背中に特徴的なタコ足を揺らめかせ、銃を背負い街から街へとさまよい歩く。
「次の街までまだあるのね。食料も尽きてきちゃったし早く到着したいところなんだけど……」
彼女は空を静かに仰いだ。
「この綺麗な星空は、煌びやかな街じゃ見れないからね。」
そうつぶやきまた歩みを進めた。
- 港町 モンテストル-
「おじさん、この銃の修理費もう少し負けてよ」
「お嬢ちゃん無理を言うなよ。この銃、どう見たってここの物じゃない。この装飾はるか南の国のものだろ。」
活気溢れる街の外れにある武器屋の主人は大柄の銃を指さして言った。
「お嬢ちゃん。あんたこれどこで手に入れたんだ。」
クラエナはそっと銃身に触れて懐かしむかのように装飾を見た。
「アタシ、底から来たんだ。ずっと旅してきたんだよ。」
主人は驚いた表情でクラエナを見た。
こんな年端もいかない少女がひとりで旅をしてきたと言うのだから。
「どうしてこの街まできたんだ。目的でもあったのか?」
クラエナは首を横に振った。
「あてのある旅じゃないのさ、ただ。アタシは井の中の蛙にはなりたくなかったんだ。
もっと世界を見てみたかった、反対を押し切って出てきたんだ。帰る家もないんだよ。」
店内は重く暗い雰囲気になった。クラエナはふと顔を上げて
「でもいいことも沢山あったんだ!たくさんの人と文化に触れ合えた。それだけで充分な収穫だろ?」
銃の隣にタコの絵が刻まれたコインを置く。
「あいにく今これくらいしかないんだ。」
主人はコインを拾い少し困った表情を浮かべた。
「やっぱり足りないか?」
「お嬢ちゃんはかなりの道を歩いてきてやっとこの街へたどり着いたんだろう?
知らないのも無理はないが、このお金はこの街じゃ使えないんだ。」
クラエナは硬直した。自分はまだ井の中の蛙だったのだ。
脚から力が抜け地べたへ座り込んでしまう。
ギィ……
静かに店の扉が開いた。
そこには高身長でピンクの短髪をした男性が立っていた。
「Zevくんじゃないか。頼まれてた短剣は修理できてるよ。」
主人に呼ばれるとZevと呼ばれた男性は静かにカウンターへと歩み寄った。
「おやっさん。この女の子どうしたんだ?地べたに座り込んじゃってさ、もしかしてなんか厳しいことでも言ったのか?」
主人は困ったような笑顔を浮かべて。
「Zevくんも人聞きの悪いこと言うねぇ。いやぁね、南の国からわざわざここまで来てくれたらしいんだけど、ここの街で使える金を持ってなくってねぇ。それで落ち込んじゃったみたいなんだよ。」
Zevはクラエナを見て。
「じゃあ俺んとこで住み込みで働けばいい。君の銃のお金は俺が払って置くから、給料から差し引いてって返してくれればいいよ。」
主人は慌てたような表情で
「Zevくん!!!この子は女の子なんだよ!?そんな男女が同じ屋根の下なんて!!!」
クラエナは主人とZevを交互に見て
「アタシは気にしないけど迷惑になっちゃうんじゃない?何も無いとは思うけどさ、知らない奴家に呼んで住み込みで働くなんて。」
Zevはクラエナに手を差し伸べて
「困ってる人助けるのに迷惑なんて考えるやついるか?君、名前は?」
クラエナはZevの手を取り笑った。
「クラエナ。ヒョウモンダコのクラエナだよ。」
Zevは短剣と銃の金を置いて店を出ていった。
クラエナは主人の方をむくと「また来るね」と言って店を出た。
Zevは銃を見て軽く笑うと別の短剣をクラエナに渡した。
「そうゆう仕事やってんだ。エモノ持ってるならわかるだろ?」
クラエナに着いてくるよう言って街のさらに外れの道へと入っていった。
続きます