仮面ライダーガッチャード&デッドプール&ウルヴァリン デイブレイク・オブ・フューチャー・パスト   作:バリー

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第十三話

メイディレーヌと彼女の軍団を撃破したガッチャード達は、グリオンの牙城の内部に足を踏み入れた。

 

現代の宝太郎の世界の侵攻の準備をしているドレットルーパーの大群に見つからぬ様に息を潜めながら、一同は城の中を進んでいく。

彼らは互いに視線を交わして頷くと、二手に分かれた。

二人のガッチャード、ローガン、ウェイドはグリオンのもとに向かう。残ったりんねとローラ、一香、ドーピンダーは囚われた難民達の救出へと動き出す。

 

階段を下り、薄暗い通路を抜けながらりんね達は難民達を探索する。

やがて、四人は不気味な静けさに満ちた広い空間に辿り着く―そこに一香の父と難民達が、檻に閉じ込められていた。

一香は必死に自身の父親や難民に呼びかけるが、返事はない。全員開かれた目は虚ろで、表情に生気が感じられなかった。

 

「遅かったなぁ。」

 

四人は声がした方を見上げる。青と黒のデスマスクが、遥か上でフェンスにもたれかかっていた。

 

「ソイツらはもう用済みだぁ…何故なら—」

「彼らの絶望は、既に十分頂いた。」

 

黒いデスマスクが嘲るような口調で言葉を吐き、青いデスマスクが赤い液体が入ったフラスコを見せつけるかの様に軽く振る。

 

りんねとローラは生気を失った人々に再び目をやり、唇を噛んだ。

間に合わなかった—その悔しさが、二人の胸を締め付ける。

 

青いデスマスクが手元に赤いゲートを展開し、フラスコを移動させた。手ぶらになった彼は、顔からマスクを剥ぎ取る。黒いデスマスクもそれに続いた。

 

後者は、全員が見知らぬ顔だった。髭を生やした短い黒髪の西欧人である。

しかし、前者の素顔を見た瞬間、りんねは驚きの声を上げた。

 

「ミナト先生…!?」

 

青い仮面から現れた顔は、自分達の教師である男と瓜二つだった。唯一の違いは、右側に痛々しい赤いケロイドがあるところ。

 

「俺は『冥黒のデスマスク』が一人…『アルザード』。」

「同じく、『冥黒のデスマスク』が一人—『マンジーニラス』様だ!」

 

二人のデスマスクは、ローブを脱ぎ捨てる。アルザードは生前のミナトと同じ制服を着ているのに対して、マンジーニラスの方は黒いコスチュームを纏っていた。手足にはそれぞれ赤いグローブとブーツをつけており、胸部には翼が生えた十字架が描かれている。

 

アルザードはしゃがみ込むとフェンスの間から顔を出して、一香に視線を定めた。

 

「そこにいるのは、一香か…?」

 

すると彼は物静かな態度を一変させ、狂ったように笑い始めた。

 

「最高だったぞ!お前の父親の…苦痛に歪む顔はぁっ!」

 

その時の顔を再現しているのか、アルザードは白目を剥いて舌を垂れ下げる。そこから再び、ゲラゲラと醜悪な笑い声を上げ始めた。

 

「そこにいるガキ共も傑作だったな!」

 

アルザードが嘲笑を響かせる中、マンジーニラスも同じ様に口角を上げて檻の中を指差す。

 

「『パパ~!ママ~!たすけて~!』って泣き喚いてる時のブッサイクな顔がよぉっ!あまりにも無様すぎて、見てるだけで腹が捩れそうだったぜ!!ヒャッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!」

 

マンジーニラスはフェンスを強く叩きながら嗤う。

 

ゲラゲラゲラゲラ ゲラゲラゲラゲラ ゲラゲラゲラゲラ ゲラゲラゲラゲラ

 

二人の哄笑が静寂と闇に包まれた空間に反響し、マジェード達の耳を襲う。

 

ゲラゲラゲラゲラ ゲラゲラゲラゲラ ゲラゲラゲラゲラ ゲラゲラゲラゲラ

 

ドーピンダーは目の前の人の形をした『何か』から漂う悍ましさに恐怖し、一香は父親を侮辱する様な振る舞いをする怪物に凄まじい怒りを燃やす。

りんねとローラに至っては鬼の形相で彼らを睨みつけており、後者の固く握りしめられた拳からは既に二本の爪が生えていた。

 

やがて二人のデスマスクは自分達がいた場所から飛び降りると、そのままりんね達に襲いかかる。

 

アルザードはりんねを投げ飛ばすと、憎悪に燃える一香を嘲笑いながら甚振り続ける。

放たれた銃弾を水の障壁で受け止めると、高圧の水流を浴びせて一香を柱まで押し飛ばした。

床に崩れ落ちた彼女の体を、アルザードは蹴りつける。

 

「おい、もっと見せてくれ!怒りに歪んだ顔をぉ!ヒャハハハハハハハハハ!!」

 

生者と死者を何処までも冒涜する悪魔の振る舞いに、りんねの怒りが頂点に達する。

 

「その姿で…もう、何も喋るな!!」

 

彼女はアルザードに怒鳴りつけた。

 

「私達の夢を、誰よりも優しく!誰よりも厳しく!全力で守ってくれたのは…ミナト先生だ!!」

 

恩師の顔で悪行の限りを尽くす化物を、彼女は睨みつける。

 

「知ったことかぁっ!!」

 

アルザードは紫の竜の怪物—『ドラゴンマルガム』に変貌した。

 

「貴方は私が倒す…!」

 

目に怒りの炎を宿しながら、彼女は変身した。『ムーンケルベロス』という形態となったマジェードはマルガムの攻撃を躱しながら、強烈な蹴りで応戦していく。

 

一方のマンジーニラスは、ローラと交戦していた。自身に飛んでくる爪を、彼はひらりひらりと器用に回避する。邪悪な笑みを浮かべる敵に対し、彼女は憤怒の唸り声を上げながら腕を振るう。少女時代に、自分と同年代の仲間を『処分』しようとした研究員達の顔と目の前の相手が重なる。

ドーピンダーは銃を向けるも、近くに仲間がいることと敵の素早い動き、そして自身のデスマスクに対する恐怖心が相まって、上手く照準を定められずにいた。

 

マンジーニラスは跳躍してローラから距離を取ると、手にしていた木製の杖を二人に向ける。

杖の先端が赤く発光し、そこから光線が次々と放たれた。ローラは咄嗟にそれらを回避したが、ドーピンダーは即座に対応できずそのまま爆発に巻き込まれてしまった。

吹き飛ばされて壁に激突した彼は、意識を失う。

 

「ドーピンダー!」

「余所見してる場合かよぉ!」

 

熱線は容赦なくローラに迫ってくる。彼女が避ける度に、床が深く抉れて破片が水しぶきの如く吹き上がった。

ことごとく襲い来る光線を躱しながら、ローラは真っ直ぐマンジーニラスのもとに駆けていく。距離を詰められた彼は、右腕の杖を彼女の頭部に叩きつけようとした。

ローラは素早くしゃがむ。横薙ぎに振るわれた杖が素通りした瞬間、彼女はマンジーニラスの右腕に爪を突き刺した。

 

「ぐあっ!」

 

手放されて床に落下した敵の杖を、ローラは遥か遠くまで蹴り飛ばす。そして攻撃手段を無くした相手の心臓部目掛けて、二本の刃を沈めようと拳を振るった。

 

しかし、マンジーニラスは一枚のレプリケミーカードを自身に押し当てる。

ローラの前に現れたのは、巨大な大木の怪物—『ジャングルマルガム』。

マルガムは太い木の腕で迫りくる爪を逸らすと、そのまま彼女に向かって腕を振り上げた。

 

衝撃で宙を舞ったローラの身体は床に叩きつけられ、床を転がる。痛みに思わず呻くが、彼女はすぐに態勢を立て直した。

自身の彼方にいるジャングルマルガムが、両腕を突き出す。それらが赤い光を帯びた瞬間、ローラは地を蹴って走った。

 

木の腕から先ほどと同じ光線が二本放たれ、彼女がいた場所を深く抉った。横に横にへと駆け出す彼女を狙い、マルガムは熱エネルギーを連射する。

 

マンジーニラスを形成する死体は、熱エネルギーを放射する能力を持つミュータントのものである。放射の際に木を媒介にする必要があるこの能力の行使には、大半が木で構築されたジャングルマルガムの身体がうってつけなのだ。

 

ローラは足を止めること無く柱に向かって疾走し、光線の連撃が彼女の軌跡をなぞる様にして床に突き刺さっていく。

やがて柱との距離の差が数センチになったところで、彼女は一歩踏み込んで跳躍。そして柱を蹴りつけるとその反動で方向転換し、マルガムの上半身に飛びついた。

 

両足で大木となっている胴体にしがみつくと、ローラは力任せに腕を振るう。鬱蒼とした葉を掻き分けながら、樹皮に覆われた頭部を何度も何度も刺していく。

容赦のない連撃に襲われているにも関わらず、マルガムは倒れなかった。頑丈な木の幹が、内部への侵攻を阻んでいるのだ。怪物は体を大きく揺することで、彼女を無理矢理振り落とす。

 

滑り込むようにして着地したローラはマルガムに向かって走り出すと、身を翻して回し蹴りを叩き込む。爪先から展開された爪が勢いよくマルガムに食い込み、そこに蹴りの衝撃が加わることで仰向けに転ばせる。

床に背をつけたマルガムに馬乗りになると、ローラは幹に彫られた顔面目掛けて爪を振り下ろそうとした。

 

「がっ…!」

 

その時、一筋の光が彼女の腹部を貫いた。ジャングルマルガムの背面から伸びた枝が地中を通って彼女の後ろに回り込み、光線を発射したのだ。

不意打ちを食らって前方に倒れそうになるローラを、マルガムは殴り飛ばす。

 

一瞬にして、遥か後方へと追いやられる彼女の体。床に激突したローラがよろめきながらも立ち上がったその時、複数の木の枝が彼女の手首に巻き付く。

マルガムは身体中から生やした木の触手でローラを持ち上げると、足首にも巻き付けて広げることで彼女を大の字に固定した。

 

ローラは拘束から逃れようと必死にもがくが、強固な木のロープは自らをがっちりと抑えつけて逃がさない。拳や足先の爪も使えないため、切断して解くことも不可能だった。

 

その頃、気絶していたドーピンダーは目を覚ました。痛みが響く頭を抑えながら、前を向く。そこで彼は、絶体絶命の状況に陥っているローラの姿を目撃した。

 

「ヒャッハッハッハッハッ!いい格好だなぁ!」

 

地に佇み嘲笑うマルガムに対し、宙吊りのローラは歯を食いしばってひたすら手足を動かし続ける。

 

ドーピンダーは辺りを見渡す。りんねはドラゴンの怪物と戦っているし、一香に至っては未だに気絶したままである。

つまり、今彼女を助けられるのは自分一人だけ。

 

「降りてぇなら、今すぐ降ろしてやるよ!」

 

ハッと再び視線を前方に戻すと、ジャングルマルガムが両手を合わせて彼女の方に向けていた。先端に光が収束し始める。彼は高威力の熱線をローラに浴びせ、トドメを刺すつもりだ。

 

慌ててドーピンダーは床に転がっていたサブマシンガンを手に取ると、マルガムの方に構えた。しかし、銃身が小刻みに震えて照準がブレまくる。

 

彼は怯えていた。人を人とは思わぬ怪物達の悪意を目の当たりにして、恐怖に支配されていた。

もし、いつもの如く弾道が反れたらどうなる?音でこちらに気づいたあの化物が、矛先を自分に向けるかもしれない。それに最悪の場合、弾が仲間であるローラに当たってしまうかもしれない。バックアップしてくれる者達がいないこの状況で、そんな目に遭ったら致命的だ。

 

引き金にかけようとしていた指が止まる。

脳裏に浮かび上がる負のビジョンによって、ドーピンダーの行動する意思は鈍り始める。

 

「(やっぱり、俺は…スーパーヒーローには—)」

 

その時、グリオンの城に向かっていた時の光景が目に浮かんだ。

 

『『勇気』があるヤツっていうのは、恐怖を感じないヤツのことじゃない。怖くても前に進もうとする意思を持っているヤツのことを言うんだ。』

 

助手席で全身赤タイツの男が、自分に向けて口にしていた言葉が蘇る。初めて会ったのに、何故か昔ながらの親友だったかの様な錯覚にとらわれる男。

 

『アンタは絶対ヒーローになれる。スーパーパワーはもう『ここ』にある。』

 

脳裏に響く男の温かな声が、背中を押す様にドーピンダーの心を奮い立たせる。

 

「(俺は、ヒーローに—!!)」

 

下半身を意識して踏ん張り、銃を持つ腕に力を込めて態勢を固定する。

 

『思い切ってアクセルをベタ踏みしろ。』

 

「なるんだあああああああああああああああああああっ!!」

 

雄叫びを上げながら、ドーピンダーは硬直していた指を動かしてトリガーを引いた。

銃口から放たれた弾幕が、一直線にマルガムに向かって殺到していく。

 

「グォオオオアァッ!?」

 

無数の銃弾を受けたマルガムは、衝撃の余りに触手を緩めてしまう。解放されたローラの体が、ドサリと床に落下した。

 

「ヴァンフェ!」

 

その時、ドラゴンマルガムと戦闘中のマジェードのホルダーから一枚のケミーカードが彼女のもとに飛来した。それは、ファンタスティックケミーの一体である『ヴァンフェルリル』。

カードがローラと重なり合うと彼女の全身が輝き出し、姿が変わった。ローラは全速力で駆け出し、マルガムに腕を振るう。

 

斬撃を食らったジャングルマルガムは弾丸の如く吹っ飛び、轟音を立てて床に激突する。派手に叩きつけられた身を起こすと、変貌したローラと目があった。

 

上半身から下半身にかけて黒いレザー製のクロックトップとフルレングスパンツ、そしてブーツを身に着けており、腰には金色のベルトが巻かれている。

頭部にはウルヴァリンと同形状のマスクが被さっており、拳からは長さが増した二本の爪が突き出ていた。

 

肉食獣を思わせる装いになったローラは、鋭く尖った爪をマルガムに向けて構える。

 

「こっのやろおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

ジャングルマルガムは身体中から無数の木の枝を生やし、それらを両腕と共に前面に突き出す。

赤い光が先端に収束した瞬間、無数の熱線が一斉に標的の方に放たれる。

 

ローラは地を蹴り、躊躇うこと無く光の雨の中に飛び込んだ。

自らの身に降りかかる攻撃を爪で叩き落としながら、彼女は一直線に疾走する。

敵の眼光に気圧されたジャングルマルガムは、触手を震わせながら熱線を矢継ぎ早に撃ち続けた。だが、それでも尚彼女の突進を止めるには至らない。

 

敵の間合いに入ったローラは地を踏み切り、腕を大きく振りかぶる。

 

Vete Al Infierno (地獄に落ちろ)!

 

交差する腕の勢いと共に、二本の爪が青い光を纏いながらマルガムを切り裂く。

 

刻まれた痕は—『X』。

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

樹木の怪物は火花を散らしながら、断末魔と共に爆ぜて元のマンジーニラスの姿に戻る。

満身創痍の彼は悪あがきと言わんばかりに近くに落ちていた杖を拾うと、ローラに先端を向けた。そして光線を放つ—前に、ドーピンダーによる弾丸の洗礼を浴びて土に帰される。

 

「オレの勇気でやっつけたぞ!!」

 

ドーピンダーは両腕を高く掲げて、歓声を上げた。

 

ちょうど、残りの二人もアルザードを倒したところだった。

ヴァンフェンリルがマジェードのところに戻り、ローラの変身が解除される。

マジェードは指輪を光らせ、錬金術で鉄格子を曲げることで檻を開放した。

ローラは一香とドーピンダー、そして囚えられていた難民達の方を見やる。

 

「私達は、皆を安全な場所に避難させる。」

「分かった!」

 

マジェードはローラ達に後を任せると部屋を出た。グリオンと戦っているであろうガッチャード達を援護するために。

 

残された三人は、難民達を城の外へ誘導する作業に取りかかるのであった。

 




来週は現代に残った錬金アカデミーの仲間の戦いに関するエピソードを投稿します。

・『マンジーニラス/ジャングルマルガム』
グリズナー、メイディレーヌと同じデスマスクの後輩。生前とあまり性格が変わっていない。木を媒介にして光線を放つ能力を持ち、これはマルガムに変身した後も継続される。

基になった死体は『ブラック・トム・キャシディ』。『デッドプール2』でレイシスト(嘘)のケーブルに殺されたアイスボックスの囚人である。
原典では前述のビームの他にも植物を操る能力を行使しており、当初は実写の終盤まで生きて活躍させる予定だったが、予算の都合であっさりとした扱いになった。また、コミックではジャガーノートとパートナー関係を結んでいた。
変身前のコスチュームは、コミックに準拠したもの。名前の由来は、有毒の樹『マンチニール』。

・『ローラの強化形態』
原典コミックの衣装に、ウルヴァリンのマスクを被せたもの。フィギュアシリーズ『VARIANT PLAYARTS改』版も意識している。
ヴァンフェンリルと組ませたのは、彼女の父親であるローガンが『一匹狼』と呼ばれていたことから。
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