いる…
すぐ後ろにいるのが分かる。
空気が違うって肌で分かる。
振り返ってはいけない。
振り向いてはいけない。
でもその姿がどんな姿かは知りたい気になってしまう。
暴きたい。
あぁこれは抗えないんだ。
私はスマホを握ったまま後ろを振り向…
「ユウカ!!!」
私の名前を呼ぶ声に私の動きは止まった。
「ユウカ、振り向いちゃダメよ」
「……!来てくれたんですね」
「助けるって言ったでしょう」
私は大きく息を吐き膝を地面に付く。
怖かった。
「それであなたは…」
『………。………。……。』
パトリシアはメリーさんと会話を始めた。
そもそも会話が出来る相手だったことに少し驚く。
パトリシアの言葉は分かるがメリーさんの声は私にはよく聞こえなかった。
「そんな姿で会いに行っても迷惑よ」
彼女の声が聞こえた。
「あの…メリーさんはどんな姿を…」
「……身体の骨が突き出てて臓器も丸見えで血管とか地面に引き摺ってるって言ったら信じる?」
「……」
私は想像するだけで血の気が引いた。
「ずっと帰れなくて困っているのね。
でもあなたはもう死んでるの。
生きてすらない。帰るとこなんてない。
いくらそれが寂しくても誰かを殺していい理由にはならないわ」
「帰るところ…」
私は呟く。
帰るとこなんてない。
もしそんな事を言われたら私は耐えられるだろうか。
寂しくもなるかもしれない。
「メリーさん、あなたは人に害を与えるモノ。そしてあなたの目の前に女の子は私の友人なの。殺されたら困るのよ。
あなた…死んでること気付いているでしょ。
成仏しないなら私はあなたを灰に変えてやるわ!」
背後で熱を感じた。
初めて見たあの炎で焼こうとしているのだろう。
「パトリシアさん、メリーさんは寂しいんですか…?」
「え…?うーん…多分ね…」
「そうですか…
パトリシアさん結界みたいなのってできたりします?」
「少しは出来るけど…何する気?」
「私メリーさんの姿見ようと思います」
「……結界を貼っても安全は保証出来ないわよ」
「それは分かってます」
「…ユウカはどうして見ようと思うの?」
「……。帰れないんですよ?私も。
一緒に手がかりを探してもらってたりするのに何も見つからない。
キヴォトスでみんなどうしてるか…私はどういう扱いなのか。
…もちろんここの生活も楽しいです。
でも…私の家はキヴォトスなんです。
メリーさんが帰れないって気持ちを持って誰かに声を掛けているなら私が誰よりも分かるんです」
言葉にしてしまうと見知った人達の顔が浮かぶ。
先生やノアやコユキ、ゲーム開発部の子達やミレニアムのみんなに私は会いたい。
「…………」
『………』
私の後ろでメリーさんの呼吸が聞こえた。
さすがのパトリシアも少し困ったのか何も言わなかった。
そしてゆっくりと言う。
「…ユウカ、一応結界は貼ったから。
好きにしなさい。骨は拾うから」
「それはフラグですよ」
私は苦笑した。
自分のスマホを操作して私も自分のシールドを貼る。
どれだけ効果があるか分からないけど。
よし…見てやろうじゃない。
そう思い覚悟を決めて私は何度かの深呼吸をして後ろを振り返るとそこにはパトリシアしか居なかった。
パトリシアも驚いている表情だった。
「パトリシアさんこれは…」
「逝ったわね。成仏したのよ自分から」
「成仏…?」
「メリーさん結構の数の人を殺してたわ。そのせいでかなりの力を持ってた。だから渋ると思ってたんだけど…。
私…ユウカが振り向いた瞬間に燃やすつもりだったの。
でも自分から成仏するなんて…ユウカの言葉に何か想ってくれたのかもしれないわね」
「そうですか…」
その言葉に私は考える。
私は助かったんだ。
自分から成仏したということは結局私が振り向いていたら死んでいたということになる。
パトリシアは私の言葉に何かを想ってくれたと言うが答えは謎のままだ。
彼女は帰りたい場所に帰れないまま成仏したのだから。
「ユウカ、帰るわよ」
パトリシアのその言葉は少し嬉しい。
「来てくれてありがとうございました。
そう言えば私には帰るとこなんてない、なんて言いませんよね?」
「な…!?言わないわよ!」
その言葉に私は笑う。
メールが1件来ていた。
モモトークでもなくメッセージでもない。
今どきメール?
スマホを私は開く。
アドレスはない。
本文も何もない。
もしかしたら電話以外は苦手だったのだろうか?
だから件名に文字が打たれていた。
『ありがとう』と。
そうして私達は帰る。
翌日、私は熱を出した。
「メリーさんやっぱり大物だったのかしら」
パトリシアはそんなことを言う。
霊障が私に直当たりしていたと話す。
よく分からないので分かりやすくお願いと言うと真夏にずっとストーブに当たってたらどうなるかしら?と言われて分かった。
暑いで済まないですよそれは火傷ですって。
紗奈と余語が見舞い兼遊びに来てくれた。
私熱発してるんですけどね…
でも私の熱は下がることはなかった。
私の看病をしてるパトリシアが私の身体を見て何かを考えていた。
その夜、彼女は言った。
「ユウカ、ちゃんと寝なさい」と。
眠れないんですと話す。
彼女は仕方ないわね…と言うと私の瞳を覆うように手を添えた。
意外とひんやりしている手だ。
「…ユウカって目が覚めたらここにいたのよね?」
「そうですけど…」
「夢の中で夢を見たからよ」
「何がですか…?」
「しっかり寝て帰る夢を見るの」
「現実逃避…」
「違うわよ。じゃあ…キヴォトスはどんなところ?」
「…学園都市で沢山学校があるんです…私はミレニアムサイエンススクール…っていう場所のセミナー…会計なんです…」
「ミレニアムサイエンススクールにはどんな友達がいるの?」
「すごく賢くて親友って呼べる友達がいて後輩でイタズラばかりだけどかわいい後輩がいて…いつもなにしてるか分からない会長がいて…ゲーム作ってる後輩達がいて……それにハッキングばかりしてくれる部活が…私よく怒りに…でも楽しかったり…………んん…」
私は深い眠りに着きました。
もうこの世界には私いませんでした。
自分は真っ黒な場所に立っていました。
眠りに着く直前「おやすみユウカさようなら」そんな声が聞こえたような気がしました。
でもこう言うものは気がした、じゃなく聞こえたの方が気持ちがいいものです。
でも私はお別れを言えてないこと。
ありがとうを言えてないこと。
こんな帰り方は望んでませんでした。
もっとちゃんと言葉を伝えていきたかった。
伝えないと分からないことって沢山あるんだから。
そんなことを考えてメリーさんが私に最後にしたことを思い出しました。
メールです。
夢の中でメールを打ちました。
そもそも送信できるのかなんて考えるのは後です。
メールを送ることに成功して「完璧」と私は言います。
前を見ます。
だんだん視界が白くなり私の視界を覆っていきました。
〜〜〜〜〜
目を覚ますと白い天井。
見覚えのある青い空。
「ここ病院…?」
曰く私は電車で倒れてミレニアムの病院に運ばれたとの事でした。
偶々先生が見つけて救急をしてくれたそうです。
ちなみに倒れた原因は脱水症状。
そういえば帰りの日、忙しくて水分を取ることも忘れていたような気がする。
ノアやコユキがいたらもしかしたらそんなことは起きなかったかもしれない。
最初に先生がお見舞いに来てくれました。
「先生、来てくれてありがとうございます」
「どういたしまして。体調はどう?」
「おかげで順調ですよ」
「よかった」
「私はどのくらい寝ていました?…もしかして1ヶ月とか…」
「2日くらいかな?みんな心配してた」
「そうですか。…2日?」
「どんなに忙しくても水分だけは忘れないようにね」
「はい、気をつけます」
「うん」
先生は帰っていきました。
あの世界で過ごした時間はこっちでは2日…?
そもそも夢だったのでは?なんて思うくらいです。
それにしてははっきり覚えてます。
曖昧で不確かな夢の内容が昨日のように覚えています。
きっと誰かに話しても信じてもらえないかもしれません。
だからこれは私だけの思い出です。
梅雨と夏の密かな夏休みーーー
それは青の世界と呼ばれたキヴォトスとは違う世界で過ごした私の少し怖くて…でも楽しかった体験談でした。
おしまいです
「あとがき…。って何?
無事に帰すことも出来たしメリーさんの怪異も終わったわ。怪談教えてくれたこと…まあ感謝してやってもいいわ」
「パト素直じゃないなぁ、チームの前じゃ素直なのに。メリーさんは自分から成仏しちゃったんだって?そんなこともあるんだね」
「ユウカが頑張ったおかげ。
そっちはどうなったの?」
「列車の人達?無事帰れたよ」
「よかったわね」
「あとメール、ちゃんと見た?」
「見たわよ。やるわねユウカ。これで一段落かしら?」
「そうだね。でも怪談は終わってないんだよ」
「…まだあるわけね」
「次はどんな怪談なんだろうね?誰が来るんだろう?ね?パトリシア聞いてる?」
「聞いてるわよ。ほらもうあとがき終わりよ!」
「「ここまで見てくれてありがとうございました」」