズと同じくらいなの?」
「ティオナ……!?」
「け、剣姫の料理は知りませんが……私は、シル以上を見たことがない……」
「うわぁ……」
「……」
あの狂信者ヘルンすら、黙って難しい顔をしている。でも、悲しいかな、この部屋には張本人がいるというね。
いつの間にか魔法を使い町娘になった美神は皆のところに近づいて言った。
「だったら、皆さんに一度私の料理を振る舞いましょうか?」
「「「「「───エ?」」」」」
「そうだ!ならミア母さんに頼んでお店に出してもらいましょう!リューにもバレンタインの時に手伝ってもらったし!私、上手くなったの!」
「「「「「What's up?」」」」」
「良ければ是非───」
「「「勘弁してくださいシル様ぁ(シル)!!」」」
「え〜、皆さん、酷いですぅ〜。」
悲しき定め、剛力彩芽、シルの料理を食べたいというものがいなかったのである。
『……それじゃあ、今日の夜に伺わせてもらいます』
「はっ!ベル様ダメです!!あの店にはポンコツむっつりエルフであるリュー様が!!」
「おいリリルカ!!訂正しなさい!私はポンコツでも、む、むっつりでもなぁぁぁい!!」
「
「ぬぁぁぁぁああああああ!!」
「あ、リオンが死んだわ!」
「やっぱり、こいつポンコツ度上がってんな。」
「この5年ただ歳をとっただけではないと思っていたが、買いかぶりだったな。」
「やっぱりな〜、末っ子は末っ子ってことか」
「だな。」
なんて言っているアストレア・ファミリアメンバー。そんなこんなしているうちに夜になり、ベルはシルの元へと訪れたのであった。
『ベルさんっ』
『……』
「ケッ」
「おい…リリ助……」
こいつ、さっきからなんかめちゃくちゃ機嫌悪くね?なんて思いながら。
『……やって来ました』
『はい、いらっしゃいませ』
そして、ベルにそう言うと、シルは入り口をくぐり、澄んだ声を上げる。
『お客様1名入りまーす!』
ベルはめちゃくちゃビクビクさせて、酒場ってこんなこといちいち言うの?なんて顔に出す。
『では、こちらにどうぞ』
『は、はい……』
「……ん?」
「どうした?アルフィア」
「いいや、見知った顔がいると思っただけだ」
「ああ……あいつか」
豊穣の女主人という酒場の中では、アルフィアとザルドがよく知った顔がいた。
『アンタがシルのお客さんかい?ははっ、冒険者のくせに可愛い顔してるねぇ!』
カウンターの奥から聞こえる声は皆もよく知ったもの出会ったろう。そして、それはザルドとアルフィアもであったのだ。
『何でもアタシ達が悲鳴をあげさせるほど大食漢なんだそうじゃないか!じゃんじゃん料理を出すから、じゃんじゃん金を使ってってくれよ!』
『!?』
そして、ベルは瞬時に後方にいたシルの方を向く。
『ちょっと、僕いつから大食漢になったんですか!?僕自身初耳ですよ!?』
『……えへへ』
『えへへ、じゃねー!?』
焦っているからか、口が悪くなっているベル。
「シル……」
「こえ〜、強かすぎんだろ」
「それも!ガネーシャだァァァァ!」
「ガネーシャ様、さっきから出番がないからってうるさい!」
「ごめんなさい!!」
そんな言うアホども。そして、一人ひっそり見ているアルフィア、それに近づく一人。
「…………」
「なにやってるの?」
「誰だお前は」
「私、ハルモニア!貴方は?」
「……アルフィアだ。」
「そう!いい名前ね!」
そう言うと、アルフィアの隣に座るハルモニア。
「何をしている?」
「なに?だめなの?」
「やめろ、めんどくさい」
「でも、ここが一番よく見えるのよ?」
「……好きにしろ」
そう言っている。そして、その時。
『団体のお客様ご案内にゃー!!』
「「「!!」」」
『……おい』
『(って────)』
「んげ……」
『おお、えれえ上玉ッ』
『馬鹿、ちげえよ。エンブレムを見ろ』
『……げっ』
そう、ロキ・ファミリアが豊穣の女主人に入ってきたのだ。周りの客はザワザワと、騒然としている。
『べ、ベルさん?』
「チッ」
「馬鹿め」
「ぶーぶー」
シルのことを無視して、アイズの方をガン見するべルにブーイングするフレイヤファミリア。
『……ベルさーん?』
「アルゴノゥトくん、なんかアイズの方向いてなーい?」
「んと、前……謝れてない、から?」
「(絶対に違うと思うけど?)」
「(絶対に違いますよ、アイズさん)」
「……」
「リューちゃん?オレを見たって、運命は変えられないぜ?てかオレのせいじゃないだろ?」
「いえ、神ヘルメスが一枚噛んでいる可能性を考慮した結果だと思います。」
「ヒド!?」
ヘルメスは不特定多数に睨まれている居心地の悪さに苦笑いを浮かべ、帽子のつばを手で持つ。
「……まあ、オレは、心当たりあるんだけどね」
「「「「は?」」」」
「なんなら、教えてもいい!オレだけしか知らない、彼の情報をね」
「チッ、教えやがれ!」
不敵な笑みを浮かべ、そう言うと、全員がこっちを向いた。その中でも、べルのことなんか眼中に無いアレンはヘルメスに掴みかかる。
「待ってくれ!……オレは正体は知っている、けど、帰れる保証なんてしないぜ?」
「……何が目的だッ」
「彼の目的はなに?ヘルメス」
「アストレア、あなたも気になるのか?」
その時、横から割って入ったのは女神アストレアだった。ヘルメスはアストレアが聞こうとするのが珍しいと思ったのかそう聞く。
「ええ、とても……リューが懸想しているべルという子も気になるのだけどね!」
「アッアア、アストレア様ァ!?」
「やっぱりリオン、あの子のこと好きだったのね!」
「……リオン、年齢差って考えたことある?ギリギリ事案じゃないの?」
「言ってやんなよアーディ、リオンはお年頃なんだからよォ」
「その歳(21)でお年頃なんて、お笑いですねぇ」
「笑うなァァァァァァァァァ!輝夜ぁ!ライラァ!!アリーゼもアーディも!そんな目で見ないでください!!」
その時
『そうだ、アイズ!お前、あの話聞かせてやれよ!』
「「「!」」」
とある駄犬の声が、モニターの中から聞こえてくる。それは、ロキ・ファミリアにとって、正直いい思い出がないもの、リューやシルの顔も強ばる。
『あの話……?』
『あれだって、帰る途中で何匹か逃したミノタウロス!最後の一匹、お前が5階層で始末しただろ!?そんで、ほれ、あん時にいたトマト野郎の!』
「むむむむむむむむむ……」
「リリスケ、そんな睨むなよ。今言っても仕方ねぇだろ」
「分かってますよ!そんなことぉ!!」
「リリ様、顔が怖いです!」
「誰がですか!!」
「自分の顔を見てください、りり殿ぉ!てか抑えてください!ロキ・ファミリアに喧嘩を売ろうとしないでください!!」
「止めないでください!」
「なーにやってんだ、君たちは」
「ヘスティア様も手伝ってください!」
「ヤダヤダ、│
そうして
『ほんとざまぁねぇよな。ったく、泣き喚くくらいだったら最初から冒険者になんかなるんじゃねぇっての。ドン引きだぜ、なぁアイズ?』
『……』
「…………」
周りがピリピリし始めてきた。アリーゼやアルフィア、ザルドにアーディ、その場にいなかったもの達ですら、すこしイラついていた。
『いい加減そのうるさい口を閉じろ、ベート。ミノタウロスを逃したのは我々の不手際だ。巻き込んでしまったその少年に謝罪することはあれ、酒の肴にする権利などない。恥を知れ』
『おーおー、流石エルフ様、誇り高いこって。でもよ、そんな救えねぇやつを擁護して何になるってんだ?それはてめぇの失敗をてめぇで誤魔化すための、ただの自己満足だろ?ゴミをゴミと言って何が悪い』
「ッ」
ヘディンの手に雷が現れ始めた。ヘグニも剣を構え始める。というか、マジでエルフたちが怖い。
『アイズはどう思うよ?自分の目の前で震え上がるだけの情けねぇ野郎を。あれが俺たちと同じ冒険者を名乗ってるんだぜ?』
『……あの状況じゃあ、しょうがなかったと思います』
『なんだよ、いい子ちゃんぶっちまって。……じゃあ質問を変えるぜ?あのガキと俺、ツガイにするならどっちがいい?』
『……ベート、君、酔ってるの?』
『うるせぇ。ほら、アイズ、選べよ。雌のお前はどっちの雄に尻尾振って、どっちの雄に滅茶苦茶にされてえんだ?』
やばい、エルフやべルガチ恋勢達(ヘルン筆頭)が武器を取りだしてきた。ロキ・ファミリアも加勢して。
『……私は、そんなことを言うべートさんとだけは、ごめんです』
「ざまぁ、ヴァナルガンド」
「ざまぁ、ベートローガ」
「ざまぁ、ロキ・ファミリア」
「お前たち、いつの間に居たんだよ。というか、ロキ・ファミリアはガチで関係ないだろ」
「「「うるせぇ!この後のこと考えたらざまぁだろ!」」」
いつの間にかいたブリンガル、アイズに振られたベートを酒の肴にしているガリバー四兄弟(アルフリッグを除いて)
『……じゃあ何か、お前はあのガキに好きだの愛してるだの目の前で抜かされたら、受け入れるってのか?』
『……っ』
『はっ、そんなはずねぇよなぁ。自分より弱くて、軟弱で、救えない、気持ちだけが空回りしてる雑魚野郎にお前の隣に立つ資格なんかありはしねぇ。他ならないお前がそれを認めねぇ』
そうして、言い放つ
『雑魚じゃあ、アイズ・ヴァレンシュタインには釣り合わねぇ』
そうして、ベルは立ち上がると、そのままの勢いで出ていく。それになんだなんだと見るやつらに、追いかける剣姫。
「【ジェノス・アンジェラス】」
「【カウルス・ヒルド】」
「【ダインスレイヴ】」
「【ルミノス・ウィンド】」
「【目覚めよ】」
以下省略
そんでもって、ヒリュテ姉妹につるし上げられ、ほんでもって、同じファミリアのやつからちゃっかり攻撃を受けて、アルフィアからはボコボコにされて、フィンからは苦笑された。アレンですら、アルフィアのボコボコにはドン引きしていたほどだ。
みんなモニターなんかそっちのけでボコボコにしている。
あとがき
うーん、最近、イラストずっと書いてる気がする……てか、悲しい事に新しい巻の特典貰えないのやばい……
のんびりと、更新してきますんででは