仮面ライダーガッチャード&デッドプール&ウルヴァリン デイブレイク・オブ・フューチャー・パスト 作:バリー
日が完全に沈み、真っ暗になった基地の外。
焚き火の側に座ってウィスキーを飲んでいたローガンのもとに、ローラが近づいてきた。
「話し相手は、探してない…あっち行け。」
ローガンの言葉に構うことなく、ローラは彼の隣に座り込む。
「あの人を思い出す…口が悪い酔っぱらい。でも、必ず大事な時に現れる。知らないかもしれないけど、『ローガン』は良い人だよ。」
その言葉を聞いたローガンは、自嘲するかの様な笑みを浮かべた。
「お前は知らないだろうが…俺は『最悪』だ。」
「貴方のお陰で、私は生きることが出来た。そして、成長出来た。他の子供達もそう。」
「俺のせいで、多くの人間が死んだ。俺はヒーローなんかじゃない。」
「スーツは、ヒーローっぽいけど。」
ローラは、ローガンの服装をちらりと見た。輝く太陽の様に鮮やかな黄色いスーツ。見た者に希望の光を連想させ、安心感を与えてくれる英雄の象徴。
「スコットに『着てくれ』とせがまれた…ジーンやストームやビースト…皆から。X-MENに入らないかと誘われた…一度は断った。『そんなダッセェスーツ、馬鹿みてぇだ』って。」
その時のことを思い出しているのか、ローガンの顔には笑みが浮かんでいた。
「けど結果的には、入って良かったと思っている。皆とずっと一緒にいられたから。100年以上生きてて、初めて『悪くない』って思える時間だった。ああ、本当に…楽しかったよ。口には出せなかったけどな。」
信頼し合える仲間。尊敬出来る師。そして、恋人。X-MENと関わってから、沢山のものを得ることが出来た。
殺戮しかなかった自分の人生が、豊かになっていくのを感じた。
「ある日、『グリオン』っていうクソ野郎が軍団を率いて学園を襲撃してきた。」
だが、それは突如として終わりを告げる。
「自分の計画の邪魔になるX-MENを排除するため。そして、不死身の肉体を持っているこの俺を実験材料として連れて行くためにな。俺達はヤツらを倒そうとした…」
「後は想像つくよ…」
「いいや、駄目だ…言わせてくれ…ちゃんと、言わないと…」
ローラは気遣ったが、ローガンは言葉を続けようとする。
現実を受け止める様に。己の罪と向き合う様に。
「ヤツらに立ち向かったX-MENのメンバーがことごとく返り討ちに遭った。グリオンの好きにはさせまいと、俺は戦ったが…駄目だった。あっさりとやられて、仲間が死んでいくのをただ見ていることしか出来なかった…」
ローガンの瞳に涙が浮かぶ。
その後、チャールズの指示でローガンは学園から撤退し、国外に逃亡すべくX-ジェットを発進させた。
行先は考えていなかった。多くの仲間の死を見たばかりの彼には、冷静に次の一手を考える余裕がなかった。
突如、爆発音が響いて機体が激しく揺れた。操縦席の窓から、あの禍々しい黒い兵士達が見えた。
羽を生やしたドレットルーパーが宙を飛行し、持っていた武器でX-ジェットに傷を付けていく。
『クソッ!』
ローガンは戦闘機を加速させたが、ドレットルーパー達はぴったりとその後を付いて行き、剣やライフルで翼を斬り落とし、エンジン部分を狙撃した。
『ぐおおおおおおおおおおおっ!!』
大爆発を起こしたX-ジェットは、真下にあった島国に墜落する。地面に叩きつけられた機体は、見るも無惨な鉄くずと化し、あちこちから炎を激しく燃え上がらせる。
這う這うの体でそこから抜け出したローガンの前に、ドレットルーパーの大群が降り立つ。墜落の際にヒーリングファクターが追い付かない程のダメージを負い、まともに動けないローガンを彼らは連れて行こうとした。
『スチームホッパー!バーニングフィーバー!』
突然オレンジ色の
『大丈夫ですか?』
声をかけられたローガンは、顔を上げる。そこにいたのは、燃え盛る炎の様な色をした鎧の戦士だった。額には二本のアンテナと、ゴーグル。両目にあたる部分には、左右から迫る青い矢印が描かれている。
『誰だ、お前は…?』
橙色の戦士が、変身を解く。青い制服を着た少年だった。左分けの髪型で、右目には眼帯をしている。未だにあどけなさが残る顔には、何処か疲れた様な表情が浮かんでいた。
『俺は、『一ノ瀬宝太郎』…『仮面ライダーガッチャードデイブレイク』。』
「ヤツの素顔を見て、驚いたよ…まだ、ガキだった。お前と同じぐらいのな。ハイスクールで勉強して、ダチと青春を送る方が似合うヤツだった。」
宝太郎から『オロチ事変』と呼ばれるクリスマスの惨劇。そこから始まったグリオンによる世界侵略を食い止めるために活動していることを聞いたローガンは衝撃を受けた。
自分の数十年も生きていない子供が、こんな過酷な運命を背負って戦い続けているのかと。
「アイツは、X-MENが死んだのは自分のせいだと言った。グリオンを倒せなかったから、俺を含めた世界中の皆を苦しめることになっちまったとな…」
自分の身体を全く考慮せず、敵を迎え討つ宝太郎の姿勢をローガンは見た。
少年の自罰的な振る舞いは、彼の心を動かすには充分だった。
己の弱さを責め立てて、苦しんでいる宝太郎の姿が自分と重なって見えた。
「俺は、ホウタロウに協力することにした。助けられた恩を返すためと…チャールズが言い残した通り、『世界の希望を繋ぐ』ため…まあ、後は放っておけなかったっていうのもあるな。」
それから数十年間、ローガンは宝太郎と共に戦った。
少年が抱えている重荷を共に背負い、人間とミュータントを最悪の敵から守り続ける。
それがX-MENとしての責務であり、仲間を救えなかった罪に対する償いでもある。そう思って。
レベルナンバー10と呼ばれる最上位のケミーが、何故か積極的に自身をサポートしてくれたことも相まって、戦いは優位に進められた。
「だが、敵はどんどん強くなって、俺は途中から付いて来れなくなっちまった。それで…このザマだ。情けねぇだろ?自分より年下のガキが戦ってる中、テメェは呑気に酒をかっくらってるんだ。」
ローラはただ黙って、ローガンの独白に耳を傾けていた。
「このスーツだけが思い出させてくれる…死んでいったX-MENのこと…自分の過ち…」
しばらくの間、ローラは自分の『父』と瓜二つの男を眺める。仲間を失い、戦いから逃げて後悔に苛まれている姿を。
「夜明けには、アジトに向かう。」
「楽しんでこい。俺は行かねぇ。」
「貴方無しじゃ、勝ち目はない。」
ローガンは彼女の言葉に何も返さなかった。ローラは立ち上がると、基地の方に戻る。彼女の背中に向かって、彼は話しかけた。
「お前がどう思おうと俺は…間違いだらけの男だ。」
ローラは振り向いた。そして真っ直ぐ彼を見つめた。
「ローガンはいつもそうだった。」
少女は暗闇の中へと消えていった。
それを見送ったローガンは、ため息をついてウィスキーを流し込み、焚き火の前で複雑な表情を浮かべるのであった。
TVAの司令センターでタイムリッパーの完成を心待ちにしているパラドックスは、通信機で連絡を取り合っていた。
相手はなんと、カサンドラの配下であるパイロ。彼は現在、ウェイドとローガンが食事を取っていたダイナーにいる。
パラドックスは、ウェイドの故郷である『アース-10005』の剪定の邪魔となる二人をアライオスに食わせるために虚無に送った。しかし、そこを支配しているカサンドラが彼らを送り返す可能性をパラドックスは危惧していた。
そのため、彼はパイロ―と
「奴らは、レジスタンスと合流した。恐らく、明日カサンドラのところに来るつもりなんだろう。奴らがあの女の力をどうにか出来れば、あとはこっちのモンだ。」
スパム缶を頬張りながら、パイロは言った。
「ご報告感謝するよ、パイロ。タイムリッパーの完成まで、もう少しって時なんだ。リスクは排除しておかないと。」
「だろうな。オレがやる。報酬と引き換えにな。『アイツ』が手を下すまでもない。虚無から出るのは、俺一人だ。」
「ああ、分かった分かった。変な声で言うのはやめてくれ、気持ち悪い。女を殺せ。ヘマはするなよ?」
パラドックスは一旦通信を切ると、今度は
「もしもし?二人には怪しまれなかったか?そうか、それは良かった…ああ、いいとも。好きなようにやってくれて構わない。私は大いに期待しているんだよ?なんてったって、君は素晴らしい力を持っている。火遊びが上手いだけのミュータントとは大違いだ。頼りにしているよ、『英雄』くん。」
通信を切ると、パラドックスはため息をつく。
「はぁ…『馬鹿と鋏は使いよう』ってやつだな。」
虚無の荒野を三台の車両が走っていた。二台はバイク、残りはミニバン。ウェイドとレジスタンスだ。
バイクは縦一列でミニバンと並んで走行しており、前方のは雅人と彼にしがみつく葵、後方のはユウスケが乗っていた。三人ともヘルメットを被っている。また、雅人達が乗っているバイクの後ろには銀色のアタッシュケースが括り付けられていた。
ミニバンの方はエレクトラがハンドルを握っており、助手席にはウェイドが座っている。その後ろにはガンビットとローラ。そして最後尾にブレイド。ちなみにウェイドとローガンが派手に喧嘩してそのままの状態のため、シートやドアなどの内装には乾いた血痕がこびりつき、天井や窓ガラスは無くなっている。
「アンレを見ろ。デッケェ手のゲートが
「ガンビットへのセリフはカット!代わりにマサトらのバイクにフォーカスしよう!おソロだね、ペアルック?」
「『ジオウ』って奴の持ち物だ。」
「いっぱい来てたから、どれが誰のかは覚えてないけどね!」
雅人とユウスケが答える。雪がちらりちらりと降る中、腕時計の様な装飾が施された二台の『ライドストライカー』、そして薄汚れて青銅色に染まったミニバンが、土煙を上げながらアジトの門へと進んでいく。
「武器を。」
ブレイドに指示されたガンビットは、彼に大砲を渡した。それを受け取ったブレイドは立ち上がって天井から顔を出し、砲身を前方に向ける。
「そんなの、何処で手に入れた?」
「あれはパニッシャーのAT4よ。」
エレクトラが答えた。
「どのパニッシャー?5人ぐらい演じてるけど。あれ、4人だっけ?」
「『ブレイド』はオレ1人だ。永遠にオレ1人だけだぞ!」
そう高らかに宣言すると、彼は引き金を引いた。
砲塔から発射された砲弾が、猛スピードで一直線に門に向かっていく。
「敵襲だ!!」
監視塔にいるジャガーノートが叫び、門番である巨漢の『ブロブ』が金網を叩いて咆哮を上げる。
やがて、命中した砲弾が大爆発を起こし、ジャイアントマンの薬指と小指が粉々になる。その余波に巻き込まれて、門にいたブロブを含めたカサンドラの手下の何人かが、勢いよく吹っ飛ばされた。
エレクトラがアクセルを踏み、雅人とユウスケがハンドルを捻る。バイクと車のスピードが跳ね上がり、タイヤを高速回転させながら、門の前で燃え盛る炎の中を突っ切る。そして轟音を立てながら、ダイナミックに横滑りして停車した。
手下達がジャイアントマンの両腕に付けられた足場から、様々なデザインのスナイパーライフルを構える。ジャガーノートを含めた残りのメンバーは、降り立ったウェイド達を地上で出迎えた。雅人がバイクからアタッシュケースを取り出す。
ウェイドがふと前を見る。頭蓋骨の目からカサンドラがこちらを眺めていた。その顔には何の感情も込められていない。
車のバックドアが開く音がした。一同が揃って、後ろを振り向く。
ラゲージスペースから黄色い脚が出てきて、男の身体が現れた。ローガンはしっかりとした足取りで大地を踏みしめ、ウェイド達に並び立つ。ローラは微笑んだ。
それを見届けたカサンドラも同じく笑みを浮かべて、踵を返す。
「おお…楽しくなりそうだな。」
「この時が来るのを、どれだけ
多数の敵が目前にいるにも関わらず、ブレイドとガンビットは恐れるどころかむしろ気分を高揚させていた。
「お前ら、生き残れないと思うけどな。」
「それを決めるのは、俺達だ。」
ローガンの憎まれ口に、雅人は冷静に返す。
「アンタは、今日のことを皆に伝えてくれィ。ここを出たら、オレンために一杯やれよ!」
「後ろで中に入るタイミングを伺って。目当てのものは必ず渡すから。」
「余裕が出来たら、オレも後でアンタ達に加勢しに行くよ。」
葵とユウスケが言う。
「有終の美を飾ろう。」
エレクトラが呟いた。
緊張感漂う戦場で、二つの軍団が睨み合っていた。
ローラはピンクのサングラスを掛ける。それは、『父親』と共に人生を過ごした証。
カサンドラの部下の何人かが顔にステンドグラスの様な紋様を浮かばせたり、USBメモリの様な物体を身体に挿し込んだりすることで、異形へと変貌した。
『Set』
『レイドライズ!』
またある者達はベルトに小型のバックルやカード状のアイテムを装填し、個性的なデザインのスーツを纏う。
『アザゼル』が左端に瞬間移動し、『デスストライク』が鋭利な長い爪を生やした両手を向ける。『ターボン』がチェーンアレイを持ち、ジャガーノートが肩をそびやかして威嚇する。
対するユウスケは腰に手をかざし、葵は両腕を構えて拳を握りしめて体内にあるベルトを出現させる。雅人はアタッシュケースから『カイザドライバー』を取り出して腰に巻き付けると、『カイザフォン』のテンキーを9・1・3の順番に押す。
『Standing by』
「「「『変身!』」」」
『Complete』
それぞれが特定の動作を完了させると、三人の姿が変化した。
ユウスケは黄金の角と赤い装甲をまとったクワガタの様な戦士―『仮面ライダークウガ』。
雅人は顔や胴体などに『
そして葵は全身が紫がかった銀色で、両腕に巨大な鎌を生やした戦士―『
三人の変身が完了したのと同時に、ウェイド達はそれぞれの武器を構える。
刀やナイフを抜き、釵やカードを握り、拳から爪を生やす。
一瞬の沈黙。
カサンドラの軍団が雄叫びを上げながら、ウェイド達に向かって駆け出していく。
対するウェイドとレジスタンスも武器を振り上げ、己に群がる敵の大群に突っ込んで行く。
戦いの火蓋が切られた。