黒羊と炉心溶融の円舞曲   作:アベルシアロン

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モスコミュールは気が合わない

「ジン、あの子達は誰?」

 

ベルモットはジンと共に入ったバーにいた、見たことない二人組の男を指さした。

 

「知らねぇ。いつの間にかいた」

 

幹部や特別な上位構成員のみが場所を教えられる秘密のバー。ジンが知らないわけがない。しかも、ここはジンのお気に入りのはず。

二人はちらりとこちらの方を見ると何もなかったかのように話し始めた。

ジンはベルモットに見向きもせず二人組の男の内、青色のパーカーを着た方の隣に座った。

 

「随分入れ込んでるのね」

「……」

 

ベルモットはジンを一瞥して紫色のパーカーを着た男の隣に座る。機嫌を損ねてしまったようだ。

ベルモットでも扱いづらいこの男を絆した男が気になって仕方ない。

マティーニを頼んで紫色のパーカーの男に微笑みを向ける。男は困惑した顔でモスコミュールを傾けた。

 

「俺、女の人と話すの久しぶりなんだよね〜」

 

男はヘラリと笑いながら長い横髪を弄る。視線は一切合わない。

 

「あら、じゃあ名前から聞こうかしら」

「俺はヨウ。お姉さんは?」

「ベルモットよ。彼とは仕事仲間なの」

 

ヨウの目が一瞬細くなった。

ベルモットは手元のマティーニを最大限美しく見える角度で傾けた。

 

「彼ったらいつもそっけなくて。もう少し乗り気になってくれた方が面白みがあるのに」

 

ベルモットがため息をつくと、ヨウはにこりと拒絶の笑みを浮かべた。

 

「え?俺は嫌だけど」

「……何の話かしら」

 

急に話題が飛んでついていけない。一癖あるどころか話が通じないタイプだった。こういうのは自己中心的で相手をするのが面倒くさい。こんな男がジンの心を掴んだというのだから驚きよね。

ヨウはバーテンを呼び、笑顔を崩さないまま小声で言いつけると、マグカップをカラリと鳴らした。

 

「別に話題が逸れた訳じゃないよ?大丈夫?」

「ええ、何に対して嫌なのか聞きたかっただけよ」

 

ベルモットがマティーニを飲み干すと間髪入れず、前にグラスが置かれた。 バーテンはイエローパロットだとだけ言って、グラスを拭く作業に戻った。

 

「強いて言うなら全部かな」

 

ヒラヒラと手を振って、カウンターに肘をついた。あざとさがある行動だけれど、バーボンとはまた違った風に完成されている。

ベルモットはイエローパロットを見つめて、ヨウの方を見た。変わらず笑顔のままだ。

成程、"ご遠慮します"って事ね。

 

「分かった。これで最後にするわよ」

 

ベルモットがグラスを指で突くと、椅子が吹き飛ぶ音がして、バシャリと頭からモスコミュールを掛けられた。目の前には青色のパーカーの男がマグカップを持って、ゴミを見るような目でベルモットを見ていた。目にアルコールが染みて痛い。

 

「ちょ、ちょっと!」

「帰って」

「おーっと、ストップストップ。ね?」

 

ヨウが急いで立ち上がって男の肩を掴んだ。そのまま男の手を握る。マグカップが大きな音を立てて床に落ちた。

 

「烏滸がましい。仕事仲間ごときが、折角の……!」

「分かったから、ね。ここお店だから、落ち着いてよ」

「でも!」

 

男はヨウの方へ勢い良く振り返った。ヨウは先程とは違う慈愛の籠もった笑みをしていた。

 

「うん。俺だって嫌だったよ。だけど、ほら、大丈夫。俺もサワも無事でしょ?」

「そ、っか」

「うん。大丈夫だよ」

 

ヨウは男の頭を思い切りワシャワシャと撫でていた。男の方も満更ではないらしい。

 

「ユウくんは気が長いけどキレると怖いもんね〜」

 

ベルモットはバーテンから受け取ったタオルで一通り拭うと二人の方を見た。ユウと呼ばれた男はジンの後ろに隠れてしまい、ヨウは絶対零度の瞳でベルモットを見つめていた。

 

「クク、だから来るなと言っただろう」

 

ジンが煙を吐き出してニヤリと凶悪な顔で笑った。

最初から勝ち目はなかったらしい。

 

「はあ、そうならちゃんとそう言えばいいじゃないの」

 

ベルモットは溜息をついて席を立った。

今日は本当、ツイてないわ。

 

「じゃあ、また会ったらよろしくね」

「相応の態度を取らせて貰うけどね〜」

 

ベルモットはドアを開けて着替える為に車を呼んでセーフハウスへ向かった。

 

 

 

―――

あんな奴はラバに蹴られてしまえば良い。

 

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