言い訳はしません
「ほな、その赤毛の格好良い兄ちゃんについて説明してぇな」
「あはは………了解だってばよ」
六課に戻って直ぐにはやて達に泣きつかれ、直後にナルトが一人でテロリスト達をフルボッコにしたと聞いて呆れられたり怒られたりした一幕を終えて先日と同じように部隊長室で尋問を受けていた。
もっとも隊長陣だけではなくスバル達フォワード達もいるという相違点があるが、それは些末な事だろう。
ちなみに話題の人物である九喇嘛は全ての説明をナルトに任せて知らん顔を決め込んでいる。
「コイツは九喇嘛って言って、俺達の世界最強の【白面金剛九尾】って種類の妖魔だってばよ。俺の相棒で俺はコイツ依り代………ぶっちゃけて言うと憑かれてるってわけだ。
もっとも俺にとっちゃ、好き嫌い激しい我が儘狐って感じなんだけどな」
「貴様、言うに事欠いて選り好み激しいじゃと!!」
「だったら油あげばっかし食ってんじゃなくてピーマン食えよ」
「………儂に栄養と言う概念は必要ないんじゃ」
「そりゃ、実体化してる時に使ってんのは俺のチャクラだからな!!」
ナルトの適当な紹介に業を煮やしたのか九喇嘛が噛みつくが、ナルトはナルトで常日頃から思っていた不満を漏らして反撃する。そこから程度があまりにも低いレベルでの口喧嘩に発展、
………つうか、妖魔に好き嫌いがあって、しかも苦手がピーマンというのはどうなのだろうか?(稲荷と同種の妖狐だから油あげが好物なのはわかるとしても)
閑話休題それはともかく
果てしなくどうでも良い理由で勝手に喧嘩しだした二人に業を煮やしたのか、はやての頭に真っ赤な十字交差点が発生する。
そしてとうとう
「………なぁ、喧嘩せえへんで説明して欲しいんやけど」
「は、はやてちゃん!? ちょっと、お茶の間に見せられないくらい凄まじい形相をしてるよ!?」
ナルトにとっては一介の少女(という名の皮を被った、本性は歩くロストロギアと名高い超腹黒たn………アババババァァァァッ!?!?)の筈のはやてから上忍さながらの殺気が発生&凄まじい顔でナルトを睨みつける。
その表情、まさに阿修羅が如し
そんな彼女の変貌ぶりに少しばかり疑問を持ったりしたが、下手に突っつくと完全にブチ切れられると判断したのでナルトはアイコンタクトで九喇嘛を黙らせて大人しく説明を再開する事にした。
「わ、悪い………え~っと、コイツが白面金剛九尾ってまでは話したんだよな。で、コイツは妖魔っつうお化けとかの類の一種なんだけど、俺っつう器を媒介にして実体化ができるんだってばよ」
まっ、単純に説明したらこんなもんか。ちなみに言っとくと、コイツの戦闘能力は本気になったら俺より上だってばよ。
とナルトは軽い調子で説明していたが、おそらくあの一言が悪かったのだろう。
「お、おば、お化けなのぉぉぉぉぉっ!?」
「落ち着いて、なのは!! ナルトはちゃんと【お化けみたいなもの】って言ったからお化けじゃないんだよ!!」
幽霊などの類が大の苦手であるなのはが大声で騒いで九喇嘛から距離を取る。
そんな彼女の様子にフェイトが取り繕うようになのはを説得するが、「やだやだ幽霊怖いの~~!!」と幼児退行してまで九喇嘛から逃げようとする始末、
「のう、ナルトよ。何故儂は何もしとらんのに勝手に怖がられるのだ?」
「まぁ、お化けの類が苦手な人間は結構いるからな。多分、お前って存在を恐れてるわけじゃないんだし元気出せよ」
そんな彼女の様子を見て九喇嘛が若干凹んで、そんな彼をナルトが慰める。
それを皮切り部隊長室におけるカオスな展開は幕を開けた。
★★★★★
ちなみに言っておくとナルトの幽霊嫌いは既に完璧に完治していたりする。
あの忍界大戦で他の尾獣達と対峙し、行動をもってして彼等の協力を得た彼は九喇嘛の願いにより様々な妖魔の類に触れ合ったせいか、人霊程度では驚けなくなったのだ。
「あ~、そんなわけだからコイツも六課に滞在させて良いか? 基本的には人型だけど何か不都合があるなら狐形態にするし、迷惑かけたなら強制的に体に戻すからよ」
「ん~、そうゆう事ならええけど、部屋はナルト君と一緒でええか? あんまし部屋は残ってへんし、一応あの部屋は二人部屋やから」
「大丈夫だってばよ。最初っからそのつもりだったしさ。
お前もだって俺と別々なのは都合が悪いんだろ?」
「まぁ、そうだなァ」
アッサリOKされた事に拍子抜けしつつも、約束を守れる事に安堵したナルトは隣の九喇嘛に了解を求める。
とはいえ、二人は封印されている(既に八尾&キラービーコンビ同様の信頼関係を築いた故に封印というよりも、単なる契約と言うべきだが)尾獣とその器である人柱力なので、これは単なる形式的な確認に過ぎない。
「あるとは考えにくいが、お主が襲撃でも受ければ儂の存在に関わる問題が発生するしのう。瞬時に戻れ、お主の補助をするためにも近くにいられる事は必要不可欠故、儂も依存はない」
「オッケー、んじゃあ話はこれで終わりで良いか?」
「まあ、一応目的の九喇嘛さんに対する質問は終わったから、ホンマは帰ってええって言いたいんやけどな」
少しためらった様子を見せてからはやては申し訳なさそうに切り出した。
「勿論、拒否してもええんやけど……ナルト君の使う力について教えて貰いたいんや」
☆☆☆☆
「………なんで、そんな事を知りたいんだってば? 簡単な説明ならした筈だけど」
「始めに言っとくけど、拒否したいんやったら拒否して貰ってもええで……話せへんってことはナルト君なりに理由があるんやからな。勿論、話してくれるんやったら記録は残さんし、聞いてもええメンバーの心の中でだけの秘密にする。先に約束しとくからな」
「そこまでしてくれるってことは俺に対する配慮ってことか?」
「まぁ、それもあるけど……下手に暈したせいでナルト君の怒りを買いたくないってのが本音やな。ばれた時はこっちが悪い。そうやって線引きをきちんとした方がなのはちゃん等も喋らへんくなるさかいな。ゆうなれば、こっち側の楔やな」
はやての言う通り、周りに目を向けてみれば事の重大性を理解したのかほとんどのメンバーが目つきを変えていた。
「で、理由やけど……その力が危険なものやないってことを納得しときたいんや」
「ナルホドね、組織の人間としては至極当然だってばよ」
「やけど、ナルト君を裏切るんは公私どっちの意味でも避けたい事や。やから、ホントの事だけ報告させてもらうわ」
はやてが笑みを浮かべてそう言った瞬間、周りの空気が一変する。はやてとナルトを除く全員が信じられないものを見るようにはやてに視線を向け、ナルトは何処か得心したように笑みを浮かべる。
「ちょ、はやてちゃん!? それってもしかして……」
「ああ、勘違いせんといてなフェイトちゃん。私が言いたいんは」
「本当のことを言う……けど、全部を言うわけじゃない、だろ?」
はやての言葉の続きを言うナルトの顔は何処か謀をを企てるような表情があった。それに対するはやての顔も白々しい笑みしか見えない。
「何言うとるんや? 私はただ、ナルト君から教えて貰える範囲のことを聞くまでや。でも、全部が分かる訳やないからな。ある程度、こっちが推論して考えた結論も含めて向こうに行くだけやで?」
要はナルトの隠したい内容は黙ってればいいし、管理局に危険視されないように推論して報告するから安心しろ。という内容である。
虚偽申告や文書偽造だろうと責められても、虚偽記載をしているわけではないし、はやての推論もあくまで推論レベルでしかないように記載されるので責任問題にはならない。
本当のことは言わないし、間違っていた内容は不確定だった内容なのだ。危害があればその責任は報告書を読んで勘違いした馬鹿に制裁が下るまでだ。
「そ、それって幾ら何でも暴論過ぎない?」
「何言うてるん? あくまでこれは任意の事情聴取やしナルト君には黙秘権がある。ただ、管轄外やからこっちは調査せえへんまでや。状況証拠だけやと逮捕も起訴できへんのと同じ理由や。あ、これは独り言やからね~」
「聞こえるも何も、さっきまでここらへんに蚊がブンブン言ってたから何言ってたかわかんねえってばよ?」
「「「(き、汚い。流石忍者&部隊長、汚い)」」」
白々しいことこの上ない会話、二人を除いた全員が戦慄と共に汗をダラダラと流す。
数秒、静寂の中で対峙してナルトは口を開いた。
「……俺達忍者の使うチャクラってのは何千年も前から伝えられる【忍宗】を祖とする技能群のことを指すんだってばよ。ま、使うには下地とそれなりの才能が必要なんだけどな」
「ふ~ん、やっぱりあんな力やし使える人も結構限られるわけやな。そこらへんは魔法と同じなわけやな」
「ま~そっちの魔力? と同じ運用の仕方だってばよ。エネルギーとして生成したチャクラを色々な形に変換したり具現化したりして術という形で放出する。それが忍術だってばよ。まぁ、使う術にはそれぞれ適正だったりが必要だったりするんだけどね」
「なるほど、レアスキルみたいなものを使う場合もあるんやな。ホンマ、魔法と同じとこが多いんやな」
ナルトの説明を聞いてはやてがワープロ打ちで調書を作成するが、その光景はあまりにも特異すぎた。
会話がかみ合っているようでかみ合っていない応答が続く中、二人以外の皆はただ押し黙っていた。
「(……ねぇ、ティア? なんで、ナルトさんの言っている内容と違うことを部隊長は調書に書いているの?)」
「(馬鹿!! 気付きなさいよ。はやてさんは嘘は書いてないの。嘘がないならその調書は正しいことを書いているの)」
「(でも、質疑と応答の内容が違うでしょ)」
「(だから、ナルトさんは自分の力のことの一部しか話してないし、はやてさんもそれに自身の推論って形で付け加えているの。つまり、簡単に言えばナルトさんを守るためにはやてさんは嘘にならない範囲でミスリードを作っているの!!)」
この場で二人の行っていることを十全に理解できていたのはティアナだけであった。他の全員は訳が分かっていないか、もしくは何故グレーゾーンな調書を作っているのかが分かっていなかった。
「(……多分、ナルトさんが警戒しているのは管理局の過激思想を持つ存在。あんな力を個人が増える存在が多数いる可能性が僅かでもあるなら艦隊がナルトさんの故郷を攻撃してもおかしくない。そうなればナルトさんが管理局に牙をむく可能性は極めて高い。それにはやてさんも個人的にナルトさんに対して好意を持っている。ナルトさんの不利益ははやてさん個人や六課のみならず管理局にとって不利益になる。どっちもホント、役者よね。阿吽の呼吸で必要不必要の情報を取捨選択しているんだから)」
それを理解しているからこそティアナは口を出さずに調書作成の間は押し黙っていた。
そんな異質な雰囲気の中で作業は終了した。作成された調書は上層部の要請があるまでは紙媒体ではやての個人的な保管庫に封された。
この調書の作成と提出を暗に止めた判断が正しいと分かるのは時がいくばくか必要となるのだが、それは別の話である。