優しい歌は時々雨と晴れ   作:ミスブルー

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少女に電話がかかってくる。

「あたしメリーさん。今ゴミ捨て場にいるの…」

少女が恐ろしくなって電話を切ってもすぐまたかかってくる。

「あたしメリーさん。今タバコ屋さんの角にいるの…」

そしてついに「あたしメリーさん。今あなたの家の前にいるの」という電話が。

怖くなった少女は思い切って玄関のドアを開けたが、誰もいない。

やはり誰かのいたずらかとホッと胸を撫で下ろした直後、またもや電話が…

「あたしメリーさん。今 あなたの後ろにいるの」


メリーさんの電話

「学校が急遽お休みになったわ」

 

パトリシアが身支度をしている最中に言った。

私は胸元のネクタイを留めている最中。

 

「何かあったのでしょうか…」

 

「そうかもしれないわね。部活動も今日はお休みだし」

 

しかしそれでも準備を続けるパトリシア。

 

「学校…行くんですか?」

 

「そうよ、教務には誰かいるはず…聞いてみるわ」

 

「パトリシアさん、私も一緒に行っていいですか?」

私がそう言うと彼女は私を見た。

 

「そこまで着替えてしまっているものね。分かったわ」

 

そうして私達は学校に向かい教務科にやって来た。

ノックをすると「今日は休みなんだがな」と男の人の声が聞こえた。

扉が開き私達を見下ろす。

 

「先生」

 

「コーチと呼べ」

 

「え、あ、はい殺陣コーチ」

 

そのやり取りをパトリシアは見て溜め息。

私にはこの人は大きな鬼のような姿に見えるんですけど。

それを聞くのはやめた。

それよりも聞くことがある。

 

「今日の急遽お休みの理由を聞きに来たの。分かるわよね?」

パトリシアが言う。

殺陣コーチと彼女が視線を交錯する。

しばらくして殺陣コーチが口を開いた。

 

「森宮の生徒が携帯電話を持ったまま亡くなった」

 

その言葉に私は目を見開く。

 

「早瀬の反応を見る限り心当たりがあるようだーーー話を聞かせてもらおうか」

 

その言葉に私は頷く。

 

「メリーさんの電話って言う怪談話があるそうです。この話はパトリシアさんから聞いた話なんです」

 

「どういう怪談なんだ?」

 

「えっと…ーーー」

知ったばかりの内容をパトリシアの助け口を借りながら説明した。

 

話終えると殺陣コーチはパトリシアを見る。

何か意味ありげな視線を彼女に送っていた。

 

「言っておくけれど最初から私も知ってたわけじゃないわよ…」

 

「ーーーわかっている。あいつだな」

 

「えぇーーーあいつよ」

 

あいつ?

「メリーさんの電話か…その怪談話は俺も聞いたことがある。

最後は必ず死ぬ…そんな話だったな」

 

「私達はもしかしたらメリーさんが起こしているんじゃないかって思っているのよ」

 

結局あいつが誰のことか分からないけど今は気にしなくていいようだ。

 

「そうか。今この時代…携帯電話は誰でも持っているような世界だ。時代だな…。

メリーさんの電話が今回この事件の騒動なら恐らくまた起きるだろう。

いいか深追いはするなよ」

 

殺陣コーチの言葉に私達は返事をすることもなかったが頷くことしかしていなかった

 

「ひとまずどうしましょうか」

 

全生徒には不要不急の外出は控えるよう連絡の通達が終わっているらしい。

 

「怪談に詳しい魔法使いがいるの。その子ならメリーさんの情報を持ってるかもしれない…」

 

「そんな人がいるんですか?」

 

「えぇーーー霊峰黒百合って子なんだけど…」

 

そう言う彼女は溜め息をつき表情が少しぎこちない。

その表情に私は見覚えがあった。

 

エデン条約………

 

歴史的にも根深い対立関係にあったトリニティ総合学園とゲヘナ学園の両生徒が条約を交わすことで紛争解決を行う為の条約。

 

私は中継でしかそれを見たことはなかった。

両者は楽しそうにしていたが殺伐とした空気だったのは画面越しにも伝わったくらいだ。

 

パトリシアが醸し出す空気はそれに似ていた。

そんな事を思い出すものだから私はパトリシアの表情を見る。

スマホを見て悩んでいた。

どうやら連絡先は知っているらしい。

そんなに悪いわけじゃないのだろう。

 

或いは私が知らないだけで乗り越えてはいるのかもしれない。

私達の世界だって乗り越えれたのだから。

 

「私の世界の話を急にするんですけど…」

 

そう前置きすると彼女は私を見た。

続けなさいと言うように。

私は言葉を続けます。

 

「ーーー楽園の存在を証明するために他者の心を理解しようとしても、完全に理解することは不可能だったんです。

証明できないって言う「楽園のパラドックス」が提示されました。このパラドックスに対して先生は「ただ信じる」という答えを提示しました。

その…疑心暗鬼になるんじゃなく…ただ信じるという決断です…。終わった後、全部私の世界にいる先生に聞いた話なんですけどね」

 

「……………………」

言い終わり彼女の言葉を待った。

数分してパトリシアはスマホのメッセージを開くと何かを送っていました。

 

「そうね、信じてみるーーーそうしてみるわ」

 

その言葉と表情に私は頷く。

彼女は強くて立派な魔法使いだ。

 

とはいえこうなると私達が出来ることは少ない。

 

「帰ってお茶しましょ」

 

そんな彼女の言葉にひとまず私達は帰宅することにしようとしたのだけど彼女は生徒会の他のメンバーと連絡事項が出来てしまった。

 

「ごめんなさいねユウカ、先戻っておいてくれる?」

 

「わかりました」

 

本当は手伝えたらと思いはするがさっきの会話をしたせいかそれを言う気になれなかった。

私は彼女と別れ外に出てもう少しで帰宅という時、着信音が鳴った。

 

 

 

 

 

 

非通知

 

 

 

 

 

だれ…?と思う矢先、電話が勝手に通話状態になった。

 

 

 

 

『私メリーさん、今隣街の電車の中にいるの』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして電話が切れる。

冷や汗が全身を支配した。

 

なんで?なんでなんでなんで?

 

頭が何故?の一色に染まった。

殺陣コーチの言葉を思い出す。

 

"最後は必ず死ぬ"。

 

冷や汗が吹き出た。

逃げないと。

再び電話が鳴った。

コールを押さなくても勝手に通話になる。

 

『私メリーさん。今森宮の駅にいるの』

 

ゆっくりだけど近付いてる…。

パトリシアに連絡しないと。

 

「メリーさんが私の電話に!」

 

 

彼女がすぐに連絡に出た瞬間、私は叫んだ。

 

『今いる場所から逃げて!なるべく時間を稼いで!』

 

そう言われた。

時間を稼ぐって…どうすればいいのよ。

とにかく走るしかない。

体力に自信はないが足しかないんだから。

 

しばらく走り回るとメリーさんは思ったより足が遅いことに気付いた。

 

1時間以上追いかけっこを続けている。

 

 

『私メリーさん。今学校内にいるの』

 

 

30分前にいた場所だ。

このまま逃げていればいい。

でも体力が持つか少し怪しい。

光輪大祭で走ったけどボロボロもいいとこだったのだから。

 

パトリシアからのメッセージが入ってきた。

 

それはメリーさんの電話の物語

 

 

彼女は死人であり元々人間だった

帰る場所が見つからず彷徨う亡者となった。

たった1つ携帯電話を握りしめて。

けれどもどうしてか誰かの電話番号が分かるそうだ。

いつになったら帰れるのか…自分の帰る場所はあるのかそんな想いを携えて相手へ尋ねる。

今あなたの後ろにいるのと。

真後ろに立ち振り向いた相手を殺害する。

 

「いや怖すぎなんですけど!!!ちょっとパトリシア!!!!」

 

思わず怒鳴る。

こんなホラー教えられてもどうすればいいのよ!怖いだけよ!

気づけば夕方だ。

いっそスマホの電源落とそうか。

しかし電源を落としても鳴る。

どういう能力よ。

これじゃハッキングじゃないの。

 

私はパトリシアに電話を掛ける。

文句と小言を言うだけ言った。

どうしてくれるのよ!!と。

自分の命が掛かっているのだ。

多分この時の私は泣いてたかもしれません。

 

電話を切る直前に彼女の声が響いた。

 

『必ず…必ず助けるから、諦めないで』

 

その声だけはよく聞こえた。

 

 

メリーさんの電話には分かる部分が少しあった。

帰れない…その気持ちは分かってしまった。

キヴォトスがどのくらい経っているのか…この世界と同じように過ぎているのなら私は夏という時間をこの世界で過ごしている計算だ。

でもそのメリーさんはもう帰れないのだろうか…

帰るならどこに?。

恐怖とそして同情と共感だ。

メリーさんはいつからここにいるのだろう。

神秘すら感じた。

 

 

電話が鳴った。

 

『私メリーさん。今大通りの信号を通ったの』

 

距離の詰め方が早くなってきた。

このペースだと追いつかれてしまう。

私の体力も限界。

自動車に乗る手段もあったかもしれないけど降りるバス停や駅に居たら困るし使わなかった。

 

これは次で最後かも…

空を見上げる。

 

暑い…。

 

電話が鳴る。

背筋がヒヤリとしたのが分かった。

あぁ…いる。

 

私は通話ボタンを押した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『私メリーさん。今、あなたの後ろにいるの』

 

 

 

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