霊川さんが生徒会長に呼び出された。
これがどれだけやばいことなのかというと、バッドエンド一歩手前ぐらいやばい。というかバッドエンド一歩手前そのものだ。NTRによる脳破壊被害も出る分普通のバッドエンドより悪いかもしれない。
全力疾走しながら、霊川さんの髪に付着させていた触手と感覚共有して情報を得る。
やはりというべきか場所は生徒会室。そしてヌルヌルヌチャヌチャとした音と、女性の呻き声が聞こえてくる。
まずいまずいまずい。このままでは年齢指定が上がってしまう。
全力疾走の後、たどり着いた生徒会室の扉を叩きつけるような形で全力で開ける。
「霊川さん!」
「んむぅぅぅうう……んっ……!」
グチュグポヌルジュポ
そこには、全身粘液*1まみれで触手に拘束され、制服が破られ下着姿で、脇や股下などの際どいところを触手になぞられている霊川さんがいた。
俺が渡しておいた触手召喚札は使おうとした形跡はあったが、粘液とその他液体にまみれて床に落ちていた。どうやら札を破く余裕すらなく拘束されてしまったらしい。
セ、セーーフ!!
非常に危ないところだったが、今はまだ前戯段階だ! 彼女は純潔を散らしていないし、洗脳も調教も受けていないしボテ腹出産もアヘ顔ダブルピースもしていない!
前戯が本番に変わる前に急いで触手を止めにかかる。どうやら魔力の質的に、悪の操魔師こと生徒会長が使役している触手のようだった。
「来い! アイツらを止めてくれ!」
俺は声を触媒に、魔力で作った魔法陣で使い魔を召喚する。要するにいつもやってる召喚だ。
俺の声に応えて現れた触手達にすかさず命令して、霊川さんを襲っている触手たちを止める。触手と触手が絡み合ってすごい絵面だ。きっと霊川さんからしたら何が何だか分からないことだろう。
俺からするとちゃんと触手の見分けは付いているけどね。
とりあえず最悪の事態を回避したことに安堵しつつ、懐から取り出したとあるスプレーを触手に吹きかける。
すると、先程まで活発にうねっていた触手の動きが沈静化する。
これは栗の花の香りの香水だ。栗の花の香りは触手を落ち着かせる性質があるのだ。
ちなみに、触手を興奮させる香りは若い女の血と愛液の香りだ。やっぱり陵辱エロゲのモンスターじゃねえか。お茶目で可愛いよね。
「ぅう……け、契くん……?」
触手の拘束が緩み、口と目を塞いでいた触手が取れたことでこちらに気づいた霊川さんが弱々しく呟く。
うっ……。
上気した表情ととろんとした瞳、唾液が触手と糸を引く口から出された甘えるような声色は、ちょっとその、くるものがある……。
い、いや! 相手は未成年だから! 断じて俺は変なことを意識していないから!
「まってろ今助けるから!」
頭を振って煩悩を追い出し、触手(会長使役済)に触れる。すると、沈静化していた触手が俺の腕を伝い俺の体に巻きついてくる。かわよ。
これは特に誘導したわけではないのだが……あれだね。犬は犬好きな人が分かるみたいな感じで、触手も触手好きな人が分かるという感じだ。もしくは、いい操魔師ってやつは触手に好かれちまうんだ……ってやつ。
うおっ、くすぐったいって。口とか鼻とかに入って来るのやめろって。ちょっ、そっちはお尻だから。
霊川さんに引っ付いていた触手(会長使役済)をひっぺがすことができたので、そこに俺の魔力を急速に流し込む。
触手が急に餌を貰ったことに驚いてウネウネと暴れ出すが、お構い無しに与え続ける。
コツは大量の魔力を一気に流し込むことだ。
そもそも触手は何故人を襲うのか。それは、触手の餌である魔力を人の体液から摂取するためだ。つまり触手による陵辱は彼らにとって食事行為なのだ。
それゆえに、一気に
ちなみに魔力量や出力が足りないと満腹になる前に触手が分裂・成長して繁殖してしまい、普通に苗床ENDになるので注意が必要だ。
俺の魔力を大量に摂取し、満腹になった触手達がゆるりと俺から離れる。もうこれ以上食べられないよ……といった所だろうか。
動きが緩慢になり、幸せそうな触手を優しく撫でる。
そしてついでに、
「お前ら、俺のところ来いよ」
俺がそう言うと、触手達は一斉にこちらを見て、それから俺の
操魔師による魔物の使役は基本的に従属契約、つまり片方が片方に服従する契約によって行われる。
そして従属契約のやり方は基本的に二つしかない。ずばり、恐怖による支配か、無償の愛による協力だ。
恐らくこの触手達は、一応後者による契約を結んでいる。つまり、生徒会長こと阿九寺の悪のカリスマ(笑)に惹かれて契約を結んでいるのだ。
それならば、その契約を解除した後に
え〜
てか
触手達は俺の提案に、しばらくしてから頷いた(頷くというか、触手の先端を上下に振っただけだが)。
……よし、契約が結べた。
これでも俺は神童と呼ばれる程度には操魔師としての技術がある。
有名な名言から引用する形だが、NTRしていいのはNTRされる覚悟があるやつだけだ。
いえ〜い阿九寺くん見てる〜? 触手くん、阿九寺くんの魔力より俺の魔力の方がいいって笑。
とまあ、これで一件落着。
「んっ……あっ……!」
……だったらよかったんだけどね。
熱っぽい呻き声がした方を見ると、触手の粘液とその他液体にまみれて地面に力無く横たわる霊川さんがいた。
どうやら腰が抜けたらしく、立ち上がろうとしては滑って失敗している。
触手の粘液には媚薬効果がある。一応一般人に比べ、退魔師や操魔師などの魔力保有者には効きにくいし、俺のように触手を飼っている人間は耐性が付いていたりするのだが……。
粘液まみれの霊川さんの様子を見るに、どうやら口から直接摂取してしまったらしい。あの量を浴びたら、並の操魔師なら肌を撫でる風で感じてしまうレベルまで発情してしまうだろう。
「んっ……ふぅぁっ……」
「霊川さん、今から寮のシャワー室まで運ぶから、それまで辛抱してね。シャワーで粘液を洗い流せばちょっとはマシになるから」
「ご、ごめなさい契くん……ごめんね……んっ……」
苦しそうに顔を歪める霊川さんを触手で包む。こうすれば、魔力のない一般人には見えない。あとは急いで寮まで運ぶだけだ。
極力揺れを抑えながら霊川さんを運んだ。道中触手の中から聞こえる甘くて熱っぽい声は極力意識しないように努力した。
◆
平日で授業日ということもあり、幸い寮の中に人はいなかった。女子の連れ込みは禁止されているが非常時だしやむを得ない。
俺は男子寮のシャワールームへ霊川さんを入れ温水を浴びせた。
操魔師の教本にも載っている触手毒への一般的な対処法は、大量の水で洗い流すことだ。幸いというか、触手によって服を破かれていたので脱がす手間はなかった。一応残っていた下着はつけさせたまま、その上から洗い流していく。
こんなことになるなら、日頃から触手毒に対する解毒剤を用意しておくんだった。自分には効かないからと油断していた。
なるべくその柔肌を見ないようにしつつ、未だ体に力が入らないらしい霊川さんから媚毒を洗い流していく。水が肌に触れる度にビクビクと体を震わせる様子が痛ましい。
「もう大丈夫だから。あとは時間が経てば苦しさは引くよ」
「うん……油断したわ。助けてくれてありがとう、契くん」
どうやら落ち着いてきたらしいが、いつもの彼女の朗らかで物応じしない様子はなりを潜め、借りてきた猫のように大人しい。
「あとは、石鹸も使ってちゃんと隅々まで洗い流した方がいい。……一人でできる?」
「ええ。ありがとう」
その言葉を信じてシャワールームを出る。
俺を待っていた触手が心配そうにこちらに駆け寄ってくるので、頭を撫でて大丈夫だよと伝えつつ、今の霊川さんには俺の
「契くんいる?」
「ああ、いるよ」
時折飛んでくる声に応えつつ、人のいない寮にいやに響く水音と時折こぼれる熱っぽい声に努めて意識を割かないようにしながら待つ。
俺の呼称が苗字呼びから名前呼びに変わっているのは、媚毒の影響で理性が弱まった結果だろう。原作からして霊川さんは人を下の名前で呼ぶのが素だ。
だから、「契くん」呼びされてちょっとグッと来てしまったなんてことは断じてない。ないったらないのだ。オレ、ナカミ、セイジンダンセイ。オレ、ミセイネン、テダサナイ。
その間、俺の部屋に待機させている触手にタオルと着替えを持ってくるように指示を出し、召喚する。
相変わらずうねうね動くペットに少し癒される。
「ありがとう。タオルと服はそこに置いといてくれ」
粘液まみれの霊川さんの下着を1回100円で動く寮共有の洗濯機に入れておく。
(あとは、原作ではたしか保健室の先生が治癒系の魔術を使えたはずだから連絡を入れようか。いや、接点のない俺がそんなことをしたら怪しまれるか)
(リュウマには……教えない方がいいだろうな。アイツのことだから事の顛末を伝えたらすぐに駆けつけるだろうけど、今の状態の霊川さんを無暗に人に会わせるべきじゃない)
(……今回の件で、ギクシャクすることになるだろうな。嫌われたかもしれない。助けたことに後悔はないが、もっといいやり方があった気もする)
(使い魔召喚札も破る形式じゃなくてもっと動作が少なくて済む形式の方がいいな。一定以上の魔力を込めると発動とか、逆に常に魔力の接続を維持してそれが絶たれたら発動とか。いやでも、魔力の扱いが未熟な二人だと難しいか……?)
無駄な思考の数々が頭をよぎっては消えていく。
一人反省会が盛り上がってきた所で、シャワールームの半透明なドアが開かれた。
「あ、霊川さん。タオルはそこにあるから」
その方向を見ないようにして声をかけた。
再びドアが閉まった音が聞こえて、次にごそごそとタオルの布地が擦れる音が聞こえてきた。
妙に生々しい音だった。
ごくり。
いやごくりじゃないが。俺は霊川さんを守りたいのだ。俺が襲ってどうする。
俺がその音を聞かないように、いっそ鼓膜を破ってしまおうかと思案していると、再びドアが開く音が聞こえた。
「ごめん、服は俺の男物しかないんだけど、タオルのすぐ隣に置いておいた、か、ら……」
言葉が途中で途切れる。
ピト。俺の背中と後頭部に触れる感触があった。背中にはふわりと柔らかい感触が、後頭部にはヒヤリとした絹のような感触がした。それは柔肌と濡れた髪だった。
霊川さんの細い手が俺の背中に触れて、熱が伝わる。耳に熱い吐息がかかる。
「お願い、せつないの。契くん……身体、触って……」
あっこれ不味いやつだ。