仮面ライダーガッチャード&デッドプール&ウルヴァリン デイブレイク・オブ・フューチャー・パスト 作:バリー
グリオンの牙城に潜入していたガッチャード達は、広大な部屋に出た。
敵を探そうと立ち止まった彼らの上にある天井が光った。
「「危ない!」」
危機を感じたガッチャードとウェイドは、デイブレイクとローガンを突き飛ばす。液状の金が二人に降り注ぎ、一瞬にして凝固。動きを封じた。
「待っていたぞ、ローガン…そして二人のガッチャード…随分と愉快な仲間を連れてきた様じゃないか。」
声がした方向に四人は視線をやる。デイブレイクが忌々しげに眼の前にいる男の名を口にした。
「グリオン…!」
黄金のキューブを持った男が嘲笑を浮かべながら、こちらの方に歩み寄る。
「私の大好物なんだ…未来無き者達の、無駄な抵抗というやつをな…!」
「アンタが親玉か。言っとくけどな、女の子を悪い道に引きずり込んどいてポイ捨てするヤツの成功なんて長続きしないよ?『
ウェイドの軽口を余所に、グリオンはキューブを操作する。そこからエネルギーが放たれ、拘束されたガッチャードとウェイドを襲った。
「「うあああああああああああああっ!!」」
「テメェ…!」
「やめろ!」
『ガッチャーイグナイター!』
ローガンは爪を展開し、デイブレイクは『ファイヤーデイブレイク』に姿を変えるとグリオンのもとへ駆け出した。
当の本人はアルザードが転送したフラスコを受け取り、中の液体を見て満足そうな笑みを浮かべる。
ローガンとデイブレイクは腕を振るい、グリオンに攻撃を仕掛ける。一度回避されたが、すぐに二人は振り返って次の行動に移す。彼らの爪と拳が、グリオンの胴体に刺さった。
しかし、直撃したにも関わらず、グリオンはゆっくりと顔を傾けてぞっとするような笑みを漏らす。
「見ろ…!」
彼が手にしていたフラスコが、一枚のケミーカードに変化した。そこに描かれているものは、地球上で知られている万物のどれにも当てはまらない。不可思議な紋様が刻まれた赤い正八面体だった。
青いガッチャードは新奇なカードに戸惑いの声を漏らす。
「これで、私は…完全な存在となる!」
デイブレイク達の追撃を躱したグリオンは、手にしていたキューブを自身の腰に押し付ける。黄金の光と共にそれは、奇妙な赤いベルトとなって彼の体に装着された。
『エルドラドライバー!』
「わーお、スッゴいムカつく声*1。」
ウェイドがマスク越しに顔を歪める。
『ダークエーテル!』
グリオンがカードを上方にスライドしてから装填し、右側のキューブを回した。
「『変身』…!」
『ギーネ・クリューソス!ドラド!』
禍々しい赤黒いエフェクトに包まれた彼の身体を、鉤爪状の両手が掴む。三つの円が内部に並んだ逆三角形の紋章が浮かび上がり、装甲が全身を包み込む。
現れたのは深い紅の鎧を纏った魔王―『仮面ライダードラド』。妖しく輝く金の角と三つの複眼を頭部に備えた怪物じみた容貌からは、底しれぬ威圧感が放たれていた。
「その姿は…!」
「うっわ、色被りかよ。」
「「グリオン!」」
ガッチャードが驚き、ウェイドが引いた声を洩らす中、デイブレイクとローガンは雄叫びを上げながらドラドのもとに駆け出す。
ドラドは突き出される拳と爪を躱すと、彼らの胴体にそれぞれパンチとキックを食らわせた。そこから続けざまに連打を繰り出し続ける。二対一という有利な状況にも関わらず、二人は反撃する機会も与えられないまま甚振られ続ける。
「一ノ瀬宝太郎!お前は自分の過ちをやり直したつもりだろうが…ここで味わった絶望を、もう一度繰り返すだけだぁぁぁっ!!」
デイブレイクの身体をドラドは両手で掴んで動きを封じ、その後投げ飛ばす。そして背後から迫るローガンのクローを片腕の装甲で防ぐと、叩き落として顔面を殴り付ける。
マスクを被っていても尚殺しきれない強い衝撃で、彼の意識が一瞬飛ぶ。隙を見逃さずドラドは、腹部に膝蹴りを打った。
「そして、ローガン…!お前は兵器になり損ねた失敗作!人間を越えた力を持っていながら、仲間などという下らんものに惑わされ、己の進む道を誤った哀れなミュータントだ!」
同じ要領でデイブレイクのもとへと投げ出され、ローガンの体は床に激突する。身を起こす二人に向けて、ドラドは手をかざす。衝撃波を食らった彼らの体は大量の火花を散らしながら、遥か後方へと吹き飛ばされた。
「「ぐあああああああああっ!!」」
「デイブレイク!」
「ローたん!」
悲鳴を上げる二人を見て、青いガッチャードとウェイドは叫ぶ。
「まだだ…!」
「オレは…オレ達は、諦めない!」
己の身に鞭打って、ローガンとデイブレイクはふらつきながらも立ち上がる。
ドラドはそれを鼻で笑うと、大振りの鎌を召喚して二人に近づく。
デイブレイクはガッチャートルネードとガッチャージガンを、ローガンはアダマンチウムクローを生やした拳を構えて応戦する。
振るわれるドラドの鎌をデイブレイクは、顔面の前にガッチャートルネードを持っていくことで防ぐ。その隙に別方向からローガンが迫るが、ドラドは足を伸ばしてキックを叩き込むことで間合いを広げる。
その後巻き取るように鎌を回転させることで、ガッチャートルネードを持つデイブレイクの体勢を崩す。デイブレイクはドラド目掛けてガッチャージガンから光弾を放つが、それも回避された。
下から鎌を蹴り上げることで押さえつけられていたガッチャートルネードを解放すると、デイブレイクは体を横に一回転させて斬り付ける。
ドラドは柄の部分でそれを防ぐと、上へ下へと婉曲した刃を振るう。それをしゃがみ、跳躍することでデイブレイクは回避し、地を転がって移動する。
再び彼の顔面に向かって、ドラドの鎌が上から迫る。
ガキィンッという音が響いた。デイブレイクの前に躍り出たローガンが、クローを交差させることで受け止めていた。彼はそのまま押し返すと、無防備になったドラドの胴体に斬撃を浴びせようと右腕を振るう。
ドラドはバックステップで回避。そこからまたデイブレイクが、ガッチャートルネードで斬りかかる。それがまた防がれる。
三人の一撃は相手に届かず、戦況は膠着したままだった。
デイブレイク達に加勢しようと、ガッチャードとウェイドは必死で拘束を破ろうと藻掻く。
「クソッ!オレちゃん抜きで、お楽しみとかズルすぎんだろ!!」
「絶対に負けない…必ず未来をガッチャするんだ!」
その時、ガッチャードのベルトからホッパー1とスチームライナーが飛び出した。二体はクロスホッパーとテンライナーに自身を再錬成すると、宝太郎を『プラチナガッチャード』に変身させる。
クロスホッパーはガッチャードのホルダーを蹴りつけ、『バーニングネロ』、『ファイヤマルス』、『インフェニックス』、『フレイローズ』のカードを排出させる。
『プラチナシュート!』
「うぉわっ!あっつ!あつっ!あっついっ!!」
火属性のケミーカードがガッチャードライバーに装填されると、二人を拘束していた金が熱で融解して弾け飛ぶ。
体の自由が利けるようになったガッチャードは『エクスガッチャリバー』を持って、ドラドへと直行。そのまま、デイブレイクの援護をする。
一方のウェイドは、ローガンのもとに駆け寄った。
「休み無しだから、へばっちゃった?まだイケるよね?」
「当たり前だ!」
二人は刀と爪を構え、ガッチャード達のもとに向かおうとする。
しかし、突如として謎の人影が割り込み、彼らの前に立ちふさがった。
ドラドは二人のガッチャードを相手しながら、ウェイド達の方に顔を傾けて告げる。
「貴様らには、『彼』の相手をして貰おう…私が生み出した最高傑作にして、究極のデスマスクのな!」
ウェイドとローガンは、目の前にいる人物を見た—特徴的な『緑』のマスクとローブで顔と全身を覆っている。
ウェイドは顔をしかめる。嫌なことを思い出させる色だった。過去の自分に弾丸を撃ち込みたくなる様な黒歴史。
「はぁー…これ以上、誰が出るっていうわけ?今度こそマグニートー?」
「既に倒した。」
「じゃあ、『ケーブル』か?それとも『セバスチャン・ショウ』?くれぐれも『X-24』っていうオチだけは勘弁して―」
デスマスクが、仮面とローブを外した。自身を隠すもの全てを剥ぎ取り、彼は姿を露わにする。ウェイドは息を呑んだ。
服装は下半身に長ズボンと靴を身に着けているのみで、後は全部肌色だった。裸の上半身には、無数の黒い線と丸で構成された電子回路の様なマーキングが描かれている。
何と言っても、特徴的なのはその頭部だ。髪の毛一本たりとも生えていないスキンヘッドの顔には、『口』にあたる部分が存在していなかった。そこは上から塗料で塗り潰されたかの如く肌の色と同化していた。
「笑えないジョークだ。」
奇しくも、宝太郎の仲間と同じ台詞をウェイドは吐いた。彼の胸中で激しい怒りが燃え上がっていた。目の前にいる存在を一刻も早く殺してしまいたかった。緑に関するものとは比べ物にならないぐらい屈辱的な記憶を思い出させるその姿を。台本をケツ拭き紙にしても、飽き足らないくらいの憎悪を抱くような。
デスマスクは、何処からかレプリケミーカードを取り出す。両手にそれぞれ五枚ずつ。封じ込められているのは、どれもレベルナンバーX。男がカードを宙に放り投げると、計十枚のカードは彼の身体に吸収され、奇怪なマルガムに変身させる。
全体的にはウィザードマルガムとドラゴンマルガムをかけ合わせた様な見た目をしているが、細かなところが違っていた。
まずは、両腕。右肩にはティラノサウルスの頭部と前足が横向きで配置され、地球を模した左肩の斜め上には金色のUFOがバンドで固定されている。まるで墜落したかの様に。
腕に通された紫の袖からはカブトムシとライオンの頭が飛び出しており、両方が袖の中から生える小さな腕によって、目隠しされていた。
次にローブが垂れ下がる下半身。右脚の膝から下には、城壁を模した分厚い板が四枚周囲に張り巡らされている。脚から生えた二本の腕と無数のバンドで固定されたその有様は、まるで即席で作ったハリボテの要塞の様。
左脚の方は大木の樹皮や枝で覆われており、同じく腕とバンドで繋ぎ止めていた。爪先には木の根が表面に張り付いている。
上半身。アルザードのものと同じく紫のドラゴンが拘束されている。だが、その頭部と翼には戦闘機の機首と主翼が、兜や装甲の様に括り付けられている。
ドラゴンの口から吐かれる炎をせき止めている両腕は、『X』の字を主張するかの様に胸元で交差されていた。
そして頭部。左右にドラゴンの翼が貼り付けられたそれは、マルガムの素体のもの。結束バンドで構成された頭部は一部が綻びており、そこから横一直線に伸びる真っ赤な目がウェイドとローガンを睨んだ。
『X』を越えるレベルの怪物兵器―『ウェポン
戦場に響き渡る甲高い金属音。ガッチャードとデイブレイク、そしてドラドの武器がぶつかり合い、火花が散る。
二人のガッチャードは代わる代わる刃を振るい、真紅の魔王に斬りかかる。それらを鎌で遮りながらドラドは一撃を叩き込もうとするが、届くことはない。
凶刃を素早く防ぎ、息のあったコンビネーション攻撃でガッチャード達は圧していく。
後退しつつあるドラドの胴体目掛けて、エクスガッチャリバーとガッチャートルネードの刃先が前方から同時に迫る。
鎌の柄でドラドは受け止めるが、ガッチャード達は刃をそのまま食い込ませる。そして滑らせるようにして武器ごと敵の体を前へと押し出し、斬撃を見舞う。
衝撃で床に倒れ込んだドラドを見下ろしながら、デイブレイクは叫んだ。
「絶望を味わうのは、グリオン…貴様だ!」
『アッパレブシドー!』
『エックスレックス!』
二人はそれぞれの武器にケミーカードを装填。刃先にエネルギーが収束し、輝きを増していく。
『ケミースラッシュ!』
『エックスレックスエクストラッシュ!』
「「はぁっ!!」」
剣を振り下ろした瞬間、炎を纏った斬撃と暴君竜の頭部が放たれた。
燃え盛る刃と鋭い牙を見せる大顎が、一直線にドラド目掛けて突き進んでいく。
しかし、当の本人は怯むことなくベルトの右側にある『ゴルダキュービックラティオ』を回転させた。
『テウルギア』
神働術が発動し、ドラドの周囲の空間に過度な重力が生じる。目前に迫っていた一閃はその圧力に耐えられず、瞬く間に押し潰されて消滅してしまった。
「なにっ!?」
「そんな!?」
「フッハッハッハッハッハッハッ…言った筈だ!私は『完全な存在となる』と…!」
動揺の声を漏らす彼らをドラドは嘲笑し、キューブを今度は二回転させる。
「戯れは終わりだ…」
『アストロロギア』
「っ…!ハアアアアアアアアアアッ!」
「うおおおおおおおおおおっ!!」
悠然と歩みを進めるドラドに一瞬気圧されながらも、二人のガッチャードは地を蹴った。
剣を振り抜いて攻撃を畳みかけるが、ドラドはそれらを最小限の動きで躱していく。身を捩って刃を素通りさせ、肉薄してくる剣先を腕で払う。
未来を見通すドラドは、ガッチャード達が攻撃に転じるより早く鋭い拳と蹴りを打ち込んだ。
「ぐうっ!?」
「うあっ!」
防御の姿勢を取る暇もなく直撃を受けた彼らの体は、後方へと弾き飛ばされた。
すかさずドラドは、キューブを三回転。
『アルケミア』
ドラドの周囲にいくつもの巨大な岩石が出現。禍々しい炎に包まれた岩塊が、唸りを上げながら高速で打ち出される。
「くっ!」
『ジャマタノオロチ!』
『ガッチャージバスター!』
「やばっ!」
『ゴキゲンメテオン!レンキングロボ!ユニゾン!』
『ガッチャーンコ!』
『プラチナシュート!』
デイブレイクは八又に分かれる光線を発射。ガッチャードは巨大化させた無数の隕石をぶつけることで迎撃する。
その隙を利用して、ドラドが鎌を振りかざして一気に肉薄。
ガッチャードは反射的に回避行動へ移り、床を転がって刃の軌道から脱した。
その頃別所では、ガキィン!ガキィン!という打撃音が空間を震わせている。
ウェイドとローガンは二本の刀と爪をウェポンXIに叩き込もうとするが、頑強な両腕によって尽く弾かれ続ける。
高位クラスのケミーが多重錬成されただけのこともあって、その強さは身に降りかかる攻撃を簡単に寄せ付けない。
「一体、何度目だ?オレちゃんの前にライアン・レ◯ノルズが立ちはだかるのって。」
ハンマーの様に振るわれる剛腕を、ウェイドは躱す。素通りしたカブトムシの角が床を砕いて、破片が舞った。
その隙にローガンが右拳の爪を突き出すが、左腕のライオンの顎によって受け止められる。獣の牙で動きを抑えながら、ウェポンXIは右腕の甲虫の角をローガン目掛けて振るった。
咄嗟に左拳の爪で、切っ先を遮るローガン。そして咥えられている方の爪を一旦収納すると、自由になった拳でライオンの頭頂部を上から殴り付ける。
そこから素早く爪を再び展開し、顔面に向けて真っ直ぐ伸ばした。
ウェポンXIは後方に跳躍することで、それを回避。着地してすぐに左腕を地に叩きつけると、無数の稲妻が地を這うように迸る。
ウェイドとローガンは青い線が届くよりも早く、横へダッシュ。彼らが立っていた床に電撃が通過し、ひび割れの様な焦げ跡が刻まれる。
別の位置に移動した二人は、改めてウェポンXIを見据える。相手もすぐに、こちらへと向き直った。
「グゥルルルルルルルゥゥ…!」
唸るマルガムの周囲に、複数の魔方陣が展開される。
攻撃の気配を感じ取った二人は短く視線を交わし、構える。
「ガアアアァアアアァアァアァッ!!」
耳をつんざく様な咆哮と共に、魔法陣から多くの長剣や砲弾が
一歩前に出たウェイドは、そのまま全速力で距離を詰めていく。両刀で迫る剣や弾を叩き落としながら、ウェポンXIに肉薄する。
十分な間合いにまで近づいたウェイドは、左右に刃を振るった。
ウェポンXIは咄嗟に両腕を交差させることで、ガードする。
だが、これは囮。後ろから駆け出してきたローガンが、ウェイドの肩を足場にして跳躍した。
ウェポンXIは数本の長剣を召喚して彼を迎撃しようとするが、宙返りで躱される。
背後に着地したローガンは振り返って、爪を前に突き出す。背中越しに貫いてダメージを与えると共に敵を固定し、ウェイドがマルガムを滅多斬りにするという寸法だ。
しかし、ローガンの爪が到達する直前でウェポンXIの姿が視界から消えた。前方に空間ができたことにより、ウェイドとローガンの体がつんのめる。
「!」
突如、背後から気配を感じ取ったウェイドは咄嗟に身を反転させた。素早くクロスさせた刀に、ウェポンXIの腕が打ち込まれる。
「くっ!」
衝撃が腕に響くが、何とか堪えて柄を握りしめる。そのまま弾いて、ウェポンXIに二本の刀身を叩きつけようとした瞬間、再び姿が消える。
何処へ—と思考する間もなく、横に激しい一撃を喰らい、ウェイドの身体は勢いよく吹っ飛ばされた。
「ウェイド!」
動揺するローガンの前で、ウェポンXIの姿が再び消失した。
咄嗟に彼は、周囲を見渡す。すると残像がちらつき、ヒュンッという鋭い風切り音が微かに聞こえた。
「(ピエトロと同じか!)」
敵が高速移動していることを見抜いたローガンは、野生の勘で攻撃方向を探り始めた。
しばしの時が流れる。
やがて、縦横に駆け回っていたウェポンXIが一方向へと、ローガンの右横に接近し始めた。
気配を察したローガンも、すぐさまウェポンXIに向かって爪を突き立てる。
打撃音。そして悲鳴。
「ぐぉあっ!!」
ローガンの体が宙を舞い、ウェイドが転がっている床に激突する。こちらが反応するより早く、敵が圧倒的な速さで繰り出したアッパーが直撃したのだ。
二人が必死に態勢を整えるやいなや、ウェポンXIが目の前から消失する。
「後ろを取らせるな!」
ローガンの指示に合わせて、ウェイドは彼に背中を向ける。
それぞれ後ろ向きになった両者が密着することで、敵の進路を狭める。
「こうやって背中を預けるの、夢だったんだよね。」
二人は警戒を解かずに辺りを見渡す。
視界に入ったのはガッチャード達とドラドのみで、マルガムの姿は見当たらない。
一体いつ、何処から来るか—
「グォアアアアァアアアアァ!!」
上空から咆哮がした。ハッと天井の方を見上げるも、時既に遅し。
紫翼をはためかせたウェポンXIは爆撃機の様に飛び回り、口から火球の雨を辺り一面に降らせる。
床に着弾した火球が爆ぜ、屋根をも飲み込みそうな火柱が立ち上がった。
「「がああああああああああああっ!!」」
巻き込まれた二人は、爆風に押し流されて遥か彼方へ飛ばされる。
スーツで防ぎきれなかった熱で体を焼かれ、彼らの顔が歪む。
「ローガン!」
「ウェイド!」
叫ぶガッチャードとデイブレイク。
倒れた二人を見たドラドは仮面越しに笑みを浮かべると、ベルトを操作する。
「彼らに試練を与えてやろう!」
『アストロロギア』
ドラドが立ち上がろうとする二人に手をかざした瞬間、彼らの胸元に星座が一瞬浮かんだ。
「一体、何を—」
「ぐぅっ…あぁ゛っ…!」
「ウェイド!?」
疑問に思うローガンの横で、突如ウェイドが胸を抑えて苦しみだした。
全身に襲いかかる倦怠感と内側から来る痛み。
しばらく息を潜めていた忌々しい同居人が、再び暴れ始めたのだ。
「あー、この感覚アレだ…アイスボックスの時と同じヤツ…」
「どういうことだ!?」
「ヒーリングファクターが無くなってる!多分、アンタも同じ―いやもっとヤバいかも…フォークが地球に優しい自然素材になってる…」
ローガンは自分の拳を見る。そこから生えている爪に、見慣れた銀色の光沢はなかった。起伏のある黄ばみ混じりの無骨な面が、露わになっている。
体中に染みついた痛みが治まることなく、残っていた。
戦闘で最大の優位性となる力を、彼らは奪われてしまったのだ。
そんな彼らへ、一切の躊躇なくウェポンXIが襲いかかる。ローガンは迫る連撃を、ボーンクローと持ち前の腕力で必死に受け止める。ウェイドも気力で立ち上がると、刀を握り直して戦線に加わった。
能力を使えない彼らは、過去に培ってきた戦闘技術だけで辛うじて攻撃を凌いでいた。しかし、力の差はあまりにも大きくなっている。全力も出せずに、一撃一撃が軽くあしらわれていく。
今の二人は、丸腰のまま戦車に挑むような無謀な行いを強いられていた。
「病人には優しくしろって教わらなかった?労基違反で訴えるぞ。」
軽口を叩くウェイドの呼吸は荒く、脚もふらついている。一度の直撃が致命的になるため、どうしても防戦一方になる。癌の痛みで視界がぼんやりと霞み、武器を持つ手に力が入らなくなっていく。
体の内外で激闘を繰り広げている彼は膝をつきかけるが、刀を杖代わりにして何とか持ち直す。一方のローガンも持病というハンデがない分、怯むことなく腕を素早く振るい続けて一矢報いようとしていた。
それを鬱陶しいと感じたのか、ウェポンXIは唸り声を上げて瞳を赤く輝かせる。ウェイドとローガンがいる空間の重力が反転し、彼らの体が天井に向かって勢いよく『落下』した。衝撃で二人の口から空気が漏れる音が一瞬鳴り、その後間髪を入れずに今度は遥か下へと猛スピードで叩きつけられる。
「があっ!?」
「ぐぉっ!!」
激突し、床に転がる彼らの体。常人レベルにまで弱体化した二人は、骨や内臓を侵す激痛に悶えていた。特にウェイドの場合はそこに病魔の苦しみが重なり、彼の命は風前の灯だった。
間髪入れず、ウェポンXIが彼らに容赦ない攻撃を飛ばす。
ずらりと牙を並べた大口を開くティラノサウルスの頭部。高速回転する三機のUFOのエネルギー体が、二人を粉砕せんと迫りくる。
回避しようとも体に負ったダメージが大き過ぎるがあまり、即座に動ける状況ではなかった。
まさしく絶体絶命。その時だった。
突如デイブレイクから十枚のカードが飛び出すと、Xを描くようにして二人の前に並んだ。
全てのカードが輝いた瞬間、巨大なバリアが張り巡らされ、攻撃を受け止める。
結果的に威力は相殺したものの、衝撃までは受け流せなかったカードは弾けるように床一面に散乱した。
散らばったカードを見下ろし、ローガンは息を呑む。描かれていたのは、『レベルナンバーX』のケミー達―昔から彼に力を貸してきた存在だ。
「お前達…何故、そこまで…?」
過去とは変わらぬ献身に、ローガンは戸惑いを隠せないまま言葉を漏らした。
二人のガッチャード達は、ドラドの猛攻に手も足も出ない状況に陥っていた。
鎌を振るいながら攻撃を跳ね除けたドラドは、レプリケミーカードを六枚取り出すとエルドラドライバーに滑らせる。
『ダイオーニ ユニコン スチームライナー』
『マッハウィール ザ・サン ホッパー1』
『カオスカタストロフィ』
無数の飛蝗、数両編成の蒸気機関車、燃え盛るユニコーンがドラドの周囲に召喚され、ガッチャード達に襲いかかる。
夥しい虫の群れが、黒煙を撒き散らす鉄塊が、灼熱の炎に包まれた角が肉体に牙を立て、体当たりし、穿つ。
更に追い打ちと言わんばかりに、今度は二輪のスパイクタイヤと鋭利なトゲが生えた金棒がよろめくガッチャード達の周りに出現。回転ノコの如くギャリギャリと装甲を削り、最後には横に振るわれた金棒が二人の胴体を直撃した。
「「うあああああああああっ!!」」
大爆発を起こした二人のガッチャードの鎧は光となって消失し、生身の宝太郎達がウェイドとローガンの隣で地に伏す。
「一ノ瀬!」
そこへ、アルザードを倒したマジェードが駆けつけてきた。彼女はドラドに挑みかかると拳や蹴りを叩き込もうとするが、難無く躱されてしまう。
ドラドは腕で彼女の胴体を数度打つと、赤いエネルギーを纏わせた大鎌を二度三度大きく振るって斬撃を飛ばす。
攻撃が命中したマジェードのボディから青い電撃が走り、変身が解除された。
「「九堂!!」」
倒れ込んだりんねを見て、二人の宝太郎は叫ぶ。
その声を聞いた赤い悪魔は、妙案が浮かんだと言わんばかりに彼らに向き直る。
「そうだったな…お前らにとって大切なもの…それを失った時の絶望の顔を…また見せて貰おうかぁっ!」
ドラドが手を振りかざすと、天井から黄金の鎖がりんねの体に巻き付いた。そのまま巻き上がるかの様に上昇し、彼女を宙吊りにする。
宝太郎達はよろめきながらカードを手に立ち上がろうとするが、ドラドが容赦なく放った斬撃によって吹き飛ばされてしまった。衝撃で彼らは後方に倒れ、所持していた無数のケミーカードが床に散らばる。
「スーマ!?」
「スマスマ!?」
その内二枚のカードからスマホ型のケミーが飛び出した。
「スマ!」
「スマスマ!スマッホーン!」
『スマホーン』と『DBスマホーン』は少しのやり取りを交わしたあと、ふわりと空中へ浮き上がった。
そのままDBスマホーンは上昇し、目前に広がる状況を記録するかの様に撮影を開始する。
その頃、錬金アカデミー。設置されていたモニターの一つが突然起動し、映像が映し出された。
中にいたレジスタンス達は、その画面に注目する。視線の先には、床に倒れ込む二人の宝太郎、ローガン、そしてウェイドの姿。DBスマホーンから送られてきた映像だ。
ローガン行きつけの店である『シスターマーガレットのバー』の備え付けのテレビにも、同じものが流れていた。ウィーゼルは倒れている常連と自称元相棒を見て、目を見開いていた。
グリオンの城から遠く離れた廃墟。ローラと一香、ドーピンダーがそこに捕虜を避難させ終わったその時、スマホーンが彼女達のもとに飛来した。
スマホーンは双眸を光らせ、壁に映像を投影する。そこにはドラドによって縛られ、苦痛に顔を歪めている少女の姿が。床で身じろぎする黄色と赤いスーツの男達が。彼らを見た三人は、思わず叫ぶ。
「りんねさん!」
「ローガン!」
「プールさん!」
再び城内。全身が砕けそうになる程の痛みに襲われ、りんねは鎖の中で悶え苦しむ。
「うゔっ…あぁ゙…!」
その光景を見て嘲笑うドラドの背後で、宝太郎は身を起こす。
「諦める、もんか…!」
痛みを堪えながら彼が立ち上がろうとしたその時、
『私の声に気付いて!』
『ローガン、お願い!私達の声を聞いて!』
聞き覚えのある声が、宝太郎の耳に飛び込んできた。
「この声は…九堂!?それに…メイディレーヌ!?」
宝太郎は思わず、前方で囚われているりんねを見た。だが、彼女の口は言葉を発してはいなかった。それに後者に至っては、既にローガンに倒されている。
『どうして、届かないの?私の声が…!』
『私達は、ここにいるわ!ローガン!』
『ローガン!頼む!オレ達の声を聞いてくれ!』
にも関わらず、声は聞こえてくる。しかも、今度は一人じゃない。無数の男女のものが、重なって響いている。宝太郎は辺りを見渡し—
その発生源を見つけた。
『お願い…気付いて!』
『僕達は、君のそばにいる!』
『ローガン…我々の声を聞くのだ!』
デイブレイクの側に落ちている『DBザ・サン』、そしてローガンの辺りで散らばっているレベルナンバーXのケミーカード。光り輝くそれらから、人の声が発せられていた。
そして、彼は不意に思い出した。この世界の錬金アカデミーで聞いたデイブレイクのりんねを、そしてローガンの仲間であるX-MENの話を。
「もしかして…この声は!」
変わらず、りんねを吊し上げて嗤うドラド。デイブレイクは彼女を救うために、必死に身体を起こそうとしていた。
しかし、途中で手足を床に投げ出して仰向けになる。
「やっぱり、守れなかったか…」
固めた筈の決意が、絶望と無力感に呑まれていく。
二十年もの間、グリオンに味合わされた責め苦の記憶が再び蘇り、心を無慈悲に蝕み始める。
どう足掻こうとも、未来は変えられない。結局自分は、何も成し遂げられないままなのだ。
背中に広がる冷たさがその諦念を受け入れさせるかのように、彼の身体から気力を奪っていく。
心が深い闇の底へと沈もうとしていたその時だった。
「諦めるな!『一ノ瀬宝太郎』!!」
叫ぶ声が聞こえた。デイブレイクは思わず過去の自分の方へ視線を向けた。
「ケミーは…ずっと仲間だっただろ!ケミーが大好きで、ケミーの心を感じることが出来た…!それが…『俺』だ!」
宝太郎が諭すような口調で語りかける。未来の自分が忘れていたものを思い出させるかの様に。
「ケミーは…仲間…」
デイブレイクの感情が揺らぎだした。
「ホウタロウ!」
今度は、ローガンが叫ぶ。
「今まで逃げてきた俺に、デカい口を叩く資格はねぇかもしれねぇが…これだけは言わせてもらう!」
痛みを堪えて体を起こしながら、彼は言い放つ。
「『一度道を見失っても、希望が絶たれた訳じゃない』!!」
尊敬していたかつての恩師の言葉を。
「お前は確かに、過去で上手くいかなかったかもしれない!だが、それでも!お前は戦うことを止めなかった!誰かを守ることを諦めなかった!だからこそ、俺達はここまで来れたんだ!お前がやってきたことは無駄じゃない!」
ローガンは、デイブレイクの瞳を真っ直ぐ見つめる。
「前に進み続ければ、未来は必ず取り戻せる筈だ!」
二人の言葉を受けたデイブレイクの脳裏に、様々な記憶が浮かんでくる。
『へえ~、お前『ホッパー1』っていうのか!それに、『スチームライナー』に『カマンティス』か!皆、よろしくな!』
初めて、ケミーという存在に会った日。未知なる存在に興奮した。彼らのことをもっと知りたいと思った。
『お前の中のスケボーくんは、ただ楽しく走りたいんだよ!その願いを歪めるのは許せない!』
悪意を持った人間のせいで、ケミーが苦しめられることを知った。彼らから、ケミーを守りたいと思った。
『オレ、ケミーのこと何でも分かっている気でいた。でも、本当は…』
『武士道は仲間の絆と見つけたり!』
気難しいケミーもいた。でも最終的には、自分を認めてくれた。
『ケミーにこんな新しい可能性があったなんて!』
『ケミーは悪いやつじゃありません。サボ助は、理玖くんのいいお友達です。』
ケミーは人間に希望をもたらし、幸せにする存在になれることを実感した。
『キミの力が必要なんだ!ユーフォーエックス!』
『支配したんじゃない!認めてくれたんだ!『仲間』だって!』
『キミのことをもっともっと知って、仲間になりたい!だから、好きなだけ覗いていいよ!オレの本気!オレのガッチャ!』
『オレと一緒にガッチャ目指そうよ!』
友になることに、レベルなんてものは関係ない。
『錆丸先輩を返してもらう!』
『確かに人間は弱いかもしれない。オレだって弱い。でも、皆の思いでガッチャードは強くなれる!オレはその力で、皆を守る!』
『これがケミーと人間の、絆の力だ!』
辛い時があった。苦しい時もあった。それでも、諦めなかった。何故なら—
『オレは見たいんだ!人とケミーが一緒に自由に生きられる未来を!』
『それが、オレの目指すガッチャだから。』
オロチ事変での敗北以来、絶望と後悔を抱えたまま戦い続けてきた。平和な未来を取り戻す願いは潰え、人とケミーが滅ぶ運命すら受け入れかけていた。
彼らを守る理由も、贖罪や義務に過ぎないと思っていた。
でも、心の何処かでは信じたかったのかもしれない。自分がかつて求めていたガッチャを掴める可能性があることを。
今まで集めてきたケミー、但馬を含めた錬金アカデミーの研究者、ローガンやツァイトガイストらX-MEN、ドーピンダーや一香などの難民達、旧敵であったアトロポスやクロトー。
そして―
『俺も一緒に戦う!グリオンを倒して、平和な未来をガッチャしよう!』
『決して諦めたり立ち止まったりしないから…貴方も、『一ノ瀬宝太郎』じゃないんですか?』
過去の自分自身とりんね。
皆、自分が救ってきた者達だった。同じ志を持ち、共に戦ってくれる仲間でもあった。
そして、今彼らのお陰でグリオンと対峙出来るところまで来れている。
自分の軌跡は、決して無意味なものではなかったのだ。
「そうだ…オレはもっとケミーのことが知りたくて…大物錬金術師になるって決めたんだ…人とケミーが共に生きられる世界を見たくて…戦ってきたんだ…!」
デイブレイクは立ち上がる。
「思い出した…オレは!」
「貴様に許された言葉は…泣き言だけだぁ!」
振り返ったドラドはデイブレイクに斬撃を飛ばすが、二本の刀でそれは遮られる。
「今、メッチャ良いところ!KYなマネはするモンじゃないよ!」
「貴様っ…!」
病魔に蝕まれている体を懸命に動かして間に割り込んだウェイドは、そのまま刀で攻撃を振り払う。
デイブレイクは床に散らばっていたカードを拾い上げると、見せつけるようにしてそれらを広げて宣言する。
「ケミーと一緒に未来を…飛び切りのガッチャを掴む!」
その時―
『私も一緒に戦う!』
ザ・サンのカードが輝き出した。
「この声は…!?」
聞き覚えのある声に驚愕したデイブレイクは、ザ・サンのカードを見つめる。
微笑むりんねの幻影が、浮かび上がった。
『やっと、届いた…!私…ずっと側にいた…!ずっと一緒に、戦ってきたんだよ…!』
「ずっと…一緒に…」
デイブレイクは思い出す。冥黒王の手によって貫かれたりんねが、自身の腕の中で最期に言い残した言葉を。
『私…まだ…一緒に…戦いたいよ…宝太郎…!』
事切れる寸前に輝き出した彼女のアルケミストリング。りんねは錬金術で、意識をザ・サンに移していたのだ。
「あの言葉は…『呪い』じゃなかったんだな…」
『『ずっと一緒に戦いたい』…私の、『祈り』だよ…!』
一方のローガンは宝太郎の言葉を反芻していた。
「ケミーの心を…感じる…」
『ケミーの声に耳を傾けてるからだよ。そうすれば何を思っているのかが理解出来る。』
虚無で会った彼の変異体の言葉を思い出したローガンは、意識を研ぎ澄ませた。
そして聞こえた。自身の名を呼ぶ、懐かしい声を。彼は周囲のケミーカードを全て拾い集めた。
「ジーン…!?チャールズ…!?」
『やっと、気付いてくれたのね…ローガン!』
『信じていたぞ。我々の声が、君に届くことを…!』
自身の恋人と恩師の顔が、『クロスウィザード』と『ドラゴナロス』に浮かぶ。
『オレ達もいるぜ!』
新たに個性的な外見をした男女の幻影が、ローガンの目に飛び込んできた。
「スコット…ビースト…ストーム…カート…ビショップ…ローグ…ピエトロ…コロッサス…!お前達…何故、コイツらの中に?」
『全てはキティのお陰だ。』
グリオンに学園を襲撃されたあの日。瀕死になっていたキティは、新たな能力に目覚めたのだ。
それは、『他者の魂を肉体からすり抜けさせて別の場所に転送する』能力。
彼女は死の直前に虫の息であったX-MENのメンバーに、それを無意識の内に発動した。
その結果、偶然にも十人の魂がデイブレイクのケミーカードに送り込まれたのである。
「そうか…お前らも、俺の隣で支えてくれてたんだな…」
『ああ、ローガン。君は我々の意思を継いで戦い、そして自分の苦しみを乗り越えた。とても、立派になった。』
『ボク達は彼らからキミのことを聞いていた。キミのことをずっとずっと見ていた!』
チャールズの労いの言葉の後、本来のクロスウィザードの声が響く。
『キミは困難を乗り越えて再び立ち上がり、戦っている。その勇気を、ボク達は讃えるよ!』
残りのレベルナンバーXのケミーが、歓迎するかの様に鳴いた。
拘束されている方のりんねは、デイブレイクの表情が変化するのを目撃していた。
自分の知っている『一ノ瀬宝太郎』が戻ってきた。彼女はそう悟った。
「戦おう…一緒に!」
ザ・サンに力強く言ったデイブレイクは、彼女と同じ二十年前からの相棒二体に声を掛ける。
「『ホッパー1』!『スチームライナー』!今まで、ゴメン!また一緒に、オレと戦ってくれるか!?」
「ホッパー!」
「スチーム!」
肯定の意を示した二体に対し、満足そうな笑みを浮かべたデイブレイク。
そのままガッチャードライバーに彼らのカードをセットする。
『ホッパー1!』
『スチームライナー!』
ドラドが再び斬撃を飛ばした瞬間、赤い巨大バッタと蒸気機関車がデイブレイクを庇うように前に出て、その一撃を受け止めた。
ゆっくりと両腕を大きく広げたデイブレイクは、ハイタッチするかの様に左右の手を二度三度重ね合わせる。
宝太郎は一連の流れを、感激の笑みで眺めていた。
「『変身』!」
『ガッチャーンコ!』
左右のレバーを引いた瞬間、ホッパー1とスチームライナーが彼の周りで旋回。
燃える炎の様なエフェクトを纏いながら、デイブレイクの身に鎧が錬成される。
『スチームホッパー!!』
やがて、そこから現れたのは暁色のガッチャード。赤いマフラーをたなびかせた戦士は矢印状の複眼と胸の変換炉を輝かせ、長き苦境で鍛えられた存在感を示していた。
さらにガッチャードDBは『ガッチャーイグナイター』を起動し、ベルトに装填する。
『ターボオン!』
『ガッチャーンコ!ファイヤー!』
ガッチャードDBの胸に青い炎が灯り、背中からはまるでブースターの如く一瞬火柱が吹き上がった。やがて、そこには燃え盛る赤いマントが広がる。
『スチームホッパー!アチーッ!』
その頃クロスウィザードを含めたレベルナンバーX達が、ローガンを取り囲む。
『キミに託すよ!ボク達の…そして私達の力を!』
『言ってくれ、ローガン…『あの言葉』を。』
スコット—『DBビートルクス』が、彼に促す。リーダーである彼にのみ許された『あの台詞』を。
ローガンは深く息を吸い込むと、覚悟の表情で叫んだ。
「『
彼の背後でレベルナンバーXのケミーカードが『X』状に並び、そこからエネルギーを注ぎ込んだ。
光に包まれたウルヴァリンのマスクとスーツは、更に刺々しく野生的なフォルムへと変貌する。胴体と下半身を包む青いラバースーツの上には、黒と黄色で彩られた鋭角で硬質な装甲が被さっており、重厚感を漂わせていた。
業火の力を秘めた暁の戦士—『ファイヤーガッチャードデイブレイク』
未知数の力を秘めた獣の戦士—『クロスヴァリン』
二人の英雄が、ドラドの前に並び立った。
・『ウェポンXI』
グリオンがデイブレイクの世界の『ウェイド・ウィルソン』の死体を使って産み出した究極のデスマスク。レベルナンバーXのレプリケミー全十体を取り込むことで、最強のマルガムとなる。彼の存在はある意味、ローガンの死体を弄くったウェイドに対する罰なのかもしれない。
パーツの配置はスターガッチャードを、マルガム形態のゴーグル状の目は、ウェポンX時代のローガンのオマージュ。
・『アストロロギアでミュータント能力を奪われる描写』
ガエリヤがクロトーをレビス状態から戻したシーンに由来してます。
・『キティの覚醒した新たな能力』
『フューチャー&パスト』での彼女の、『他人の意識を過去に飛ばす』能力から。
《X-MENのメンバーの意識が宿っているケミー一覧》
・ドラゴナロス―チャールズ
・クロスウィザード―ジーン
・ビートルクス―サイクロップス
・リクシオン―ビースト
・エクシードファイター―クイックシルバー
・テンフォートレス―コロッサス
・ゼグドラシル―ビショップ
・ユーフォーエックス―ナイトクローラー
・エックスレックス―ローグ
・ガイアード―ストーム