仮面ライダーガッチャード&デッドプール&ウルヴァリン デイブレイク・オブ・フューチャー・パスト 作:バリー
セイバートゥースとの戦いでローガンは見事勝利を収めた。しかし、パイロの仲間が乗っているトラックに組み込まれた巨大な磁石にウェイド諸共身動きを封じられ、一緒に引き寄せられた鉄の塊が当たって彼と仲良く気絶。そのまま檻にぶち込まれ、現在彼らはゴームズと共に運ばれている。
「あー…オレどれくらい寝てた?」
「お前の息子は起きてたぞ。」
二人は互いに向かい合った状態で一緒くたに鎖で縛られていた。
「いやあ、仲が良さそうで何よりだ。」
ゴームズが笑顔で話しかけてきた。
「やっぱ、そう思う?もし近くで見たかったら、目ん玉をおっきしたイチモツみたいに、グーッて伸ばしてみるといいよ。興奮して、濡れちゃうと思うから。」
下ネタを飛ばすウェイドを無視し、ローガンはゴームズに質問する。
「ここが何処なのか教えてくれ。」
「ここは『
「お前みたいなヤツをか?」
「それを言ったら、君もだね。」
「『処分』って具体的に何すんの?」
今度はウェイドが尋ねた。
「『アライオス』だ。」
「『アライオス』!ロキのドラマに出たアレじゃん!初心者には優しくないよね。最近のマーベルって。」
「皆、そいつから逃げ回っている。大概はやられてしまうがね。中には運良く生き残り、抵抗勢力を組んでいる者達もいる。住んでいるところは、境界線あたりだ。虚無から何とか抜け出そうと、皆頑張っている。」
「じゃあ、俺達もそこへ。」
「オレ『達』?チームか?答えはもちろん『YES』。僕と握手!」
ウェイドの発言を聞いたローガンは、ジャキンッと爪を伸ばした。密着した状態のため、ウェイドの急所の先端が、彼の鋭い爪に少し当たった。
抗議する彼を余所に、ローガンは言った。
「ソイツらを見つければ、俺達はTVAのところに戻って世界を修正出来るってワケ―」
「それは無理だろう。」
「ねぇ、今セリフの途中。文字数制限気にしてんの?」
ローガンの話を食い気味に否定すると、ゴームズは語り出した。ウェイドのツッコミは、反応するに値しないものと見なされた。
「『カサンドラ・ノヴァ』がいる限り、ここから出ることはまず不可能だ。」
「誰だ、ソイツは?」
「薄気味悪い女だ。良心を母親の中に置いてきたようなどうしようもない悪党さ。『ファイヤーボーイ』もソイツにやられた。」
「あー、もしかしてそれ『ヒューマントーチ』のこと?」
「僕の知っている彼とは違ったが、とてもいい奴だった。」
「ジーザス、クリエヴァ!」
「とにかく、ここ虚無に送られた者に与えられる
「また、そのフレーズ?どんだけ掠るんだよ。」
それからしばらくして三人を載せた車両は、、特殊スーツを身にまとった巨人―名前は『ジャイアントマン』という―の死体を改造した基地に到着した。
まず最初にゴームズが、続いてウェイドとローガンが出迎えた連中に檻から引きずり降ろされ、地面に投げ出される。
倒れたウェイドは、目の前でジャイアントマンの死体のヘルメットが上がり、巨大な頭蓋骨が露わになるのを見た。
「『ポール・ラ〇ド』も老けたね。」
その後、彼とローガンは後ろから縄を引っ張られ、まとめて無理やり立たされた。
ウェイドは自分達を立たせた『女』―『ジャガーノート』を見た。無骨な鎧とヘルメットを身につけており、その胸には赤い宝石が埋め込まれている。全体的に細身だが、露出した腕は筋肉質で、腹筋は六つに割れていた。
「まさか、コンセプトアートの方のアンタをお目にかかれるなんて。そのお腹、マジでセクシー。胸のピカピカしてるやつは、彼氏からのプレゼント?実写化したら、キャストは『ロ〇ダ・ラウジー』かな?」
「彼女はお喋りが嫌いだ。静かにしろ。」
ウェイドの発言を意に介さず、ジャガーノートは淡々と言った。あいも変わらず、彼女の胸の宝石は輝いている。
直立した態勢になったウェイドは辺りを見回した。そこには多種多様な容姿の人間や異形が並んでおり、こちらを睨みつけている。
額にターゲットマークがあしらわれた者*1。身体のあちこちからヤマアラシの様な針を生やした者*2。腰にメカニカルなデザインのベルトを巻いた者。手の甲や二の腕に動物を象ったタトゥーが彫られている者。一部に鳥の意匠が施されたステンドグラスの寄せ集めの様な者。
明らかに人とはかけ離れた姿のクリーチャーが多数勢揃いし、人間と共に立つ光景は非常に異質に感じた。
「おーおー、なーんか見たことあるやつの集大成だな。化け物の方はよく知らないけど、テキトーに倉庫から引っ張り出してきた感がプンプンする。マーベルと東〇、夏のヴィラン祭りって感じか。あと、そこのアンタ。」
ウェイドは『ヒトデヒットラー』の方に顎をしゃくった。
「随分と攻めたデザインだよね。ネオ◯チから抗議とかされなかった?ここが日本の投稿サイトの片隅にある二次創作の小説で良かったな。映画だったら公開された後、殺害予告が来そう。」
ローガンとウェイド、そしてゴームズの正面にある頭蓋骨の口の中に車椅子に乗った人影が見えた。何処からか立ち込める煙で姿はよく見えない。唯一頭のシルエットから、毛が一本もなく禿げているということだけは分かる。
「ねぇ、あれ、チャールズじゃない?おーい、チャック!チャーック!二作目でオレちゃんのこと避けてたのは気にしてないから、恥ずかしがらずに出てきなよ!」
大声で呼びかけるウェイドに、ローガンは静かに確信した様な声で言った。
「チャールズじゃない。」
ゴームズも絶望の声を出した。
「なんていうことだ。」
ローガン達の目の前にいる人物は車椅子からすっと立ち上がると、展開された階段を降り始めた。同時に煙が晴れて、姿がはっきりと見えるようになる。
チャールズと同じく頭は禿げ上がっているものの、そこにいたのは細い体つきをした若い女性だった。顔は彫刻の様に整っていたが、その目は鋭く残酷な輝きを放ち、口元には嘲るような笑みを浮かべている。
「足が不自由なフリをするなんて、意識高い系には受けないよ?」
「ウルヴァリン!お前を1人欲しいと思っていたんだ。チャールズの部下だろう?」
ウェイドの咎める声を無視し、女性はローガンに声をかけた。
「誰だ、お前は?」
「私はチャールズの双子の妹、『カサンドラ・ノヴァ』。」
「ふざけるな。」 「オレはケツの穴から産まれた。」
ローガンとウェイドが同時に違った言葉を返したのが面白かったのか、カサンドラは愉快そうに笑う。
「お前ら、キュートだね。楽しくなりそうだ。」
カサンドラが指を鳴らすと、ローガンとウェイドを縛り付けていた鎖が地面に落ちた。恐らく、この超能力が彼女が持つ強さなのだろう。
ウェイドは、彼女に話しかけた。
「チャックとは知り合いだったの?」
「アイツとは子宮で一緒だった。あの姑息なヤツをへその緒で絞め殺そうとして、失敗した。」
「分かる、同居人に恵まれないのは辛い。オレも似たような経験をした。コカインしか見えないクソババアだ。」
忌々し気に生い立ちを話すカサンドラを、何とか宥めようとウェイドは自らの体験談を口にした。彼女の機嫌が悪くなると、寿命が縮んでいく様な思いになるのだ。
「ああ、そうだ。忘れてたよ。」
カサンドラは、二人から離れたところで立たされているゴームズの方に歩を進めた。
「このチューインガム、ずーっと処分したくてウズウズしてたんだ。会えて嬉しいよ、ゴームズ。お前には煮え湯を飲まされたことがあるからねぇ。」
「アンタ、一体何やったの?」
「いやあ、大したことはしてないさ。コイツの手下を古い城の地下牢に閉じ込めた後、そこを爆破して二度と出られなくした*3。どうやら、お気に入りだったらしい。」
「おお…マジファンタスティック。」
ゴームズの鬼畜の所業にウェイドがドン引きしていると、カサンドラは4と書かれている彼の胸元を指でなぞり始めた。
「それにしても、センスのないコスチュームだこと。ジョニーもそうだったけど、お前らの中ではこれが流行のファッションなの?最先端を行く?」
「センスのことに関しては、君も大概だと思うけどね。」
スーツを馬鹿にされて癪に障ったのか、ゴームズは嘲るような口調で彼女に言い返した。
「一体どういった感性で、そんな『デッカチー』の様な頭をしているのかな?」
「おい、ヤケを起こすなって!彼女は役作りのためにわざわざ剃ったんだ!オレが言うのもなんだけど、ほどほどにしといた方が身のためだぞ!」
慌てたウェイドは、ゴームズを必死に引き止めるが彼は口を閉じようとしなかった。
「なんたって、この基地のデザインが良くない。ナンセンスだ。悪趣味にもほどがある。それに君の手からはとても変な臭いがする。」
「おおい、やめろ。止せって。」
「トイレに行った後、洗っていないんだろう。ここが無法地帯だからとはいえ、最低限のエチケットは守って欲しいものだな。それから―」
ゴームズがその先を続けることは叶わなかった。カサンドラによって、体表を剥がされたのだ。コスチュームを―そして皮膚を。彼女が手をかざした瞬間、それらは吸い込まれるように消えた。
全身の骨や内臓が露わになったゴームズは驚きの余りにしばらく瞬きしていたが、その数秒後に彼の身体はバラバラになって崩れ落ちた。
「女の子の扱いがなってないね。」
「なんちゅーことすんだ!名前違うけど、一応ストレンジの映画以来の出番だったんだぞ!上手くいけば、新作のいい宣伝にもなってた!もうちょっと丁寧に扱え!」
ウェイドが地面に赤い染みを残すゴームズ『だった』ものを指差して、カサンドラに抗議した。ローガンは彼女のあっさりと人を殺せる力に戦慄していた。
「シーッ…アライオスは腹ペコだ。」
人差し指を唇に当てながら、カサンドラは二人の間を通り過ぎた。遠くを見る彼女の視線の先には、雷鳴轟く暗雲が立ち込めている。あれが『アライオス』というものなのだろう。しきりに雷を鳴らし続ける様子は、まさに空腹で苛立っている幼子の様だった。
アライオスを見つめているカサンドラの背中に向けて、ウェイドは釈明した。
「あー、アンタ勘違いしてるよ?黄色いデッカいのはアンカーの控えだし、オレは『マーベルジーザス』こと『MJ』。アンタの他に、もう一人イギリス人のヴィランが出ている。ソイツがオレの世界を消すのを食い止めたいんだ。」
「お前は世界を救うタイプに見えないけどね。」
カサンドラの言葉に虚を突かれたウェイドは、黙り込んでしまった。背後からの声がピタリと止んだため、カサンドラは振り返って彼の方を見る。
「傷つけちゃった?」
それを聞いたウェイドは、誤魔化す様にカサンドラに言い返した。
「こうなったら奥の手だ。助けてくれないと、友達が『ザ・ミュージックマン』の第二幕の曲を全部ぶっつけで歌う。」
「車椅子は何処から手に入れた?」
ローガンは彼女が乗っていた車椅子の方を見ながら、カサンドラに質問した。
「ここに送られてきたチャールズのものだ。でも、ウチのチャールズは…来ないね。私を探す気はないらしい。」
「出た出た、Z世代のトラウマ自慢。そういうのは呑み込んでオレらみたいに何か達成した気になるか、ガンになったりすれば?」
途中からカサンドラの声が少し悲痛なものになったのを感じ取ったウェイドは、うんざりした様に彼女に告げた。しかし、彼女はそれに動揺することなく、自信満々に宣言した。
「私はお前らとは違う。いや、ウルヴァリンは別だ。私と組めば誰もが恐れる存在になる。」
「お前の何処が怖いんだ?」
ローガンが懐疑的に話しかける。
「TVAは私を恐れたよ?なんたって、まだ歩く前の私をここに送り込んだ程だ。私には災い転じて福となる。ここが気に入った。」
「こんなとこ、ゴミ溜めだろ?」
ウェイドが口を挟む。
「本当のゴミ溜めにいるのは、どっちなんだろうね?」
カサンドラはそう言って、ウェイドを睨みつけた。
「虚無こそが楽園だ。ここなら思う存分、力を振るえる。」
周囲にいる人間や異形の何体かが、彼女の言葉に賛同するかの様に邪な笑みを浮かべた。元いた世界に対する未練など、彼らには少しも無いようだった。
「私には戒めてくれるチャールズがいなかったからねぇ。お前らのチャールズは?守ってくれた?安心感を与えてくれた?」
何処か嫉妬を滲ませた声で、彼女は問うた。
「ミュータントに安らぐ時はない。」
そう言ってローガンは爪を展開すると、唸り声を上げながら彼女に襲いかかった。
しかし、カサンドラが指を動かした瞬間、彼は大の字になって地面に倒れ込んだ。そこからさらにカサンドラが手を動かすと、ローガンの身体は地中深くに沈み、六本の爪のみが飛び出た状態で勢い良く向こうに移動した。
一連の光景を見ていたウェイドはしばらく呆気にとられていたが、カサンドラが自分の方に向き直った瞬間、慌てて両腕を前に突き出した。
「待て待て待て待て、オレは揉め事が嫌いだ。アンタに不満はない。オレはただ、家族を救っておウチに帰りたいだけなんだ。」
「送り返すことは出来るかもね?」
「やった!じゃあ—」
「でも、そんな気更々ない。」
「あー、イジワル—」
ウェイドの言葉が途切れた。いつの間にか背後に移動したカサンドラが、彼の頭部に手を突っ込んだのだ。
「お前の望みは何だ?ウェイド・ウィルソン。」
目や口などから彼女の指が生えて、蠢いている。出血がないため物理的な攻撃ではなさそうだが、その手つきは相手の精神を嬲っている様だった。
「うわぁ、未知の感覚だ。これが、脳◯ってやつ?全然、気持ちよくない…」
「チャールズはテレパシーで人の心に入った。私は手を汚して入るわけ。」
うめき声をあげるウェイドの耳元でカサンドラは囁く。
—捕まえた—
ウェイドの意識は記憶の奥底にへと沈んでいった。
いつからだろう、『自分には価値がない』と思い始めたのは。
死んだ恋人—『ヴァネッサ』が戻ってきて、元の幸せな生活が送れる筈だった。事実、そう過ごしてきた。
しかし、中年になってしばらく経った頃、ウェイドは自らの存在を疑い始めた。
血と火薬の匂いで塗れた世界で生きてきた自分は、『ヒーロー』と呼べるのだろうか?
人を殺すことしかしてこなかった自分を、誰が愛してくれるのだろうか?
確かに、悪人を倒したり善人を救ったこともあっただろう。だが、その過程で多くの屍が生み出された。X-MENのメンバーであるコロッサスやネガソニック、或いはキャップみたいな他のヒーローなら—少なくとも『R指定』じゃない立派なやり方で助けられた筈だ。
恋人だってそうだ。守ることに失敗している。たった一度だけだが、取り返しがつかない失敗だった。タイムマシンで彼女の死をなかったことにしたとはいえ、その事実が消えるわけじゃない。
子供を作る話を過去にしたことがあったが、その時に自分は胸を張って言えるのか?「パパは赤いタイツを着たR18G版変態仮面だ」、と。下手したら、アル中で自分に虐待をし続けていた父親以下だ。
ヒーローをやることがとても辛くなり始めた。自信が無くなった。熱意というものを失った。愛用の赤いスーツがとても忌々しく感じた。自分の醜い顔以上に。だから着なくなった。与えられた時間を、ただ怠惰に過ごす様になった。
それがいけなかったのか、ヴァネッサとの関係も徐々に悪化していった。
言葉にしなくても、何かしらの形で出ていたのだろう。ウェイドは自分と彼女との間に溝が出来ていくのを感じた。
彼女はまだ自分を愛しているのだろう。だが、それがいつまで続くのか不安になった。彼女の目に自分に対する失望が浮かんでいると、思わずにはいられない。
せめて正式なチームに入れば、何かを変えられるかもしれない。自分の価値を証明出来るかもしれない。人に胸を張れる立派なヒーローになれるかもしれない。そうすれば、彼女との関係だってきっと直せる。
だから、憧れのアベンジャーズの採用面接を受けた。ここに入りたい。入るしかない。そう思って。
結果は不採用。
アベンジャーズは『自分のため』ではなく、『必要とされて』やっている。
面接官の言葉が彼にトドメを刺した。自分はこの世から必要とされていないのだ、と。だから入れなかった。ヒーローにはなれない—これからもずっと。
—ここにいないから、心が繋がらない—
「オレはここにいる。」
自宅でウェイドはヴァネッサと話している。面接で落とされてしばらく経った頃。
—なら、証拠に何かしてみせて。自分より大きなもののために立ち向かうところを—
—何か辛いことがあるなら…一緒に乗り越えさせて—
—二人ともクレイジーだから—
—貴方は何処にいるの?—
愛する者に寄り添おうとしてかけた彼女の言葉。
しかし、今のウェイドにとってそれらは自分を責めている様にしか聞こえなかった。
「はっきり言えばいいだろう?『嫌いになった。もう一緒にいたくない』って。」
ヴァネッサはただクスクスと笑う。
「言えよ。そうしたら、オレはキミの前から消える。『貴方と別れる。もう嫌いだ』って。」
すると彼女はこう言った。
—貴方は何の役にも立たない—
「なんて…」
—貴方は何の役にも立たない—
能面の様な表情でヴァネッサは繰り返す。
—貴方は—
ヴァネッサとカサンドラの顔が交互にちらつく。
—何の—
彼女と愛し合った記憶が淀んでいく。
—役にも立たない—
「彼女はそんなことを言わない!」
「だね。でも、内心思ってた♪」
振り払う様に叫んだウェイドに対し、カサンドラはおちゃらけて返す。
「なんて、腹黒なんだ!脳で感じたアンタの指、憎しみの味がした!」
「すっかり人生に迷っているようだな…ここに来るずっと前から。」
怒り心頭に発したウェイドは、脚のホルダーから小型のナイフを取り出す。
「これ赤ちゃんナイフ。どタマに突き刺すよ?」
「私を殺すのにそんなチャチなやつじゃねぇ?」
「六本ならどう?」
ウェイドがそう言った次の瞬間、カサンドラの胴体から六本の鋭い爪が生えた。
既に地面から脱出していたローガンが、背後から彼女を突き刺したのである。
突然のことで驚愕しているカサンドラを見て、ウェイドは愉快そうに笑いながらナイフを投げつける。ダーツの様にそれは彼女の胸に勢い良く刺さった。
「よくやった、偉いぞ~!イイ子ちゃんね~!」
ローガンに爪で串刺しにされたまま持ち上げられているカサンドラは、しばらく苦しげに喘いでいた—が、すぐに不敵な笑みを浮かべた。そして、自身の胸を叩く。
すると彼女に刺さっていた爪とナイフが一気に抜けた。背後にいたローガンは衝撃で派手に吹っ飛び、ウェイドは自分のところに飛んできたナイフを慌ててキャッチする。
「まっ、楽しかった。あのデカいヤツに家賃払わないと。」
刺されていたにも関わらず、平然としているカサンドラがウェイドの後方を指差した。振り向くと、立ち込める暗雲が怪物の頭を形成し、目や口を妖しく輝かせながら迫ってきていた。
「ちなみに家賃は、お前ら。」
カサンドラは基地の入口の方に引き返す。アライオスが基地に到達したことで、周囲が暗くなる。
彼女の手下達がテレポートで姿を消したり、基地の内部へと避難し始めた。虚無にいる者はアライオスの餌となるのだ―彼らも例外ではない。
アライオスは雲を触手の様に伸ばし、逃げ遅れた手下達を次々と捕獲していく。ローガンは怪物の触手を掻い潜りながら走り、巨大なロボットの脚に辿り着いた。
「動けっ!このっ!」
ローガンが何度も蹴りを入れると、機械の脚は火花を散らした後、ジェット噴射で浮かび上がった。ローガンはそれに掴まる。
「お前は来ないのか!?」
「行くよ!」
遅れてウェイドも掴まると、機械の脚は勢い良く上空へ飛び上がり、猛スピードでアライオスから離れていった。
カサンドラは後を追うこともせず、その光景をただじっと見つめていた。