仮面ライダーガッチャード&デッドプール&ウルヴァリン デイブレイク・オブ・フューチャー・パスト 作:バリー
巨人が腕を囲ってできた空間の中で、小人達が殺し合っている。銃撃が飛び交い、咆哮が響き渡る戦場で反逆者達は自らが持つ力を振るい、屍を作り出していった。
テレポートで奇襲をかけ続けるアザゼルをいなし、ブレイドはデスストライクの首をナイフで切り裂く。遠くから飛んできた弾丸は身を捩って強化スーツで防いでから、すぐに腰のホルスターにある拳銃を抜いて『マシンガンスネーク』を撃ち殺す。
ガンビットは手に浮かばせたカードを弾丸の如き速度で射出する。自らに飛んできた攻撃は空中で身体を一回転させて躱し、目にも留まらぬ速さで次々と敵にカードを刺していく。
「ハァイ、
合図と共にカードごと敵が爆散し、血液や臓物が飛び散った。
上方からは狙撃手や翼の生えた怪人による銃弾や光弾が降り注ぐが、ガンビットは怯むことなくカードを投げつける。狙いを定めていた『ダパーン』や『スカウティングパンダレイダー』、空中にいた『ブルーミニオン*1』や『コウモリインベス』達がその餌食となった。
白黒のカイザは、多くの怪人を相手にしていた。『フロッグファンガイア*2』の腹に拳を打ち込み、『ソーンファンガイア*3』に蹴りを入れる。
自らに振り下ろされる『カリバー*4』の『
『Exceed Charge』
よろめく怪人達が黄色い格子状のエネルギーで拘束される。剣を構えたカイザは光の矢となって、異形の集団を貫いた。怪人達は『χ』の字を浮かび上がらせて爆散する。
エレクトラは向かってくる敵の命を釵で刈っていく。突き刺し、切り落とし、抉り取る。暗殺者として戦っていた彼女に敵う者はいない。爪を突き立てようとした短髪の『ズ・メビオ・ダ*5』が左目を刺され、苦悶の声を上げる間もなく喉を切り裂かれて倒れた。
殺す術を身に付けているのは蟷螂怪人も同様だ。人であろうと怪人であろうと、自らを襲う者達に彼女は腕の鎌を振るっていく。
飛びかかってきた『アークエンジェル』の羽を切り落として首を刎ね、巨大な手裏剣を振り下ろそうとした『レッドミニオン*6』の体に斬撃を食らわせる。
次の攻撃に備えようとした彼女の鎌を掴む者がいた。銀色のアリの様なロボット―『ヘリオトイド*7』だ。万力の如きパワーで両腕の動きを封じ、目からビームを放とうとする。
すかさず蟷螂怪人は、変身解除して人間の姿に戻った。掴んでいた鎌が自分の手から消失し、ヘリオトイドは一瞬戸惑う。
「はぁっ!」
葵はすかさず怪人態に再び変身すると、金属の体に鎌をめり込ませて腕を振り上げる。腹部から脳天にかけて真っ二つに裂けたヘリオトイドのボディは、火花を散らして爆発した。
ローラは小柄な体格を活かした身軽な動きで、敵を翻弄していく。姿勢を低くして敵の脚に爪を突き刺し、態勢を崩してから顔面を切り裂く。
『ヒョウアマゾン』に飛びかかって喉を貫いた後、自らに振り下ろされる『ジャッカルロード』の大鎌を躱し、回し蹴りで爪を展開した足をこめかみに叩き込む。側頭部に穴が空いたアンノウンは、膝から崩れ落ちて倒れた。
クウガはマイティフォームの力強い拳や蹴りで、向かってくる人間や怪人を退けていた。拳で腹を貫かれて絶命した『オルタナティブ』の『スラッシュダガー』を奪い取ると、それは大剣に変化し、クウガの体色も紫に変わる。
「邪魔だ!」
『タイタンフォーム』に姿を変えたクウガは、『レデュエ』の体に向かって『タイタンソード』を斜めに振り下ろした。凄まじい重量と鋭利さを兼ね備えたそれは、オーバーロードの体に深い傷を刻み、命を刈り取った。
仲間が戦っている間、ウェイドとローガンは進路を塞ぐ敵を切り倒しながら、入口であるジャイアントマンの頭蓋骨に向かって歩を進めていた。
飛び蹴りを仕掛けてきたヘビの鎧の怪人―『コブラ』にウェイドは己の刀を食い込ませて一閃。
「グッバイ、ウエ◯ツ*8。また、黒ひげやりたかったよ。」
ローガンもまた、熊の様な右腕を叩きつけようとした『ビースト・ドーパント』を爪で斬り伏せてウェイドの後に続く。
やがて二人が巨人の口に入り込むと、七人の戦士達が横一列に並んで門の前に立ち塞がった。
面前で睨む敵に対し、ブレイドは嘲笑する。
「屑が神になろうと思い上がるからだ。」
そして戦士達は、迫りくる敵と再び激突した。
ウェイドとローガンがカサンドラのもとに辿り着いた時、本人は優雅にティータイムを嗜んでいた。基地の外で死にゆく手下や自分のところに来た反逆者のことなど、何とも思っていないのだろう。ましてや、目の前にいる二人を『脅威』とも認識すらしていない。彼女は嘲笑う。
「ここから逃げるならまだ分かるけど、まさか戻ってくるなんて…それも自分から。男ってバカばっかり。」
「ウチに帰るためだ。」
「それはメニューにないよ。残念だけど、
カサンドラが指を高く上げると、ウェイドの身体が念力で天井に叩きつけられた。そしてまた下に戻されたかと思うと、今度は派手な音を立てて横の壁を突き破る。
気絶したウェイドを放置し、彼女はローガンに歩み寄った。
「やっと、お前と話せる時が来た。」
「話すことなどない。」
ローガンは爪を展開し、彼女に攻撃を仕掛けようとした。しかし、カサンドラはマリオネットの様に彼の体を操り、弄ぶ。ローガンの体は両腕の爪を自身の太ももに突き刺し、最後にはそれらを地に深くめり込ませ、固定させた。
歯を食いしばって必死に動かぬ体を起こそうとする彼にカサンドラは近づく。
戦場でブレイドは姿を現したアザゼルにブーメランを投擲する。両端に歪曲した刃が付いたそれはアザゼルの体を粉砕し、その向こうにいたファンガイア達の急所を正確に切りつけた後、手元に戻った。
致命傷を負わされたファンガイアの体は、たちまちガラス細工の様に砕け散る*9。
その後、離れた場所から舌を腕に巻き付けてきた『トード』をブレイドは自らのもとに引き寄せる。引っ張られた勢いで無防備のまま迫ってくる彼の体目掛けて、ナイフを突き刺した後、それを引き抜いて頸動脈を切断。その後、舌を首に巻き付け、ナイフを脳天に刺してトドメ。
エレクトラと交戦していたワームのサナギ態は、『グランディスワーム*10』へ脱皮するやいなや『クロックアップ』を発動し、高速移動で彼女の目の前から消える。その速さは周囲にいるメンバーですら、捉えられないほどだ。
相手はただの人間だ。自分に付いて来られまい。
そうほくそ笑んだワームは背後から接近すると、ハサミ状の巨大な右腕を脳天目掛けて振り下ろした―そして彼女の釵で防がれた後、反撃の機会も与えられずにそのまま何度も斬りつけられて爆散する。
エレクトラには『キマグレ』という特殊能力がある。その力で未来を予知し、攻撃を防いだのだ。そのまま自身に近づいてきた『カリスト』も同じ要領で始末する。
巨漢の『ルシアン』をちょうど倒したガンビットは、『ジェネラルシャドウ』と突き合っていた。
お互い、自らに迫ってくるロッドとレイピアをそれぞれの武器で弾き返す。
やがて業を煮やしたのか、シャドウはトランプを投げつけてきた。ガンビットも対抗して同じくカードを投げつける。
カード同士がぶつかり、爆発が起こった。両者の視界が爆煙で遮られる。その隙にガンビットは駆け込み、煙の中を通り抜け、シャドウの身体にロッドを突き刺した。ロッドに込められていたエネルギーが爆発し、シャドウの上半身が吹っ飛んだ。
カビの怪人である『モールドアンデッド*11』をカイザブレイガンを連射することで撃破したカイザは、『イールオルフェノク*12』と女性の『カプリコーンアンデッド*13』の攻撃を躱す。
背後から『レイズハンマー』を叩きつけようとした『ブラーリ』には、顔面に裏拳を食らわせる。
素早くカイザは『カイザポインター』を右足首に装着し、ベルトのカイザフォンのボタンを押した。
『Exceed Charge』
目の前で横並びになっている敵に回し蹴りを叩き込むと、巨大な円錐状のエネルギーが彼らを拘束する。
上空に飛び上がったカイザは、両脚を突き出した姿勢でその中をくぐり抜ける様に突っ込んでいった。キックを貫通させたカイザは、敵の背後に着地する。
「罪には罰を…!」
それが異形達が爆散する前に聞いた最期の言葉だった。
紫のクウガは『ライアー・ドーパント』の杖を頑丈な胴体で受け止めると、それを強奪して『ドラゴンフォーム』に変身する。
軽装になった青いクウガはライアー・ドーパントの武器を変化させた『ドラゴンロッド』を振り回して動きを牽制し、素早く彼の身体に先端を打ち込んだ。エネルギーを過剰に流し込まれたライアー・ドーパントは、大爆発を起こして消滅する。
蟷螂怪人は目当てであるジャガーノートと交戦していた。胸の魔石に向けて巨大な鎌を振るうが、その度にジャガーノートの腕で弾き返される。
恐れを知らぬジャガーノートは前に踏み込み、顔面に拳を見舞った。力強いパンチを受けた蟷螂怪人は倒れこみ、葵の姿に戻ってしまった。
うつ伏せになった彼女の体を背後から抱き起こすと、ジャガーノートは絞め技を仕掛けた。左手は彼女の二の腕を掴み、右腕は彼女の首に回された状態になっている。ジャガーノートは後ろから葵を窒息死させようとする。
しかし、葵は自分の首を絞めているジャガーノートの指をへし折って剥がす。次に彼女の足の甲を踵で踏みつけた。
ジャガーノートが痛みで顔をしかめた瞬間、拘束が僅かに緩んだ。
すかさず反転して首を締めていた右腕から逃れる。身体は左腕で掴まれたままだったが、それを後方に引くことで相手の姿勢を崩す。そして左足を軸にして身体を回転させて前方に踏み込む。
同時に怪人態に変身し、渾身の力で肘打ちをする―ジャガーノートの胸目掛けて。
バリンっという音が響き、石の欠片が床にパラパラと落ちた。ジャガーノート本人も衝撃で後ずさる。
反撃しようと視界を前にやるが、そこに螳螂怪人の姿はなかった。代わりに見えるのは、こちらに向かって走るサングラスの少女―ローラ。
ジャガーノートは彼女に向かって歩を進めながら、顔面に拳を叩き込もうとした。即座にローラは姿勢を低くすることで躱し、地面に滑り込む。そしてすれ違いざまにジャガーノートの足首を斬りつけた。
一瞬、苦悶の表情を浮かべるも、反撃するべくジャガーノートは再びローラの方へ向き直る―その直後に悲鳴を上げ、前のめりに倒れ込んだ。
先程の攻撃で足首を完全に切断されたため、脚を繋いでいた骨と筋肉が分離して体重を支えられなくなったのだ。
足首から下を地面に置き去りにして両膝を付いた獲物を、小さき獣は見据える。首を狩るチャンスを決して逃したりしない。
「
そう言って勢いよくジャガーノートへと飛びかかり、ローラは自身のツメを彼女の首元に向けた。
四つん這いのまま身動きが取れなくなったローガンに、カサンドラは話しかけている。
「お前って面白いヤツだね…なのに口達者な相棒のせいで目立たない。アイツはベラベラベラベラ。デッドプールなんか虚無にはいくらでもいるけど、お前は違う。」
彼女はローガンの額に人差し指を当てる。
「この中はどうなっているのかな?」
ズブズブと音を立てて、彼女の指がローガンの頭の中へと沈み込んでいく。苦痛の声を漏らそうともお構いなしに。カサンドラは彼の脳内にある記憶をかき分けていく。
幼少期の自らの能力の発現と初めての殺人。百年以上、兄と共に行った数々の戦争における殺戮行為。ストライカーによる改造手術。X-MENとの日々。グリオンによってもたらされた彼らの死。日本での宝太郎との出会いと戦い。そして―
—捕まえた—
忌まわしき記憶が、悪女の手に握られた。
ローガンの精神世界。
荒廃した街並みが広がっている。瓦礫と化した建物。燃え盛る火。灰色の空。
かつて宝太郎達と戦う内に見慣れてしまった破滅した世界の光景。
だが、ローガンは辺りの陰惨な情景に目もくれず、とある一点を見つめている。
死体の山だ。老若男女の人間と思わしきものが、何十にも積み重なっている。
「興味深い。これは予想外だった。怒りの裏側にこんなものが。」
カサンドラがローガンの隣に姿を現した。
「ここにあるのは、お前の敵か。」
「俺が殺したヤツらだ。」
どの死体にも三本の刃で刺された様な深い傷がある。そして特徴的なコスチュームを着ていた―現在、ローガンが身につけているものと同じスーツを。
「X-MENがいるな。どうしてこうなったのか。」
「避難キャンプの襲撃の知らせを聞いて、俺とホウタロウはそこに駆け付けた…」
「そこでお前は何を見た?」
「死んだ筈の仲間がいた…笑いながら、人間達を殺していた…女も子供も関係なく…」
「グリオンっていう奴の手先になっていたのか。」
ローガンを捕らえられなかったグリオンは、方針を転換した。
不死身の肉体を持つ彼を精神的に甚振り、絶望させ、反逆する気力を奪うことにしたのだ―かつての仲間の死体を利用して。
「化け物に姿を変えていた…俺が知っているアイツらじゃなかった…」
「それでお前はどうしたんだ?」
「この手で殺した…本当はやりたくなかった…でも…やるしかなかった…」
「生き残った人間やミュータントを守るために、か。」
「何度も、何度も、アイツらの顔をした化け物がやって来た…その度に殺した…殺すことしか考えないようにしてきた…」
デスマスク達が現れる度に、ローガンは溢れ出しそうになる感情を無理やり押し込み、かつての仲間に牙を剥いた。獣の様に獰猛に振る舞いながら、目の前にいる敵を殺し続けた。
そうしないと、手を止めてしまうから。彼らの声に惑わされてしまうから。懐かしいあの頃を思い出して、動けなくなってしまうから。
彼らの尊厳がこれ以上踏みにじられないようにするためにも、ローガンは自ら爪を突き立てて雄叫びを上げながらデスマスクを狩り続けた―自身の瞳から熱いものを流していることに気付かぬまま。
「俺のせいでX-MENは二度も死んだ…」
戦いの後、怒りや後悔や罪悪感、あらゆる負の感情が一気にローガンを襲って彼の心を蝕んでいった。それは、ヒーリングファクターを以てしても癒せないものだった。
「俺に殺されそうになる瞬間、アイツらがいつも言うんだ…『やめてくれ』、『助けてくれ』…あの声が、頭から離れなかった…」
百年以上生きてきて初めて出来た仲間を、今度は自らの手にかけ続けた彼の精神は、どんどん限界に近づいていく、そして―
「X-MENがああなったのは貴方のせいよ。」
恋人の姿をした化け物に遭遇したあの日。気がつくと、ローガンは何も無い空間にいた。敵の攻撃を既に受けたのだろう。
精神世界で、ジーンの体を借りた怪物が彼に言い放つ。
「貴方には世界を救えない。だって私達の命でさえ、ロクに守れなかったんだから。」
敵の戯言だ。早く、この悪夢から目を覚まさなければ。しかし、身体は動かない。ジーンの声が彼を捕らえて逃さない。
「貴方は殺すために生まれてきた。行く先にあるのは、屍の山。貴方に関わったばかりに、運命を狂わされて破滅した人達の成れの果て。」
実の父親を殺した。戦争で多くの兵士を殺した。敵でありながら自らを愛した女は死に、自分は彼女のことを忘れた。自分が加わったX-MENはグリオンによって命を奪われた。
そして今度は彼らを自らの手で殺した。
「今、君が戦っているのは自己満足のためだろう?自分の罪悪感を拭うために、他人を巻き込むのか?そうやって君は何かを変えられたのか?」
後ろから、チャールズの声がする。
世界はあいも変わらずグリオンに蹂躙され続け、多くの命が失われている。
「結局、お前は昔のままで何も変わっていない。それどころか、さらに多くの人の命を危険にさらしている。『一ノ瀬宝太郎』もその内の一人。」
ストーム、コロッサス、ビショップ、ナイトクローラーの声が重なった。
怒りと悲しみに満ちた彼の姿を見た宝太郎は、ますます自分の身を省みない行動をするようになった。
大怪我を負っても、黙っていることが多くなった。自分一人で多くの敵を倒そうと躍起になり、その結果死にかけたことが何度もあった。
全てはローガンを含めた世界中の人々にとって、大切な人を失うきっかけを作ってしまった自分自身に対する罰。
「彼を追い詰めているのは貴方。私達がここに来続けたのだって、そう。貴方の存在が皆の死を招いている。」
ローグが自分を責め立てる。
なら、どうすればいい?何をしても、周りを苦しめるなら自分はどうすれば良かったんだ?
「そんなの決まっているじゃないか。一人で死ねば良かったんだよ。でも、お前は死ねないんだよな?人類にとって良い迷惑だ。」
スコット、ハンク、ピエトロ、その他にも大勢の怨嗟の声が響き渡る。
「ローガン」
かつての仲間が自分を否定する。
「貴方は」
ジーンが。
「君は」
チャールズが。
「お前は」
X-MENが。
「何の役にも立たない。」
「お前は逃げた…戦うことを止めたんだ。」
「ホウタロウに全てを押し付けた…アイツも同じ苦しみを味わっていたのに、俺は耐えられなかった…!」
宝太郎が倒してきたデスマスクの中にも、グリオンに殺された親友や仲間の死体でできたものがいた。それでも、彼は辛さを押し殺しながら、今も戦い続けている。
しかし、人間よりも長い年月を生きてきたローガンにとって、やっと得られたものの死骸を自らの手で壊した反動は大きすぎたのだ。
ローガンの目の前にある死体が彼を睨みつけ、怨嗟の声を上げる。戦うことから目を背けた彼を責めるかの様に。
「苦しんでいる奴らが…助けを求めている奴らがいると分かってて…俺は何もしなかった…!」
火花が散る戦場の中を走るローラは、「ブレイド!」と叫ぶ。声をかけられたブレイドは腕を差し出して、そこに足を乗せた彼女を上空に向けて上げる。
跳び上がったローラは拳とつま先の爪を展開し、ジャイアントマンの頭蓋骨に突き刺して登り始めた。
「一度くらい…チャールズが思い描いていた俺になりたい…」
「ローガン…虚無にいれば、お前はなりたい自分になれるんだ。」
「俺は…」
学園が襲撃されたあの日、彼から託された言葉が脳裏に浮かぶ。
「希望を繋げる存在になりたい…!」
眼窩まで辿り着いたローラは、ジャガーノートの生首が入ったリュックサックを背中から下ろしてアジト内に入ろうとした。
だが、遙か下の『ヒュドライマジン*14』が背中のヘビを伸ばして彼女の身体に巻き付けると、頭蓋骨から引きずり降ろそうとする。
地上へと落下していくローラは、持っていたリュックサックを上に放り投げた。
それは眼窩の中に上手く入り、大穴が空いた横の壁から突き出た赤い腕によって受け止められた。
「ローガン…お前は私の希望を繋げられる。私と組めば、お前は最高の存在になれる。もう、自分を責める必要はない。私が支えてやる。」
倒した『クラーケンイマジン』から奪った銃をボウガンに変え、『アクィラ・ゾディアーツ*15』を撃ち落とした緑のクウガが、足下にある赤い石の欠片を拾ってアジトの入り口へと走っていく。
「お前を苦しめているもの全部
消してやる。」
声が聞こえなくなった。目の前の死体の山が跡形もなく消えた。
残っているのは静寂に包まれた真っ白な空間。
「私が付いている…付いているから…」
カサンドラは慈愛に満ちた声で、ローガンに囁く。
「いいや…」
ローガンがカサンドラの方を振り向いた。
「お断りだ…」
カサンドラの顔が歪んだ。頭に無数の血管が浮かび上がり、やがて尋常でないほどの痛みが—
カサンドラは現実に引き戻された。頭にはジャガーノートのヘルメットを被せられており、ウェイドによって背後から抑えつけられている。
「手を離せ!」
「オレ達を送り返せ!でないと、頭をねじ切るぞ!」
ウェイドが片手で身体を、もう片方の手でヘルメットごと頭をがっちり抑えながら脅迫するが、カサンドラはただ笑っただけだった。
「送り返すためには、頭からこのヘルメットを取ってもらわないとね…!でも、取れば即お前らの脳ミソを原子レベルで沸騰させる…!エンヤのCDボックスで、おマタを擦りながらね!」
「エンヤのCDボックスあるの?」
「『私が殺される』か…『お前らが殺される』か…
能力が使えなくなり、窮地に陥っているにも関わらず、彼女は二人を嘲笑う。
「殺して欲しいか?」
「いいや、俺が殺す。」
「頭はここにあるし、殺すのは簡単だ!」
「どうせ、しくじる。」
「そっちは、最終作以外R指定じゃなかったクセに!」
殺すと言ったのは、あくまで脅しのつもりだったが、ローガンが本気でやろうとしているのを見て、ウェイドは焦る。カサンドラが死ぬことは、虚無から脱出出来る可能性がなくなることを意味するのだ。
その時、空気を切るような音が聞こえた。ウェイドが背後を振り返ると、そこには緑のクウガがボウガンを構えている。その先は、いつの間にかローガンの横で倒れているパイロの死体に向けられていた。拳銃を持った彼の左胸からは血が流れている。即死だった。
「ああ、助けに来てくれたの?でも、ほら、見ての通り彼女はもう大人しくしたから、大丈—」
クウガがボウガンを、ウェイドの方に向けた。
とっさに彼はカサンドラを抱きかかえたまま左に回避したが、発射された空気弾は彼女の体に命中し、胸の右側に穴を空けた。
「おい、アンタどういうつもりだよ!?」
「ハッハッハッハッハッハッ!!勝った!アイツより先に手を下した…!これでオレは自由の身だ!」
体を仰け反らせて、クウガは哄笑した。洞窟で会った時の好青年ぶりは、影も形も無くなっていた。
「その女がくたばったら、お前らはもう用済みだ!ここから出るのは、オレ一人だけ!お前らは仲良く、アライオスに食われるんだ!パラドックスには、感謝しないとな!」
「お前…TVAと繋がっていたのか?」
ローガンの問いに対して、クウガは溜め込んできた
「もう、うんざりなんだよ!『館』の次は、こんな『ゴミ溜め』に連れてこられて!反吐が出る様な友情ごっこに付き合わされて!オレは元の世界に帰るんだ…今までオレを見下してきた奴らをぶっ殺すためになあっ!!」
もし、クウガの力を授けた者がいたならば、その理由を問いただしたいと思うぐらいに目の前の『小野寺ユウスケ』は性根が腐りきっていた。
今まで組んでいたレジスタンスの仲間も、彼にとっては自らの邪な目的を達成するための踏み台でしかない。
「後はお前らをボコボコにして、アライオスが来るのを待つだけだ。それで、全て終わる…!」
「その前に、お前を片付けてやる。」
「やってみろよ…出来るもんならなぁっ!!」
戦闘態勢に入ったローガンに怯むことなく、クウガは小さな赤い石を取り出した。葵によって砕かれたジャガーノートの魔石の欠片だ。
欠片がクウガの胸元に吸い込まれると、彼の身体から赤い電光が迸り、黒い闇に包まれていく。
そして闇が晴れると、そこに現れたのは金と黒の刺々しい装甲を身に纏った戦士だった。
「あーもう、マジ最悪だ。読者から低評価とクレームがガンガン来るぞ。」
『ライジングアルティメット』に姿を変えたクウガは、漆黒に染まった目をローガンに向けた。
《キャラ紹介》
・『小野寺ユウスケ(ディケイド館)』
虚無に送られていたユウスケの正体。小野寺ユウスケの変異体だが、性格は原典の彼と違って、邪悪。人当たりの良い性格を演じてはいるものの、実際はレジスタンスのことをはなから利用価値のある駒としか思っていない。パラドックスと手を組んでおり、どちらが先にカサンドラを殺すかパイロと争っていた。
この作品では、本来心が清い者しか変身出来ない筈のクウガへの変身能力を持っている。
伏線:
・彼が第五話で言及したカサンドラにやられたライダーは、ディケジオに出演した俳優が変身していた者。
・この話でクウガと戦っていたライアー・ドーパントも同じくディケジオの俳優が変身していた怪人。
・第六話で言及された『いっぱい来てたジオウ』は『7人のジオウ』で脱落したソウゴ達のことを匂わせている。