他の学校の制服を着るという事は私にとって貴重な経験だ。
森宮学校…小学部、中等部、高等部、大学と連なる巨大な学校。
異世界が集まる場所と教えてもらったけどピンと来ない。
夏服、冬服と両方もらった。
さすがに冬服は暑いので夏服を着用する。
ネクタイ、リボンはどんなものでも自由ということらしく私はミレニアムのネクタイを使うことにした。
自分がいつか帰る為、自分の居場所の証明の1つとしてだ。
「よし…ばっちり」
全身鏡の姿見を見て呟く
「似合うわね」とパトリシアはそう言った。
彼女は制服じゃなくてドレスのような格好だ。
ゴシック系というんだったかゲヘナの子達が着てそうだ。
制服着用は自由と生徒手帳にはあったけど彼女の格好は自由過ぎる気がする。
「パトリシアさん制服は着ないんですか?」
「制服?たまに着るわね」
たまに、ですか。
それほとんど着てないんじゃ?。
私はそのまま彼女の部屋を使っている。
成り行きで相部屋だ。
どうしてそんなドレスなのかと聞くと
「動くに適しているからよ」と答えられた。
そういえば彼女の背やスカートの下からは羽や尻尾が見え隠れしていることに今さら気付いた。
とはいえキヴォトスにも羽付きはいたからあまり気にならない。
きっと彼女はこういうファッションが好きなんだと思った。
私は自分の銃…ロジック&リーズンを眺める。
所持すべきか置いてくべきかと考えたが
「武器があるなら必要よ」と言われて帯銃した。
外を見ると雨だ。
「今は梅雨だから」と彼女は答える。
ニュースでは自宅で心臓麻痺で亡くなった人の話がやっていた。彼女はそのニュースを少し興味を示すように見たが別のチャンネルに切り替える。
昨夜の夜中、不審死があったらしい。
少し嫌な表情になった。
番組を変えても事件しかやってなければそういう顔にもなる。
「近いわね」とパトリシアは呟いた。
キヴォトスも事件が多い場所ではあるがここもひょっとしたら似たような場所なのかもしれない。
登校初日、彼女に最初言われたこと
学校は日が落ちる前に必ず出ること。
先生や生徒はこれを徹底していること。
この学校は夜オバケ屋敷と化し今でも生徒の死亡者が絶えないのだそう。
学校としてどうなんだそれは。
正直その話はあまり信用出来ない。
私達は銃を使って生きてきたのだから。
「おはよパトリシア」
「おはよ志郎」
パトリシアの隣にやってきた男の人。
昨夜の声とは違う。
「あ、隣にいるのが他の世界の子!
今年は忙しくなるんじゃないこれ?」
「あなたね…」
「ごめんごめん」
そう言って改めて私に向き直る。
「はじめまして、俺は余語志郎です。錬金術師してます」
錬金術師????。
「早瀬ユウカです。二年です」
「俺も二年。よろしく早瀬ちゃん」
新鮮な呼ばれ方だった。
「こちらこそ余語さん」
握手を交わす。
そうして私達は学校へ向かう。
ちなみに私は察している事があった。
この二人の距離感は恋人のそれ。
少し眩しく見えた。
二人と別れて教員室に入ると「この時期は来訪者が多いな」と呟く先生。浅井先生だ。
「はじめましてだな。私は浅井安津子。教員をしている」
「早瀬ユウカです。よろしくお願いします」
頭を下げた。
先生は頷き「礼儀もしっかりしている。偉いぞ」と褒められた。
「今日からキミはここで過ごすことになる。たくさん学んでいくといい」
「ありがとうございます」
「ミレニアムサイエンススクールへの帰還に関してはこちらでも手を尽くしてみよう。早瀬も情報の収集は怠らないように」
「ありがとうございます。私も方法を調べます」
「あぁーーー…君のクラスの担任となる先生が見えた」
私が振り返ると少しびっくりした。
大きな大鬼みたいな人が服を着ているのだ。
はち切れそう。
あれでは服が可哀想だ。
そんな思考を知らずに大鬼は口を開く。
「殺陣政宗だ。俺のことは殺陣コーチと呼ぶといい」
「えっと…はい、早瀬ユウカです。
よろしくお願いします殺陣コーチ」
気にするのをやめた。
大丈夫かしらここ…。
「今日は転入生がやってきた。入れ」
殺陣の言葉に私は入る。
「早瀬ユウカです。得意なことは計算です。ここに来て日が浅くいろんなことが不慣れですがよろしくお願いします」
よし挨拶完璧。
そんな内心ドヤを決めていた。
学校生活が始まるわ。
木造建築でありながら洗練された作りはトリニティにも感じ物は最先端だからミレニアムらしさも感じた。
授業を受けお昼をクラスの子達と食べる。
「あれは?」
「小学部はこれで授業は終わりだからみんな下校なんだ」
高等部の授業も終わりみんなが下校や部活動をする。
帰る為に出来る事、やれる事は何だろうと模索した結果、私は生徒会室の前にいた。
戸を叩く。
「どうぞ」
知った声が聞こえて来た。
私は扉を開けると教室と変わりがないように見えた。
「あらーーーユウカ。迷子?」
「ちがいますよパトリシアさん。今は迷っていません」
生徒会の会長の座席に座っているのはパトリシアだった。
「生徒会長だったんですか」
「そんなわけないでしょ」
じゃあなぜに座っている?
「書類溜まってくから代わりに生徒会の他メンバーがやってるのよ」
「会長不在ってことですか」
「不在だけれど最前線に立っているわね」
パトリシアはそう言って楽しそうに笑う。
何か色々事情があって今はいないということらしい。
「悪いんだけど立ってるだけじゃ暇よね?
これ半分確認してくれる?」
「え…?」
書類の山を指さしていた。
乗りかかった船ということで私は彼女の仕事を手伝うことになった。
目を通してく中、気になったものは
「妖怪議事録?」
「ぁあそれ?この学校、夜は学校の怪談なのよーーーそれの注意事項」
「いや多すぎですよ。しかもほとんど出会ったら死ぬオチじゃないですか。それよりこんな内容ほんとに学校に出るんですか?」
『私は彼女に内容の開いた部分を見せる。
夜学校のプールに赤ん坊を抱いたずぶ濡れの女性が立ってあの手この手で渡してこようとする。渡されたらプールに沈められて死ぬ』
見せられた彼女は
「私は見たことはないわよ」
「それってそんなのいないかもしれないってことじゃないですか」
正直どの内容も胡散臭く作り話っぽくそんなことあるわけない。
そう思ってました。
「あぁ〜…最初はみんなそう言ってたわよね」
彼女はそんなおかしな話を懐かしそうに笑う。
下校時間前に廊下から裸足で走る音が聞こえてきた。
書類作業はあと少しだ。
けど彼女は席を立った。
「帰るわよユウカ」
「書類あと少しですよ」
「わかるけれど今日はおしまいよ」
そう言われて「わかりました」と言い私も立ち上がる。
子供達の笑い声が廊下から聞こえた。
「小学部の子達?」
私は言うが思い返すと、みんな下校している事を思い出した。
廊下に出ると誰もいない。
異様な静かさだ。
「早く出るわよ」
そう言うパトリシアは少し急ぐような声だ。
私達は廊下を歩き校舎に辿り着いた。
校舎に向かう途中ずっとつかずつかず裸足の足音が聞こえてきて身の毛がよだった。
その直後だ。
「ユウカーーー頭伏せて」
パトリシアに頭を押さえられ礼をする姿勢にさせられる。
なんでぇ!?と思う束の間…
ドス!と何か鈍い音が響くのは同時だ。
「顔上げていいわ。これ見て」
私は顔を上げると、丁度頭の位置だ。
斧が壁に突き刺さっていた。
ひぇ。
「学校をギリギリまで過ごすなら気をつけなさいよユウカ」
パトリシアは言った。
私は神妙に頷く。
この学校自体は百鬼夜行学園に出てくる怪談?みたいなものに近いのかな?
外に出て私は尋ねる。
「学校の怪談ってもしかして…」
「まだあれは優しいほうよ」
そう言われて私は理解する。
色々気をつけること…そしてこの世界には不思議が数多くあることだ。
些細な状況だが摩訶不思議な場所に自分がいるのは間違いないらしい。
帰り道、パトリシアが指で炎をボッ、ボッと火の玉の様に動かしていた。
魔法を初めて見た。
とても綺麗だった
……いや待って。ねぇ待って。
「ちょっとパトリシアさん!何で初めに見せてくれないんですか!」
最初からそれを見せてくれたら学校がお化け屋敷なのも信じただろう。
けれど金色の髪を持つ貴女は笑っていた。
「これが魔法の世界ということよ」
なんて言いながら楽しそうに