地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~   作:かくろう

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脅威の新人

【sideアテン】

 

「こいつは驚いた……想像以上だ」

 

 私、【煉獄の騎士団】のリーダーアテンは驚愕していた。

 

 国家オーダーのダンジョン攻略。本来ならば私達上位ランクの冒険者は上層階の雑魚の掃討を下の者に任せるのがしきたりになっている。

 

 だが、今回……私達は、いや、ミルミハイド商会ギルドのオーナーであるトトルム氏に呼び出された私は、彼直々にチームの随行を依頼された。

 

 

 どうやら彼らに命を救われたらしく、その恩もあってかなりの便宜を図っているらしい。

 

 

 最初は新人冒険者に旨味を与えるためのお守りを押し付けられるかと思ったのだが、オーナーは私の考えを見透かしたように不敵に笑いながらこう言った。

 

 

『彼らは恐るべき速度で最高ランクまで駆け上がるだろう。君たちがまだ上を目指したいなら彼らの戦いをよく見ておけ』

 

 と。

 

 そして彼らが特別たる理由を、いま正に目の前で理解していた。

 

「重ね斬りッ」

 

「重ね撃ちッ!」

 

 目の前には狭いダンジョンの通路にミッチリとひしめき合った魔物の群が次々と討伐されていく。

 

 ここはまだ5階層。目的地の半分にも到達していない。

 

 しかし本来なら10日ほどはかかるであろう行程を、彼らの活躍によって僅か4日で完了させていた。

 

 

「リン、次だっ」

「ええっ! ストレージッ」

 

 無数の矢が敵を貫いていく。驚くべきは彼らの強さそのものではない。

 

 その驚異的な持久力にあった。

 

 敵を倒す。無数の敵を一気に蹴散らす。

 

 それらに限っては私達煉獄の騎士団でも十分に可能だ。

 

 しかし、彼らが驚愕に値する理由は、まったく休む事なく戦い続けることができる驚異的な持久力によるものだ。

 

 まるで消耗した先から体力が回復しているような。

 

 おかげで私達は下層の強力なモンスター達との戦いに備えて戦力の温存が十分にできている。

 

 

「それにしても凄いわね~。あのリンって~女の子ぉ~、私達と遜色ないレベルの動きをしているわ。シズカと同レベルのスピードじゃな~い?」

 

 氷結魔導師のギフトを持つフェンネルが感嘆の声を漏らす。

 

 アクビの出そうな間延びした喋りが特徴で、最後まで喋るのを待っていると日が暮れてしまう。

 

 だがその実力は間違いなく国内随一。隣国を含めた大陸全土で数えても五指に入る強さを持っている。

 

 その彼女から見てもリンという新人は凄まじい力を持っていると評するほどだ。

 

「ふむ、確かに拙者も投擲武器は得意でござる。しかし彼女の場合は、その驚異的な正確さと連射性にこそ神髄があるでござるな。アイテムボックスをあんな使い方する者は初めて見た」

 

 極東の島国、サクラ国出身の斥候である『忍者』のシズカは関心したように分析を行なっている。

 

 彼女は戦いのサポート役としてあらゆる武器攻撃に精通している。

 

 その中には投擲武器や弓矢の扱いも含まれているが、彼女もまたリンという女の子は驚異的だと語った。

 

「いかに拙者とて、あれほど正確な射撃を超連射するのは不可能でござる。しかも彼女は相手の弱点を正確に貫くだけでなく、その生態についても熟知しているようでござるぞ」

 

「確かにな。敵の生態を熟知していれば、戦い方の幅も広がるし、負ける確率も低くなる。彼女は自分の特性をよく理解した上で戦い方を確立しているようだ。とても新人冒険者の領域ではない。まるでベテランだぞ」

 

「その通りでござる。敵を知り、己を知れば百戦あやうからず。彼女のスゴさは敵に対する驚異的な理解度にあるように思える。そういえば、東地区の中堅冒険者チームに【分析】のギフトを持っている冒険者がいたでござるな」

 

「ああ、あそこにいる純白の剣のメンバーじゃなかったか? 今はいないようだが」

 

「うむ、リン殿の戦いぶりは、まるで噂に聞く黄狐族の彼女のようでござるな」

 

 リンという女の子も狐人族。ただし、髪色は青だ。

 彼女が消えたと同時に現われた同じ能力を発揮する少女……。まさかな……。

 

 

「それに、あの男の子も凄いわねぇ」

 

 そう、リンという女の子も凄いが、それより驚異的なのは彼の方だ。

 

 

 新人冒険者でありながら、たった数週間でガンマランクまで登り詰めた男、セージ。

 

 

 銀色の髪に細いがしっかりした体躯。まだ年端もいかぬ青年にもかかわらず、その剣技は完成形に近い。

 

 その他の技は荒削りなところがややあるものの、剣を使った攻撃に関しては凄まじい練度を誇っている。

 

 恐らく並の使い手では純粋な剣技で彼に勝てる者はそう多くないだろう。

 

 彼のような男がどうして新人の枠に収まっているのだろうか。

 

 年齢はかなり若く見えるので、恐らく15,6歳だろう。

 

「剣技だけでもお前に匹敵するんじゃないか、アテン」

「おいおいザーク。国内最高峰の騎士を捕まえてそれはないだろう。確かに素晴らしい才能だ。まだまだ負けるつもりはないよ」

 

 

 数年後は分からないがな、という言葉が喉まで出かかる。

 ザークの言うとおり剣の腕はこの私に匹敵するだろう。

 

 それに加えて謎の多い多彩な技。あれが加われば勝負がどうなるかは分からない。

 

「ふう、終わりましたアテンさん」

「ごくろうさん。そろそろ休憩にしないか。流石に朝から夕方までずっと戦いっぱなしだ。疲労が溜まっているだろう?」

 

 

「そうですね。そろそろテントの設営には丁度良い時間です。食事の準備もありますし、ここまでにしましょう」

 

 まるでなんでもない事のように彼はいう。

 

 あれだけ動き回って直ぐさま野営の準備に入るキビキビした2人の動きに呆気にとられ、慌てて他の冒険者に指示を出す。

 

 

「よーし、今日はここまで。各自テントを設営して休息の準備を始めろ」

 

 脅威の新人、などというありきたりな言葉ではまるで片付かない。

 

 もしかしたら、彼は役割(ディバイン・ロール)ギフトの持ち主ではなかろうか。

 

 だが役割(ディバイン・ロール)は神の代行者として使命を与えられ、その存在は国家によって保護されるはず。

 

 聖光神官のギフトを持つうちのセレンのように、特別な使命を与えられるはずなのだ。

 

 こんなところで自由に冒険者稼業をやっていることなど有り得ないのだから。

 

◇◇◇

 

 

◇◇◇

 

 

◇◇◇

 

 

 ダンジョン攻略が始まって今日で4日。今の所大きな問題なく順調に下層におりながらモンスターの掃討を行なっている。

 

 僕たちは積極的に討伐の最前線に立ち、1日に何百という敵を討伐している。

 

 まだまだ大した敵はいないものの数は相当なものだ。

 

 そのおかげで魔素ストックは大量に集めることができた。

 

 現在の能力はこんな感じだ。

 

 

――――――

 

【セージ】 LV45/75 次のレベルまで 378530

魔素ストック 4046800

ストックできるもの(最大1000/1000)

 カウンターダメージ 

☆基本攻撃力  ☆魔力値  ☆治癒力 

☆投擲  ☆攻撃回数  ☆加速 ☆攻撃範囲

☆スキル多重発動  ☆暗視 ☆遠目

☆剣速(NEW) ☆剣圧(NEW)

 

・スキル 両断斬 激殺両断 重ね斬り 自動回復

     飛斬翔(NEW) 剣閃(NEW)  

 

☆ストレージ 1000㎥ 10000項目

 

リンク中 【リンカニア(LV42)】 【エリス(LV3)】

 

 

――――――

 

 敵が弱いと新しい技を中々覚えないという弊害があったらしく、思ったより新技は増えていない。

 

 それでも状況に応じて【ためる】を使い続けることでいくつかの新しい技を覚えることができた。

 

 レベルはもしもの時のために上げずにおき、魔石はひたすら魔素ストックに変換しまくった。

 

 次のレベルまでに必要な数値が37万であることを考えると、もっともっとストックを増やしてからレベルアップさせた方がお得だ。

 

 一方でリンカは僕と違い、戦いを重ねるごとに徐々にレベルが上がっている。

 

 どうやら敵を倒して吸収した魔素が経験値となり、そのまま強さとなっているようだ。

 

 

 今の所リンカやエリス嬢に対して経験値を振ることはできていない。

 

 恐らくフィーリングリンクのレベルが上がっていけば可能になるのではないかと睨んでいる。

 

「さて……。向こうの様子はどう、リン」

 

「今の所怪しい動きはしてないみたい。それに、あの小さい子はやっぱり奴隷みたいね」

 

 リンカはそれとなく純白の剣が怪しい動きをしないか見張ってもらっている。

 

 それというのも、彼らの性格を誰よりもよく知っているためあまりいい予感がしないためだ。

 

「おい愚図ッ、さっさと晩飯の支度をしろ。もたもたするなっ」

「……畏まりました、ご主人様」

 

 ハーカルという男が奴隷の少女を蹴り飛ばし、キャンプの火にもつれそうになっている。

 

 碌でもない男なのは確かなようだ。

 

 生気の無い瞳をした少女は淡々と命令をこなしている。

 やはりアレは奴隷の首輪なんだろうか。

 

「リンカ、あれは」

「うん。奴隷の首輪だと思う。私が填められたのと同じ」

 

「目に余るな……」

 

「いまちょっかいを出してもいい事ないわ」

「もしもあの子が望まない奴隷だったら、隙を見て助けよう」

 

「うん」

 

 そうして更に数日、僕たちは最下層に向かいながら戦いを続けた。

 

 

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