「か、勝ってもうたんか? 展開できる最大数に最高レベルやのに………」
「う、嘘~。あれって、冗談で無茶な設定にした筈なのに………」
「あ、あんな事マジであんのかよ。」
「し、信じられん。あれは私とテスタロッサが組んでもクリアできなかった代物だぞ。高町と三人で漸くクリアできたものをたった一人で………」
ガジェット全機を倒しきったナルトの姿を見て機動六課のメンバーは絶句していた。
ナルト自身は未だに余裕があるのかチャクラ刀を拾い上げると悠然とした面持ちのままでいる。
「とりあえず、ナルト君の実力は陸戦SS+並はあるっちゅうわけやな。………ホンマ、とんでもない人やな。」
「今の管理局で最高ランク持ってるはやてちゃん以上って………」
「ナルトって、いったい何者なんだろう。」
三人がナルトの実力の高さに呻いていると………
「主はやて、波風と模擬戦をさせてください!!」
目をビックリさせる位キラキラさせたシグナムがはやてに詰め寄った。
「あ~あ、シグナムの悪い癖が出たな。」
「シグナム副隊長、なんだか凄く嬉しそうですね。」
「あはは~………」
全員がそんな相変わらずな様子のシグナムに引きつった笑みを浮かべるが、当の本人は全く気にせず、はやてに更に詰め寄る。
「波風が今まで行ったのは全てガジェットとの戦闘のみです。対人戦闘が得意とは言ってましたが、それも確認する必要が有るのではないでしょうか?」
「御託はええから本音を言い。」
「あれだけの強さを持った人間と全力で剣を交えたいです!!」
「ああ~、こりゃ戦うまで絶対に止めへんやろうな。」
何の恥ずかしがる様子もなく本音を語るシグナムを止められないと判断したはやては急いでナルトに通信を繋いだ。
「(堪忍なナルト君、もうちょっとだけ我慢してぇな。)」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「ふう、しんどかった。まさかあそこまで強いとは思わなかったってばよ」
『ケケケケッ、まだまだ余裕じゃねえか』
「も~、これ以上戦うのは勘弁だってばよ~~」
なんて冗談めいた事を呟いていたが
『あの~ナルト君………ちょ~っと頼みたい事があるんやけど』
「ほえ………ちょ、もう一回戦えなんて言わねーよな?」
『ごめん………もっかい戦ってください。』
はやての言葉と共にナルトの笑顔が凍てついた。
『ナルト君~? 聞いとりますか~?』
「………ハッ!! 俺はいったい何で固まってたんだってばよ。」
『あ~、ごめんな。流石に三戦連続は厳しいよな。やけど、シグナムが………』
「………まさかシグナムって、バトルマニアなのか?」
『ナルト君の想像通りや………って、ちょいシグナム!? まだナルト君の了承を取っとらんって!! 勝手に行くな!!』
「って、まさか………」
何か嫌な予感がしてナルトが後ろを振り返ると………
「波風、私と勝負だ!!」
「うわ~、退路を防がれちまったってばよ。」
剣を携え、場が場でなければ惚れてしまいそうな綺麗な笑みを浮かべたシグナムが既に戦闘体制に入っていた。
「………逃げられないってわけか」
『ホンマにごめんなナルト君、うちも止められへんかって』
「はやてのせいじゃないってばよ。でもシグナムがバトルマニアとはな~。人は見かけによらないってばよ。」
仕方ないと諦め、ナルトは立ち上がって戦闘体制に入る。
「いつでも始めて良いってばよ。その代わり、これで終わらせてくれよな。」
『わかっとるって………フェイトちゃん、そんなわけやから今日は諦めてな。』
『あ、うん………わかったよ。』
「(………フェイトがバトルマニアなわけがない。今の残念そうな声は気のせいだ。多分、恐らく、きっと、もしかしたら………)」
通信の向こうで聞こえたやりとりに冷や汗を流すナルトだが、ブルブル首を振ってそれを払う。まさかフェイトもバトルマニアなんてジョークは流行らないだろ。もう、ぶっちゃけると1ヶ月連続任務に加えてミッドチルダに来てからも戦いまくっていて結構疲労が体に来ているのだ。もう、今のナルトの心境としてはシグナムと戦った後にフェイトと戦えなんて言われたらマジでブチギレてやるよ俺………ってな具合である。
『よし、ほな始めよか。
それじゃあ、ナルト君とシグナムの模擬戦………開始!!』
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「あ~、またシグナムの悪い癖が出てもうた。ナルト君、凄い疲れとるって分かり切っとるのに………」
「シグナムさんには少しTPOをわきまえて欲しいね。幾ら何でもあれだけ連戦を続けてたらいくら凄い人間でも疲れちゃうよ。」
始まってしまったシグナムとナルトの模擬戦を見て、二人は心配げな面持ちをしながら溜息を吐く。
もちろん、心配する対象はシグナム………ではなくナルトである。いくら親しい仲とは言え人様に迷惑を掛けているシグナムと、あまり良くは知らないが好印象を感じられ、尚且つ何度も面倒を掛けているナルト………どちらの人間の味方になるかなど、言うまでもなく決まっているだろう。
「それにしても………あの人、大丈夫なんでしょうか?」
「幾ら何でも消耗している状態でシグナムさんと模擬戦なんて………」
「地力が上だとしても、集中力が持たないだろ。」
フォワードの皆もナルトを心配する声を出すが、皆気付いていない。
ナルトがミッドチルダに来る前から1ヶ月休暇無し、常時睡眠不足、栄養バランス完全無視な生活をしながら働いていたせいで既に限界まで疲労しているなんて事は
「とりあえず、シグナムには戻って来たらお仕置きやな。それとナルト君にはお詫びとして何かしたらんとな。何がええやろな~。部屋のグレードアップか給料のアップ………ん~、」
「いっそのこと全部してあげたら? ねぇ、フェイトちゃん」
「………………。」
「………フェイトちゃん?」
フェイトの答えを求めるなのはだが、フェイトは何かに集中しているのか全く答えを返そうとしない。そんなフェイトの様子をおかしいと思ったなのはが彼女の視線の先を見ると
『『ハァァァァァッ!!』』
キィンキィンキィンキィン!!
「う、うそ………」
剣での戦闘というジャンルならば………たとえ魔力にリミッターが掛かっていたとしても、自分が知る中で最強の部類に入るシグナムと互角………いや、それ以上のレベルで斬り結んでいるナルトの姿が、そこにあった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
キィンキィンキィン!!
「(くっ、スピードはそれほどじゃねーけど太刀筋が結構鋭い。)」
「(私の太刀筋を全て見切るとは、やはりただ者ではないな!!)」
クナイ二刀流とレヴァンティンを交わせながらナルトとシグナムは互いの実力の高さに驚いていた。
ナルトが感じたのはシグナムの完成されたと言っても過言ではない剣の実力、攻撃の前も最中も後にも隙らしい隙が感じられない。さらにそれが止まる事なく放たれるため、ナルトは攻勢に出られないでいる。
シグナムが感じたのはナルトの異様なまでの速さ、相手がいくら二刀流とは言え自分が一太刀放つ間に四発の攻撃が放たれる程の手数の数、絶対に避けられないタイミングで攻撃を放っても紙一重で避けられる。
両者が持つ実力は互いを警戒させるには充分すぎた。
「流石だな波風!! 私が高町とテスタロッサの三人で漸くクリアした最高難度訓練を一人でクリアしただけの事はある。」
「そっちこそ、太刀筋が完璧すぎんだろ。全然隙が感じられねーってばよ。」
「何を言う、一太刀の合間に四撃を放つ貴様なら無理を通せば決められるのではないか?」
「あ~、やっぱりそう思う?」
ぶっちゃけるとシグナムの言う通り、攻撃を通せないわけではない。
事実、レヴァンティンを跳ね上げ、シグナムが構え直すまでに攻撃を喰らわせる事ができないわけではない。その程度でギリギリならば修行の筈なのに毎度毎度殺意の籠もったサスケの刃の前で命が消えている筈だ。
しかし………
「(はっきり言って集中力がゲキニブ状態で、あの剣を無傷で突破できる………って断言できないんだよな。)」
シグナムは強い、純粋な実力ならともかく、剣術というジャンルにだけで考えてみればナルトの永遠のライバルたるサスケに迫るほどの実力を持っていると断言できる。
そこまでの相手に果たして今のコンディションで完璧に攻撃を決められるかと問われたら、可能だと断言する事はできない。
「(いっそのこと距離を取って忍術を決めるか?)」
スピードなら自分の方が圧倒的に上と判断したナルトは、印を組み誘導忍術を発動するまでの大まかな時間を計算し距離を取るタイミングを探り始める。
そして………その時は来た。
「(よしっ!! この、タイミングなら)」
レヴァンティンを振り下ろしたシグナムが切り替えすまでの一瞬、ナルトにとっては充分過ぎる時間を持った絶好のタイミングが現れた。
バックステップで距離を取り、シグナムがそれに気付いて距離を詰めるまでに更に大きく距離を取る。
「(いくら剣の達人でもシグナムは人間だ。効果限定させて威力を上げた大突破をモロに食らったら気を失うだろ。)」
頬を釣り上げ、ナルトは印を素早く組み上げる。
シグナムが距離を詰めようとしても、半分を切った所で術は発動する計算………ナルトは盤石だった。
もし、シグナムが本当にただの剣士だったのなら………
「レヴァンティン!!」
シグナムが鋭く言い放つとレヴァンティンの柄の部分がノッキングし、そこから二個の空薬莢が排出される。
そして………
「紫電………一閃!!」
「うっそぉぉぉっ!?」
「ハァァァァッ!!」
レヴァンティンが一閃され、紫色の斬撃がナルト目掛けて放たれる。
シグナムが普通の剣士だと………使う技全てが近接戦闘能力だと思っていたが故にナルトには自らの算段がボロボロに崩れる音が聞こえた。
こちらが印を組み終わる前に斬撃が到達すると判断したナルトは即座に印を放棄し、横飛びで回避する。
が、
「レヴァンティン!!」
『シュランゲフォーム』
ガチャガチャッ!!
「ま、まじでぇぇぇっ!!」
今度はレヴァンティンの刀身が一本のワイヤーのみで繋がった鞭のような姿となり………
「飛竜、一閃!!」
刀身全てに紫色の炎が灯り、それはそれは恐ろしそうな代物になったレヴァンティンをシグナムはナルトに振り下ろした。
「剣じゃねーだろそれ!!」
迫り来る蛇腹剣を見てナルトが叫び声を上げるが、そんな声をシグナムが聞くはずもなく剣は刻一刻と迫って行き………
ガァァァァンッ!!
剣の一閃が、ナルトに炸裂した。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「………少しばかりやりすぎたか?」
爆音と共に地面から土煙が立ち上る。そんな光景を見てシグナムはそう呟いた。
今の一撃は明らかに本気を込めて放った代物だった。はっきり言って、ナルトが本当に無事かどうか不安を隠せないでいた。
「い、いや………非殺傷設定だから、大丈夫な………筈だ?」
言葉の調子では断言しているのに疑問詞がついているのがシグナムの動揺を如実に物語っていた。
「な、波風!! 無事なら返事を返してくれ!!」
「………おう、無事だってばよ。」
「そ、そうか………って?」
背後から聞こえる聞き覚えのある………しかし聞こえる筈のない声、有り得ないと思ってシグナムが後ろに振り返ると
「いや、マジで死ぬかと思ったぞ。あんなの人に目掛けて普通に撃つもんじゃねーだろ。」
「な、波風!? 何故私の後ろに………というより、いつ私の背後を取った!! それに飛竜一閃を食らった筈では………」
「ちょっとばっかし専売特許を使って避けた。ついでに言っとくと後ろ取ったのもそれだ。詳しくは後で説明する」
いきなりすぎるナルトの登場にシグナムは混乱してしまい、戦闘中にもかかわらずナルトに疑問を投げかけてしまう。
しかし、怒っているのか疲れているのか………はたまた両者なのかは、わからないがナルトはシグナムの問いにマトモな返答をするつもりはないらしい。
「………やば、なんかマジで限界っぽい。
つーわけだからさっさと終わらせるぞ」
「それはどういう………」
シグナムの返答も待たずにナルトは印を組む。自らが忍者として始めて認められる事となった要因であり、螺旋丸と同じように自らが最も得意とする忍術
「影分身の術!!」
直後、ナルトの周りに10人の実体を持つ分身が現れる。
忍界ではオーソドックスともいえるこの術、だが忍術の存在すら知らなかったシグナムが判断したのは………
「幻術魔法か!?」
「幻術じゃねーよ。第一、俺は幻術使えねーんだからよ。」
「(嘘をついているのか………いや、嘘だろうとしても実体は幻術を発動した一体のみ、そいつを見失わなければ勝てる!!)」
自らの部下が得意とする魔法、その弱点も知っていたからこその決断だったが………
「いっくぜぇぇぇっ!!」
「なっ………馬鹿な!!」
それが命取りだった。実体がないと思っていたはずの分身体ナルトが猛烈な勢いでスライディングをし、シグナムの体勢を崩し
「「波!!」」
続けて二体の分身体が同時にシグナムの腹を下から蹴り上げて、
「「風!!」」
更に、二体の分身体が蹴り上げる。
「「「渦!!」」」
そしてシグナムの体が上昇するのを止めるのと同時に残った三体の分身体が踵落としを決め、シグナムを地面へと叩き落とし
「撃!!」
トドメに本体のナルトが落下してきたシグナムにローリングソバットを決め、吹っ飛ばした。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
所変わって、機動六課sサイド
「「「………………。」」」
シグナムの敗北というおおよそ予想していなかった結果で模擬戦が終了したのを目の当たりにした彼等はそろいもそろって絶句していた。
「シグナム………副隊長が、負けた?」
「つーか、どうやって飛竜一閃を避けたんだ? それにあの幻術魔法、実体があったよな。」
「もうなんか………突っ込みどころ満載だね。」
全員がナルトの使った術の全てを知らないが故に、その驚嘆は大きかった。
だが、
バタッ………
「「えっ?」」
全員が見たのは地面に崩れ落ちるナルトの姿だった。