追放しちゃダメだったらしい   作:鮫島さん

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3話 君ら荷造り下手すぎない?

 

 

 

 雑用の朝は早い。

 

 

 

 

 二度寝したい気持ちを抑え、支度をする。

 まずは朝食の準備だ、今日は昨日のゴブリン肉の余りを使って料理を作る。

 ゴブリン肉は調理も簡単で味もうまい、全ての部位が使える完璧な食材だ。火を通せばその肉は鮮やかな青へと変わっていく。

 

 昨日の夕食にもゴブリン肉を振舞ったがみんな喜んでくれていた。

 エイラは『……ご馳走、様でした、レヴィさん。次からは、私も料理手伝いますっ……!なんなら私やらせて下さい……!』とも言ってくれた。

 

 しかし、彼女に料理を頼るのは良くない。

 

 エイラの料理は壊滅的に下手なのだ。

 以前作ってもらったことがあったが、あれは魔王様の命をも奪い取ることができる破壊力だった。うっ思い出しただけで吐き気が……

 

 私は料理が嫌というわけではない、私は言葉を選んで断った。

 

 

 

 

 朝ごはんの準備が出来たら次は花壇へ水やりだ。ミナナがポーションの元となる特別な植物も幾つか育てているようで、花壇と言うにはあまりに緑が生い茂っている。どちらかといえば畑な気がしてきた。

 

 ジョウロで水を満遍なくかける。水が降り注がれることで花や葉がゆらゆらと揺れる、まるで植物たちが喜んでいるようだ。

 

 次にごみ出しなどをする。近所の人と会ったら挨拶は欠かさない。

 ちっこいのにえらいわね〜!とかいうおば様方を笑顔でスルー、たわいのない会話をして別れる、気にしてなんかない。

 

 

 

 そして朝食の時間となる。

拠点に帰れば、ユーゴ、ガンテツ、エイラが起きていた。用意した料理をユーゴとガンテツは既に食べ始めているようだ。

 

 エイラも席に座っているようだが、朝食に手をつける気配がない。ガツガツ食べている2人を信じられない目で見ている。

 心做しか顔も青い気がする、朝は食欲ないタイプなのかな。ミナナはまだ起きていないようだ。朝食の後にはすぐに会議がある、しょうがない、起こしてこよう。

 

 

  

 部屋に入り惰眠を謳歌しているミナナの体を揺する。寝ぼけたミナナが、私のことをノアと呼びながら、魔力を漏らして着替えを背がんで来るため、仕方なく着替えを手伝う。

 

 決して昨日のことを思い出してビビって言うこと聞いてるわけではない、決して。

 

 ほぼ全部私が着替えさせ、ミナナの手を引いてリビングへ連れていく。席に座らせご飯を食べさせると、目が覚めたのかだんだん険しい顔をしていく。

 料理を凝視してるような気がするが気のせいだろう。

 

 

 食べ終わり、食器の片付けを全て私が行う。

 全員が席についたところで今日の朝の会議が始まる。といっても、内容としては午後に冒険者ギルドにてフォレスと合流するため、各自忘れないようにということだけだ。

 さりげなく雑用の分担について話を振ったが無視された、解せぬ。

 

 

 午後から冒険者ギルドに行くため、家事を一通り午前中に終わらせないといけない。

 洗濯物に関してはエイラが手伝うと言ってくれたのでここはありがたく甘えておく。いやホント助かってます。

 

  

 まずは拠点の掃除を行う。

 私たちが暮らす拠点は、この国の王様から支援品として与えられた拠点だ。勇者は絶大な力を持つ、魔王を倒すのに是非使って欲しいと巨大な屋敷をプレゼントしてくれたのだ。

 

 それぞれ人数分部屋があり、他にもキッチン、風呂、トイレなど庶民には到底体験できない設備が整っている。水も貯水槽に水術刻印が組み込まれているため使い放題、火も同じだ。

 

 その分、掃除する場所も沢山あるのだけれど。この広さ、本来なら数人がかりでやるべきなのだろうが……任された以上頑張るしかない。

 

 昔はお嬢様の使用人として掃除もやっていた、腕の見せどころだ。

 

 『レヴィ?そんな掃除なんてやらないで私とお茶しない?こっちの方が楽しいよ』

 

 『掃除するより一緒に筋トレしよう!大丈夫、限界は超えるためにあるよ』

 

 いや、実際はあんまやってなかったかも……

 

 

 

 

 こうして苦労して掃除を終わらせると、もうお昼時だ。

 今回はモンスター肉がもうなかったので普通の食材で作る。皆に美味しいモンスター料理を振る舞えなくて非常に残念だ。エイラとミナナはそれでも喜んでくれたが。ユーゴとガンテツは味への反応はなく、いつも通り食べていた。その後人数分の食器を全て洗う。

 

 これが今日の私の雑用のほんの一部である。

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 なんでこんな主婦みたいなことしてんだ…!!

 

 私冒険者なのに! 

 それにこの屋敷広すぎ、人間の家事ってこんなに大変だったなんて……

 

 ……あいつ、全部1人でやってたんだな。

 

 すごいなノア………私、君のことを尊敬する。

 

 

 

 まあ追放したからもう居ないんだけど。

 

 くそぅ!

 

 

 

 

 

 

 ………………………………………… 

 

 

 冒険者ギルド、街の中心にあるそれは多くの冒険者が賑わう場所である。クエストと呼ばれる街や国からの依頼を受け、遂行するのが主な仕事だ。

 ゴミ掃除から大型モンスター討伐まで幅広いクエストが存在しておりら副業するにもうってつけの場所でもある。

 

 そして私たちはフォレスと会うため、冒険者ギルドにやってきていたのだが……

 

 

「フォレスがいない?」 

 

 

「ああ、【常夜の月】が魔林帯でのクエストに行って帰ってきてないそうだ」 

 

 

「魔林帯に、ですか?一体何が……」 

 

 

 私たちはユーゴからまさかの報告を受け困惑していた。本来合流するはずだったフォレスがクエストから帰還していないのだ。

 ギルドの職員に話を聞くと【常夜の月】は魔林帯での薬草採取を受注していたらしい。

 

「ただ森で過ごしてるだけじゃないの?彼ら魔林帯でよく活動してるみたいだし」

 

  

「いや、彼らは魔林帯への長期滞在の許可申請を取っていない。それに他のパーティどれも帰還してないそうだ。

 調査隊も派遣したが、そちらとも連絡が取れなくなった。現在、魔林帯全域は立ち入り禁止区域に指定されている。そして、ギルドから俺たちに特別依頼が入った。【魔林帯を調査せよ】だそうだ」

 

 

 ユーゴは特別依頼書と書かれた紙を私たちに見せてくる。そこには確かに私たちへの依頼として発注されたことが書かれていた。

 魔道具による魔力測定やモンスターの状況などを調査して欲しいとの事だ。

 また連絡が取れなくなった冒険者のリストもあるようだ。そのリストを見るとかなりの冒険者が魔林帯でいなくなっているようだ。

 

 

「ああ?調査だと?俺たちがやんのかよ」

 

「魔林帯で何が起こっているのか、それがわからなければ対処もできないということだ。俺たちは高レベルのパーティ、何が起こっても対応できるという冒険者ギルドの判断だ」

 

「なるほど……確かにこの街で最もレベルが高いのは私たちですし、納得です」

 

「……はぁ、早く終わらせよう」

 

 ガンテツはブツブツと文句を言っている、彼にとってはモンスター討伐の方がやりがいがあるのだろう。ミナナも少し面倒くさそうだ。素直に話を聞くエイラを見習って欲しい。

 

 魔林帯か、あそこは経験値が多く貰えるモンスターが生息している、素早い銀色スライムとか。私達もよくレベルを上げるために潜っている。

 

 勇者パーティを育てなくてはいけない私にとって、ノアのいないこの状況には少し不安が残る。ノアは人形を飛ばして索敵や偵察などをしてくれていた、お陰でモンスターの回避や探索に大いに役立っていたのだ。特に今回のような調査ではより活躍しただろう。

 

 しかし、今はそれはない。

 

 正直に言って勇者パーティは強い、正面戦闘なら大体のモンスターを倒すことができるだろう。勇者パーティで倒せないモンスターがもし居たのなら、最早どのパーティでも討伐は不可能だ。

 

 (まぁ皆レベルは高いし、何とかなるでしょ……)

 

 

 レベルは強さの指標となる、しかしそれはまともに戦ったらの話。

 

 この時の私を含め、全員がノアが抜けた重大さを理解していなかった。今までノアのお陰で、私たちは強敵と戦うことが出来たのだということを。そして理解する、私たちは戦うことしかできないのだということを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………………………………………………………………………… 

 

 

 

 

 

 

 

 魔林帯、それはこの街【ウッドフォード】のすぐ隣に位置する巨大な森の総称である。魔林帯には幾つか階層があり、街に近い順に浅層、中層、深層となる。森を奥に行けば行くほど、大気中の魔力が濃くなり、森の中に住むモンスターのレベルは高くなっていく特徴がある。

 

 元々、ウッドフォードはこの森を管理下に置くために作られた小さな街だった。魔林帯では魔法具の素材となる魔鉱石やモンスターの素材が多く取れる、特に魔鉱石は貴重なため、多くの人がこれを求め集まっていった。つまりこの森によって大きく発展してきた場所なのだ。だからこそ、この森で起きている事象について早急に調べる必要がある。

 

 立ち入り禁止の状態が続くのは我々勇者パーティにとって良くないことなのだ。

 

 

 一歩踏み出すたび、森が軋んだ。

 

 小鳥のさえずりも、虫の翅音もない。葉脈を流れる樹液の音だけが、やけに耳につく。

 

 

「……おかしい、静かすぎる」

 

「動物の気配が無さすぎるぜ。もちろん、人の気配もな」

 

 私たちは現在、魔林帯の浅層にいた。ガンテツとユーゴが先頭を歩き、ミナナ、エイラ、私がそれに続く……のだが。

 

「……あのーみなさん?」

 

「おい、さっさと中層まで行こうぜこのペースじゃいつまで経っても終わんねえぞ」

 

「俺たちの目的は魔林帯の調査だ、浅層での状況も記録しておく必要がある。エイラ、ここら一帯の魔力量を測定しておいてくれ」

 

 私はみんなに呼びかけるが無視される。

 さすがにこれは話させて欲しい。

 

「……ねぇ?聞いてる?おーい」

 

「と言っても代わり映えしてぇぞ。俺の勘だが、これはもっと奥に行けば原因があると思うぜ、つまんねー」

 

「それはガンテツ、貴方がただ戦いだけ。でも、もっと奥に行くのは私も賛成」

 

 誰もこちらを見ない。

 へーそういうことするんだ。

 

「無視しないでよゴラァ!」

 

「うっせぇぞレヴィ!てめぇがちんたら歩いてるからこっちもペース合わせなきゃいけねんだよ!もっと早く歩けや!」

 

「じゃあ私に持たせてる荷物持ってよ!なんで私一人だけが荷物持ちなんだよ!」

 

 

 現在私は荷物人数分の荷物を持たせられていた。重いって、流石に5人分の荷物は重いって!

 

「……あの、やはり半分は私が持ちます。レヴィさんにだけ持たせるのもおかしいと思うので」

 

「却下だ、エイラは魔林帯について魔道具で記録を取るという役割がある。それは魔力操作に長けているエイラにしか出来ないことだ。それに盗賊であるレヴィが荷物を持つこれが最も効率がいい」

 

 エイラの私への気遣いを勝手に断るユーゴ。なんでお前が決めんねん。

 盗賊である私には、スキル【物資軽量化】と【俊敏性向上】によって他の人より負担は少ないがどちらにも限度がある。この量の荷物を持つことは想定されていない。

 というか、軽量化してるとはいえ、5人分の荷物にしては重すぎる。

 

「ねぇ、これなにが入ってるの?正直こんなに荷物多いのおかしいと思うんだけど」

 

「モンスター図鑑や植物図鑑だ、大体覚えてるからなくてもいいが、あった方がいいだろう」

 

「その他魔道具、ポーション、ノアがくれた人形。なにか使えると思って」

 

「酒瓶、暇つぶし用の筋トレ道具」

 

「こ、小型祭壇セットや聖水です、いやほんとごめんなさい、ノアさんはいつも人形を使って運んでくれてたので…」

 

 エイラ以外、悪びれもなく答える。

 全員荷造り下手すぎだろ、特に後半。そりゃこんなに重くなるわ。なんだよ筋トレ道具って、家でやってよ!自分で持つなら良いけど人に持たせるなら持ってくんな!

 

 お、落ち着けレヴィ。ここで私がキレてもこいつらには何も響かない、ただ面倒くさくなるだけ……

 

「すぅー……はぁー……すぅー……はぁー…ふぅ……」

 

「だ、大丈夫ですか?えっと、何かお手伝い出来ることはありますか……?」

 

「ふぅ、別に大丈夫全然、祭壇ね!任せて運ぶから安心して。全然気にしてないから」

 

「そんなに顔引き攣られて言われましても……」

 

 エイラは聖女だからいろいろ大変なんだよね、小型祭壇セット何に使うのか知らないけど大事なものだもんね!納得してるから大丈夫だよ。無意味じゃないって信じてるから……!

 

「そんな雑魚ほっとけ、さっさと先いくぞ」

 

「……ッッ……ッ、ッッ……!!」 

 

「今までに見た事ない表情してますよレヴィさん…!?」

 

 落ち着けレヴィ、私の方が年上、私の方が年上、こいつら赤ちゃん、私は子供には優しいんだ!この人間とかいう下等種族が……!ここは私が大人だから我慢してやる!感謝しろよ!

 

 

 

 

 

 

 

「レヴィ、うるさい」

 

 

 

 

 精一杯運ばせていただきます!

 なので魔力で脅すのやめてミナナ様!

 

 

 

…………………………

 

 

  

 私たちは魔力量を測定したり、人間やモンスターの痕跡などないか調べながら、そのまましばらく歩みを進めていた。しかし……

 

「進むペースが遅っせぇッ!このペースじゃ日が暮れちまうぜ!何かいないか索敵しながら進むのも疲れるしよぉ、筋トレしてぇ!」

 

「予想以上に時間がかかっているな、普段ならもっと早く終わっているはずだが、測定や痕跡探しに手間取っているのか」

 

「すみません、魔力測定が大変で……魔道具の調子がおかしいんです、魔力量を示す針がずっとブレてて…」 

 

「今は何故か森の魔力が乱れてる。測定が難しいのも当たり前、私も魔力の流れが読みずらい」

 

 現在、私たちはたかが調査に苦戦していた。

 

 何故こんな初歩的な調査に苦戦しているのか、理由は単純、私たちが慣れていないからだ。今まではこのような仕事は全てノアがやってくれていた。ノアは戦闘ができなかったが、戦闘以外のほとんどの仕事をこなしていたのだ。

 

 ノアは人形と感覚を繋げることで索敵が可能であり、全員の荷物も人形を駆使する事で運ぶことができていた。そもそも彼は、一度に大量の人形を扱える天才だった、それ故に私たちが押し付けた雑用を人形を使う事で、上手くこなしていたのだ。そのことを理解している人は私以外いなかったみたいだが……

 

 私たちは戦闘ができる、しかし戦闘以外は上手くできないのだ。何故ならその仕事は全部ノアに任せてきてしまったから。そのツケが今、全員に回ってきているのだ。

 

 (私も荷物を運ぶだけでかなり体力が削られている……いやこれは午前の家事の疲れもあるな。これ大丈夫かな、普段の私達なら深層魔林帯手前ぐらいには入っているのに……)

 

 

「なぁ調査とかもう良くねぇか?ここら辺なんも無いだろ、早く進もうぜ。なんなら走りてぇ」

 

「私も走るはともかく進むことに賛成です!魔力測定よりも冒険者の捜索、救助を優先すべきでは……?」

 

「……いや、俺たちの受けた依頼は魔林帯の調査だ、戦闘と救助は出来たらやるべきことであって、依頼内容に含まれていない」

 

 ガンテツとエイラがユーゴに意見する、しかしユーゴは難色を示す。ミナナはだんまりだ。

 

 スキップでもいいぜ?と、なぞの妥協をするガンテツは無視する。

  

 全員が普段では感じたことのない疲労と漠然とした不安を感じていた。この状態が続くのはまずい。

 

「みんな大丈夫だよ、まだノアが抜けたことに慣れてないだけ。いつもは6人で行動していたのに今は5人なんだから、苦労するのは当たり前だって!」

 

 私は全員を励ますために声をかける。実際、慣れてないだけ、というのは本当だ。数をこなせば次第にできるようになるはず。

 さらにいえば、新たに加わる狩人のフォレスは情報収集に優れた人物だったはずだ。彼が入れば幾分か楽になるだろう。

 

 荷物は持って欲しいが。

 

「その通りだ、焦ることは無い。実際普段の魔林帯の魔力量より多くなっていることは記録できている。このまま進めるぞ」

 

 ユーゴの指示にしぶしぶ従う2人。しかし魔力量が増えているからといって、原因がわかった訳ではない。

 何かしら結果やら、ほかの冒険者やら見つかれば楽なんだけどなぁ。 

 

 

 そんな時だった、魔族の優れた聴覚が物音を聞き取ったのだ。

 

 (これは、話し声と戦闘音?……何かと戦ってる?) 

 

 声色的に女性のようだ。必死に呼びかけているような、そんな感じだ。それと同時に何かが吹き飛んだりぶつかるような音も聞こえる。

 

「ねぇユーゴ、森の奥から物音が聞こえない?」

 

「……確かに微かだが聞こえてくるな、全員警戒しながら行くぞ」

 

「モンスターだったら退屈しのぎにはなるか、体が疼いてしょうがねぇ!スキップで行く?」

 

「ガンテツ、いちいちうるさい」

 

 

 

…………………………………………………………

 

――同刻、魔林帯・中層

 

 

 

  どうしてこんなことになったんだろう、ダメだ血が止まらない。私たちはただ、クエストを受けてこの森に来たはずだ。そして、この子に会いに来ただけなのに……

 

「ごふっ……はぁ、はぁ……リノ、あなただけでも逃げて……」

 

「ルナねぇ!だめ、死んじゃやだよ……!一緒に逃げるの!……もう、あっち行って!私たちは餌じゃないよ!」

 

「グルル……」

 

 リノは倒れた私を守るように、何度も熊の魔獣の攻撃を受け止め、血飛沫が舞う。

 

 私が居なければこの子のはとっくに逃げれていたのに、それもこれもこの樹のせいだ。

 

 私は自分の体から無数に突き出た枝を見る、この様子じゃ内蔵はズタボロだろう。口から滝のように血が流れ出る。未だにメキメキと伸長しているその枝ば、私に激痛を与えてくる。

 

「ッッ……!!」

 

 私は絶叫を咬み殺す、今痛みに悶えてしまえばリノに心配をかけてしまう。それに他のモンスターに気づかれる可能性もある。

 

 ダメだ、叫ぶな、託されたんだろ私は。

 

「……ねぇ聞いて、リノ、私はもう、助から、ない……だから、行って……森の外に出てみたいんでしょ?」

 

「やだ!ルナねぇと一緒がいい!ルナねぇと一緒に出るもん!」

 

 涙を目に溜めてリノは叫ぶ、きっと怖いはずなのにリノは逃げずに私を守ろうとしている。この子は強い、それに比べ私はなんと情けないんだろう、自分の弱さに嫌気がさす。

 

「ごふっ、ごほっ…!リノ……ごぷっ!」

 

 ダメだ、もうまともに喋れない。言葉を紡ごうにも内側から溢れる血が邪魔をする。

 

 ああどうか、私はどうなってもいいから、誰か、リノを……

 

 

 

「聖剣:抜刀」

 

 

 瞬間、眩い線が魔獣の体を裂き、奥にある樹の幹までもを真っ二つにした。

 本当に一瞬の出来事だった、魔獣は自身が切られたことに気が付かないまま、血を吹き出しながらズルリと崩れ落ちる。

 

 

 

 (なに……いまの?いったい……なに……が……)

 

 

 私はスキップでやってくる集団の光景を最後に、意識は闇へと落ちていった。

 なんでスキップ……?

 

 

 

 

 

 

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