地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~   作:かくろう

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運命の出会い【side銀狐族の少女】

【side銀狐族の少女】

 

「リンカニア。お前は今日限りクビだ。我が【純白の剣】から追放する」

 

「な、なんですってっ」

 

 リンカニア。それが私の名前だ。

 

 私は冒険者の町ダータルカーンにおいて最近勢いを増してきた中堅のパーティー、純白の剣で斥候兼狩人として所属していた。

 

 前衛であり、【魔法剣士】のギフトを持つリーダーのハーカル。

 【鉄壁守護者】を授かって重戦士(タンク)のベガルト。

 後衛で【四属性】持ちの魔法使い、シェリル。

 

 そして私、斥候と前衛補助の弓使いであるリンカニア。

 

 

 ルインハルド王国の国境沿い。オメガ貴族であるタブリンス様の治める領地。

 

 その辺境にある名も無き小さな村で生まれ育った私達は、幼い頃から冒険者になることを夢見て都会に上り、冒険者が集まる都市であるダータルカーンで純白の剣を結成した。

 

 

 その日、私達は長年の夢だったガンマランク昇格のお祝い、及び次なるベータランク目指しての決起会をしていたところだった。

 

 ガンマランクパーティーは一人前の証。14歳で村を出てから5年。長い下積みを乗り越え、苦労に苦労を重ねてようやく辿り着いた念願の昇格だ。

 

 ゆくゆくはベータ、アルファと昇格し、王国最強の冒険者、オメガランクに到達することが私達の夢だった。

 

 だけど、話が盛り上がって宴もたけなわとなったところで、リーダーのハーカルからとんでもない事を告げられた。

 

 それが冒頭のひと言だった。

 

「一体どうしてっ⁉ わたし、なにか悪いことした?」

 

「それ本気言ってるのか?」

「役立たずのくせによくそんなことが言えるな」

 

「な、なによ、それ……」

 

 ハーカルとベガルトのまさかの暴言に二の句を告げなかった。

 

「分からない……。本気で分からないわ。自分なりに一生懸命、みんなのために動いてきたつもりだった。何がいけなかったの? 直せるところは直すから、いきなり出て行けなんて言わないでよ」

 

 失笑、溜め息、呆れ、そして嘲笑。

 

 3人の顔からそんな感情がまるで隠れることなく滲み出ている。

 

「本気で分からないんだ。あんたってホントにどうしようもない愚図ね」

「シェリル……」

 

 親友のシェリル。子どもの頃から一番仲の良かった女の子。

 やさしくてほんわかした喋りで周りを楽しくしてくれる癒やし系の筈……。だけど、目の前の彼女はそんな雰囲気は微塵も感じさせない。

 

 むしろ、怖い。私の全てを否定しているかのような見下した目付き。

 

 口元は歪み、蔑んだ笑みを浮かべている。

 

 

 なんなの? どうしてそんな顔をして私を見下すのよ……。

 

 友人達の見たことがない表情と、向けられる悪意に何も言えなかった。

 

「ごめん、本気で分からないの。お願い、教えてちょうだい」

 

「ふっ。なら教えてやる。お前のギフトだよ」

 

「え……」

 

 私のギフト。それは斥候においてもっとも重要な能力である敵を知る事に特化したものだった。

 

 ギフト【分析】。

 

 魔力を込めて敵を視認すると、相手の情報が分かるようになる。

 

 なんて名前なのか。生態、種族の特性、弱点、あらゆる情報が視覚的に分かるようになる。

 

 ただし、それらの情報を活かすためには魔物に対する知識が必要不可欠だった。

 

 表面的な事だけ分かっても意味が無い。単なる学者タイプでは冒険者として能力を活かせない。だから私は斥候になった。

 

 オフの日には安くない入館料を払って国営の図書館に入り、魔物の生態知識を深めるために勉強に励んだりもした。

 

 

 

「どうして? 私、みんなのために貢献してきたじゃない。私の能力がなかったら勝てない戦いだってあったでしょ。自惚(うぬぼ)れるわけじゃないけど、私は冒険の役に立ってたって自負してた。それが間違いだったの?」

 

「それだよ。その【分析】が気持ち悪いって言ってるんだ」

 

「き、気持ちわる……って、一体なにを……」

 

「正直気分良くないのよねぇ。何もかも見透かされてるみたいでさ。いつも私達のプライバシーを覗かれてるかと思うと気持ち悪いのよ」

 

「そんな……そんな理由で追放する気なのっ⁉ 私はみんなに能力を使ったことなんて一度もないっ! 友達でしょっ! そんなことしないわよっ」

 

「でも、できるんでしょ?」

 

 シェリルの言葉にグッと息が詰まる。そう、この能力は類似ギフトである【鑑定】や【弱点看破】と違って、どんな相手にも使えてしまう。

 

 魔物であろうと、人間相手であろうと、あるいは物質であっても。

 

 だからこそ、私は友人達……いえ、人間相手にそれを使ったことは一度もなかった。

 

 誓ってなかった。1度だって仲間に分析を向けたことはない。

 

 だけど、それを証明する手段がないのも事実だった。

 

 必死に訴える私の言葉は、3人には届かなかった。汚物を見るような目。ゴミを見るような目で蔑んでくる。

 

「ハーカル。……本気なの?」

 

「ああ。もうお前に用はない。それに、代わりのメンバーはもういるんだ」

 

「え?」

 

「おい、入っていいぞ」

 

 拠点にしている宿屋の扉が開き、1人の男が入ってくる。ボサボサの長い髪をザンバラにまとめ、頬から首にかけて大きな傷を付けている屈強な男だった。

 

 全身を覆っているしなやかな筋肉の作りを見て、すぐに私と同じ斥候タイプだと分かる。

 

「新たな斥候役。グレンだ。お前より優れたギフト、【弱点看破】を持ってる。ハッキリ言ってモンスターなんてどんな奴であろうが弱点さえ分ければ敵じゃねぇんだ。お前みたいに頭でっかちにあーだこーだとうんちくを覚える必要もねぇ」

 

「な、何言ってるのよ」

 

 それは根本的に間違ってる。強敵であればあるほど、弱点だけ知っていれば勝てるようなものじゃないのに。

 

 だけど……彼らの黒く冷たい目を見続けていると、それを論じたところで分かってもらえそうもなかった。

 

 何度も何度も説得した。それでも彼らには届かなかった……。

 

 

 物心ついてから10年以上、冒険者になってから5年。

 

 培ってきた友情は、脆く儚いものとして散っていくのが分かり、私の心は絶望に冷たくなっていく。

 

(そうか……仲間だと思ってたのは、私だけだったんだ……いや、心のどこかで、こうなることは分かってた気がする)

 

 幼馴染みだから。一緒に夢を語った仲だから……。信じたいって思った。

 

 私の……独りよがりだったみたい。

 

「分かった。みんながそういうなら、出て行くわ。今までありがとう。さようなら」

 

 自らの未熟さを恥じ、これ以上彼らと心を交えることはできそうもないと感じた私は、その場を立ち去るために椅子から立ち上がろうと足に力を込める。

 

「ええ、さようならリンカニア。()()()()()()()()()()()()でしょうよ」

 

「え……」

 

 グワンッ、と視界が揺らいで反転する。

 

 椅子から転げ落ちた事をぼんやりと知覚するものの、全身が麻痺したように動かない。

 

「まさ、か……飲み物に、毒を……」

 

 油断した……。毒耐性は得ていた筈なのに。シェリルの魔法で分からなくされていたんだ。

 

 それは彼女の邪悪に歪んだ笑顔が物語っている。

 

「な、なんで……追放、するからって……ここまですること……」

 

「銀狐族の女って、高く売れるんだよ」

 

「ッ!」

 

 それは幼馴染み達だけに明かしていた私の秘密だった。

 

 狐の獣人である私の髪は黄色。黄狐種はありふれた獣人だけど、銀狐種は白銀色の体毛が美しいとされ、貴族の愛玩奴隷として高値で裏取引される事から奴隷狩りの対象になっていた。

 

 そのことを知っていた両親は、幼い頃の私を守るために髪の色を変えるマジックアイテムを買ってくれた。

 

 幼馴染みである3人はそのことを知っている筈なのに……。

 

 友達だから、幼馴染みだから打ち明けたのに……。

 

 いや……知っていたからこそ……なのかな。

 

 私の事……お金に見えてたの、かな……。

 

「まさかあんなに高く売れるとはな」

「ええ。これで当面の活動資金には困らないわ」

 

「俺、新しい盾が買いたかったんだよなぁ」

 

「新人の俺にも良い武器買ってくれよな。ぎゃはははっ」

 

 醜悪……。そんな感情しか湧いてこなかった。

 

 私の意識はそこで途切れた。

 

◇◇◇

 

 

◇◇◇

 

 

◇◇◇

 

 

「凄い……凄いわ……。あの巨大モンスターをたった一人で」

 

 私の目の前に、圧倒的な光景が繰り広げられていた。

 

 魔の森の奥地に生息するイレギュラー。フォレストウルフの大ボスが私達に襲い掛かってきた。

 

 突如として現われた1人の少年。

 

 幼い顔立ちで、年齢は多分14か15歳くらい。

 

 小さな灯りに照らされる黒髪の少年は、あまりにも美しかった。

 

 あんな凶悪なイレギュラーを、たった一人で倒してしまった彼の姿は、伝説の勇者かのようだった。

 

 

 

 それはほんの少し前。

 気が付くと、私は暗い馬車の中で鎖に繋がれていた。

 

 体に力が入らず、無理に動かそうとすると電流が流れるような痛みが全身を駆け巡る。

 

 それは力を封じるマジックアイテムで、囚人を護送するときに使われる首輪が取り付けられていた。

 

 

「ここまでするんだ……。私って、なんだったんだろう」

 

 私を運んでいるのは闇ギルドに雇われた盗賊達らしい。

 会話に聞き耳を立て、王都の闇オークションに出される事を知った私は、絶望と悲しみに涙した。

 

 

 

 馬車は何事もなく進んでいく。分厚い布に覆われた鉄格子の荷馬車は、薄ぼんやりと中を照らす魔力ランプの小さな灯り一つだけだった。

 

 時間の感覚もなく、どのくらい進んだのか分からない。

 

 王都までは馬車で2日。

 

 だけど人目を避ける為に街道から外れた道を遠回りして、魔の森の近くにある旧街道を通っていることが車体の揺れから分かる。

 

 だから通常よりも長い時間をかけて向かっているらしく、途中で休憩を挟みながら進んでいるらしいことは会話から理解できた。

 

 そして何度目かの休息。辺りは真っ暗な夜の闇に包まれ、野営の焚き火の明かりが布地に漏れてくる時だった。

 

 外が急激に騒がしくなり、怒号と悲鳴が響き渡る。

 

  

「フォレストウルフだっ! フォレストウルフの群が襲ってきたっ!」

「くそっ! ついてねぇ。なんでこんな森の外まで出てきてるんだ」

 

 そう、ありえない……いや、絶対ではないけど、フォレストウルフは森の名が示す通り森の中で生きる狼だ。

 

 魔の森から人通りのある街道付近に出てくることは滅多になく、純白の剣でもはぐれの数匹のグループを討伐したことがある程度だった。

 

 だけど盗賊達を襲っている気配の数は尋常ではない。

 

 1匹や2匹じゃなく、おびただしい数のフォレストウルフが盗賊達に襲い掛かっていた。

 

「うぎゃぁああっ」

「や、やめてくれっ、たすけてっ」

「痛いッ、痛いいいっ!」

「嫌だッ、死にたくないっ!」

 

 一匹でも強力な魔物が集団で襲い掛かっては護衛の盗賊程度では対処できる筈もない。

 

 次々に食い殺される盗賊達の悲鳴を耳にしながら、いずれ迫ってくる自分の番に恐怖がわき上がってくる。

 

 そして私の乗っている鉄格子付きの荷台も嗅ぎつけられ、分厚い皮で出来たカバーをバリバリと食い破ってくる。

 

 

 獲物を見つけた狼たちの凶暴な鳴き声に晒され、私は恐怖にすくんで隅っこに縮こまるしかなかった。

 

 幸いにして頑丈な鉄格子が私を守ってくれる。だけど強靱な顎で獲物を噛み砕く牙で囓られ、徐々に曲がり始めていた。

 

 ジワジワと迫ってくる命の危険。戦う武器もなく、無防備に投げ出された私なんて、あっという間に食い尽くされるだろう。

 

 命の危険は覚悟してた。でもこんな形で死にたかったわけじゃない。

 

 

(いやだっ、いやだよっ。死にたくないっ。まだ、生きていたいっ。お母さんっ、お父さん、助けてっ)

 

 死んだ両親に必死に助けを求めるも、虚しく響いていくだけ。

 

 いよいよ確実な死が迫っていた。

 

『うおおおおおりゃあああああっ!!』

 

(!!? なに?)

 

 

 そう思っていた矢先、突如として変化が訪れる。

 

 

 破られた隙間からは腹を食い破られて貪り食われている盗賊達の死体が見える。

 

 そこに群がっていた狼たちが、一斉に何かに向かっていったのだ。

 

 そして響き渡る悲鳴。人ではなく、狼たちの断末魔の声が次々に上がり、徐々に静寂が訪れる。

 

 

「誰かが、戦ってる……?」

 

 そして鉄格子の鍵が開く音がして、中をのぞき込む人影が見える。

 

 

「君は……」

 

「ひっ、こ、殺さないでっ」

 

「大丈夫です。もう狼たちは追い払いました。安心してください」

 

「えっ、えっ?」

 

「心配しないで。僕は敵じゃありません。すぐに助けます」

 

 暗くて顔はよく見えないけど、優しげな声が安心感を与えてくれる。

 

 フォレストウルフの声は一匹や二匹じゃなかった。彼はそれをたった1人で退けたというの?

 

 

 彼は私が怯えないように適切に距離をとってくれた。

 

 だけどそのせいで後ろから迫ってくる巨大な赤い光に気が付いていない。

 

「ち、ち、違う、う、後ろっ、後ろっ!!」

「!!」

 

 

 戦いが再びはじまった。そこからの景色は、信じられない事の連続だった。

 

 

 

 あんなに強い人を見たことがなかった。噂に聞くオメガランク冒険者でもあんな事ができるだろうか。

 

 あの巨大な体のイレギュラー相手に互角に戦っている。

 

(何かしたい。ただ見ているだけなんて……でも私にできることなんて……)

 

 

 

「母上の墓前に花を添えるまで、僕は胸を張って生き抜いていきたいっ!」

 

 

 その言葉に胸が高鳴る。この人は私と同じだ。死んだ両親に胸を張って生きていくために、一生懸命頑張って……。

 

 でも私とは決定的に違う。死を目の前にしても誇りを失わないなんて、私にはできない。

 

 でも、私だって。

 

(ただ見ているだけなんてできない。私にも何か出来ることが……)

 

 そこで私は自分のギフトを発動し、どうにかして何か役に立てる事はないかと頭を巡らせた。

 

 そうして看破した相手の弱点を教え、彼は見事に勝利を収める事になる。

 

 

 

(凄い……本当に勝っちゃった……伝説の勇者様みたい……)

 

 それはさながら物語に出てくる伝説の勇者のようでもあり、私は彼の姿にひたすら魅入ってた。

 

(本当に凄かった……イレギュラーをたった1人で……えっ⁉)

 

 

 何気なく霧散していくイレギュラーに浮かび上がっている【分析】が視界に入った。

 

 そこに表示されていた敵の名前に、思わず目を見開く。

 

――――――

 

【氷炎魔狼 ヘルガロウム  LV85(ユニーク)】

 

――――――

 

(ヘ、ヘルガロウム⁉ ウルフ族モンスターの最上位じゃないっ! なんでこんな所にいるのよっ!!)

 

 やっぱりおかしいと思ってたんだ。いくらイレギュラーだといっても、フォレストウルフにしては強すぎると……。

 

 そんなイレギュラー中のイレギュラーに勝ってしまうなんて、彼は一体何者なのだろうか。

 

 気絶した彼に駆け寄り、その綺麗な黒髪に思わず魅入ってしまった。

 

 

 




※後書き※

チョロインの予感。そうはさせない! 簡単には堕とさないぞっ! ちゃんと関係性育てるようにしなくっちゃ。

ここまでが一区切り。なんでそんな強い奴が都合良くいるん?って思った人、ちゃんと理由があるので見守ってくらはいっ!

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英雄に駆け上がる彼らの活躍をご照覧あれ!

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