仮面ライダーガッチャード&デッドプール&ウルヴァリン デイブレイク・オブ・フューチャー・パスト 作:バリー
アメリカのニューヨーク州には『恵まれし子らの学園』―通称『X-マンション』という建物がある。特殊能力を持つ人間である『ミュータント』を教育・訓練するための施設であり、その様な人間で構成されたヒーローチーム―『X-MEN』の本拠地の役目も兼ねている。
そこは今、突如として現れた災厄による攻撃を受けていた。
X-MENの一人である肉食動物の様なヘアースタイルをした中年の男―『ローガン』は目の前にいる敵を睨みつける。右目にモノクルをかけ、髭を生やした黒いスーツの男だ。品のある格好だが、顔に浮かべている笑みは底しれぬ悪意に満ちている。
彼の名は『グリオン』。多くの兵士を引き連れて、学園を襲撃した張本人だ。
二人の周りでは、他のX-MENのメンバーが自らの能力を活用して敵軍と交戦している。しかし、戦場に立っているのは僅かであり、残りは力及ばず命を落として地に伏していた。
「『ミュータント』…そして『X-MEN』。異能ともいえる力を授かったとはいえ、所詮は人間どもの集まり…我々の足元にも及ばぬ存在だが…目的を阻む可能性となるものは早めに潰すに越したことはない。」
グリオンは側にある亡骸をちらりと見ながら言った。
「ローガン…お前は我々と共に来てもらおう。私がお前をミュータントより更に進化した存在に作り変え、世界を絶望に染め上げるための駒にしてやろう…『かつてお前がなる筈だった姿』の様にな。」
「ふざけるなあああああああああっ!!」
激昂したローガンは、両手の甲から三本の爪を生やし、グリオンのもとへ駆け出した。
ローガンの能力は、『アダマンチウム』という金属で覆われた鋭利な爪である。この爪を振るう獰猛な戦闘スタイルから、彼はこうも呼ばれている―
『
一気に距離を詰めたローガンは、グリオンに向かって爪の生えた腕を突き出す。しかし、それが彼に届くことはなかった。寸前でローブを羽織った青いマスクの男が割って入り、水の障壁で防いだからだ。
それでもなお、ローガンは手を止めずに左右の腕を交互に振るって追撃するが、グリオンの配下は器用に回避する。
やがて、接近してきた彼の腕を仮面の男はガシッと掴むと、懐からカードを取り出して自らの体に押し付けた。たちまち姿が変わり、紫のドラゴンの怪物がローガンの前に現れた。
危険を予感したローガンはすぐにその場から離れようとしたが、遅かった。怪物の胸にある竜の口が赤く輝いた次の瞬間、灼熱の炎が身動きの取れない彼目掛けて放たれた。
「ぐわあああああああああっ!!」
至近距離から高威力の一撃を食らったローガンは勢いよく吹っ飛ばされ、地面に転がる。皮膚を焦がし、骨や内臓にまで響く痛みに彼は悶絶する。
「がぁぁっ…クソッ…!」
自身のもう一つの能力である『ヒーリングファクター』が発動して傷が治癒されていく。しかし、まともに攻撃を食らったためか、いつもより回復が遅い。それでもローガンは痛む体に鞭打って、何とか体勢を立て直そうとした。
『クロスウィザード・ドレイン』
次の瞬間、地面から無数の触手が飛び出して彼を拘束する。グリオンが引き連れていた禍々しい黒い装甲をした兵士の一体によるものだ。ローガンは触手を必死に引き千切ろうとするが、ビクともしない。
爆発音が轟く中、悲鳴が聞こえた。思わず、ローガンは動きを止めて辺りを見渡す。そして、彼は絶望の声を漏らした。
「ああ…!」
『ヴェノムダケ・ドレイン』
自分達の頼れるリーダーである『サイクロップス』が赤い胞子の様なものを浴びせられ、鼻や目、口から血を流して藻掻き苦しんでいた。
「やめろ…」
『ワープテラ・ドレイン』
テレポートで奇襲攻撃をかけようとして、同じ能力で躱された心優しい『ナイトクローラー』が背後から貫かれた。
「やめてくれ…」
『スケボーズ』『ゴリラセンセイ』『ドレイン』
『ストーム』が攻撃する間もなく、殴られる。『コロッサス』が、凹まされる。離れたところでは、『ビショップ』が左半身を赤く染めた兵士に棍棒で頭を殴打されていた。
「やめろおおおおおおおおおおおっ!!」
地面に縫い付けられた無力な状態で、ローガンは倒れていく同胞の姿を容赦なく見せつけられた。彼は何度も何度も手足を動かし、この忌々しい悪魔の腕を振りほどこうとした。
「離れろおおおおおおおっ!離れろっ、このクソッタレがああああああああっ!」
抵抗も虚しく、『ビースト』、『ローグ』―長らく時間を共にした仲間が無惨にも倒されていく。
怒声と悲鳴が響く中、ローガンを拘束している仮面の兵士が、必死に足掻く彼を連れて行こうと近づいた。
その時、何処からともなくもう一体の黒い兵士が飛んできて、ローガンの前にいる個体に激突した。飛んできた方向には、長髪の女性―『ジーン・グレイ』が立っている。自身の能力であるテレキネシスを使ったのだ。衝撃で機械仕掛けの兵士の機能が停止し、ローガンを縛っていた触手が消える。
「ジーン!」
「大丈夫、ローガン!?」
そう言って、ジーンは彼のもとに駆け寄ろうとした――それから直ぐに動きが止まり、彼女は吐血する。
巨大な蛇が彼女の腹を突き破っていた。地面に倒れ込むジーンの背後には、無数の蛇が体に絡みついた異形がいた。
「さあ…グリオン様のところに来い。」
女の声をしたその異形は、ゆっくりとローガンへ歩を進める。彼の脳は必死に次の行動に移すよう命令しているが、恋人の惨状をたった今目の当たりにしたショックで、身体が動かせなかった。
「フッフフッ、いい子だ。大人しく、私に―ぐっ…がああああっ!?」
突如、蛇の怪物が頭にあたる部位を抑えて苦しみだした。それと同時にローガンの脳内に声が響く。
「(聞こえるか、ローガン。)」
「チャールズ!?」
「(ここは退却しろ。我々が時間を稼いでいる間に『X-ジェット』に乗れ。国外に脱出するんだ。)」
「なっ…何を言っている!?お前らを見捨てて、俺だけ逃げろっていうのか!?」
X-マンションの創設者にして、X-MENの指導者でもある『チャールズ・エグゼビア』の指令にローガンは動揺する。
車椅子に乗った禿げ頭の男性は、学園内から自身のテレパス能力で怪物の動きを止めながら、彼に語りかけた。
「(彼らの目的は君だ。ヒーリングファクターを持つ君が悪しき者の手に渡れば、世界はますます窮地に追い込まれてしまう。)」
どんな傷を負わされても、すぐに治る。死を恐れることなく、生きて戦い続けられる。人類を守るという観点から見れば、これ以上にない程の救いとなる能力。しかし、敵の管理下に渡れば、却ってそれは人々を苦しめる脅威になり得る。
過去のローガンの最悪の可能性―『ウェポンX』の様に。
「だが、チャールズ!俺は―」
「(ローガン。)」
チャールズが厳かに告げる。
「(最も大きな力を持つ者は、持たざる者を守る―希望を繋ぐんだ。)」
今までに受けてきたどんな命令よりも、彼のその言葉はローガンには重く感じた。
「(『クイックシルバー』!)」
チャールズの呼びかけと同時に、ゴーグルをかけた青年がローガンの隣に現れた。まるでたった今その場に出現したかの様に音もなく。
「(彼を頼む。)」
クイックシルバーは回復中のローガンを担ぎ出すと、自身の高速移動で戦場から彼を引き剥がした。
一瞬にしてローガンの目の前に、巨大な戦闘機―X-ジェットが現れた。実際には、学園の地下に移動しただけなのだが。視界に広がる光景がいきなり切り替わり、彼は少しばかり狼狽する。
クイックシルバーは肩からローガンを降ろした。
「急ぐんだ、ローガン。もう直、ここにもアイツらが来る。」
「ピエトロ、お前も一緒に!」
「いいや…オレはもう、ダメみたいだ…」
ローガンは、改めて彼の身体を見た。スーツの至るところに穴が空き、そこから大量の血が流れている。高速移動している間に、敵からの銃撃を受けたのだろう。ピエトロの顔は青ざめ、荒い息を吐いており、もうすぐ限界であることが嫌でも思い知らされた。
「ピエトロッ!」
「早く行け、ローガン!!」
ふと視線をやると、向こう側から敵の大群が近づいてくるのが見えた。武器を構えてこちらへと駆け出している。
ローガンは苦渋の選択を迫られていた。この場を離れたら学園に残っているピエトロやチャールズまでもが、犠牲になることは想像に難くない。しかし、もし自分が敵に捕縛されたら、二人の命を懸けた行動を無下にすることになってしまう。
ローガンは血が出るほど唇を噛みしめると、ピエトロから背を向けてX-ジェットの方へ全速力で向かった。彼を見送ったピエトロは満足そうな笑みを浮かべると、力なく床に倒れ伏した。自分のもとに迫る足音が聞こえてきたのを最後に、彼の意識は闇に沈んでいった。
戦場と化した学園外。風を切るような音が聞こえたグリオン達は、空を見上げる。一機のブラックバードが彼らの頭上を通り過ぎていった。ローガンが逃走を図ったことを、彼らは理解する。
「追え!ヤツを逃がすなっ!」
『ホークスター・ドレイン』
磔にされた天使の像をまとった配下の怪物の指示を受け、何体かの兵士が羽を生やして上空へと舞い上がった。
そんな中、ローガンと同じく敵の魔の手から逃れようとしている者がいた。名前は『キティ・プライド』。壁抜けの力に目覚めた彼女は、最近X-メンに入ったばかりの新入りだった。
彼女は今、『
肺が水に侵され、意識が薄れていく中、キティは瀕死状態の仲間に手を伸ばした。
「(お願い…私の命はどうなってもいい…だから…)」
能力の覚醒に戸惑っていた自分に、人の役に立つ使い方を教えてくれた。戦いで窮地に陥った時、身を挺して助けてくれた。自らが悩んでいる時に、温かい言葉をかけてくれた。
そんな仲間の命が、今目の前で消えようとしている。
「(どうか…彼らだけでも…助けて…!)」
誰に願っているのか、自分でもよく分からなかった。それは神に対してなのか、あがいている無力な己自身に対してなのか。届かないと分かっていながらも、キティは必死に手を伸ばす。
その時、彼女の手から光が灯った。死にかけの蛍が最後に自らの存在を主張しようとするかの様な朧気なものだった。キティすら、何が起こっているのか。そして自分が行動をしているということさえも、認識していなかった。
やがて彼女が最後の息を吐き出して水の棺桶に身を沈めると、その光は彼女の命の火と共に消えたのだった。
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