触手モノ凌辱エロゲの黒幕に転生してしまった   作:ソーラン節

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作者はすば日々が好き


おい、何やってんだよ

「……はぁ」

 

 寮の自室でため息をこぼし、目の前の()()()のテンちゃんに目を向ける。

 テンちゃんは飼い主である俺が落ち込んでいることを察して、心配そうに首……っぽい所を傾げている。どうしたものかと項垂れる俺に対し、テンちゃんはズルズルとすり寄ってきて、「元気だして」と言わんばかりに俺の頬をペチペチと優しく触った。

 

 あれから、つまりこの世界が退魔師退廃の世界であると判明してから、学校が終わり今に至るまで、俺はずっと心ここに在らずで自分の今後の方針について悩んでいた。

 

 改めて、テンちゃんに目を向ける。クネクネと愛嬌を振りまく、俺の相棒。初めて見た時はその容姿に少し戸惑ったが、今ではなんだか愛らしく見えるペット。

 ミミズのようなピンク色の身体。ゴムのように弾力のある皮膚。イソギンチャクのように複数本に枝分かれ可能な長く細いボディ。先細りした先端から分泌されるヌメヌメの液体*1

 

「……どう見ても陵辱エロゲに出てくる触手じゃねえか……!」

 

 ちくしょう! 気づかなかった……!

 

 いやなんで気づかなかったんだよ俺。

 ……正直、前世含め初めて飼うペットにうきうきし過ぎていた。前世では抜け毛がダメなタイプの動物アレルギーで犬も猫も飼えなくて、祭りで買った金魚しかペットがいなかった。

 だから、今世でやっと可愛がりがいのあるペットを飼えて、親バカになり過ぎていた……。

 

 こうしてまじまじとテンちゃんを見てみると、体の表面は無駄にツルツルしてるし、クネクネ動くし、先端の先細りした触手はぶっちゃけグロい。

 いやでもそこが逆にいいというか、ギャップ萌えできるじゃん? 俗に言うぶちゃかわだよ。パグの潰れた顔が可愛いみたいなもんで、クネクネと蠢く様も今では犬が尻尾を振るみたいに見えて可愛い。

 

「……でも、陵辱エロゲに出てくる触手なんだよなぁ……」

 

 なんか割と本気でショックだった。

 俺としては我が子のように可愛がっている愛しのペットなのだ。テンちゃんが女の子を陵辱してる所を想像したくない。というかテンちゃんにそういうのはまだ早いだろ。お父さんそんなの認めません。

 

「ああごめん。テンちゃんが心配することは何もないからね」

 

 混乱する俺を心配するテンちゃんの頭……っぽい所をヨシヨシと撫でる。

 

 改めて、状況を整理しよう。俺は今、「退魔師退廃」という触手モノ陵辱エロゲの世界にいる。そして俺はどうやら、退魔師退廃の黒幕ポジのキャラクター、山田契に転生してしまったらしい。

 山田契の原作での立ち位置は、どのエロゲにも一人はいる「主人公の友人」だ。そして実は、数々の妖魔事件の黒幕である生徒会長……を、裏から操っていた真の黒幕。

 

 恐らくこの説明を聞いただけでは、退魔師退廃を知らない人は「じゃあ問題ないね。だって黒幕がいなくなったなら事件は起きないでしょ?」と思うことだろう。そしてその考えは甘い。

 もしそのような甘ったれた考えを持ってこの世界に来てしまえば、即刻その辺の触手に捕まって毒薬注入からの全身麻痺で拘束され犯されて卵植え付けられて苗床ENDだ。

 

 退魔師退廃の世界は修羅の世界だ。

 まず、世界中にうようよ蔓延る魔物という脅威を何故か政府が認識しておらず、それの退治を操魔師協会という民間の機関のみに依存している。

 これだけでヤバいのだが、さらに不味いことにその操魔師協会は国のお偉い方とズブズブで、魔物を操ってそこら辺の女の子をとっ捕まえては調教して売っぱらう闇オークションを開催してたりする。

 普通に人身売買だ。

 

 そして、そもそも操魔師協会すら放置している、否、()()()()()()()()魔物がわんさか存在している。

 というのも、この世界の魔物は無駄に隠れるのが上手いのだ。雑魚敵のようにポップする触手ですら、壁の隙間や地面の中、水道管や下水道の中など、色んな所に隠れている。ちなみに魔力のない一般人は魔物を見ることすらできない。

 他にも、人の夢の中に住んでいる夢魔や、人に寄生してじわじわ乗っ取ってくるパラサイトなどなど、挙げたらキリがないほど厄介な魔物がいる。

 

 一般人は魔物を見ることができないし、そもそも知らないので、当然魔物の報告は遅れる。操魔師協会に「ここに魔物がいます。祓ってください」と依頼が来るのは大抵人が二、三人苗床化した後だ。

 

 恐ろしさが伝わっただろうか。とにかくこの世界は人も魔物も隙あらば陵辱しようとしてくるし、その後は肉便器ENDか苗床ENDが確定している。それだけ覚えてくれていればいい。

 

 さて、ここでタイトルを思い出して欲しい。「退魔師退廃」だ。この世界における魔物に対抗するポジションの役職は先述した通り「操魔師」である。では退魔師はなんなのかというと、まあその名の通り魔を退治する職業のことだ。

 元々は操魔師と退魔師は対立しつつも均衡を保ち、それぞれ別の方法で世界を魔物の脅威から守っていた。しかし、近年退魔師の勢力がどんどん縮小していき、遂には滅びた。だから今では操魔師だけが残り退魔師はいなくなったのだ。

 

 実際俺も、この世界に転生してから「退魔師」というワードを耳にしていない。操魔師のコミュニティで育ってそれなのだから、恐らく退魔師はもう忘れられた存在なのだろう。

 まあ、主人公達はその退魔師なんだけどね。

 退魔師という存在が廃退した世界で、退魔の力を使って魔物に抗う。退魔師退廃はそんな話だ。

 

 では、何故退魔師は廃退したのだろうか。その答えはシンプルだ。

 操魔師は名前の通り魔物を操って戦う。それに対し退魔師は自らの身体で魔物と戦う。

 触れるとアウトな媚薬の粘液で体が覆われた触手や、吸ったらアウトな媚薬ガスを放出してくるスライム、口に入ったら胃で孵化して肛門に住みついて中からア○ル開発をしてくる蟲の微小卵を散弾銃のように撃ってくる巨大蟲、目と目が合っただけで催眠をかけてきて強制発情・強制絶頂させてくるカスのバジリスク、etc。あなたはこいつらと生身で戦いたいだろうか。

 俺は絶対にNOだ。まかり間違っても絶対にやらない。苗床化するなら死んだ方がマシだ。

 

 ちなみにこの世界、男も苗床化する。

 女体化して孕まされるか、シンプルに卵を植え付けられて生きたまま幼虫に体を食べられるか、内臓に寄生されて中から食い破られて死ぬか、脳みそに寄生されてじわじわ乗っ取られるかだ。

 どれがいい? 俺は全部嫌だ。

 

 そんな訳で退魔師は廃退すべくして廃退した。

 じゃあなんで主人公達はそんな危険な退魔師をやっているのかと言うと、そりゃあもちろんこの作品がエロゲで、ヒロインがエロい目に遭わなければならないからだ。

 まあ真面目な話、主人公陣営のキャラクターには悲しき過去があったりするのだが、それにしたってこの世界で退魔師をやるのは正気とは思えない。

 

 閑話休題。

 

 さて、以上のことから分かるように、この世界はとっても危険だ。そんな中、主人公とヒロインは危険に抗えるだけの力があるのかというと、微妙だ。

 主人公もヒロインもちゃんと強いのだが、この世界の魔物はクソゲーが多すぎる。いくら主人公とヒロインが強くても隙を突かれて魔物に媚薬を注入されたらそれだけで詰みだ。

 

 そして何より、主人公とヒロインは感知能力が低い。致命的すぎるだろ。

 

 この世界で感知能力が低いというのは、死を意味する。

 不意打ちからの媚薬注入からの詰み。飲み物に睡眠薬混入からの詰み。知らないうちに囲まれて詰み。知らないうちに魔物の結界の中に入ってて詰み。

 

 何にせよ、感知能力がないと一発で詰みとなるクソトラップに引っかかる確率が跳ね上がるのだ。そして原作主人公らはこれがないから散々陵辱されてきたというわけだ。

 

 じゃあ、原作主人公はどうやって感知能力の低さを克服したのか。答えは「運」だ。

 つまり、選択肢で正解を引き続けることによりトラップを回避してハッピーエンドに辿り着くのだ。

 では、プレイヤーの知識とセーブ&ロードがない場合はどうするのか。どうにもなんねーよ即陵辱されて苗床ENDだ。

 

 お分かりいただけただろうか。現状の不味さを。

 退魔師退廃シリーズでは、ハッピーエンドはヒロインの数しか用意されておらず、それ以外はバッドエンドである。そして、ハッピーエンドは「セーブ&ロードによる繰り返しによって辿り着くこと」が前提だ。

 そしてこの世界はやり直しが効かない。

 

 ねえどうして退魔師なんてするの? 人生は一度きりなんだよ?

 

「……はぁ」

 

 再びため息が漏れる。

 恐らく、いや確実に、このまま行けば主人公とヒロインは何かしらの魔物に捕まって陵辱されて苗床化することになる。

 そうなると、後味が非常に悪い。

 

 これが赤の他人ならともかく、俺は前世で散々彼らを見てきたのだ。色々と突っ込み所はあるし、チョロいと言わざるを得ない彼らだが、なんやかんや好感を持っているのもまた事実だ。

 ヒロインは可愛いし、性格もいい。主人公だって、いざという時はかっこいいし、誠実だ。

 

「助けてやりたいよな」

 

 ぐっ。拳を一つ握って決心する。

 これから先、色々と即詰み苗床ENDトラップがあるけれど、彼らが原作のハッピーエンドを迎えられるようにサポートしてやろう。

 

 まあ、とはいえだ。案外、この世界の主人公は常に正解の選択肢を選び続けて、俺が手を出さなくてもハッピーエンドに一直線かもしれない。

 最初から疑ってかかるのは良くないよな。

 

 ビビーッ!

 

 そんなことを考えていたら、突然テンちゃんが音を立てて震えだした。

 

「うお、なんだなんだ」

 

 俺のペット、もとい使役している触手達には、何かあったらテンちゃんづてに教えてねと命令してある。

 

 どうしてそんな面倒なことをするのかと言うと、俺の脳のスペック的問題が原因だ。俺は使役した触手と感覚共有ができる。できるのだが、常時感覚共有すると情報を処理しきれない。これでも数万から数十万の触手と契約しているのだ。

 だからこうして、触手の方に判断を任せている。あれでいて触手は結構頭がいいので、「不審者を見つけたら報告する」程度の簡単なタスクならこなすことができるのだ。

 

 そんなふうに命令した触手を、俺は学校周辺に大量に配置している。これにより、少なくともここら一帯に魔物が出没した場合には即刻検知・対処が可能だ。……原作主人公達も、これくらい感知能力を付けるべきだと思う。

 

 そんなわけで、何かしらの異常があったという触手と視界を共有してみると。

 

 そこには、俺の使役している触手達によって拘束され逆さ吊りにされている主人公とヒロインがいた。

 

 おい、何やってんだよ

*1
媚薬成分あり

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