仮面ライダーガッチャード&デッドプール&ウルヴァリン デイブレイク・オブ・フューチャー・パスト 作:バリー
『TVA』―『
「はい、アンカー様のお通りだ!左から失礼、ベイビー!」
軽快な声を上げながら、ウェイドはローガンを前方に転がした。その先には、鼻に絆創膏が貼られた男―『パラドックス』が立っている。
彼こそが、『マルチバースを見守る』という現在のTVAの指針を無視し、自らの出世のためにウェイドの世界を独断で即座に消滅させようとしている人物だ。『アース616』に関する任務を餌にウェイドを勧誘し、自らの手駒にしようとしたが、目的を知った彼に拳を見舞われたのである。
目の前に放り出されたものを見たパラドックスは、困惑した様子でウェイドに尋ねた。
「あー…これは一体どういうことかな?」
「オレの世界が消滅しそうなんだろ?このナマクラ野郎が死んだせいで。はーい、問題解決だ!」
パラドックスは彼の答えにしばらく呆気に取られていたが、その後可笑しくてしょうがないと言わんばかりに笑い出した。
「ハッハッハッ!君はアンカーを差し替えられると本気で思ったのか?コイツで!」
彼は伸びたままのローガンを指差した。
「他のどんなウルヴァリンも受け入れるつもりはないが、キミは寄りにもよって『最悪』のウルヴァリンを連れてきた!」
「『最悪』って?」
「Mr.ウィルソン、このウルヴァリンは自分の世界を救えなかった男だ。」
それを聞いたローガンの顔が僅かに曇るが、パラドックスはお構いなしに言葉を続ける。
「しかも、あの『仮面ライダー』がいるところの住人だ。」
「『仮面ライダー』?何それ、ゴーストライダーのサイドキック?」
ウェイドの質問にパラドックスはため息で返すと、端末を操作した。
「『仮面ライダー』とは、主に『日本』という島国で活動するヒーローのことだ。個体にもよるが、基本的に彼らはベルトの力で人間から鎧をまとった戦士に変身し、奇妙なバイクに乗り…悪のモンスターと戦う。」
複数のモニターに様々なコスチュームをした戦士達が映し出される。
赤いカブトムシの角が生えている者。体の左右が緑と黒の2色に分かれた者。複眼に『ライダー』という文字が書かれた者。白い狐のお面の様な顔をした者。
多種多様なデザインの仮面ライダーがそれぞれ個性的なマシンに乗り、異形の怪物との戦いを繰り広げていた。
「彼らは本来、こちら側とは交わらない存在だった。ごくたまに干渉する予兆はあったが、それも未遂に終わっていた。」
ライトセーバーに似た武器を振るう黒いバッタの様なライダー*1、カードを使って赤いドラゴンを召喚する騎士の様なライダー*2の映像に切り替わる。
「しかし、ある決定的な出来事がきっかけで、我々が観測する世界への侵食が始まったのだ!それは―」
「もういい、分かった!要するに『パワーレンジャー』のお友達だろ?それで?その仮面ライダーがいて、おたくにマズイことでもあんの?」
赤い宝石をあしらったデザインの魔法使いの様なライダーが映し出されたところでウェイドは話を遮った。展開されていた魔法陣が『
「彼らの中にはこちら側のヒーロー達と同じく、規格外の力を持つ者もいるんだ。そんな奴らと共存なんかしてみろ。パワーバランスが崩壊して、世界がメチャクチャになる。」
「クロスオーバーの難しいところだね。」
「オマケに彼らは枝が分かれたり、繋がったり、はたまた途切れたりする醜い世界の住民なのだ!マルチバースの増加を爆発的に加速させる恐れがある危険分子だよ!ただでさえ、時間軸の消滅を見届ける仕事は数千年かかるというのに、それを増やされたらたまったもんじゃないということだ!あと最近のやつらは、変身アイテムがとにかくうるさい。」
画面が切り替わり、今度はオレンジ色の仮面ライダーが映された。
ゴーグルの様なものをかけており、バッタの触覚が生えている。複眼にあたる部分には、左右から迫る青い矢印が描かれていた。荒廃した街の中、民衆を守りながら黒く禍々しい鎧に身を包んだ兵士達をなぎ倒している。
彼の視線が向かう先には、口元に邪悪な笑みを浮かべた黒服の男がいた
「この彼は…そんな日本のヒーローのヴィランに負けた!人類やミュータントを救うことも出来ず、背を向けて逃げ去った!レジェンドだよ。もちろん悪い意味でね。ウルヴァリンの…いいや、カナダの面汚しだ!」
図星なのか、パラドックスの罵詈雑言にローガンは倒れたまま何も言い返さなかった。しかし、その後に続いた言葉で彼の顔色は変わった。
「まあ、彼の世界にいる仮面ライダーもソイツに勝てなかったそうだし、そういった意味では彼が同じく『最悪』になるのは無理もない気も―」
パラドックスはそこから先を言うことは出来なかった。ローガンが起き上がり、彼の喉元に爪を突きつけたのだ。明確な怒りが目に籠もっていた。
「俺のことはいくら言ってもいい…だがな、『ホウタロウ』のことだけは軽々しく口にするな!アイツがどれほどの苦しみを味わったのか、お前に分かる筈がない…!」
「だーっ!タイムタイム、落ち着けって!コイツがムカつくのはよーく分かる。でもな、今はご機嫌取っとかないとこっちが危ない訳なんだよ。」
慌てたウェイドはローガンを取り押さえると、パラドックスのもとから引き剥がした。
「ふーっ…そういうところは死んだ英雄に似てるらしいな。全く…虫酸が走る。」
殺されかけたパラドックスは嘲笑を浮かべたままだったが、それは僅かながら引きつっており、自分がいたところから数センチ後ずさりしていた。ローガンは変わらず彼を睨み続けている。
緊張感漂う状況に耐えられなくなったウェイドは、恐る恐るパラドックスに話しかけた。
「あー…それでどうしたらいい?オレ、何でもするよ?」
「もう遅い、Mr.ウィルソン。上層部に特別視されて、崇高な使命を背負っているキミに与えられた
「見た目無事だよ。」
「しかも、神聖なる英雄の死体を冒涜し、私の部下を殺した!」
「アンタはネット民か?」
「君の世界は死にかけている!だから、私がパッと消してやると言っているんだ。それが慈悲というもの。」
パラドックスは部下から差し出されたサンドイッチを頬張りながら言った。
「オレの世界を保健所送りにする話をして食う飯は美味いか?こっちは大事なものを失うんだぞ!『アンカー』とかいう後付け設定のせいで!わざわざ、ヒューを人気が下り坂のMCUにスカウトしたっていうのに、この仕打ちだ!アンタのボスと話をさせろ。電話してこう言え―『マーベルの神がお怒りだ』とな!」
ウェイドの発言で場の空気が凍った。何か都合の悪いことをされそうになって、心臓が止まったかの様だった。
「ヤバいな。一斉にケツの穴が締まる音がシンフォニーを奏でたぞ。内緒なのか?アンタらが何やってるのか、上司は知らないんだろ?言っとくけどな、オレは黒帯のクレーマーだ。上の奴らにアンタらの悪事を全部チクって―」
次の瞬間、ウェイドが消滅した。パラドックスが『タイムスティック』を彼に押し付けたのだ。ウェイドの手の中にあったタイムパッドのみが残って、床に落ちた。
「ふぅ、静けさが心地良い。」
「あのクソ野郎を何処へやった!?」
「『ゴミ溜め』だ。君にもお似合いのところだね。」
ローガンは再び襲いかかるが、今度は慌てずにパラドックスはスティックを突き出す。たちまち、彼もウェイドと同じ様に跡形もなく消えた。
「いらないものがあればすぐに捨てる。不揃いな枝があれば直ちに切り落とす。凸凹の道があれば石ころを取り除いて真っ平らにする。至極当然の行動だ。」
そう言いながらパラドックスは、床に落ちたタイムパッドを拾い上げる。
「『虚無』で自分の過ちを悔いながら、消えるといい―『危険分子』とともにね」
TVAにてパラドックスにタイムスティックを押し付けられた後、ウェイドとローガンは見知らぬ場所で目を覚ました。
辺り一面が灰色の砂で覆われており、そこかしこには二十世紀の会社のロゴのモニュメントや巨大な剣から変形したであろう金色のゴーレム*4、ヘビとムカデをかけ合わせた様なデザインの銀の要塞*5の残骸などがうち捨てられたかの様に乱雑に散らばっている。まるで、マナーのなっていない観光客が来た後のビーチの砂浜みたいな光景だった。
突如得体のしれないところに連れてこられたローガンは取り乱し、ウェイドを痛めつける。彼から暴行を受けたウェイドは、途方に暮れながら言った。
「さっき、ちゃんと話聞いてた?あのパラドックス野郎のところに戻らないと、オレの知り合いが全滅しちまうんだよ。」
「俺には関係ないね!」
ピシャリと突き放す様なことをローガンに言われ、腹を立てたウェイドは、立ち去ろうとする彼の背中を指差して叫んだ。
「いつもその態度か!
その言葉を聞いたローガンは、歩みを止めた。そしてゆっくり彼の方へと振り向き始めた。
「…なんだと?」
「アンタのことは聞いたよ。何もかもダメにしちまったんだろ?ドン底から引っ張り出してやったオレに感謝を―」
ウェイドの言葉は、彼の背後から生えてきた爪によって遮られた。ローガンは怒り狂っており、まともな説得が通じる状態ではなくなった。そうこうしている内に、ウェイドは不本意ながら彼と戦うことになってしまった。
元X-MENだった頃の戦闘経験を活かして己の身一つで攻撃を仕掛けるローガン。傭兵時代に培ったスキルを駆使し、数多の武器を使って応戦するウェイド。金属がこすれ合う音、刃が肉に刺さる生々しい音が響き渡る。
同じヒーリングファクターを持つ者同士の勝負は、互角の様だった。しかし、次第にウェイドが押され始め、遂にローガンの爪が彼の頭に向けられた。
「頭が生え替わるか見物だな!」
「ちょっと待て!直せる!直せるよ!」
「何がだ!?」
「アンタがそうなっちまった原因だよ!TVAのゲスどもの話を聞いただろ?オレの世界を消せる力があるっていうことは、アンタの世界を直せる力もヤツらは持ってるってことだ!」
しばらくローガンは、彼の必死そうな声に聞き入っていた。
「あそこに戻って、アンタの世界を一緒に修正しよう!そうすれば、アンタの仲間は生き返る!」
「…『ホウタロウ』の仲間もか?」
「あーうん、その通りだ!とにかく皆、元通りだ!約束する…!」
ローガンは拳の爪を引っ込めた。一先ず、ウェイドは首の皮一枚繋がったということだろう。
その時、二人の頭上から声がした。
「君達、争うのはよせ!時間の無駄だ。」
ウェイドとローガンが見上げると、そこには古ぼけた鉄塔がそびえ立っていた。そしてその上に誰かが立っている。
壮年の男だ。髪は短く切り揃えてあり、理知的な顔つきをしている。体格はがっしりとしており、まるで歴戦のリーダーの様な貫禄が漂っている。
しかし、最も目を引くのは彼の格好だった。青い全身タイツを身に纏っており、その胸には数字の『4』が刻まれていた。
「マジかよ…こんなとこで会えるなんて…」
男を見たウェイドは、何故か感激して声を震わせた。
「お前の知り合いか?」
「昔懐かしのヒーローだ。彼がいなかったら、きっとクリスはアメリカのケツにはなっていなかった。」
ローガンの問いに、意味不明な回答をするウェイド。
「警告しとくよ、色男!これから下品な言葉やケツ穴プレイがチョコチョコ出てくる!この作品は子どもが見る番組とのコラボらしいから少しは自重する様にするけど、うっかりポロッと漏らしちゃうかもしれない。でも、ドラッグはダメ!絶対!」
「……来るぞ!」
男が遠くを指差した。ウェイドとローガンは釣られて、指された方角を見る。
砂漠の向こう側から、複数の車両が土埃を上げながら走ってきていた。
側面に炎のペイントが施された全長の長いクラシカルなオープンカー。鋲が打たれた刺々しいデザインの黒いバイク*6。近未来的なデザインをした平べったいホバーカー。球体の格子を載せたソリを牽引している装甲車など。
形も大きさも年代も、そして世界観さえも全てバラバラだった。
「あー、『怒りのナンチャラ』ってやつ?」
ウェイドが感想を述べると、壮年の男が鉄塔の上から飛び降りた。当然、彼の身体は重力に従って落下する――前に、なんと下半身が伸びて足が先に着地した。それに釣られて上半身が引っ込み、男は胴長の状態から元の体型に戻る。
複数の車両が輪を描く様にウェイド達を取り囲み、停車した。乗り込んでいる者達は、全員物々しい装いをしており、彼らを救護しに来た訳ではないことは容易に察せられる。
オープンカーに乗った中年男―『パイロ』はかけていたゴーグルを外すと、獲物を追い詰めた狩人の様な目を青いタイツの男に向けた。
「誰を捕まえたか知ったら、『カサンドラ』が大興奮するぞ。」
「誰を捕まえるって?」
対する男も、得意げな表情を浮かべながら言った。
「どうやら、僕の恐ろしさがまだ分かっていないようだね。次の展開を見たら、きっと驚いて腰を抜かすだろう。」
「うぉっ、生で見られるなんて感激だ!」
「一体誰なんだ、アイツは?」
一人で興奮しているウェイドに対し、ローガンは質問する。
「最近、また映画になるって持ちきりさ。何度もリメイクされてるけど、今回のはマジで成功して欲しい。」
「だから誰なんだよ?」
「よーし、じゃあ教えてあげよう!」
ウェイドは息を深く吸い込んでから、言った。
「彼の名は『Mr.ファンタスティ―」
「『
「ごめん、今なんて?」
ウェイドの疑問に答えることなく、青いスーツの男性―『ゴームズ』はパイロのもとへと駆けだした。
「ゴーム!」
独特のかけ声を上げながら、ゴームズはパイロから幾分離れた距離で右腕の拳を突き出す。次の瞬間、腕が勢いよく伸びてそのままパイロの方へ一直線に向かっていく。
弾丸の如きスピードから繰り出されるパンチには相当の威力が込められている。常人が食らえば、一撃でノックアウトされてしまうだろう―そう相手が常人ならば。
パイロは迫り来る拳に動じることなく、持っていたライターを点ける。そして、腕を大きく振る。次の瞬間、小さな火が大きな奔流となって、ゴームズに襲いかかった。
「うわあっ!」
まともに攻撃を食らったゴームズは後方に倒れ込む。どんなに伸縮自在の肉体を持つ者でも、自らのもとに燃え広がる炎の熱には耐えられなかった。
「こんな奴知らねぇぞ。」
「人違いだったみたいだ。」
あっさりとやられたゴームズに対し、ウェイドは興味を無くした様に呟く。
「俺はお前を知っているぞ!」
毛むくじゃらの頭をした男が装甲車から飛び降りた。
「『セイバートゥース』。アンタの兄貴だ*7。」
ウェイドはローガンに耳打ちする。
「覚悟しろ!」
セイバートゥースが両手の指から、短く鋭利な爪を展開した。それを見たウェイドは、あちこちに刺した刀やナイフをローガンの体から抜いていく。
「24年ぶりの共演じゃない、これ?せっかくタイラーご本人も呼んだしさ。そんな黒ひげみたいな見た目はとっととお色直しして。さあ、これで準備万端!両足をとって、ヤツを倒せ。サイドポジションからフルマウントで抑え込んで、ヤツが死んでグゥの音も出なくなるまでボコボコにしろ!」
「うるさい、黙ってろ!」
「頑張ってね!オレちゃんの推しの子!」
ウェイドに一喝した後、ローガンはクローを展開した。セイバートゥースはただ不敵に笑う。やがて、対峙した両者は唸り声を上げながら、一直線に駆け出した。
と、ここでウェイドは明後日の方向を向き、誰もいない空間に向かって話しかける。
「多分読者の皆は、こっから先に起こることが分かりきってると思う。一々もう観た部分をダラダラやってたら、テンポが悪いし、退屈させちまう。だからオレちゃんサイドは一端、ここで終わり。次は仮面ライダーサイドだ。頼んだぜ、DAIG◯。」
避難キャンプが襲撃に遭ったことを知らせるサイレンが鳴り、錬金アカデミーの室内は騒然としていた。
「よし、行くぞ。」
「その怪我じゃ、無理だ。私とアトロポスで行く。」
「オレ達も手伝うぜ。」
戦いに行こうとする『宝太郎』を止めると、クロトーとアトロポス、そしてツァイトガイスト率いるX-MENが部屋の出入り口に向かう。宝太郎とりんねもそれに続こうとした。
「九堂は駄目だ。ここに残れ。」
「どうしてですか!?私も戦えます!」
「駄目だといったら、駄目だ!!」
『宝太郎』がりんねに怒鳴りつけた。物凄い剣幕に彼女と宝太郎は困惑の表情を浮かべる。周りも、突然の彼の大声に静まりかえった。
結局、りんねも宝太郎もクロトー達と共に部屋を出ていった。『宝太郎』は彼女達を後を追って止めようとしたが、腹部の傷が疼いて姿勢を崩したところを加治木に抑えられた。
K地区の避難キャンプは、大混乱に陥っていた。あちこちで爆発が起こり、人々の悲鳴が響き渡る。
中には手にしている武器や能力で懸命にドレットルーパーに応戦する人間やミュータントもいたが、それも呆気なく無力化されてしまっていた。
同行していた四人のデスマスクの内、白い方が告げる。
「今回グリオン様に捧げる素材は―『親子』♪」
命令を受けたドレットルーパーが、子連れの男女のもとに向かう。必死で我が子を庇う彼らを取り押さえ、力尽くで連行しようとする。
次の瞬間、炎の矢が雨あられの様に降り注ぎ、ドレットルーパーを破壊した。
白いデスマスクが飛んできた方向を見ると、そこには吹きゴマを手にしているアトロポスが立っている。遅れて、クロトーとX-MEN、そして宝太郎とりんねが駆け付けた。
「「『変身』!!」」
『スチームホッパー!!アチーッ!!』
『サンユニコーン!!』
宝太郎は背中に巨大なブースターが付いた『ファイヤーガッチャード』に、りんねはマジェードに変身を遂げる。
ツァイトガイストがメンバーに指示を下した。
「ヴァニッシャーとドミノ、そしてリンネは難民の救助を!ホウタロウは、オレ達と一緒に奴らの相手だ!」
「「はいっ!!」」
宝太郎達は外にいるドレットルーパーの方を、りんね達は避難所である倉庫の方へと走り出し、二手に分かれた。
ツァイトガイストは、マスクをずらして口から黒い溶解液を吐き出す。勢い良く発射されたそれは、直撃したドレットルーパー達をドロドロに溶かしていく。
至近距離にいる個体には、腕のホルダーに仕舞われているコンバットナイフを抜き、次々と切り裂いていった。
クロトーとベドラムは自らの肉体を活かしたキックやパンチで、ドレットルーパーを退けていく。生身の状態であれど威力はかなりのもので、攻撃を受けた個体は倒れ込んで動かなくなった。周りの敵を片付けたベドラムはクロトーの方を向く。
「!」
するとそこには、一体のドレットルーパーが彼女の背後から剣を振り下ろそうとしていた。
「危ねぇっ!!」
瞬時にベドラムが手をかざすと、ドレットルーパーは動きを止めた。そして持っていた剣から手を離すと、頭を抱えて悶え始めた。
ベドラムは電磁波を操ることが出来る。彼は自らの力でドレットルーパーのシステムを誤作動させ、無防備な状態にしたのだ。
地面に落ちた剣の音で振り返ったクロトーは、隙を見せているドレットルーパーに蹴りを叩き込んで機能を停止させる。
「助かった!」
「いいってことよ!」
一方のファイヤーガッチャードはエクスガッチャリバーで、迫りくるドレットルーパー軍式を切り倒していた。
それを見ていた指揮官機の一体である『参式』が、一枚のカードをドレッドライバーにセットする。軍式もそれに倣う。
『ディープマリナー・ドレイン』
ドレットルーパー達の身体が一斉に地面に沈み込んだ。
左右を見回すガッチャードに、ドレットルーパーは地下から攻撃を仕掛ける。
「ぐはっ!」
ドレットルーパーが地面から飛び出して、ガッチャードを斬りつけると、反撃を受ける前に勢いを利用して地中に潜った。次の瞬間、また別のドレットルーパーが現れて同じ手段で攻撃して、消えていく。さらにまた別の個体は、銃口だけを出して下から腹部を狙撃した。
このままでは、相手に嬲り殺しにされる。そう思ったガッチャードは、『ヴェノムダケ』と『ディープマリナー』のカードを取り出してドライバーに装填する。
『ガッチャーンコ!!ヴェノムマリナー!!アチー!!』
ガッチャードは、水中ゴーグルとシュノーケルを装備したメタリックブルーの形態―『ヴェノムマリナー』にフォームチェンジした。通常とは違い、ファイヤーガッチャード共通の胸部装甲と背中のブースターがそのまま配置されており、体の各所には炎のペイントが描かれている。
ガッチャードが地面に潜航すると、そこには大量のドレットルーパーがいた。突如、自分達の領域に入り込んだ相手に彼らは驚いたようなリアクションを取る。
「潜れるのは、お前らだけじゃない!」
そう言うとガッチャードは、肩の『パッシブレラ』のハッチを展開して魚雷を発射する。ガッチャーイグナイターでスピードと威力が強化されたそれらは一瞬で標的に到達し、軍式達を全滅させた。
唯一残った参式は、新たにディープマリナーのカードを四枚取り出してベルトに挿入。そしてレバーを開閉する。
『ブラッドサクリファイス』
参式は肩からミサイルを発射すると、それらと共に身体を一直線に伸ばし、複数のミサイルと共にガッチャードに突入していく。地中を猛スピードで進むその姿は、巨大な魚雷の様なオーラで覆われていた。
対するガッチャードはガッチャーイグナイターのレバーを操作し、必殺技を発動する。
『ヴェノムマリナー!バーニングフィーバー!』
ガッチャードの肩から何本ものの魚雷が、高速で参式の魚雷に命中し、爆発した。その瞬間にそれらから漏れ出した紫色の胞子が参式に降り注ぎ、動きを停止させる。
ガッチャードは背中のブースターを点火させると、身動きが取れなくなって必死に手足をバタつかせる参式に一直線に接近し、蹴りを叩き込んだ。
だが、これで終わりではない。通り過ぎたガッチャードの先に、巨大なキノコの笠が現れた。ガッチャードが踏み込むと、それはクッションの様な弾力で足先を受け止めて弾く。笠を利用して身体を方向転換させたガッチャードは、ブースターから炎を噴出させたまま、今度は敵の背面からキックする。そしてその先にまた笠が現れ、別方向から勢いがついたガッチャードの蹴りが命中する。
「はあああああああああああああああああっ!!」
まるでピンボールの様に四方八方からスピードに乗った攻撃を食らい続けた参式の身体は、ダメージの許容量をあっという間に超えて爆散した。
地中にいた敵を倒し終えたファイヤーガッチャードは地上に浮上すると、直ぐに近接戦向きの『スチームホッパー』に切り替え、地上にいるドレットルーパーの対処に取り掛かった。
一方、倉庫に向かったマジェード達は、侵入したドレットルーパーを撃退しながら、逃げ遅れた民衆達を避難させていた。
ヴァニッシャーは自身の透明化能力でドレットルーパーらに奇襲をかけ、難民が逃走するための時間稼ぎをする。
同型が顔面や胴体に見えない一撃を食らって倒れる光景を、残りのドレットルーパーは困惑した様子で眺めていた。
一方のドミノも鍛えられた格闘術で、襲い来るドレットルーパーを倒していた。巧みな反射神経で攻撃を躱し、相手に拳や蹴りを立て続けに浴びせて機能を停止させていく。
背後から敵の気配を感じたドミノは、腰にぶら下げた二丁のサブマシンガンを構える。そして片方の腕を前方から迫る敵に、もう片方を後ろに向けて引き金を引き続けた。
頭を前方にしか向けていないにも関わらず、ドミノが後方に発射した弾は全てドレットルーパーに命中し、前後両方の敵の群れを倒すことに成功する。
ドミノの能力である『運勢操作』は、彼女自身が行動する限り働き続ける。
マジェードは民衆を庇いながら、ドレットルーパーとの戦闘を繰り広げていた。
剣を自身に振り下ろそうとする個体の腕をいなし、別の個体の腹部に拳を叩き込みながら、難民から遠ざけていく。
「早く逃げて!」
振り返ったマジェードの声で、民衆は慌てて出口に向かって走る。それを見届けたマジェードは前へ向き直ると、ドライバーの上部に自身の指輪をかざす。
『アルケミスリンク!サンユニコーンノヴァ!』
マジェードは宙に浮かび上がると、両手をかざして燃え盛る太陽を出現させた。そして両脚でそれを前方に向けて、蹴り込む。複数体いたドレットルーパーは迫りくる巨大な火球に飲み込まれて、一体残らず爆発した。
敵を倒し終えたマジェードが次の場所に向かおうとしたその時、傷を負ってテントに倒れ込んでいる少女と、彼女に迫る青いデスマスクが視界に見えた。
「お前も実験材料にしてやろう…」
「そうはさせない!」
マジェードは青いデスマスクに接近し、身体を掴んで遠くに投げ飛ばした。その後、少女に駆け寄る。
「あ~あ。助かることが、幸せとは限らないというのに…」
「どういうこと!?」
起き上がった青いデスマスクがドレットルーパーに指示を下すと、兵士達は目の前で倒れている中年の男を担ぎ上げる。
「お父さん!」
「ダメッ!」
ドレットルーパーの後を追おうとする少女をマジェードが引き止めると、木の杖を持った黒いデスマスクが彼女達の前に現れた。
「オレ達の邪魔すんじゃねぇよ…っと!!」
黒いデスマスクが杖を掲げ、そこから光線を至るところに向けて連射した。
目の前に迫る攻撃をマジェードは少女を抱えて飛び退いたが、離れたところに撃ち出された光線はドミノとヴァニッシャーの付近で爆発した。
「「ぐあああああああああっ!!」」
至近距離で巻き込まれた二人は後方に吹き飛ばされ、地面を転がり、気絶した。
「ヒャハハハハハハハッ!!見たかよ!?あのX-MENのゴミどもの、無様な姿!!」
「最高の見世物だったよ!さ~て、十分な量は集まったことだし、後はドレットルーパーに任せるか。」
黒と青のデスマスクは倉庫から出ていき、避難所から後にしようとした。
「待て!!」
ガッチャードが二人を取り押さえようとするが、彼のもとに白い斬撃が飛んできた。
咄嗟に頭を下げて回避すると、背後にあった鉄製の柱がいとも簡単に切断された。
飛んできた方向には、白いデスマスクがいた。持っていた日傘を宙に飛ばしたかと思うと、それらは分裂し、ミサイルの様にガッチャードの方に向かっていく。
ブースターを点火させたガッチャードは必死に回避行動に移ったが、稲妻の如き速度で飛び回る日傘は容易く彼のスピードに追いつき、何本かが直撃した。悲鳴を上げて、ガッチャードが地面に這いつくばる。
「お前らの相手は、私一人で十分。」
白いデスマスクがローブを脱ぎ捨て、仮面を取る。そこにはかつては敵として対立し、今では自分達、錬金アカデミーの仲間になっている者がいた。
その名は『ラケシス』。冥黒の三姉妹の三女であり、デイブレイクの世界で殺された筈の人物だった。
彼女の顔に動揺するガッチャードに、アトロポスとクロトーは偽物だと言い放つ。ラケシスの死体を基に作られた悪の戦士―『ラキネイレス』は残虐な笑みを浮かべ、赤いベールを被って言い放つ。
「ズタズタに…切り裂いてやる。」
クロトーとアトロポスが、家族の皮を被った悪魔との交戦を開始した。その戦いを眺めているガッチャードの耳に、ねっとりした声が響いた。
「ラキちゃん、ずるいわぁ。アタシも混ぜてよぉ。」
振り向くとそこには、新たなデスマスクがいる。幼子の様な口調で話すその人物もローブを脱ぎ捨て、黄色い仮面を外す。
露わになった顔はラキネイレスと同じく女性のものだったが、肩まで届く程の長い赤髪を生やしており、緑と黄色で彩られたスーツを着ていた。
「お前は…?」
「はじめまして、坊やぁ。アタシは『メイディレーヌ』。冥黒のデスマスクの一人にして、グリオン様の『
「メイディレーヌ!!」
ツァイトガイストがナイフを振りかざして、女性に襲いかかった。彼の顔には、憤怒の形相が浮かんでいた。
「テメェだけは許さねぇ!『ジーン』の顔で『ローガン』を苦しめたテメェを絶対に!!ここでぶっ殺してやる!!」
「あらぁ?また、遊んでくれるのぉ?今度は簡単に倒れないでねぇ?」
妖艶な笑みを浮かべながら、メイディレーヌは自らに振り下ろされるナイフを軽々と躱していく。
「なんで、あそこまで…?」
「アイツがローガンを壊したからだ!!」
疑問の声を漏らすガッチャードに、ベドラムが耐え難い怒りを吐き捨てる様に言った。
「アイツは、ジーン…ローガンの恋人の死体で作られた化けモンなんだ!」
「ちょっとぉ、あんな『腰抜け』の話なんかしないでくれるぅ?」
ツァイトガイストと交戦をしているメイディレーヌが、嘲笑った。
「アタシがちょっとキツく言っただけで、簡単にヘコんじゃうなんて男としても、X-MENとしても失格よぉ。そんなヒトが、グリオン様みたいな立派なヒトに勝てる訳ないでしょう?」
「黙ってろ、このビッチが!二度と口を開くんじゃねぇ!」
ツァイトガイストは距離を取ると、彼女に向けて強酸性の液体を吐き出した。しかし、メイディレーヌは慌てることなく、懐から一枚のレプリケミーカードを取り出す。描かれたケミーの名は『クロスウィザード』。
一瞬にして彼女は、燃え盛る炎を象った頭部と紫の魔術師の服を身にまとった体を持つ怪人—『ウィザードマルガム』に変貌した。そして魔法陣を展開して液体を防ぐと、魔法の力で作成された火球を撃ち込み、ツァイトガイストを吹っ飛ばした。
「テメェ!」
ベドラムがマルガムに手をかざす。電磁波で脳を混乱させ、攻撃の隙を作ろうとしたが、彼の身体の下からエネルギーの奔流が襲った。
「ぐおおおおおおおっ!?」
足下の魔法陣から出る奔流で身動きが取れなくなっている彼に、ウィザードマルガムが近づいて、顔面を殴りつける。ベドラムの身体は、ツァイトガイストが倒れている場所に飛び、地面に転がった。
「なぁんだ、もう終わりなのぉ?つまんないわねぇ。じゃあ、さようなら―」
「はあああああっ!!」
「あらぁ?」
倒れ伏した二人にトドメを刺そうと近寄るウィザードマルガムに、倉庫内のドレットルーパーを倒し終えたマジェードが掴みかかった。
「貴女みたいに皆の希望を奪い、踏みにじる人は…私が倒す!」
「へぇ、次はアンタが遊んでくれるんだぁ。いいわよぉ、楽しませてねぇ!」
マジェードとウィザードマルガムの接戦が始まった。殴りかかるマルガムの拳を、マジェードは受け止めていなす。
そして勢い良く腕を突き出そうとするが、マルガムは手元に出現させた大剣で、マジェードの身体ごと弾く。
ウィザードマルガムは自身の周囲に多くの大剣を召喚すると、後方に飛ばされたマジェードに向けて射出する。
いくつもの剣先がミサイルの如く、彼女に襲いかかって来る。
だが、マジェードは怯まずにマルガムに向かって走り出した。大剣が彼女の体に突き刺さる―前に、サンユニコーンの浄化能力によって、全て粒子となって離散する。
驚くウィザードマルガムに、マジェードは踏み込んで右ストレートを顔面に放った。
土煙を巻き上げながら、ウィザードマルガムは地面を転がる。
「貴女の魔法は、私には効かない!」
「そうみたいねぇ…だ、け、どぉ…」
立ち上がったマルガムの眼が赤く光った。すると、追撃を仕掛けようとしたマジェードの体が宙に浮かび上がった。
そしてウィザードマルガムが腕を横に振るう。それに釣られて、マジェードの身体も横に吹っ飛び、倉庫の壁に背中から叩きつけられた。
「う゛あぁっ!!」
あまりの衝撃で、マジェードは苦悶の声を上げた後、地面に倒れ込んだ。
「そんな…なんで…」
「聞いてなかったぁ?アタシの身体の持ち主もX-MENの一人だったのよぉ?つまり、生まれつき備わった凄い力も使えるってこぉと。」
彼女を構成する『ジーン・グレイ』はテレキネシスやテレパシー能力を持つ強力なミュータントであった。魔法ではない攻撃のために、サンユニコーンの能力が通じなかったのだ。
「九堂っ!!」
クロトー達に騙し討ちしたラキネイレスを倒したガッチャードはエクスガッチャリバーを構えたまま、ブースターを点火させる。そして加速した勢いで、マルガムを切り裂こうとした。
だが、その直前でガッチャードの動きがビデオの停止ボタンを押されたかの様に硬直する。背中から炎が吹き上がったままにも関わらず、彼の身体は一ミリも進まなかった。
そうしている隙に、倉庫の周辺に散らばっていた鉄板やドラム缶などのあらゆるものが浮かび上がり、驚異的なスピードでガッチャードに殺到する。
「があああああああああっ!!」
凄まじい速度と重量を持った投擲武器と化した器物が身体に直撃し、ガッチャードは地面に這いつくばる姿勢になる。
「まっ、それなりに楽しめたわぁ。じゃっ、アタシはもうお家に帰るから。グリオン様の実験のお手伝いをしないとぉ。」
「ま、待て…!」
ガッチャードは後を追おうとしたが、マルガムは光弾を発射して煙幕を張り、その場から消えてしまった。
あとに残されたのは、全身を負傷して倒れ伏している仲間。そして、大切な者を奪われて悲しみに暮れる難民達。
「絶対に…許さない…!」
マジェードはグリオン率いる悪の軍団に怒りを燃やし、必ずや彼らを倒すことを誓うのであった。
・『宇宙忍者ゴームズ』
アニメ『ファンタスティック・フォー』もとい、『ミスター・ファンタスティック』の日本名。色々個性的なキャラやぶっ飛んだストーリーによって、ネット上で人気に。一部では、『アメリカ版チャー研』とも。
・『ファイヤーガッチャード(ヴェノムマリナー)』
色々、『不憫』と呼ばれたヴェノムマリナーを活躍させるべく出した形態。
本家が未使用のため、必殺技は作者オリジナル。キノコの胞子が詰め込まれた魚雷で敵を麻痺させ、背中のブースターとキノコの傘を利用した四方八方からの高速キックを浴びせる。
インスピレーション基は、ドライブの『スピードロップ』から。
・『マジェードがドレットルーパーに見舞った技』
ガンバライジングでの技、『マジェスティックエクスプロージョン』。
《キャラ紹介》
・『メイディレーヌ/ウィザードマルガム』
オリキャラ。『冥黒のデスマスク』の一人。第一話に登場したグリズナーと同じく、原典のデスマスクより後に作製された。子供っぽい性格。超能力と魔法を駆使し、相手を肉体・精神的に甚振る。ローガンが戦えなくなった原因らしいが…?
基になった死体は『マーベルガール』こと、『ジーン・グレイ』。名前の由来は、彼女の悪のクローン『マデリーン・プライヤー』。見た目は初期三部作版だが、原典の彼女が着ていたコスチュームを身にまとっている。
ちなみに原典のジーンも、『フェニックス』という生命体に体を乗っ取られてX-MENと敵対したことがある。