地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~   作:かくろう

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画策する悪【sideハーカル】

【sideハーカル】

 

「くそっ!! どうなってやがるんだ!」

 

 ダンッ! とテーブルに拳を叩き付け、酒の入ったコップが床にこぼれ落ちる。

 

 ここ数日依頼の失敗が続いている。説教女を追い出してから数週間が経過していた。

 

 何故だか以前に出来ていたことができなくなり、仕事の効率が圧倒的に悪い。

 

 それもこれも無能な新人が役立たずなせいだ。

 

 先日出て行ったグレン以降、募集をかけてもすぐに根を上げて逃げ出しやがる。

 

 ついさっきも加入したばかりの新人が自分の無能さを棚に上げて出て行ったばかりだ。

 

「ハーカルよぉ。マズいんじゃねぇか? そろそろ簡単な依頼でも達成しねぇと違約金が払えねぇ」

 

「分かっている。だがそんなみっともないマネができるか。俺達はガンマランクだぞっ。一流の冒険者なんだ」

 

「分かってるよっ。だが事実として今までできていた依頼が上手くいってねぇんだ。これ以上の失敗はできないぞ。次に失敗したら降格は確実だ」

 

「ねえハーカルぅ……もうこうなったらあの女を捜すしかないんじゃない? きっとこの町に戻ってる筈よ」

 

「そんな事を言っても、生きてるかどうか分からない女を捜すとか現実的じゃないだろ」

 

 ムカつくツラをしながら酒をあおるシェリル。この女も最近言うことを聞かなくなってきたな。

 

 気に食わないが魔法使いの戦力として一流だ。性格は最悪だがいてもらわないと困る。

 

 優秀なこの俺の栄光のためには、こんなバカ2人でも必要不可欠なのだ。

 

 

「夕べ酒場で飲んでる時に妙な噂を聞いたのよね」

「噂?」

「最近、西側のミルミハイド商会の縄張りでもの凄い勢いで依頼を達成してる2人組がいるんだって」

 

 そういえば、ここ数日いつもの酒場で見かけなくなっていたな。

 西側エリアに行っていたのか。

 

 どこにそんな金が残っているんだ。へそくりでも隠してるんじゃないだろうな。

 

 

「ああ? それがどうしたってんだシェリル?」

 

「そのうちの1人は、青い髪の狐人族なんですって……」

 

 不適な笑みを浮かべたシェリルの何か言いたげな顔に苛立ちを覚えつつ、おおよその見当がついてきた。

 

「まさか、その女がリンカニアだってのか? だがあの女は銀狐族だろう?」

 

「忘れたの? あの子は常に髪の色を変えるマジックアイテムを持っていた。それに、噂を総合すると、どう考えてもリンカニアとしか思えないのよ」

 

「どういうことだ?」

 

「聞いたところだと、その女は異常なほど優秀な索敵能力を持っているそうよ。そして魔物に対する豊富な知識。徹底した前準備も評判らしいわ」

 

「ほう?」

 

「グレンを始めとした新人の斥候達を見てきて分かったわ。リンカニアの索敵能力、それに敵を分析する能力に、それを活かす知識と経験。想像力。他の誰も持っていない優秀な能力よ」

 

「……」

 

「もう認めるしかないわよ。リンカニアは優秀だった。それこそ、私達純白の剣がガンマランクまで昇格できたのは、あの子の献身的なサポートがあったからに他ならないわ」

 

「……ッ! チィ……」

 

 

「出発前の準備。道中の警戒。敵の発見。攻撃のサポート。戦闘後の後始末。魔物の丁寧な解体。ギルド職員との連携。信頼関係の構築。どれも私達が雑用の仕事として馬鹿にしてきたことよ」

 

 確かにそうだ。気にくわねぇ女だったが、なんだかんだで優秀だったのは事実。

 

 俺達はあの女のお守りのおかげで出世できてたってのか? ふざけるなよ……。

 

「だが、今更そんなこと認めてたまるかよ」

 

「だからこそよ。生きているなら好都合じゃない。連れ戻せばいいんだわ。所詮あの子はサポート。力尽くで言うこと聞かせればいい」

 

「へへへ、そいつは妙案だな」

 

 確かに。もう俺達には後が無い。これ以上違約金を滞納したら奴隷落ちが確定してしまう上に、これまで築いてきた名声が地に落ちてしまう。

 

 

「だけど気を付けて。一緒にいる男は只者じゃないらしいわ」

 

「なんだと? どういうことだ?」

 

「よく分からないけど、新人冒険者として登録して、たった数日でデルタランクに駆け上がったらしいわ」

 

「そんなバカな。俺達ですら何年もかかったんだぞ」

 

「まあ、リンカニアがサポートについているなら一足飛びにできても不思議じゃないさ。ズルしてるみたいなもんだからな」

 

 それもそうか。もしその女がリンカニアだとしたら、すぐにでも連れて来ないとマズい事になる。

 

「よし、そうなれば早速行動だ。その女を捜し出して捕まえる」

 

「一緒にいる男はどうする?」

 

「邪魔するなら始末しちまえばいい。リンカニアの尻馬に乗ってランクを上げるような情けない野郎だ。大したことねぇよ」

 

「おいおい本気か? 殺人はマズいぜ」

 

「心配いらねぇよ。もうじきでダンジョンの合同攻略があるだろ」

「なるほどそうか。ダンジョンなら」

 

 ギルドの依頼は基本的に受注は個人の意志だが、定期的にダータルカーン全体で大規模なダンジョン攻略が行なわれる。

 

 それだけの勢いでランクが上がってるなら、必ず参加してくるはずだ。

 

「それだけ注目されている奴なら、噂話の一つくらい漏れている筈だ」

 

「なるほどねぇ。さすがハーカル。そういう悪知恵は働くのね。確かに、ダンジョンの中で人が死んでも死体は残らない」

 

 そう。ダンジョンは魔素で構成された物質の塊であり、死んだ生物はダンジョンに魔素として吸収されるという特性がある。

 

 つまり、ダンジョン内で人が死んでも、誰にも気付かれないんだ。

 

「よし、それまでにダンジョン攻略の準備をするぞ。こうなったら文句を言っている場合じゃない。あの女を捕まえて、徹底的にこき使ってやるんだ」

 

 俺達にはもう後が無い。認めたくはないが、手段を選んでいる場合じゃなさそうだ。

 

「でも具体的にはどうするの?」

「ああ、心配いらない。もう手段は確保してあるんだ」

 

「手段?」

 

「闇ギルドに連絡を取る」

 

 闇ギルドを使えば非合法な手段も確保できる。とことん追い詰めてやるぜ、リンカニア。

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