至らない部分、沢山あると思いますが、楽しんでもらえたら幸いです。
《とある拠点》
「ノア、お前をパーティから追放する」
「………?…………………………………え?」
それは彼にとっては理解できないものだったのだろう、唖然とした表情を浮かべ今の言葉の意味を探している。
クエストから帰還した私たちは、話があるからとノアを拠点のリビングに呼び出し、勇者ユーゴが代表して追放の件を報告したのだ。
「ど、どうしてだよ突然!なんで僕が追放なんか……」
「わかっているはずだ、お前は俺たちのパーティには力不足すぎる。お前の職業である人形師は勇者パーティにふさわしくないことを、お前は弱い」
「…………ッ!」
ユーゴに淡々とした言葉を告げれられ、悔しそうに俯くノア。実際彼のレベルは他のパーティメンバーと比べると格段に低い。
勇者ユーゴのレベルは62、そしてノアのレベルは36、1年間パーティを組んできてこの差が生まれてしまっている。
そしてノアの職業:人形師もその足を引っ張っている。本来人形師は、人間からすればただ人形を操ることに特化した職業。
【本当の力】を使えなければ路上で人形劇をすることしか活かせない、そんな職業だ。
今の彼では冒険者として活躍しようにも、人形を使って戦闘に役立つことなんてないのだ。
「経験値はパーティメンバー内で活躍度によって分配される。お前のレベルが上がってないのは、お前が戦闘で活躍していなからだ。俺のスキルによって、経験値の獲得量が多くなっているにも関わらず」
ユーゴはノアを責めるように冷たく言い放つ。
勇者であるユーゴは経験値獲得量を大幅向上させるスキルを持っている。
6人までの制限はあるが、人間という短命種族が効率よく強くなるには破格の性能だ。そしてノアは恩恵が全く見られない。
「それは、そうかもしれないけど、僕は今までみんなの為に色々なことをしてきた!道具の準備や荷物持ち、雑用は全部僕がやってきたじゃないか!」
「それがなんだ、それを理由に貴重なパーティメンバー枠を消費する理由になるのか?」
ユーゴは冷静にノアを突き放す、ここで私も口を挟もうか。
「それにそれくらいなら私達でも十分できるしね!それなら私がノアの代わりいろいろやってあげるよー」
「レヴィまで……!」
雑用は全てノアがやってくれていた。しかもかなりの量。これは確かにありがたいことだ、実際のその苦労と恩恵は計り知れないだろう。
だが雑用を経験をしていない奴らにはその苦労は分からない。
さらに、皆は気づいていないが彼はこのパーティの潤滑油として、裏から支えている側面がある。
勇者パーティは一癖二癖ある人が集まった個性の塊集団。ノアが抜けてしまえばそれぞれがしたいことをする統率の取れない状態になるだろう。
つまり、彼が抜ければパーティは崩壊する、そしてそれに誰も気がついてないのだ。
まぁそれが狙いなんだけど〜!
「ノアは戦えなくて弱っちいから要らないって言ってんの!勇者パーティに憧れていたかは知らないけど現実みなよ〜、所詮雑魚なんだから道端で人形劇でもやってればー?」
「レヴィ……!君と言うやつは……!!」
「きゃ〜ノアが逆ギレしてきたー、怖〜い」
腕を抱え怖がるフリをし、ノアをひたすら煽っていく。ノアから冷静さを失わせて感情的にさせていくためだ。彼は冷静で優しい男だ、頭もよく回る。
これまでのパーティ内のいざこざも彼が仲介し、そして説き伏せてきていた。
だからこそ、追放を言い渡されて動揺している今は絶好のチャンス。彼を冷静にさせてはいけない。彼にまともな討論をさせない為に、彼の存在意義に気づかせないために。
「……他のみんなはどうなんだ!僕の事を本当に追放しようとしているのか!?」
「へっ、グチグチ言うなうるせぇな!当たり前だろ。雑魚は要らねぇんだよ」
「ごめんなさい、ノアさん。私も追放に賛成です」
「ガンテツ……!エイラ……!」
拳闘士のガンテツと、聖女のエイラからも追放に賛成させられる。信じていた仲間にあっさり見捨てられてて可哀想〜。冷や汗ダラダラじゃん。
「ミナナ!ミナナはどうなんだ!?僕たちずっとパーティ組んできただろ!?」
ノアは希望に縋るように声を荒らげる。
パーティ最後のメンバーである魔術師のミナナとは、勇者パーティに入る前から共に二人で活動してきたらしい。
ユーゴが彼らを勇者パーティへ勧誘したのも二人の活躍を聞いてのことだ。
まぁノアがここまで戦えないとは当時思ってなかっただろうけど……
「……………私も追放に、賛成」
「そんな!?」
頼みの綱であるミナナからも否定されたノア、絶望してることが目に見えて分かる。長い間過ごしてきた仲間が私たちに取られちゃったねぇ〜!
ねぇ今どんな気持ち?
ッハー!ノアくん可愛そー!
「ミナナちゃんも私たちの方が良いって〜、よわよわノアくんはもう知らないってよー」
「そんな……皆信じてたのに……!仲間だと思ってたのにッ!!」
あらあら、悔し涙を流し始めちゃった。
空気は最悪、悲しみにと絶望にくれたノアには、曇っているミナナの表情は映っててないらしい。ミナナちゃんすっごい辛そうにしてるのにね。
ミナナちゃんノアのこと好きだもんね〜……
ミナナちゃんファイト!耐えるんだ!これも彼のためだと思って!
「これでわかっただろ、ノア。お前はこのパーティに必要ない、お前を追放する!」
「……畜生っ!」
あまりに悔しかったのか、そのまま走り去っていくノア。
私はその情けない姿に思わず笑いが込み上げて来てしまう。
「ップ、あはは!見た?最後のノアの顔!くちゃくちゃになってたよ!可哀想ー!!あーお腹痛い。涙出てきちゃった……」
「ふん!雑魚が一丁前に勇者パーティ面するからだ、自分の力じゃなにも出来ないのによぉ!いい気味だぜ!」
走り去ったノアをバカにする私とガンテツ、【任務が無事完了】できそうなので気が緩んでしまった。あーうける。
「…………二人ともうるさい、黙って」
「…うぇッ!?」
「……ッ!?……あぁ!?やんのかミミナ!!いいぜ、かかってこいよ!」
ミナナが殺気と交えた魔力放出しながらこちらに凄んでくる。なんなのそのどす黒い魔力!?殺されるかと思った……!
ガンテツはミナナの突然の殺気に反応し興奮している、戦闘狂がよ。こいつことある事にパーティに喧嘩売るんだよなぁ。
「その、ミナナさん大丈夫ですか?何か悩んでいることがあればお話聞きますよ?」
「……大丈夫、部屋で休む」
心配するエイラの提案を断り、不機嫌そうに部屋に戻るミナナ。その様子にエイラは思うとこがあるのかソワソワしている。流石勇者パーティの良心、彼女もノアの追放に賛同してくれて助かった。彼女にノアのあらぬ噂を話しまくった成果だね!
「もう夜遅い、クエストの疲れもあるだろう。各自、今日は休め。今後の方針は明日から話し合う。では解散」
ユーゴ残っている全員に告げる。
その言葉を皮切りにそれぞれ部屋へ戻っていく。
私も部屋へ戻り鍵へを閉め、誰にも気づかれないよう、慎重に部屋に防音の魔法を施す。よし、これで周りへ音は聞こえないだろう……
私は安心してホッとため息を吐き、そしてこの興奮を解放するため、息を大きく吸った。
「っしゃぁぁぁ!追・放・完・了!不肖レヴィ!やりとげましたよ魔王ー!」
魔法で隠していた角と羽、尻尾を出した私は雄叫びを上げる!長かった!1年!1年かかった!
魔王様から勇者パーティを内部から崩壊させと命令を受け早1年!
ついに勇者パーティの1人を追放させることができた!
やったー!
しかも勇者パーティの縁の下の力持ちであるノアを!
彼のお陰で勇者パーティが成り立っていたのに馬鹿なやつらめ!まんまと私の話に乗りやがって!
これで勇者パーティは統率が取れず解散する、そうすればついに私の任務完了!人間の魔界への進行を大きく食い止めることができる。
正直、人間なんて簡単に暗殺すればいいと考えてたけど、あいつら強すぎ!
特に勇者、バケモンだよあれ、勝てるビションまったく浮かばない!戦ってる最中とか強すぎてビビったわ……!背中狙うとか無理無理……!あれでまだ強くなれる余地あるんだ。
私よくこのパーティについていけたな……
だがその苦労もこれまで!あとは適当にガンテツ煽ってパーティ内でもめ事起こせば、互いにぶつかり合ってすぐ空中分解するはず!いやー今回の任務も大変だったな〜。
そうだ、魔王様に連絡しよう!きっと喜んでいただけるはず!
文字通り羽を伸ばしながらベッドに腰掛け、通信魔法を使用して魔王様へパスを繋げる。暫くするとパスが繋がる感覚を覚える。
《……レヴィか》
「はっ!我らが魔王様!レヴィでございます!勇者パーティの件で進展がありましたのでの、そのご報告を」
久しぶりに聞く魔王様の声、それだけで自身の背筋が伸びる。
それにしても、なにか何時もより気だるげだがどうしたのだろうか?もしかして寝起きだったのだろうか。一応もう夕方だが……寝ていたのならそれは悪いことをしてしまった。
《……あーその件なんだが、レヴィよ》
「はい!なんでしょう?」
《勇者パーティ崩壊させろってやつ、やっぱなしでお願い》
「…………?……ん?」
《むしろその逆だな、勇者パーティ育ててくれ。魔王を倒せるくらい》
???
「…………はぁ!?え!?魔王!?どういうことですか?!」
《それじゃそういうことで、もう、眠くなってきた……それじゃおやすみ…あと、頼んだ…………》
「ちょ、魔王様!?寝ないでください魔王様!?」
ブツリと通信魔法が途切れる。その後、何度呼びかけても再び声が聞こえることは無い。
この報告により、私は与えられた命令を遂行し、魔王様に認められるはずだった。
そしてたった今、1年間頑張って来たことが無意味に変わってしまった。
呆然と立ち尽くす私、今までの努力はなんだってのだろうか……いやそんなことより……
「大切なパーティメンバー、追放しちゃったんですけど………」
やってらんねぇ!!!!!!
――――――――――
「ちくしょうッ…皆仲間だと思ってたのに……!」
夜の街を1人歩く、勇者パーティから追放された僕は宛もなく彷徨っていた。仲間だと信じていた人達からの突然の突き放しに、心は大きく荒れていた。
「これからどうしよう、やっぱり僕に冒険者なんて向いてなかったんだ……」
物語に出てくるような、かっこよくモンスターを倒す勇者に憧れて故郷の村を出て冒険者になった。しかし、僕には職業が人形師にしか適性がなく、勇者のように戦うことが出来なかった。
それでも僕は諦めきれずに僕は冒険者を続けた。
途中で僕とパーティを組みたいと言う少女、ミナナと行動を共にし2年、なんの偶然か、勇者パーティに入ることとなった。
僕は大喜びだった、憧れの勇者と共にパーティを組み、冒険できるだなんて夢かと思った。雑用でも何でもなった、それが魔王討伐へ役立ってくれるなら、本望だった。彼らを支えることで、弱い僕も彼らの一員になれた気がした。
しかし実際はそうではなかった。
「調子乗ってたのかな、僕は」
悲しい、ただ悲しい、そして恥ずかしい。勝手に皆の役に立ってると思ってたら却って皆の邪魔になっていたなんて。
これまでの自分の苦労は、ただの独りよがりの行動だったことに涙が溢れてくる。
もういっそ村に帰ろうか、そう考えた時だ。
ふと何気なく近くの路地裏を見た、ただ偶然目を向けたそこには、道の端っこに隠すように人形が落ちていた。
僕はそれを拾い上げる、銀髪の少女の木製人形だ。着ているドレスは道に落ちていたせいか少し汚れてしまっている。
「君も、捨てられたんだ……僕と一緒だね」
僕はこの人形に勝手にシンパシーを感じていた。汚れを落とすように、その銀髪の頭を撫でる。
その瞬間、自分の魔力が大量に減るのを感じた。
「!?」
魔力が急激に減ったことによる脱力で体が崩れ落ちてしまう。そして、先程まで手にしていた人形が淡く光りだした。
光が収まるとそこには
「久しぶりの目覚めだ、君が私を起こしてくれたのかな?」
ドレスを着た銀髪の美しい少女が立っていた。
【各職業及びレベル】
ユーゴ:勇者 Lv62
レヴィ:盗賊 Lv60
ガンテツ:拳闘士 Lv61
エイラ:聖女 Lv58
ミナナ:魔法少女 Lv55
ノア:人形師 Lv36
銀髪の少女 Lv??
【冒険者の大まかなレベル別基準】
Lv1〜10 一般人
Lv11〜20 一般冒険者
Lv21〜40 中堅冒険者
Lv41〜60 上級冒険者
Lv61以上 英雄冒険者
???:魔王 Lv100