私のクラスは理系クラスと分類されるクラスにいる。
文系と違って賑やかというより落ち着いている場所だ。
そんなクラスが今日は浮足立っている。
私もその会話に加わっていた。
「他校で死人だって」
という物騒な会話だ。
「どこで?」
「いったいどんな死人なの…」
思わず会話に反応したのが私だ。
それは学校の帰り道…
スマートフォンを持ちながら目を開き真っ青になった顔で倒れていたという話だ。
普通なら有り得ない死に方…というのが私の感想だ。
ここは理系。
「そもそも何故スマートフォンを持ちながら突然死んだんだ?病でもあったんじゃないか?若くてもそういう持病を持つ人はいるそうじゃないか」
如何にも理系といった眼鏡を掛けた男性の生徒が言う。
このクラスは事件が起きるととても摩訶不思議な議論をあまりせず理的に話を進める。
摩訶不思議な話になるのは最後だ。
外を見ると雨だ。
梅雨ね。
私は自分が帰る為に時間を見つけては駅まで行き電車に乗っていた。
ここから来たのだから手掛かりが見つかるかもしれないと考えて。
まぁ…目処は立たないし手掛かりもないのだが。
「その日も雨が降っていた。水の原因は…」
「ないないーーーそもそも…」
彼ら彼女達の話は続く。
この議論全然終わらないのがすごい所よね。
「じゃあメリーさんというものか?」
1人の生徒が言った。
メリーさん?
気になる言葉だったが先生がやってきてしまい会話は終わった。
放課後になると私は生徒会室の扉をノックする。
「どーぞ」
知らない声だ。
扉を開けるとそこにはベージュブラウンの髪の生徒がゆっくりと身体を動かしている。
というか踊っているように見えた。
それを止めて私へ向き直る。
思った以上に綺麗で可愛い人だ。
どうしてか視線が外せない。
この人の綺麗さに私は見惚れているのかな?。いやまさか?
「あれ…?あんた…たしか」
「早瀬ユウカです。はじめまして」
私は名乗る。
「パトリシアからちょっと聞いてるよ。あたし神崎紗奈。二年。
よろしくね」
「私も二年です。よろしくお願いします」
「同じなら敬語じゃなくてもいいよ」
紗奈は笑って言う。
私は苦笑する。
「そういうわけにもいきませんよ」
「ま、いいけどーーー何しに来たの?」
「いえ…ここは色んな情報が来るんですよね?」
パトリシアが来ているかもしれないから寄った…なんて言えなかった。
「まあそうだね。それは確かにそうかも」
私は彼女の持っている物が気になった。
紗奈は右手に写真集を持っていた。
アイドルの写真集?
というか良く見たら…
「紗奈さんそれ」
「あぁこれ?ーーーあたし」
「やっぱり。紗奈さんアイドルなんですか」
「あー…まあうん。森宮学校生徒会広報担当。
それがあたし。神崎紗奈の肩書きなんだ」
「肩書き…アイドルが肩書きってことですか」
「だいたいそんな感じ。魔法使いは恐怖される存在じゃない。
それを広めて多くの人に知ってもらう為にやってんのよ」
「魔法使いが恐怖される存在…」
「この世界はみんながみんな魔法を使うわけじゃないからさーーー普通の人からしたら不気味でしょうがなかったりするわけ」
彼女の言葉は少し何か意味を持たせた言葉に聞こえた。
魔法使いだから差別された。
そんな風に聞こえてしまった。
私もアイドルみたいな事をやったことはある。
歌って踊って…楽しかった思い出。
「だから広報ですか。ってことは紗奈さんもパトリシアさんと同じ生徒会?」
生徒会って何人いるんだろう。
「同じ。一緒だよーーーパトリシア達とは結構色んなことやって来たよ。そういえばユウカは理系でしょ?なんか変わった話ある?」
「変わった話ですか…そうですね。スマートフォンを持ったまま死んだ人がいたとかですかね…?」
私何言ってるのかとか思いますけど紗奈は笑わず聞いてくれていた。
最後まで話すと紗奈は呟く…
「スマートフォンを持ったまま死んだって話時々聞くかも。その話を初めて聞いたのはいつ?」
「今日ですーーー他校で起きたって聞きましたよ。確か…隣街のって」
「ふぅん?」
紗奈は外を見る。
つられて私も外を見る。
雨だ。
そして次の日も雨だ。
雨の時期。
ニュースを見ると事件が絶えない。
人がベッドの上で死んでいたり、他のチャンネルに切り替えると隣街の路上で死人がとやっている。
キヴォトスに帰るにはどうしたらいいのか
手掛かりはない。
〜〜〜〜〜
「ここのコーヒー美味しいですね。お菓子も絶品です」
「でしょ。私達の先輩がここでバイトしてるんだけどその人が作ってるの」
パトリシアに誘われて喫茶店に来ていた。
たまには悪くない。
普段からセミナーで1日が終わる事が多い自分には少し楽しい。
帰る事が出来たらセミナーの仕事が山のように待っているだろう。
早めに終わる事が出来たらノアを誘って喫茶店で楽しむのもいいかもしれない。
だからこそこんなにゆっくりしている自分と時間に少し焦りを感じてしまう。
梅雨が終わり暑い夏が始まった。
スターレイルトレインという不思議な現象を見ることが出来た。
夜空を列車が走るような現象だった。
最も実際ほんとに列車が走っていたとかなんとか?
私はコーヒーを飲む。
列車が本物なら乗っていた人達は帰れたのかしら…。
私はまだ帰り道を見つけれずにいる。
「焦ってる?」
表情を彼女に読まれていた。
無理もないとは思っている。
「少しだけ」と私は答える。
「私達からしたらユウカの話は神隠しに近い現象っぽく感じるわね」
パトリシアは話す。
神隠し…突然人がいなくなる現象。
キヴォトスでも似たような話を聞いたことがある。
「私は…神隠しにあってるんでしょうか」
「かもしれない…と思うだけよ」
パトリシアはコーヒーを口に含み少し言葉を濁すように答える。
自信がないような答え。
ツンとしているようで彼女はとても人が良い。
でもみんな私に「帰りたい?」とは聞かない。
「帰りたい?」
そう聞くのはパトリシアだけだ。
「ーーーはい、キヴォトスでやりたいこと沢山残して来てしまっていますから」
「そうね…そうよね」
そう答えると彼女は笑うのだ。
私はコーヒーを一口飲む。
でも気になることがここに来てから出来てしまっている。
スマホを持ったまま人が死ぬ。
それは私の身の回りで起きていることだ。
それを見過ごす程、私自身嫌なやつじゃない。
振り返った時、それを振り返らなかったら後悔してしまいそうだから。
何よりもし先生が私と同じ立場なら絶対見過ごすような事をしないとわかっているから。
だから私はもう少しここにいようと思っている。
私は一呼吸置いて、コーヒーカップを置く。
パトリシアはその様子に首を傾げる。
「どうしたの?」
「あのーーーパトリシアさん聞きたいことがあるんですけど……」
彼女は私の言葉を待つ。
「メリーさんって聞いたことあります?」