触手モノ凌辱エロゲの黒幕に転生してしまった   作:ソーラン節

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作者はさくレットが好き(ランキング載って読んでくれる人が増えて嬉しい。ありがとうございます)


西山先生じゃねえか!!

「おはよう契くん! 昨日は助けてくれてありがとう」

 

 霊川さんが触手被害にあった翌日のことだった。

 第一声からして分かるように、彼女はすっかり立ち直っていた。その様子から見るに空元気というわけではなく、どうやら本当に昨日のことはもう気にしていないようだった。

 

 流石と言うべきだろうか。正直俺ですら舐めていた。彼女の芯の強さというやつを。

 原作でも何度挫けても立ち直る様子は描写されていたが、こうして実際に間近で見ると驚きが勝る。

 

 言っては悪いが、あのとき彼女は触手の媚毒を浴びて相当()()()()()()になっていた。常人なら一生モノのトラウマになりうるぐらいにだ。俺も操魔師として、触手の被害から立ち直れていない人を何人も見てきた。

 やはり原作で幾度となく陵辱されては立ち直っていた霊川深穂の精神は、まさに不屈なのだろう。

 

 ……それはそれとして、なんで契くん呼びなの?

 

「いやだったかしら?」

「いや、そんなことはないけど」

「そうよね。だって契くん、私に()()()()()()()()ものね」

 

 霊川さんがニッコリと笑う。それはもう、人形のような完璧で隙のない笑みだった。

 ……昨日のことしっかり覚えているらしい。なんか弱みを握られた気分だ。

 

「でもその、くん付けはやめない? 普通に呼び捨てでいいよ」

 

 名前にくん付けで呼ぶなんて、原作だと深穂ルートでリュウマが深穂と結ばれて、彼女がリュウマに甘える時の「リュウくん」呼びだけだ。

 彼女が親しい人を呼ぶ時は基本下の名前で呼び捨てだし、知り合いにはくん付け、目上の人はさん付けだ。

 おそらく魔力探知技術を教えたり魔物から守ったりした結果、感謝の気持ちから呼び捨てではなくくん付けに落ち着いたのだろうが……ちょっとこそばゆい。

 

「じゃあ契くんも私のこと、下の名前に呼び捨てで呼んでくれるかしら。リュウマは呼び捨てなのに私だけさん付けなんて、他人行儀で前から嫌だったのよ」

「あ、ああうん。深穂、これでいい?」

「……ふへへ。ちょっと恥ずかしいね、契」

 

 にんまり。そんな表現が合う、まるで美味しいスイーツを食べた時のような口の緩み方だった。

 そんなに名前呼びが嬉しいのだろうか。

 

 

(うーん、もしかしてこれ、よくない流れか……?)

 

 クラス担任兼数学教師の西山先生(10代に見えるほど若くて巨乳)の授業の中、俺はリュウマと深穂の恋愛フラグについてぼんやりと思案していた。

 

 原作だと、バッドエンドフラグが立たない限りは大抵深穂ルートに進み、リュウマと深穂が順当にくっついてハッピーエンドだった。

 だからこの世界でも、リュウマは深穂とくっついて雑にハッピーエンドを迎えて欲しかった。 原作ファンの俺としても、なんやかんやリュウマは深穂とくっつくのがしっくりくる。

 

 そもそも原作では、深穂は無自覚とはいえ元々リュウマに恋心を抱いていたし、リュウマも深穂のことを好意的に見ている。

 だからこの世界でも放っておいたら深穂とリュウマがくっつくと思っていたのだが……。

 

 思ったより深穂のリュウマへの好感度と、リュウマから深穂への好感度が足りていない気がする。恋愛というよりは友愛の域を出ないような感じだ。

 

 原作、深穂ルートのリュウマだったら、そもそも深穂が一人で行動しようとしたら必ず一緒に行くと言ったはずだ。

 それに深穂の方も、思えば昨日の帰り道でリュウマの肩を借りることを拒んだのは少し変だ。原作ならリュウマと体が触れて赤面する、なんて美味しいシチュを逃すはずがないのだ。

 

 おかしい……。原作ならこの時点でリュウマは誰かしらの恋愛フラグを立てているはずだ。

 それが深穂か森凛か、それとも隠しヒロインの保健室の先生なのかは置いておいて、ヒロインがリュウマに惚れていたり、その逆だったりが必ず起きているはず。

 

 考えられるのはやはり、俺という原作にない異物の影響だ。

 バタフライエフェクト。ごく小さな出来事でも、因果関係によって予測できないほど大きな結果につながることがある。

 俺の行動と、それによって引き起こされる無数の小さな変化。それらが連鎖的に変化を生み出し、巡り巡って今の予想外な結果が生じているのかもしれない。

 

 思い出せ、原作ではどんな時にヒロインとの恋愛フラグが立った?

 例えば、魔物に襲われたヒロインを救出するとか、ヒロインを魔物から庇うとか、魔物に付けられた傷を保健室で治してもらうとか……。

 

 あれ、もしかして俺が触手を使って魔物被害を未然に防ぎすぎた結果恋愛フラグが折れた……?

 

 ……い、いやいや考えすぎだよな? 俺はただ脅威を排除してるだけで、リュウマを妨害しているわけじゃないし。

 別に魔物がいようがいまいが、リュウマの魅力がなくなるわけじゃない。あいつはほら、強さを抜きにしたって誠実だし顔も良いし、普通に良い奴だよ?

 

 やっぱバタフライエフェクトだよバタフライエフェクト。俺のせいじゃなくて、バタフライエフェクトってやつが悪いんだよ。

 

 ……にしても、そうか……。恋愛フラグ立ってないのか……。

 

 まずい。とてもまずい。

 リュウマと深穂にくっついて欲しいとかいうお節介心が沸いたわけではなく、もっと深刻な問題から生じる懸念があった。

 

 曲がりなりにもバトル作品の主人公よろしく、リュウマは「身体の中に凶悪な魔物を封印している」という設定がある。某忍者漫画の九尾みたいなものだ。

 

 そしてその封印は、実は割と頻繁に解かれる。

 敵に追い詰められた時に一発逆転を狙うためとか、敵の魔術の影響で封印が弱められるとか、その凶悪な魔物を信仰しているカルト宗教の信者によって解放させられるとか、まあ色々とシチュエーションはあるが第一部から第六部に至るまで、作品ごとに毎回一度は封印が解かれる。

 

 そして、封印が解かれると主人公の身体はその魔物に乗っ取られる。そうなった時に魔物を封印し直すために、ヒロインが必要になってくるのだ。

 

 原作ではこのとき、「夢訪(むほう)」と呼ばれる魔術を使っていた。これは人の夢、つまり精神世界に入り込む魔術だ。

 これによってヒロインが主人公の精神世界に入り込み、主人公の精神に力を与え、魔物との力の拮抗を主人公側に傾け直すのだ。

 

 まあ要するに、愛の力というやつだ。

 主人公に封印された魔物が主人公の体を乗っ取って暴走した時、それを沈めるには主人公と相思相愛なヒロインの愛の力が必要になるのだ。

 

 だから、ヒロインと恋仲になっておく必要があったんですね。*1

 

 ……うーん。このままではまずい。まずいのだが、イマイチ解決策が思いつかない。

 リュウマにその気がないのなら、無理やり恋人を作ったところで「愛の力」を得られる程の関係にはならないだろう。

 

 なんにせよ、まずはリュウマの意思を確認しなければならない。

 数学の授業が終わったタイミングで、俺はそれとなくリュウマに聞いてみた。

 

「なあリュウマ。好きな人っている?」

「えっ!? な、なんだよいきなり。す、好きな人っておい、いきなりだな、おい」

 

 いや動揺しすぎだろ。

 ……とはいえ、どうやらリュウマの様子から見るに、好きな人はいるみたいだ。よかった。それならその恋路をサポートすればいいか。

 

「それで、誰が好きなの?」

「い、いないって」

「その反応でそれは無理あるって」

 

 ほれほれ、You言っちゃえYO。

 絶対言わないからさー。

 俺の事信じてくれよ。

 絶対秘密にするって。

 

 リュウマの押しに弱い所と人を信じやすい所を利用して、一般的男子高校生よろしく恋バナをせがむ。

 

「ぜ、絶対に言うなよ?」

 

 はい余裕。ほんとチョロすぎて心配になるけど、今回に関してはありがたい。

 

「聞いても笑うなよ?」

「笑わないって。俺がそんなことするわけないでしょ」

「まあ、そうだよな。信じてるからな、契」

「はいはい。で、誰なの?」

「その……」

 

 チラり。リュウマの視線が俺から逸れた。顔を赤らめるリュウマ。その視線の先には……。

 

「……あの人だ」

 

 明るい髪色、髪と同じ色の瞳、綺麗な肌、豊満な体。そこには誰もが知る人気()()がいた。

 

「……あの人なの?」

「……ああ、あの人だ」

「あの人かぁ……」

 

 西山先生じゃねえか!!

 

 可愛くて優しくて、生徒からの人気も高く、原作ファンからも高い人気がある()()()()ヒロインの一人、西山先生じゃねえか!!

 

 第六部まで続編が出た退魔師退廃というゲームの中で未だに攻略が不可能で、エロシーンすら描かれず、「早く攻略させろ」派と「攻略できないからいいんだろ」派でファン達を二分する西山先生じゃねえか!!

 

 何人もの生徒が恋に落ち告白し、その度に「未成年、それも生徒と教師の恋愛は倫理的によろしくありません。それに、年齢差がありますから。君は若いから、きっと一時の気の迷いで私のような人に興味を持ってしまったのでしょう。成人してもまだその気でいたのなら、改めてお話を聞かせてください」とエロゲ世界にあるまじきガチガチの倫理観で断ってくることで有名な、あの西山先生じゃねえか!!!

 

 ……どうしよこれ。

*1
メガトン構文

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