退魔師退廃第一部ラスボス、阿九寺陰平。
彼はラスボスというだけあってそれなりに大きな野心を持って、とある計画の実行を目論んでいる。
彼の目的とは、ずばり「神格」を得ることだ。
この世界に存在するファンタジー生物は大きくわけて四つ存在する。「魔物」、「精霊」、「人」、そして「神」だ。
魔物は人に害を及ぼすファンタジー生物。精霊は人に害がないファンタジー生物。そして人はそのまんま人だ。
これらの区分は人が勝手に作ったものなので、ぶっちゃけ曖昧だしそんなに意味は無い。半人半魔だとか魔物か精霊か分からんやつとかもいるしね。
まあ、触手も悪魔も幽霊も悪そうな奴らは全部魔物で、逆になんかキラキラしてて神秘的な奴らは精霊だと思ってくれれば問題はない。
そして、魔物、精霊、人の
とにかく、神と呼ばれる存在、神格を有する存在というのはそうでない存在と比べて明確に違うのだ。
神はこの世の物理的拘束から解放されて、肉体を魂に隷属させる。
例えば俺のような神格のないパンピーがいくら神を殴ってその肉体を傷つけても、魂に傷がつかないためダメージが入らない。その場合肉体的な傷は一瞬で再生する。
神は魔術的価値から超越する。
神でないモノを対価としてどれだけ積んでも、魔術的価値は神とは釣り合わない。例えば地球を丸ごと対価にしても、神の身体の一部分ですら召喚できない。
とまあ、とにかく神とはそれぐらい隔絶した存在なのだ。
ちなみに、リュウマの中に封印されている魔物も実は神格を有している。そんなヤツを気軽に解放するんじゃねえ。
原作で阿九寺はその「神」になろうとした。具体的には、全校生徒を洗脳し、その尊敬を集めて信仰を生じさせたのだ。
彼は準備が整い次第、神になるための「儀式」を行う。
魔力が世に満ちる満月の夜に生徒全員を校庭に集め、洗脳した生徒達を円形に配置し魔法陣を作り、その魔力と命が尽きるまで祈らせるというものだ。
原作ではその計画は成功し、阿九寺は「神格」を得ることになる。ただし、信仰の集め方が人為的で無理やり過ぎたので、神になった後に力が暴走してしまい自我を失ってしまうのだが。
それが、退魔師退廃第一部ラスボスの最終形態だ。
原作では主人公が自分に封印された魔物を解き放つことにより倒していたが……リュウマが誰ともくっ付いていない現状ではそんなことをしたが最後、リュウマの身体が魔物に乗っ取られたまま永遠に戻らなくなり詰む。
当たり前だが、そんな儀式なんて行わせずに神になる前にさっさと倒してしまうのがベストだ。
作戦決行は今日だ。
「なあ契、ほんとにこの先に魔物出現の元凶がいるのか?」
「うん。魔力が確かにそう言ってる」
「でも、ここって生徒会室だろ?」
「ああ。魔力が確かにそう言ってる」
「いや、だから、阿九寺会長がそんなものを見逃すわけないだろ? やっぱり一回会長に報告した方がいいんじゃ……」
「馬鹿野郎! 魔力が確かにそう言ってるんだぞ!」
「あっはい」
「まあ契が言うならそうなのよ。私は契を信じてるわよ!」
またも原作でのバッドエンド選択肢「先に会長に報告する」を選ぼうとする筋金入りのバッドエンドスチルコレクターリュウマを無理やり説得し、最近やたらと俺への信頼が厚い深穂も連れて生徒会室を訪れる。
わざわざ阿九寺の討伐にこの二人を連れて来た理由は主に三つ。
一つ目は、倒れた俺の回収のため。恐らく今回、俺はとある自滅前提の奥の手を使うことになる。だから、瀕死の重症になった俺を保健室まで運ぶ役割がいる。
二つ目は、最悪リュウマの封印を解くため。恐らくここで阿九寺を討ち漏らすと、リュウマは阿九寺に完全に洗脳され、バッドエンドが確定する。なぜなら彼はチョロいからだ。そうなるくらいなら、リュウマの封印解除でワンチャンを狙う方がまだマシだ。
そして三つ目は、俺の奥の手の発動のためには
結構勘違いされやすいが、実はリュウマと深穂は強い。まともに2対1で戦ったら順当に俺が負けるくらいには強い。チョロ過ぎるが故に搦手に弱いという欠点があるだけで、真正面から正々堂々と戦えばこの世界でも上位の強さなのだ。
だからVS阿九寺戦の時に足手まといになるようなことはない。常に深穂に結界を張って貰えば不意打ちの心配もないしね。
「ここが怪しいね」
うろ覚えの原作の知識だと、確か生徒会室にある資料棚に仕掛けがあり、特定の手順を踏むことで隠し通路が出現するはずだ。
「……! 確かに、魔力探知するとこの向こうに空間があるわ!」
「おお、すげえ、俺にも分かる!」
やはりというか、ここ最近の触手まみれの学園生活で二人の魔力探知能力は上昇しているみたいだ。
とりあえず資料棚にある穴という穴に触手をねじ込むと、カチリと音がなり資料棚が動いた。うーん、ファンタジー世界なのに無駄にアナログ。
「お、おお……生徒会室にこんな通路があるとは……」
そこに現れたのは、岩肌に覆われた洞窟のような空間だ。当然うちの学園にそのような場所はないので、空間魔術を使ってどこかしらに繋げた空間だろう。
カツカツと無駄に音が反響する湿った洞窟を歩き進めると、その先には整備されていない洞窟に似つかわしくない、華美な装飾が施された重厚な扉が現れた。
俺たちが前に立つと扉が自ら開いた。その先は赤いカーペットや豪華なシャンデリアなどが揃った洋風の部屋があった。
そして、部屋の最奥、何やら怪しげな祭壇の前でたたずむ二人の影があった。森凛と阿九寺だ。
阿九寺はワイングラスに入れた赤い液体を飲んでおり、凛はその傍で手を前に組んだ状態で佇んでいる。
うわっすげえ悪役っぽい。
「阿九寺会長、それに凛も……こんな所で何を……?」
「そうだね。……ああ、そうだね、こんな所で……クク……クハッ……クハハハハハハハ!!」
堰を切ったように阿九寺が笑い出す。
「きゅ、急にどうしたんですか、会長……?」
「ああ、いやなに、少しおかしくてね。こんな状況になっても無垢に私を疑わない、
そうして、阿九寺はペラペラと彼が行った悪行と目論見について語り出した。聞いているこちらの方まで気持ちよくなるくらいの見事な喋りっぷりだった。
うんうん、やっぱり悪役ってのはこうじゃなくてはね。盛り上がってきたな。
「この学園そのものが私の贄なのさ! 私はここで神になる! そしてその力で支配を広げて、こんな薄汚い人間どもに満ちた世界そのものを私の支配下に置くのだ!」
「そんなことが許されるわけないだろ……! 深穂! 契!」
「ええ、結界はもう張ったわ!」
「こいつはここで倒さなきゃダメだ!」
さあ、ここからは戦闘パートだ。
俺は弱い。おそらく俺単体の戦闘能力は、一般人に毛が生えた程度しかない。
この世界の魔力は、気だとかオーラだとかチャクラとか呪力みたいに万能じゃない。魔力を身体に纏ったところで身体能力が上昇したり防御力が上がったりはしないのだ。
実は退魔師が扱う退魔術には自分の身体能力を上昇させるといったものがあるのだが、操魔師の扱う操魔術にそういった類の術はない。
そういうわけで俺の身体能力は、魔物や精霊といった人外と比べると赤子のようなものだ。
だから、俺が本気で戦う場合、結局全てを触手に任せることになる。
「来い」
使役している戦闘用触手を召喚する。
俺の声に応えて、周辺の空間から無数の触手が生えてくる。気分は無限の剣製だ。体は触手でできていた。
ドバッ
そんな効果音がふさわしいだろうか。大量の触手が濁流となり、阿九寺に押し寄せる。
それに合わせて滅魔刀を召喚したリュウマが突撃し、その刀を触媒に退魔術を放つ。
深穂は結界を張って俺と自分を護りつつ、リュウマと触手にバフがけだ。
「チッ……ああ、薄情だな君達は」
波となって押し寄せる触手を払い除け、リュウマの放つ退魔術を避けたり弾いたりしながら阿九寺が喋る。
その間に凛が阿九寺の後方から退魔術によって攻撃を仕掛けてくるので、触手によってそれを弾く。
「言っただろう、既に全校生徒は私の手の中にあると。君が私を攻撃するということは……
そう言うと阿九寺は腕を振るった。すると、部屋に用意されたスクリーンに学園の様子が映し出される。用意いいな……いや、普段からこのスクリーンで学園を監視していたのか。
「ふむ……そうだね。例えばこの子。君たちのクラスメイトだっただろう……?」
「おい、何をするんだ……!」
「君たちの立場を分からせるのさ!」
阿九寺が見せしめとして生徒の一人に自殺するように命令を下す。
「……なに?」
「敵によって洗脳済みの手駒を放置しておくわけないだろ。そいつの体には、触手の
単純な戦闘能力で勝てない以上、事前準備かズルでどうにかするしかない。予め対策できるところは対策しておくに限る。原作知識チートってやつだ。
「ハハハッ、ご丁寧に解説ありがとう。馬鹿だなあ君はッ!!」
群がる触手は、しかし阿九寺に傷を付けることすらできない。毒性を持った粘液も、奴の鎧のような高濃度の魔力によって無効化されてしまっている。
リュウマの退魔術も的確に対処され、なかなか有効打にならない。
凛の方に仕向けた触手は上手く機能し、彼女を拘束し口を塞ぎ
阿九寺が腕を勢いよく振るうと、彼に覆いかぶさっていた触手が一気に吹き飛ばされる。
そしてまた阿九寺は腕を振るって、洗脳済み生徒10人程に自殺の命令を下す。
何も起きない。
「君はその考え無しが原因で大事に守ってたお友達を死なせるんだよ!」
阿九寺が腕を振るい別の100人の生徒にまとめて命令を下す。
何も起きない。
「……私はこの学園をまるごと支配しているんだ。高々数百人程度を触手で行動不能にした所で、人質は足りているんだよ!!」
阿九寺が腕を振るい、全ての生徒に命令を下す。
何も起きない。
「……は……?」
にしても随分と愉快に喋ってくれるな。やはり阿九寺はラスボスに相応しい。
ここまで気持ちよく対策に嵌ってくれるとは。やはりラスボスだけあってプロレスの盛り上げが違うな。
「だから、敵によって洗脳済みの手駒を放置しておくほど俺は迂闊じゃない。既に触手は
「……イカれてんじゃないのか、君。それじゃあ私を倒したところで、死ぬだろ。触手植え付けられた生徒は」
「俺の飼い触手達はいい子だから、俺の言うことをしっかり守る。粘液を出しすぎて殺しちゃうなんて事、多分ないさ。仮にそうなったとしても桃坂先生が何とかしてくれる」
「……操魔師が」
「操魔師を悪口みたいに言うのやめてくれない」
今回は麻痺毒を分泌する種類の触手を植え付けたので、分泌する量さえ間違えなければ生徒の命に関わるようなことにはならない。
もしお茶目な触手がミスを犯したとしても、アフターケアとして桃坂先生に仕入れて貰った触手麻痺毒の解毒薬を使えば後遺症が残ることはないだろう。
「そんなこと言ってる間に、ほら」
「──ッ!?」
ぼとり。そんな音を立てて阿九寺の右手が腐り落ちた。腐食は体の末端から広がっていき、ボトボトと阿九寺の体を腐り落ちさせていく。
「な、なにをした……!?」
「君の毛穴から小さい触手を侵入させて、中で増殖させて腐食毒を分泌させた」
こわっ。そうリュウマが呟いたのが聞こえた。
仕方ないじゃん。俺、黒幕ポジなんだもの。攻撃手段も悪役っぽいのしか持ってないのだ。
腐食は止まらず、脚の崩れ落ちた阿九寺がその場に倒れる。
「やったか!?」
はいリュウマ、それフラグな。ゲームのボスに第二形態があるのはお決まりだ。
倒れ込んだ阿九寺の身体から濃い魔力が溢れ出て、塊となり形を成す。
『茶番は終わりだ。人の形は窮屈よのうッ!』
筋骨隆々の灰色のモンスター、と言ったところだろうか。
辛うじて二足歩行しているが、その手足には鋭く長い鉤爪が付き、背中からはコウモリの翼が生えていて、目は真っ赤に光り、狼のように開いた口からは長く鋭い牙が大量に生えている。
「吸血鬼……!?」
正解。
そんなわけで、深穂が言った通り第一部ラスボス阿九寺陰平の正体は吸血鬼だ。人間に紛れて暮らし、催眠術により眷属を増やす魔物。
と言っても現代の創作でよく使われる牙があり肌が青白いだけの美男美女といった容姿ではなく、正体はチュパカブラとかに近いゴリゴリの化け物だが。
「やっと第二形態だな。そっちの方が強いんだからさっさと変身すればよかったのに」
『ほざけ人間が。貴様に何が出来る?』
変身に合わせて口調を変化させるとか律儀だな。そういう所も怠らないのはさすがラスボスと言ったところか。
『……ああ、この姿だとより感じるぞ。人間どもの信仰を! 我に集まるチカラを!』
更に阿九寺に魔力が集まっていく。どうやら、「儀式」を行わずに簡易的に信仰を魔力に変換することにしたらしい。
阿九寺の体がボコボコと変形し、今度は逆に体積が減っていき、人の形へ戻っていく。どうやら第三形態らしい。
……マジかぁ。普通に予想外だ。
原作だと阿九寺は第二形態の後は儀式が完成して「神」へと至ったのだが、この世界では儀式を中途半端に行い「出来損ないの神」程度の存在に成ったらしい。
『クハハハ、クッハハハハハハ! 良い、良い! 力が漲る! 神格を感じる! これが、上位の者が見ている世界ッ! 素晴らしい!!』
阿九寺が横にひと薙ぎすると、辛うじて生き残っていた俺の触手たちがズタズタに引き裂かれ灰となり死滅する。
……こうなるのは覚悟していたが、やはりペットが死ぬのは辛い。お前絶対許さないからな。
「うそ……神格がある……!?」
「……やばいぞ契。どうする!? これ、不味くないか!?」
「……そうだね」
半端な過程の結果生まれた出来損ないの神だとしても、そこに神格の欠片があることは確かだ。だからこうなってしまっては俺たちの攻撃は全てが無効化されてしまい通らない。
そもそも、今のアイツの攻撃をまともに受けたら俺達人間は助からないだろう。
「リュウマ、下がって深穂の結界に入ってくれ。俺に考えがある」
だから、やっと最終手段を使える。
俺は戦闘を楽しむ様な性格ではない。というか、そんな性格だったら触手なんて陰湿で卑怯な魔物を従えていない。
だから本当なら、第二形態や第三形態なんて引き出さずにさっさと殺してしまいたかったところだ。
「もういいよねテンちゃん。最高に盛り上がってるよ」
というかそもそも、戦闘中に敵とお喋りするような無駄なことはしない。この世界は一応バトル要素のあるエロゲ世界だから、敵役も味方陣営もペラペラとお喋りをするのだが、俺にはそれに応じてやる義理などないのだ。
それなのにわざわざこんな、プロレスのようなやり取りを阿九寺としたのには理由がある。
テンちゃんをやる気にさせるためだ。
より魔術的に言えば
アマテラスオホミカミに姿を現して貰うために、岩戸の前で様々な催しを行い、神様をその気にさせる。その催しが、今回の阿九寺とのやり取りにあたる。
もしくは、より俗物的に例えると、メスガキの煽りのようなものだ。
今からこいつをブチ犯すんだ、というやる気を起こさせるために、あえて「ざぁこざぁこ♡」と挑発し、犯しがいを作るのだ。
まあ、テンちゃんという上位の存在を顕現させるには、それに相応しい場を作らなければならないのだ。
ここで一つ、退魔師退廃原作の話をしよう。俺こと山田契は原作では第二部のラスボスだった。
退魔師退廃という修羅の世界におけるラスボスというものは、それなり以上に重要な意味を持つ。
何が重要なのかというと、強いのだ。それはもう、ビジュアルノベルゲームであるのをいいことにアホみたいに強くて厄介なカタログスペックをしたボスが出てくるのだ。
今俺の目の前にいる吸血鬼も、原作では主人公である古木リュウマが自分の身体に封印されている魔物を解き放ち暴走することによって、言わば裏技的方法でなんとか突破していた。
そして二部のラスボスが一部のラスボスより弱いわけがなく、原作の山田契は強敵だった。
彼はとある魔物と
従属契約とは契約者同士が対等でない契約であり、通常操魔師は自分が上となる従属契約を結ぶ。これが一般に「調伏」と呼ばれる契約行為だ。
つまり原作の山田契は、とある魔物に自ら調伏されたのだ。なぜなら、その魔物が強かったからだ。
原作で山田契と契約していた魔物は神格を持つ強力な魔物だった。
その魔物は触手、陵辱、退廃を司る神だ。
この触手と陵辱と苗床ENDが蔓延る退魔師退廃という世界で、触手、陵辱、退廃を司る神が弱いわけが無い。実際原作でも文句なしの最強格だ。
じゃあなんで俺が今までその神様との契約を使っていなかったのかと言うと、対価が高すぎるからだ。
原作では、山田契はその神格を持つ触手の魔物を召喚する対価としてその身を捧げており、召喚した瞬間その魔物にその場で全身を
穴という穴に触手をぶち込まれて、穴がない所にも穴を作られて、粘液まみれでズボズボされて、それはもう見事に陵辱されていた。
そんなわけで原作第二部の実質的なラスボスはこの「神格を持つ魔物」だった。
神格を持つ魔物を召喚するのは、対価がキツすぎる正真正銘切り札。追い詰められた時にしかやらないと決めている奥の手だ。
だからその切り札は、今使う。
俺は自分の身体の中にある魔法陣に魔力を込める。
心臓から出た血液が、身体中を巡りまた心臓に戻る循環、つまり血液の体循環。その血液と血管を魔法陣として使用して、肉と骨を触媒として、
「絡み合う不定よ、秩序を陵辱し形を歪める王よ、声なき声をもって我を包み、今ここに姿を示せ──」
来なよテンちゃん。場は整えたよ。
「──
使役している触手達に要するそれとは異なる長い呪文。当然だ。
唱え終わると同時、俺の身体はブクブクと淀んだ色に泡立ち初め、異臭を放つ。そして俺の腹は中に何かが蠢くように波打ちだし、ついには
地面に飛び散った俺の肉片は水溜まりのように広がり、泡立ち、弾けてまた広がる。そしてそれらは巨大な魔法陣を描く。
ズズズズ
その魔法陣から現れたのは、大小複数の様々な種類の触手が絡み合い形を成した、
「こうやって会うのは久しぶりだね、テンちゃん」
「■■◆■■■!!」
今回はテンちゃんの身体を多めに召喚できたから、どうやら口も召喚できたみたいでテンちゃんが喋って答えてくれた。口、どこにあるのか分からないけど。
『な、なんだそれは。……神!? 馬鹿な。そんな上位の存在がなぜ、』
「そりゃあ、あれよ」
いつもみたいに、テンちゃんの頭っぽいところを撫でる。テンちゃんはフルフルと全身を震わせヘドロを撒き散らし、喜びを表現してくれる。
ああそういえば、原作の山田契と今世の俺には明確な違いがあった。
幼い頃から鍛えた結果、恐らく魔力の扱いや量が原作よりも上手いことだとか、その結果の家族との関わり方の違いだとか、細かい違いは色々とあるけど、一つだけ大きな、明確な違いがあるのだ。
俺とテンちゃんは
「マブだから。俺とテンちゃん」
「■■■■◆■■■■◆!」
『まぶ……? お、お前何言ってるんだ……そんなわけ……』
阿九寺が硬直している。まあ、神格の欠片に至った上位の魔物と言えど、本物の上位神の御前ともなれば萎縮もするか。
そろそろ力が入らなくなってきた穴だらけの身体で、俺はテンちゃんにキスをして
「テンちゃん、あいつ、ブチ犯して」
「■■■◆■■■■■◆■■◆◆◆◆◆◆!!!」
『や、やめろ。おかしいだろ。なんであなたの様な方が人間なぞに。やめてください、やめ、やめて……』
ぐちゃぐちゃぐちゃ
テンちゃんの触手が、肉と液体が触れ合う音を立て異臭と共に阿九寺へと伸びる。
『う、うわああああ! ぅぶぁぐぅぅぅぁあっ……』
阿九寺がテンちゃんに絡めとられ、陵辱される。
口、鼻、目、耳、毛穴、尻穴、尿道、爪の間、臍。穴穴穴穴穴。
全ての穴に触手が突き刺さり、粘液を注入され、広げられていく。広がった穴には更に触手が入り込み、魔力を貪り肉を貪り液を貪り、喰らい、増殖して更に侵食を続ける。
そしてその魂もまた、穴を開けられ中に入られ形を変えられ溶かされ奪われ与えられ、陵辱される。
カタチを壊されて魔力を奪われて、しかし死ぬことは許されない。テンちゃんは陵辱を司る神だ。普通の触手は餌を得るためや繁殖をするために陵辱を行うけれど、テンちゃんは違う。
テンちゃんは陵辱を行うために陵辱を行うのだ。
だから当然、魔力が無くなっても生物としての意味をなさなくなっても、陵辱から逃げることは許されない。
穴だらけになった阿九寺の肉体と魂に、テンちゃんは魔力と愛を与えてコネコネとカタチを変えさせる。テンちゃんの寵愛を受けた者は、死ぬことすら許されず狂うこともできず、凌辱されるしかないのだ。
へぇ。どうやら今回は女体化させて犯すらしい。テンちゃん、阿九寺のこと相当気に入ったんだな。本格的に犯すみたいだ。
穴ぼこの肉塊と化していた阿九寺の体が少しずつ人の形に作り替えられていく。男だった頃と同じく糸目のまま、その瞳の色は吸血鬼形態の鮮血のような赤色に変化。長身で、バランス良く筋肉がついて男らしかった体躯は、女性特有の丸みを帯び、陶磁器のように滑らかで真っ白な肌とキュッと引き締まった華奢な体に。そして短く切り揃えられていたストレートの黒髪は、透き通りきらめくウェーブがかった銀髪へと変化し、腰のあたりまで伸びる長髪となった。
なるほど、The吸血鬼少女といったところだろうか。流石陵辱の神様というだけあり、元の素材の良さを残しつつ陵辱のし甲斐があるエロスを内包した見た目に変化している。
「ひっ……や、やめて……もうこれ以上はしんじゃう……! おねがい! お願いします! たすけてぇ……」
テンちゃんの陵辱の攻め手が一旦止まったことにより喋る隙を与えられた阿九寺が鳴く。鈴を転がしたような綺麗で可愛らしい女の子の声だ。さすがテンちゃん、抜かりがない。
「たしゅっ、たすけてぇ……おねがいします……ごめんなさぃゆるじてぇ……」
ふと、
なるほど愛らしい。これは確かに、
「■■■!■■■!■■■!!■■■◆■■◆◆■■■◆■■■◆◆◆!!!」
「ひぃぅ! やめ、やめて……もうむりだから……おねがひします……っあ、ああああああああ!!!!」
にしても、もう無理とは阿九寺もなかなか面白い冗談を言うものだ。やっと
きっとあの様子なら明日の夜までみっちり犯し尽くしコースだろう。
孕ませていいのは孕まされる覚悟があるやつだけだ。これであいつもボテ腹出産苗床ENDというわけだ。
……ふぅ、なんとかなったな。あとはもう、大丈夫だ。何の心配もいらない。
「すまん、リュウマ。もう俺動けないから、桃坂先生のところに……運んで……」
あっやべ、意識持たねえ。
ちょっと張り切り過ぎたか。ペットを殺された怒りで力が入りすぎたみたいだ。思ったより血と肉と骨をテンちゃんに捧げちゃったらしい。
一応、生命維持は問題ないだろう。回復用の触手は予め体内に召喚しておいたから、今もウネウネと動いて俺の体を修復してくれている。これなら起きた時には傷は塞がっているはずだ。
それに、桃坂先生の治癒魔術があれば治りは早いだろうし、点滴さえ打てば……。
「契! 契! しっかりしろ契! いま保険室に連れてくからな! 死ぬな、死なないでくれ契!」
「契くん! 契くん! 死なないでぇ!」
なにか、リュウマとみほがいってる……。いよいよことばがあたまにはいってこない。
ごめんおれちょっとねるわ。
「おゃすみぃ……」
「契! 契! 死ぬな契! 頼む死なないでくれ! 契!!!」
「契くん! 契くん! 契くん!」
やっとTSできるのが嬉しくてついつい筆が乗ってしまった(10,116文字)。その分たくさん陵辱するから許して。
女の子を犯すのはダメでも女の子にした元男の子ならOKという風潮。
(見切り発車で書き始めたからテンちゃんがテンノグロスになるとか思ってなかった……。二話の主人公の発言矛盾してないかこれ……いや、女の子じゃなくてTS女の子だからセーフか……?)