修正しました。やばい。最近こういうの多い。
沖矢昴は珍しくバーのカウンターに座っていた。隠れ家的な店で店内が見渡しやすく、訳アリの人がばかりな上に多少五月蝿い為、誰にもバレないように紛れ込みやすく、稀に外で飲みたくなった時に重宝していた。それから、少しでも情報を仕入れたかったのもある。ここはアングラに入り切ってはいないが、グレーな店だ。
カランと音がしてドアが開く。入ってきたのは紫のパーカーとネクタイをした顔立ちの整った男だった。タイは緩く留めていて、シャツの第一ボタンを外していた。横髪が片方だけ長く、それが彼を少しチャラそうに見せていた。
彼の周りに人が何人か寄っていく。彼はここで好意的に見られているらしい。楽しそうに話をしている。たまに寄っていく人の中にそういう目線が混じっているが、大抵は返された視線で断られているが。
彼が前に一歩踏み出すと、道を開けるように人が避けていった。どさくさに紛れて彼に触れようとした手は思いっ切りはたき落とされていた。
それでも、彼の喋りと歩みは止まらず、にこにこと妖艶な笑みを浮かべていた。
「おわ、あんまり見つめないでよ〜。俺に興味持っちゃったりした?」
俺の方へと歩いてきた彼は、手を頬に当ててにこりと笑った。安室くんとはまた違ったあざとさだが、違和感は感じない。
「すみません。そういう意図は無かったのですがね」
「いいって。俺だってそのぐらいは分かるよ。観察的な視線だったし」
彼は俺の手元のグラスを認めると、肘をついて口角を上げた。四角い氷が店内の照明を反射させる。
「あんた、ウイスキーイケる口?良いじゃん。俺も飲も」
彼はバーテンに向かって手をひらりと揺らすと、俺の隣の席に座った。バーテンがこちらへ歩いてきて、彼へサテン生地の紫色の布を渡した。彼はズボンに布を結んで、布の先に指を巻き付けてくるくると遊んでいる。
「バーテン、マンハッタン」
普段は客の方へ行くのも面倒臭がるバーテンが気怠げに返事をしてカクテルを作っていく。彼は特別な客らしい。
しかし、マンハッタンはウイスキーに含まれるのだろうか?確かにウイスキーを使用しているが……。
俺は疑問に思いながら、グラスを傾けた。
バーボンの甘さとビターズの苦味が舌の上で程良く混ざり合う。
彼は俺の方を向いて、人好きの良い笑みをして俺のグラスを指差した。少し嘘っぽいが、悪意や害意などは感じられない。純粋に愉しんでいるようだ。
「てかさ、何飲んでんの?」
「オールドファッションドです。普段はロックなのですが、たまには気分を変えてみようと思いましてね」
「銘柄は?」
「ワイルドターキーですよ」
「へえ、センス良いじゃん」
彼はニヤッと笑いながらバーテンから渡されたマンハッタンを傾けた。
「俺、さっきまで結構苛ついてたんだけど、あんた見た瞬間パチッと消え失せちゃってさ。あんたって面白いよな」
ピンに刺さったマラスキーノチェリーを弄びながらマンハッタンを更に傾けていく。
「こんなに俺がワイワイ言われてるのに他人に聞くんじゃなくて、観察してただろ?」
彼は俺の方をじっと見つめた。
「あまり見られても困るのですが……」
パクリと、ピンに刺さっていたマラスキーノチェリーを口に放り込んだ彼は、ペロリと唇を舐め取った。
控えめに出ている舌が色っぽく見える。それでも、色白で薄暗い照明に映る喉仏は、男らしさを強調していた。周囲の誰かが唾を飲み込む。
生憎、俺にそういう趣味は無いが。
「ふーん。良さげじゃん」
彼は俺が最後の一口を飲み干したのを見ると、彼が指で三回カウンターを叩いた。すると、バーテンがグラスを俺の前に置いた。無色透明な酒にミントとライムが混じっている。
彼は横目で俺を見ながら、自分のグラスを弄んでいる。
「近付きの印にモヒート、なんてね」
「では、ありがたく……」
俺が口元へとグラスを運ぶと一瞬だけ異臭がした。現役FBIの鼻は誤魔化せない。
「これって、特別なレシピを使っていたりするのでしょうか?」
笑顔を崩さないで問いかけてみれば、彼は挑戦的に口角を上げて抑えきれない笑いが漏れた。
「ふふ、あっははは!ホント、あんた良い奴だわ!」
ただでさえ集まっていた視線が、一際厳しい物に変わった。しかし、彼は気にする事なく、その飛び抜けて魅力的なテノールを高く響かせて笑い続ける。
「ピッタリじゃない?うん」
彼は立ち上がり、モヒートを持ってカウンターの中に入ると、シンクの上で逆さまにした。手早く置いてあったミキシンググラスを手に取ると、二本の瓶を棚から取り出してグラスの中に入れてバースプーンでかき混ぜる。そして、それをカクテルグラスに移して、俺の隣の席に戻ってきた。
「
俺の前にグラスを置いて、不敵に口角を釣り上げる。
彼の釣り上がり過ぎた口の端が不気味だ。ニヤニヤと俺を見る瞳が薄暗い店内で妖しく光る。
「俺は、気紛れ猫の